禁断のアイテム『攻略本』を拾った村人は、プロデューサーのシナリオを壊せるのだろうか？

第5章・シナリオ遂行編。

第54話・入れ替わり。

『チュンチュン。チュンチュン。』と鳥の鳴き声でエッサは目が覚めました。

「ふぅ～～、確かにオラ達の身体は0と1で出来てるようだな。」

　何やら、ちょっとだけ大人びた感じのエッサが、隣で眠っているエミィの胸についている、２つの0をジッ～と見ています。確かに0に見えるかもしれません。

「エミィ、起きるんだ。早く起きないと駄目だぞ。」

　エッサは服を着ると、ユサユサとエミィの身体を揺らして優しく起こします。早く起こさないとロックタやルナがやって来るかもしれません。流石に裸のエミィをロックタに見せる訳にはいきません。

「んんっ？もうちょっとだけ、お願い。」

　どうやら寝惚けいるようです。無理矢理に起こしても面倒なので先に起きて、ダンジョンに向かう準備をするようです。

　やれやれ、意外と寝起きが悪いんだな。冒険者になるのなら、外で野宿する事もあるんだから、起きたらすぐに動けるように訓練しないとな。

「あの2人もまだ寝ているようだな。やれやれ、俺がしっかりしないとなぁ。さてと、今までは酒場で朝食を食べていたから、準備しなくても良かったけど、これからは自炊しないとな。さて、昨日の夜の残り物でもあるかな？」

　台所には食べ物専用の四角いアイテムボックスが置かれています。中に入れるだけで食べ物を適切に保存してくれます。人の背丈ほどの白い箱を開けると、サンドイッチだけが残っていました。あとで誰かが食べる為に残していたのかもしれません。

『モグモグ、モグモグ、ゴックン。』

　この貸家の主人はエッサです。つまりはこのサンドイッチもエッサのものです。気にせずに全部食べていまいました。

「きゃぁ～～～～～！何で私、裸なの！ここ何処なのよ！」

　エッサの部屋からエミィの悲鳴が聞こえて来ました。昨日の夜は酔っ払っていたのでしょうか。ドタドタ、バタバタとエッサの部屋からエミィの慌てふためく足音が聞こえて来ます。

「ふぅ～、ご近所さん迷惑だな。」

　テーブルに座ってエッサは落ち着いて、フルーツ牛乳を飲んでいます。この程度の騒ぎで取り乱したりしません。

「なになに？どうしたの？誰かの悲鳴が聞こえたんだけど！」

　慌てた様子で武器を持ったルナが部屋から出て来ました。どうやら弓矢の点検中だったようです。エッサより先に起きてダンジョン探索の準備をしていたようです。

「この声はエミィよね？何でエッサの部屋から声が聞こえるのよ。待っててね、すぐに助けるから！」

　ルナは何か勘違いしているようですが、部屋の中でエッサがエミィを無理矢理、襲っている訳ではありません。

　最悪の事態を想定してどちらの味方をするか慎重に考えなければならないわ。何しろ、エッサのレベルは私達2人よりも上なんだから、力尽くで好きなように出来るんだから。慎重に慎重に。

「エッサ、落ち着いて！あれ？エミィ1人だけ？」

　エッサの部屋にいたのは、急いでパジャマを着たエミィだけでした。エッサは台所でフルーツ牛乳を飲んでいます。

「はぁ～、ビックリした。もしかして、ゴキブリか、ネズミでも出たの？しばらく人が住んでいなかったから、ネズミでもネコでも出て来るわよ。はぁ～、心配して損した。」

　安心したのか、ルナは自分の部屋に戻ろうとしていました。そんな彼女にエミィは予想外の言葉をかけてきました。

「あなた、誰？私の事を知っているようだけど、ここはオルガ村じゃないわよね？どうやって私をここまで連れて来たのよ？」

「へぇ、何言ってるの？一昨日、一緒に村から歩いて王都まで来たじゃない。覚えてないの？」

　エミィは何とか思い出そうとしていますが、全然思い出せません。覚えている最期の記憶は野盗を村から追い出した日の夜の事です。

「村にやって来た野盗を追い払った所までは覚えているのよ。そこから、いきなり知らない部屋のベッドの上で裸で寝ているんだもん、ビックリするに決まっているわよ。何で私が王都に居るのよ。」

　エミィは少しは落ち着いてきたようです。自分が王都にいる事と、目の前の女性がとりあえずは自分に敵意がない事が分かって、ホッとしているようです。そんな彼女の元にエッサがやっとやって来ました。

「そんなに騒いでどうしたんだ、エミィ？ご近所さんにご迷惑だろう。」

「きゃぁ～～～～～！あの時の野盗じゃない！私を連れ去って来たのね！誰か助けてください！野盗がここにいます！」

　しばらくして、複数の門番がやって来ましたが、牢獄に連行されたのは、錯乱状態のエミィ、1人だけでした。

「やれやれ、仕方ない女だな。落ち着いたら迎えに行くとしようか。」

　昨日の夜の影響か、昼頃までエッサのおかしな状態は続きました。2人に何が起こったのでしょうか。