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第28話 清と騎士団での取り調べ

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「ち、違うんだな! む、無実なんだな!」
「話は騎士団でゆっくり聞かせてもらうか。大人しく付いて来い」

 ジブロの証言で、清は化け物扱いされてしまった。
 茶髪の男が持ち物からロープを取り出して、清を捕縛しようと迫っている。
 清は無実を主張しているが、強を描いたのは清だ。まったくの無実ではない。

「お前達もだ。クテツの森は調べさせてもらう。お前達の証言が正しいなら、すぐに釈放されるだろう」
「はぁ? 嫌だね。あんた達が本物の騎士団だという保証はないんだろ? 町までは付いて行くけど、ロープで縛られるのはゴメンだね」
「何だと? お前、抵抗するつもりか?」

 銀髪の男がカイルとクレアも縛ろうとしたから、カイルはハッキリと拒否した。
 反抗的な態度に銀髪の男が力尽くで縛ろうとするが、金髪の男がそれを止めた。

「フリーク、やめろ。無実の人間を無理矢理に捕らえるのは、ただの暴力だ。協力してもらえないのは、我々が信用されてない証拠だ。これ以上騎士団の信用を落としてどうする? 3人は簡単に捕まえられても、次は6人、その次は12人に抵抗する人間は増えていくぞ」
「チッ、分かったよ。おい、町まで付いて来い。おかしな真似をしたら容赦なく捕らえる。分かったな?」
「それはこっちの台詞だ。偽物の騎士団なら容赦しねえからな」

 騎士団の男三人は金髪のジーザス、銀髪のフリーク、茶髪の順に偉いようだ。
 短めの茶髪をポニーテールにしている女は分からないが、ジーザスの指示を不満そうに聞いている。

 とりあえずフォルクの町に向かうのは決まった。
 クレアと清、カイルが乗る二頭の馬を先頭に、フォルクの町に向かっていく。
 ジブロは騎士団の馬に乗せられた。清達に逃げられた場合の保険かもしれない。

「ぼ、牧場みたいなんだな」

 駆け足で馬を走らせる事、数十分。縦に並べられた丸太の外壁が見えてきた。
 フォルクの町の外壁だ。四メートルを越える頑丈な外壁は外敵の侵入を許さない。

「牧場というよりも作業場だな。木が豊富にあるから、薪作りと材木業が盛んらしい。俺は住みたくねえけどな」
「何も無いお前の町よりはマシだ。町の中では馬から降りてもらうからな」
「へいへい。分かりましたよ」

 後ろを走っていた銀髪の男が、馬で追い抜きざまに言ってきた。
 清との会話をやめて、カイルはフリークに嫌そうな顔で応えた。
 町の中に入ると、言われた通りに清達三人は馬から降りた。
 
「クテツの森に多数の野盗がいるそうだ。俺達が偵察してくる。赤い狼煙が上がったら、野盗がいる合図だ。緑の場合は野盗はいない。赤の時だけ、増援を送ってくれ」

 ここまで清達を連れて来た四人は、町を警備している騎士団員に清達を引き渡した。
 これから四人でクテツの森に向かうようだ。
 何人か連れて行った方が良いと思うが、今の状況では誰も信用できない。
 騎士団に野盗の協力者がいる場合を警戒して、少人数で動いた方が良さそうだ。


「ニホンだと? どこにあるのか指で差して教えてくれ」

 清達はフォルク騎士団の木造の建物に連れて行かれると、バラバラに取り調べを受ける事になった。
 清は二人の騎士団員から取り調べを受けている。
 木の椅子に座らされて、横長の木机の対面の椅子に若い男、若い男の後ろに60代後半の老人が立っている。
 芝生のような短い緑髪の若い男が、紙の世界地図のような物を持って来ると、清に聞いた。

「え、えーっと、こ、この辺だったかな?」

 異世界の世界地図には、大きな大陸が三つしかない。
 清はどこを指差せばいいのか分からないから、適当に弓の形をしている所を指差した。
 そこは地球で言うと北極や南極のような場所だ。人間が住める土地じゃない。

「そこは『セイブル』だ。氷の大地に古代遺跡がある。人が住んでいるのは、もっと南に南下したこの辺だ。お前、嘘を吐いているな? 正直に言わないと特別な痛い器具を使う事になるぞ」
「ち、地図見た事ないから、わ、分からないんだな! に、日本はあるんだな!」
「地図だと分かっているから、指を差したんだろうが。舐めた口利くなら容赦しないぞ!」

 このままでは拷問される。清は慌てて苦しい言い訳を言っている。
 でも、何百人もの取り調べをしてきた熟練騎士団員の目は騙せない。
 緑髪の騎士団員に代わって、灰髪の騎士団員が清の取り調べを始めた。

「まあまあ、クルス君。緊張してるんじゃよ。それに良い事した人間を悪く言うのは駄目だよ」
「すみません、リンネルさん。ちょっと脅せばペラペラ喋ると思ったんですが……」
「そりゃー脅せば誰でも喋るよ。でもねぇ、何を喋らせるのかが重要なんだよ。クルス君はニホンがどこにあるのか知りたい訳じゃないだろう?」
「まあ、はい、そうですね……」

 優しい口調で六十代後半の老人リンネルは、クルスに取り調べのやり方を教えている。
 いや、教えていた。突然ブチ切れると、机をドガァン‼︎と蹴り飛ばした。
 
「だったら、グダグダ無駄話してんじゃねえよ! ブチ殺すぞ、若造がぁー‼︎ 耳削ぎ落として、歯ぁー全部引っこ抜いて、お前の小汚ねえ家族皆殺しにしてやろうかぁー‼︎」
「す、すみませぇーん‼︎」
「謝る暇があるなら、雑巾持って来い! テメェーの汚い顔と汚い尻で座った椅子拭けやぁー‼︎」

 老人とは思えないドスの効いた声に、クルスは急いで頭を下げて謝罪した。
 清の方は蹴り飛ばされた机に胸を強打されて、「ふぐっ、ぐふぅ、ぐうぅ」と痛みに呻いている。

「ゴメンゴメン。何の話をしてたかな? あー、そうだった。君がどこの誰かだったね。いやねぇ、正直言って誰でもいいんだよ。見張るように言われただけだからね。でもねぇ、正体不明のままじゃ気になってしまうよね? なるんだよねぇ~。素直に教えてくれないかな?」

 ピカピカになった椅子に座ったリンネルが、ニコニコ笑顔で聞いてくるけど、身体から殺気が出ている。
 喋らなければどうなるかは、さっきリンネルが言っていた通りだ。酷い拷問が待っている。

「じ、実は……」

 清は覚悟を決めると正直に話し出した。もちろん、最初から正直に話している。
 さっきと同じ話を聞かされて、リンネルは笑顔をやめて、死んだ魚のような凄い目で清を見ている。

「なるほどなるほど、強情なんだね。クルス君、彼を特別室にご案内して差し上げなさい。私も準備を済ませたら行くから、それまで何もせずに待っていなさい」
「はっ! 了解しました!」

 二度目の同じ話を聞き終えると、老人はニッコリと笑った。
 ここが夢の世界ではなく、現実の世界だと身体に教えるつもりだ。
 選ばれし者しか入れない特別室——特別拷問室に清は招待された。
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