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第19話
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「あの……ちなみにどの選手が優勝するか分かりますか?」
遠回りで聞くのは面倒くさいので、ド直球で答えを聞いてみた。
「ハハッ。それは流石に分からないな」
「ですよね……」
その結果、お客様に笑われてしまった。
まあ、そりゃそうだ。それが分かれば誰もが大金持ちになれる。
いや、誰でも分かったら、誰も大金持ちにはなれないのか?
そんな疑問を思っていると、
「でも、戦い方を見れば選手の性格や考え方は分かる。力で攻めるか、速さで攻めるか、技で攻めるか。思わず見惚れるような綺麗な戦い方をする者もいれば、目を背けたくなる汚い戦い方をする者もいる。私は生死を分けた戦いの中にこそ、その人物の本性が現れると信じている」
とお客様が教えてくれた。
「なるほど」と相槌を打ったものの、これだけではどんな戦士が一番強いのか分からない。
個人的には汚い技で戦う戦士が一番強そうだと思う。
「どうやら今年もハズレらしい。ハンバーガー美味しかったよ」
「えっ? まだ予選試合残ってますよ」
ハンバーガーを食べ終わるとお客様が立ち上がって帰ろうとした。
まだ予選試合・赤とか色々残っている。私はセラさんが負けるように残って応援するつもりだ。
「大丈夫、他の場所で見るだけだから。君の友達が残ることを期待しているよ」
「あっ、それはいいです。助けていただきありがとうございました」
「フッ。じゃあね」
爽やかな良いお客様だったけど、結局答えは教えてくれなかった。
そんなお客様に頭を下げて感謝すると、素敵な笑みで行ってしまった。
「さてと……」
お客様が座っていた席に座った。次の予選試合は赤だ。
ハンバーガーを売っている場合じゃない。キチンとセラさん以外を応援しないといけない。
ポップコーン片手に待っていると、準備が整ったみたいだ。
いつもの進行役の兵士が大声を張り上げた。
「さあ、次が予選最終試合・赤だ!」
「「「うおおおおお!」」」
「この試合で総勢四百六十三名の出場者の中から、選ばれし本戦出場者九十名が決定する! さあ、優勝賞金金貨一万枚を目指して、磨き上げた力を存分に振るうがいい! 最終予選……始めええええ‼︎」
ガァンガァンガァン。と最後だからか鐘が壊れそうなぐらい叩きまくっている。
こっちもポップコーン塩味を一気に頬張ると、一人の出場者に狙いを定めた。
「よっしゃー! ブチ殺せ!」
「何やってんだよ! やられてんじゃねえよ!」
「そこだそこ! 一人でやるんじゃなくて、全員でブチ殺せ!」
「……嬢ちゃん、色々溜まってんだな」
何か隣のおじさんが私の応援に悲しそうな表情で白い目を向けている。
だけど、こっちはそれどころじゃない。舞台の選手達が次々に減っていく。
その減っていく選手の中にセラさんはいない。むしろ、セラさんがどんどん減らしている方だ。
「そこまでえええ‼︎ 選手の皆さんは戦いをやめてください!」
「クソったれぇー‼︎」
兵士の試合終了の合図を聞いて、まだ半分以上も残っていたポップコーンの紙容器を地面に叩きつけた。
黒チビ剣士が本戦に残ってしまった。こんなの八百屋だ。八百屋に決まっている。
☆☆☆
「えっー、本戦は午後二時から開始します。観客の皆さんはお食事、選手の皆さんはご準備をお願いします。なお、第五回武闘会優勝者・準優勝者予想賭け試合は……」
ふぅー、私としたことがつい興奮して頭に血が上ってしまった。
地面にばら撒かれたポップコーンをアリ達が、美味しくいただく前に塵取りとホウキで回収した。
きっと今頃セラさんは、お婆さん達と本戦出場を喜んでいるだろう。
それともこのぐらいは当然だと、大して喜んでいないかもしれない。
どちらにして、こうなったらセラさんが負けるまで見届けるしかない。
「えっと、賭け試合は……」
兵士が言っていた。優勝者と準優勝者を予想する賭けは闘技場で午後二時まで行われるそうだ。
すでに選手が消えた舞台に観客達が二百人近くも集まっている。
まだまだ集まっているし、早くしないと賭けが終わってしまう。
☆予言マジック発動☆
「クッククク……私にはこれがある」
こんな時こそマジックの出番だ。
試合見ずにハンバーガー売っていたから、どの選手が強いのか分からない。
帽子から取り出した封筒を開くと、中から白い紙を取り出した。
折り畳まれた紙を広げると、紙には優勝者と準優勝者の名前が書かれていた。
「なぁ……!」
それも予想外の、いや、信じたくない名前が書かれていた。
「……」
マジックを信じるべきか、自分の気持ちを貫くべきか。
いつだって選べる答えは一つしかない。
遠回りで聞くのは面倒くさいので、ド直球で答えを聞いてみた。
「ハハッ。それは流石に分からないな」
「ですよね……」
その結果、お客様に笑われてしまった。
まあ、そりゃそうだ。それが分かれば誰もが大金持ちになれる。
いや、誰でも分かったら、誰も大金持ちにはなれないのか?
そんな疑問を思っていると、
「でも、戦い方を見れば選手の性格や考え方は分かる。力で攻めるか、速さで攻めるか、技で攻めるか。思わず見惚れるような綺麗な戦い方をする者もいれば、目を背けたくなる汚い戦い方をする者もいる。私は生死を分けた戦いの中にこそ、その人物の本性が現れると信じている」
とお客様が教えてくれた。
「なるほど」と相槌を打ったものの、これだけではどんな戦士が一番強いのか分からない。
個人的には汚い技で戦う戦士が一番強そうだと思う。
「どうやら今年もハズレらしい。ハンバーガー美味しかったよ」
「えっ? まだ予選試合残ってますよ」
ハンバーガーを食べ終わるとお客様が立ち上がって帰ろうとした。
まだ予選試合・赤とか色々残っている。私はセラさんが負けるように残って応援するつもりだ。
「大丈夫、他の場所で見るだけだから。君の友達が残ることを期待しているよ」
「あっ、それはいいです。助けていただきありがとうございました」
「フッ。じゃあね」
爽やかな良いお客様だったけど、結局答えは教えてくれなかった。
そんなお客様に頭を下げて感謝すると、素敵な笑みで行ってしまった。
「さてと……」
お客様が座っていた席に座った。次の予選試合は赤だ。
ハンバーガーを売っている場合じゃない。キチンとセラさん以外を応援しないといけない。
ポップコーン片手に待っていると、準備が整ったみたいだ。
いつもの進行役の兵士が大声を張り上げた。
「さあ、次が予選最終試合・赤だ!」
「「「うおおおおお!」」」
「この試合で総勢四百六十三名の出場者の中から、選ばれし本戦出場者九十名が決定する! さあ、優勝賞金金貨一万枚を目指して、磨き上げた力を存分に振るうがいい! 最終予選……始めええええ‼︎」
ガァンガァンガァン。と最後だからか鐘が壊れそうなぐらい叩きまくっている。
こっちもポップコーン塩味を一気に頬張ると、一人の出場者に狙いを定めた。
「よっしゃー! ブチ殺せ!」
「何やってんだよ! やられてんじゃねえよ!」
「そこだそこ! 一人でやるんじゃなくて、全員でブチ殺せ!」
「……嬢ちゃん、色々溜まってんだな」
何か隣のおじさんが私の応援に悲しそうな表情で白い目を向けている。
だけど、こっちはそれどころじゃない。舞台の選手達が次々に減っていく。
その減っていく選手の中にセラさんはいない。むしろ、セラさんがどんどん減らしている方だ。
「そこまでえええ‼︎ 選手の皆さんは戦いをやめてください!」
「クソったれぇー‼︎」
兵士の試合終了の合図を聞いて、まだ半分以上も残っていたポップコーンの紙容器を地面に叩きつけた。
黒チビ剣士が本戦に残ってしまった。こんなの八百屋だ。八百屋に決まっている。
☆☆☆
「えっー、本戦は午後二時から開始します。観客の皆さんはお食事、選手の皆さんはご準備をお願いします。なお、第五回武闘会優勝者・準優勝者予想賭け試合は……」
ふぅー、私としたことがつい興奮して頭に血が上ってしまった。
地面にばら撒かれたポップコーンをアリ達が、美味しくいただく前に塵取りとホウキで回収した。
きっと今頃セラさんは、お婆さん達と本戦出場を喜んでいるだろう。
それともこのぐらいは当然だと、大して喜んでいないかもしれない。
どちらにして、こうなったらセラさんが負けるまで見届けるしかない。
「えっと、賭け試合は……」
兵士が言っていた。優勝者と準優勝者を予想する賭けは闘技場で午後二時まで行われるそうだ。
すでに選手が消えた舞台に観客達が二百人近くも集まっている。
まだまだ集まっているし、早くしないと賭けが終わってしまう。
☆予言マジック発動☆
「クッククク……私にはこれがある」
こんな時こそマジックの出番だ。
試合見ずにハンバーガー売っていたから、どの選手が強いのか分からない。
帽子から取り出した封筒を開くと、中から白い紙を取り出した。
折り畳まれた紙を広げると、紙には優勝者と準優勝者の名前が書かれていた。
「なぁ……!」
それも予想外の、いや、信じたくない名前が書かれていた。
「……」
マジックを信じるべきか、自分の気持ちを貫くべきか。
いつだって選べる答えは一つしかない。
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