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第11話

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「……なお、降ろしてくれよ」

 早く帰りたいと考えていたら、凍えるような声が聞こえてきた。
 何処からだろうと探してみたら、あぐらで宙に浮いている仏様と目があった。

「あっ、すぐ降ろします」

 無駄な抵抗をやめたセラさんだった。
 浮遊マジックをゆっくり解除して、あぐらのまま床に降ろしてあげた。
 ここで失敗して、バラバラ殺人事件が発生するのは非常にマズイ。

「ふぅー、まったく」
「セラ、文句がないなら話しの続きに戻るよ」
「……」

 お婆さんが聞いたけど、無言の肯定みたいだ。
 床から立ち上がると暗い部屋のテーブルに備えられた椅子に座ってしまった。
 それにしても人が住んでる気配がまったくしない家だ。家具はテーブルと椅子だけ。
 まるで空き家を一時的に借りて、休憩所にしている感じだ。

 そんなことを考えていると、

「武闘会に参加するのはセラとセイラの二人でいいね?」

 ……えっ、駄目でしょ。
 私、ソーラン節しか踊ったことないですよ。
 それも学校の文化祭で二週間だけ。

「すみません。私、踊れないので無理です」

 城の舞踏会で、タッ・タタッ・タァンと華麗なステップで踊る自信はない。
 自信のない挙手でしっかり出来ない宣言した。

「そっちの舞踏会じゃなくて、戦う方の武闘会だよ」

 ……もっと駄目でしょ。
 プリンセス天功とアントニオ猪木が戦ったらどっちが勝つか、そんなのやらなくても分かるでしょ。

「すみません。私、戦えないので無理です」

 今度は自信のある挙手でハッキリ出来ない宣言した。

 ☆☆☆

「……」

 パカラッ、パカラッ、パカラッ……何故こうなった?
 軽快な馬の蹄を聞きながら、私は馬車に揺られて、武闘会が開かれる城がある街に向かっている。
 ハッキリ戦えない宣言したら、「じゃあ、サポートだけでいいよ」と言われた。
 私が言いたいことはそういうことじゃなく、武闘会にも城にも行きたくないだ。

「この辺でいいね。ちょっと休憩するよ」

 そんな私の気持ちをハッキリ伝えたのに、四人の武闘会に強制参加中だ。
 本日二度目の休憩がお婆さんから告げられた。
 馬車に乗るのは初めてだけど、二十分も揺られればもう十分だ。
 ハンバーガー吐く前に瞬間移動で私だけ城のある街まで行きたい。

 もちろんそれをしない理由も、武闘会なんて知るかと逃げ出さない理由もある。
 この異世界のことが知りたいのと……何となくこの出会いがイベントフラグっぽいからだ。

「ほら、セイラは特訓だよ」
「はい……」

 進むも地獄、休憩するのも地獄だ。
 サポートだけと言っておきながら、お婆さんが休憩中に武術を教えてくる。
『護身術だと思って頑張りな』と教える前に言っていたけど……
 私が知っている護身術に先制攻撃も剣を使うものもない。
 明らかに戦闘術だ。何度も言いたくないけど、私は武闘会に出るつもりはない。

「素振りなんて何万回やっても意味ないよ! 私を殺すつもりで何万回も攻撃しな!」
「やぁああああ!」

 じゃあ、遠慮なく!
 右手に持った短剣でお婆さん殺害に二度目の挑戦開始だ。
 日本刀と違い、短剣は軽くて短いので素早く振り回せる。

「たぁあ! たぁあ!」
「なんだい、その突きは? へなちょこ過ぎて避けるのも馬鹿らしいよ」

 首や胸を狙って、フェンシングのように短剣を素早く突き出しまくる。
 もちろん私の主観で素早くだ。実際にお婆さんの身体には擦りもしていない。

「ほら、隙だらけだよ!」
「あぅっ……!」

 そして、手で突きを払い除けるのはまだいい。
 でも、腕掴んで私の足にローキックは絶対駄目だ。
 昨日の今日で、まだ私の足はアントキノ樹木との戦いから完治していない。

「ありゃー、駄目だな。まるで才能がない。やっぱり俺が頑張るしかないか」

 私の特訓を私があげたコーラを飲みながら見物しているセラさんが呆れるように言った。
 そんなことは言われなくても分かっている。それにそう言われる理由も分かっている。
 一度目の特訓でお婆さんに職業について教えられたからだ。
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