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第18話
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「私の言いつけも守れずに何をやっているかと思ったら、こんなところで油売るなんていい度胸だね‼︎」
油じゃなくて、ハンバーガー売ってました、は多分絶対に言ったら駄目だ。
ゴッドマザーをこれ以上怒らせる必要はない。とにかく言い訳するしかない。
「ちょっ、ちょっと緊張し過ぎて、ト、トイレが我慢できなくて……」
「そんなの漏らしゃいいんだよ‼︎」
「ひぃぃぃ!」
私の言い訳にお婆さんがキレた。今、本当に漏れそうだよ‼︎
「ふぅー、その辺にしてくれないか。近くで聞いててあまり気分のいい話じゃないな」
「……あんた、誰だい?」
私のピンチにお客さん……いや、お客様が立ち上がってくれた。
金髪のお客様が食べかけのハンバーガーを席に置いて立ち上がった。
「この人の客だよ。先に話をしていたのは私の方だ。割り込みは遠慮してもらいたい」
「ああ、そうかい。だけど、こっちは仕事の話をしている最中でね。部外者は引っ込んでな」
「ほぉー、仕事とは予選試合に無理矢理参加させることかい?」
「だから、あんたには関係ないって言ってるだろ! セイラ、あっち行くよ!」
嫌だ。絶対に一歩も動かない。
付いて行ったら、私の頭を闘技場の裏辺りで絶対踏みつけるに決まっている。
「い、行かないです……」
「ゔぁ? 今、何って言ったんだい?」
「うっ……」
私の抵抗にお婆さんがゴッドマザーになって凄んできた。聞えなかったのならもう一度言ってやる。
『行かないって言ったんだよ、この妖怪怪力ババア! 行きたきゃ一人で天国でも地獄でも逝きやがれ!』
……とか言えたらいいんだけどな。
「聞えなかったのかい? 彼女は行かないと言ったんだ」
私の代わりにお客様が言ってくれた。
ハンバーガーもたくさん買ってくれたし、本当に良いお客様だ。
そんなお客様にお婆さんが「チッ」と舌打ちした。
それを見て、お客様がさらに言ってくれた。
「どうやら君は悪い友達と関わってしまったようだ。最近では少なくなったと思っていたけど、試合を有利に進める為に卑怯な手まで使っているらしいね。確か、あそこに見える黒髪の小柄な女性が友達だったね?」
「はい、そうです!」
お客様に聞かれたので正直に頷いた。
確かにあれに脅されて参加させられた、と言ってもいいかもしれない。
「こう見えても城には友達が多いんだ。このことを報告したらどう思うだろう? 最悪、試合に出られなく可能性もあるかもしれないな」
「……脅しているつもりかい?」
「まさか。ただの独り言だよ。今のところはね」
お婆さんの言葉にお客様は大袈裟に反応すると、すぐに素敵な笑顔を浮かべて付け足した。
「……フンッ。命拾いしたね。ハンバーガーでも何でも好きに売ってな。私は忙しいんだ」
ホッ、やっぱり踏みつけるつもりだった。
勇敢なお客様のお陰で、お婆さんが捨て台詞を残して去っていった。
ひと安心できたので、早速お客様にお礼を言った。
「ありがとうございます。助かりました」
「別に大したことはしていないよ。それに私が好きでやったことだ。礼は必要ないよ」
なんて良いお客様だ。どこかの妖怪に爪の垢でも煎じて飲ませたいぐらいだ。
「予選試合・緑終了です!」
「「「うおおおおお!」」」
舞台から試合終了の兵士の宣言が聞こえてきた。
その声に呼応したように、観客達が総立ちになって割れんばかりに叫んでいる。
めっちゃうるさいので反射的に両耳を隠してしまった。
「ふぅー、残念。見逃してしまったか」
「すみません、私の所為で……」
「いや、気にしなくていい。ある程度は見れたからね」
本当に良いお客様だ。この絶叫さえも何事もなかったように席に座るとハンバーガーを食べている。
この落ち着きよう……これが歴戦の『賭け師』なのだろうか?
そんな職業がこの世界にあるのか知らないけど、お婆さんと同じでイベントフラグっぽい。
多分、賭けイベント発生だ。オススメの選手を紹介してもらって、大金ゲットできるチャンス到来だ。
お客様の笑顔の為に新作ハンバーガー売っている場合じゃない。
油じゃなくて、ハンバーガー売ってました、は多分絶対に言ったら駄目だ。
ゴッドマザーをこれ以上怒らせる必要はない。とにかく言い訳するしかない。
「ちょっ、ちょっと緊張し過ぎて、ト、トイレが我慢できなくて……」
「そんなの漏らしゃいいんだよ‼︎」
「ひぃぃぃ!」
私の言い訳にお婆さんがキレた。今、本当に漏れそうだよ‼︎
「ふぅー、その辺にしてくれないか。近くで聞いててあまり気分のいい話じゃないな」
「……あんた、誰だい?」
私のピンチにお客さん……いや、お客様が立ち上がってくれた。
金髪のお客様が食べかけのハンバーガーを席に置いて立ち上がった。
「この人の客だよ。先に話をしていたのは私の方だ。割り込みは遠慮してもらいたい」
「ああ、そうかい。だけど、こっちは仕事の話をしている最中でね。部外者は引っ込んでな」
「ほぉー、仕事とは予選試合に無理矢理参加させることかい?」
「だから、あんたには関係ないって言ってるだろ! セイラ、あっち行くよ!」
嫌だ。絶対に一歩も動かない。
付いて行ったら、私の頭を闘技場の裏辺りで絶対踏みつけるに決まっている。
「い、行かないです……」
「ゔぁ? 今、何って言ったんだい?」
「うっ……」
私の抵抗にお婆さんがゴッドマザーになって凄んできた。聞えなかったのならもう一度言ってやる。
『行かないって言ったんだよ、この妖怪怪力ババア! 行きたきゃ一人で天国でも地獄でも逝きやがれ!』
……とか言えたらいいんだけどな。
「聞えなかったのかい? 彼女は行かないと言ったんだ」
私の代わりにお客様が言ってくれた。
ハンバーガーもたくさん買ってくれたし、本当に良いお客様だ。
そんなお客様にお婆さんが「チッ」と舌打ちした。
それを見て、お客様がさらに言ってくれた。
「どうやら君は悪い友達と関わってしまったようだ。最近では少なくなったと思っていたけど、試合を有利に進める為に卑怯な手まで使っているらしいね。確か、あそこに見える黒髪の小柄な女性が友達だったね?」
「はい、そうです!」
お客様に聞かれたので正直に頷いた。
確かにあれに脅されて参加させられた、と言ってもいいかもしれない。
「こう見えても城には友達が多いんだ。このことを報告したらどう思うだろう? 最悪、試合に出られなく可能性もあるかもしれないな」
「……脅しているつもりかい?」
「まさか。ただの独り言だよ。今のところはね」
お婆さんの言葉にお客様は大袈裟に反応すると、すぐに素敵な笑顔を浮かべて付け足した。
「……フンッ。命拾いしたね。ハンバーガーでも何でも好きに売ってな。私は忙しいんだ」
ホッ、やっぱり踏みつけるつもりだった。
勇敢なお客様のお陰で、お婆さんが捨て台詞を残して去っていった。
ひと安心できたので、早速お客様にお礼を言った。
「ありがとうございます。助かりました」
「別に大したことはしていないよ。それに私が好きでやったことだ。礼は必要ないよ」
なんて良いお客様だ。どこかの妖怪に爪の垢でも煎じて飲ませたいぐらいだ。
「予選試合・緑終了です!」
「「「うおおおおお!」」」
舞台から試合終了の兵士の宣言が聞こえてきた。
その声に呼応したように、観客達が総立ちになって割れんばかりに叫んでいる。
めっちゃうるさいので反射的に両耳を隠してしまった。
「ふぅー、残念。見逃してしまったか」
「すみません、私の所為で……」
「いや、気にしなくていい。ある程度は見れたからね」
本当に良いお客様だ。この絶叫さえも何事もなかったように席に座るとハンバーガーを食べている。
この落ち着きよう……これが歴戦の『賭け師』なのだろうか?
そんな職業がこの世界にあるのか知らないけど、お婆さんと同じでイベントフラグっぽい。
多分、賭けイベント発生だ。オススメの選手を紹介してもらって、大金ゲットできるチャンス到来だ。
お客様の笑顔の為に新作ハンバーガー売っている場合じゃない。
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