11 / 23
第11話
しおりを挟む
「……なお、降ろしてくれよ」
早く帰りたいと考えていたら、凍えるような声が聞こえてきた。
何処からだろうと探してみたら、あぐらで宙に浮いている仏様と目があった。
「あっ、すぐ降ろします」
無駄な抵抗をやめたセラさんだった。
浮遊マジックをゆっくり解除して、あぐらのまま床に降ろしてあげた。
ここで失敗して、バラバラ殺人事件が発生するのは非常にマズイ。
「ふぅー、まったく」
「セラ、文句がないなら話しの続きに戻るよ」
「……」
お婆さんが聞いたけど、無言の肯定みたいだ。
床から立ち上がると暗い部屋のテーブルに備えられた椅子に座ってしまった。
それにしても人が住んでる気配がまったくしない家だ。家具はテーブルと椅子だけ。
まるで空き家を一時的に借りて、休憩所にしている感じだ。
そんなことを考えていると、
「武闘会に参加するのはセラとセイラの二人でいいね?」
……えっ、駄目でしょ。
私、ソーラン節しか踊ったことないですよ。
それも学校の文化祭で二週間だけ。
「すみません。私、踊れないので無理です」
城の舞踏会で、タッ・タタッ・タァンと華麗なステップで踊る自信はない。
自信のない挙手でしっかり出来ない宣言した。
「そっちの舞踏会じゃなくて、戦う方の武闘会だよ」
……もっと駄目でしょ。
プリンセス天功とアントニオ猪木が戦ったらどっちが勝つか、そんなのやらなくても分かるでしょ。
「すみません。私、戦えないので無理です」
今度は自信のある挙手でハッキリ出来ない宣言した。
☆☆☆
「……」
パカラッ、パカラッ、パカラッ……何故こうなった?
軽快な馬の蹄を聞きながら、私は馬車に揺られて、武闘会が開かれる城がある街に向かっている。
ハッキリ戦えない宣言したら、「じゃあ、サポートだけでいいよ」と言われた。
私が言いたいことはそういうことじゃなく、武闘会にも城にも行きたくないだ。
「この辺でいいね。ちょっと休憩するよ」
そんな私の気持ちをハッキリ伝えたのに、四人の武闘会に強制参加中だ。
本日二度目の休憩がお婆さんから告げられた。
馬車に乗るのは初めてだけど、二十分も揺られればもう十分だ。
ハンバーガー吐く前に瞬間移動で私だけ城のある街まで行きたい。
もちろんそれをしない理由も、武闘会なんて知るかと逃げ出さない理由もある。
この異世界のことが知りたいのと……何となくこの出会いがイベントフラグっぽいからだ。
「ほら、セイラは特訓だよ」
「はい……」
進むも地獄、休憩するのも地獄だ。
サポートだけと言っておきながら、お婆さんが休憩中に武術を教えてくる。
『護身術だと思って頑張りな』と教える前に言っていたけど……
私が知っている護身術に先制攻撃も剣を使うものもない。
明らかに戦闘術だ。何度も言いたくないけど、私は武闘会に出るつもりはない。
「素振りなんて何万回やっても意味ないよ! 私を殺すつもりで何万回も攻撃しな!」
「やぁああああ!」
じゃあ、遠慮なく!
右手に持った短剣でお婆さん殺害に二度目の挑戦開始だ。
日本刀と違い、短剣は軽くて短いので素早く振り回せる。
「たぁあ! たぁあ!」
「なんだい、その突きは? へなちょこ過ぎて避けるのも馬鹿らしいよ」
首や胸を狙って、フェンシングのように短剣を素早く突き出しまくる。
もちろん私の主観で素早くだ。実際にお婆さんの身体には擦りもしていない。
「ほら、隙だらけだよ!」
「あぅっ……!」
そして、手で突きを払い除けるのはまだいい。
でも、腕掴んで私の足にローキックは絶対駄目だ。
昨日の今日で、まだ私の足はアントキノ樹木との戦いから完治していない。
「ありゃー、駄目だな。まるで才能がない。やっぱり俺が頑張るしかないか」
私の特訓を私があげたコーラを飲みながら見物しているセラさんが呆れるように言った。
そんなことは言われなくても分かっている。それにそう言われる理由も分かっている。
一度目の特訓でお婆さんに職業について教えられたからだ。
早く帰りたいと考えていたら、凍えるような声が聞こえてきた。
何処からだろうと探してみたら、あぐらで宙に浮いている仏様と目があった。
「あっ、すぐ降ろします」
無駄な抵抗をやめたセラさんだった。
浮遊マジックをゆっくり解除して、あぐらのまま床に降ろしてあげた。
ここで失敗して、バラバラ殺人事件が発生するのは非常にマズイ。
「ふぅー、まったく」
「セラ、文句がないなら話しの続きに戻るよ」
「……」
お婆さんが聞いたけど、無言の肯定みたいだ。
床から立ち上がると暗い部屋のテーブルに備えられた椅子に座ってしまった。
それにしても人が住んでる気配がまったくしない家だ。家具はテーブルと椅子だけ。
まるで空き家を一時的に借りて、休憩所にしている感じだ。
そんなことを考えていると、
「武闘会に参加するのはセラとセイラの二人でいいね?」
……えっ、駄目でしょ。
私、ソーラン節しか踊ったことないですよ。
それも学校の文化祭で二週間だけ。
「すみません。私、踊れないので無理です」
城の舞踏会で、タッ・タタッ・タァンと華麗なステップで踊る自信はない。
自信のない挙手でしっかり出来ない宣言した。
「そっちの舞踏会じゃなくて、戦う方の武闘会だよ」
……もっと駄目でしょ。
プリンセス天功とアントニオ猪木が戦ったらどっちが勝つか、そんなのやらなくても分かるでしょ。
「すみません。私、戦えないので無理です」
今度は自信のある挙手でハッキリ出来ない宣言した。
☆☆☆
「……」
パカラッ、パカラッ、パカラッ……何故こうなった?
軽快な馬の蹄を聞きながら、私は馬車に揺られて、武闘会が開かれる城がある街に向かっている。
ハッキリ戦えない宣言したら、「じゃあ、サポートだけでいいよ」と言われた。
私が言いたいことはそういうことじゃなく、武闘会にも城にも行きたくないだ。
「この辺でいいね。ちょっと休憩するよ」
そんな私の気持ちをハッキリ伝えたのに、四人の武闘会に強制参加中だ。
本日二度目の休憩がお婆さんから告げられた。
馬車に乗るのは初めてだけど、二十分も揺られればもう十分だ。
ハンバーガー吐く前に瞬間移動で私だけ城のある街まで行きたい。
もちろんそれをしない理由も、武闘会なんて知るかと逃げ出さない理由もある。
この異世界のことが知りたいのと……何となくこの出会いがイベントフラグっぽいからだ。
「ほら、セイラは特訓だよ」
「はい……」
進むも地獄、休憩するのも地獄だ。
サポートだけと言っておきながら、お婆さんが休憩中に武術を教えてくる。
『護身術だと思って頑張りな』と教える前に言っていたけど……
私が知っている護身術に先制攻撃も剣を使うものもない。
明らかに戦闘術だ。何度も言いたくないけど、私は武闘会に出るつもりはない。
「素振りなんて何万回やっても意味ないよ! 私を殺すつもりで何万回も攻撃しな!」
「やぁああああ!」
じゃあ、遠慮なく!
右手に持った短剣でお婆さん殺害に二度目の挑戦開始だ。
日本刀と違い、短剣は軽くて短いので素早く振り回せる。
「たぁあ! たぁあ!」
「なんだい、その突きは? へなちょこ過ぎて避けるのも馬鹿らしいよ」
首や胸を狙って、フェンシングのように短剣を素早く突き出しまくる。
もちろん私の主観で素早くだ。実際にお婆さんの身体には擦りもしていない。
「ほら、隙だらけだよ!」
「あぅっ……!」
そして、手で突きを払い除けるのはまだいい。
でも、腕掴んで私の足にローキックは絶対駄目だ。
昨日の今日で、まだ私の足はアントキノ樹木との戦いから完治していない。
「ありゃー、駄目だな。まるで才能がない。やっぱり俺が頑張るしかないか」
私の特訓を私があげたコーラを飲みながら見物しているセラさんが呆れるように言った。
そんなことは言われなくても分かっている。それにそう言われる理由も分かっている。
一度目の特訓でお婆さんに職業について教えられたからだ。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【破天荒注意】陰キャの俺、異世界の女神の力を借り俺を裏切った幼なじみと寝取った陽キャ男子に復讐する
花町ぴろん
ファンタジー
陰キャの俺にはアヤネという大切な幼なじみがいた。
俺たち二人は高校入学と同時に恋人同士となった。
だがしかし、そんな幸福な時間は長くは続かなかった。
アヤネはあっさりと俺を捨て、イケメンの陽キャ男子に寝取られてしまったのだ。
絶望に打ちひしがれる俺。夢も希望も無い毎日。
そんな俺に一筋の光明が差し込む。
夢の中で出会った女神エリステア。俺は女神の加護を受け辛く険しい修行に耐え抜き、他人を自由自在に操る力を手に入れる。
今こそ復讐のときだ!俺は俺を裏切った幼なじみと俺の心を踏みにじった陽キャイケメン野郎を絶対に許さない!!
★寝取られ→ざまぁのカタルシスをお楽しみください。
※この小説は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
万能知識チートの軍師は無血連勝してきましたが無能として解任されました
フルーツパフェ
ファンタジー
全世界で唯一無二の覇権国家を目指すべく、極端な軍備増強を進める帝国。
その辺境第十四区士官学校に一人の少年、レムダ=ゲオルグが通うこととなった。
血塗られた一族の異名を持つゲオルグ家の末息子でありながら、武勇や魔法では頭角を現さず、代わりに軍事とは直接関係のない多種多様な産業や学問に関心を持ち、辣腕ぶりを発揮する。
その背景にはかつて、厳しい環境下での善戦を強いられた前世での体験があった。
群雄割拠の戦乱において、無能と評判のレムダは一見軍事に関係ない万能の知識と奇想天外の戦略を武器に活躍する。
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる