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第9話
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「このクソババアが‼︎ 次会ったら容赦しねえからな‼︎ お、覚えてろよ‼︎」
仲間二人に肩を貸してもらい、去り際にボンジョビがお婆さんに定番の捨て台詞を言い放った。
不思議なもので大声出した方が勝ったように見える。これが試合に負けて、勝負に勝った状態だろうか。
私がやられたら、メチャムカつくので、すぐに追いかけてトドメを刺しそうだ。
「年寄りは忘れっぽいんだよ。文句があるなら今すぐ来な」
「よし、行くぞ‼︎」
「「おお‼︎」」
文句ないみたいだ。というより全力で聞こえないフリした。
仲間二人に支えられて、ボンジョビが両足を引きずられながら三人四脚で去っていった。
きっと家には帰らずに病院に行くんだろうな。
「あっ。助けていただきありがとうございました」
こういう時は素直にお礼を言った方がいい。チンピラが消えたので、お婆さんに頭を下げてお礼を言った。
「助けてくれなくても、私一人でどうにかなったのに」とか余計なこと言うと、妖怪怪力ババアになって頭を踏み潰されてしまう。
「別に大したことしてないよ。それよりもあんたに話しがあるんだ」
「話しですか……?」
「そう、話だよ。あんたにやってほしい仕事があるんだけど聞くかい?」
「仕事ですかぁ~」
上品なお婆さんの仕事なら喜んで引き受けただろうけど、妖怪怪力ババアだと知った今は考えてしまう。
上品お婆さんならオシャレなカフェ店員、妖怪怪力ババアなら汗まみれの土木作業員を紹介されそうだ。
「そうだね。立ち話も何だから——」
「『フェアリーゴッドマザー』、こちらにいらっしゃいましたか!」
フェ、フェアリーゴッドマザー⁇ ああ、もう駄目だ。絶対断ろう。
カフェ店員か、土木作業員か、どっちか考えていたら若い女性が二人走ってきた。
どちらも二十歳前か、二十代前半にしか見ない若い女性だ。
その一人がお婆さんの名前っぽいのを言った。明らかにイタリアマフィア系の名前だ。
だけど、瞬間移動マジックで逃げるのはまだ早い。マフィアか、カフェ店員かまだ分からない。
女性の一人は長い栗色の髪で、背が高く、巨乳で、優しそうな顔立ちをしている。
モテモテ人生間違いなしの美人だ。
服装は頭にハンカチのような布を広げて被っていて、踊り子のような民族衣装を着ている。
もう一人も同じような服装だけど、こっちは小柄で鎖骨まで伸びる黒髪、不良みたいな鋭い目つき、ペタンコな胸、軽く焼いたような薄い小麦色の肌だ。
遠くからなら男の子にも見えてしまう、中性的な美少年女子だ。
女子にはモテモテだろうけど、男子には男扱いされる残念なタイプだ。
ゴッドマザー、巨乳美人、美少年女子……三人の容姿と服装から総合的に判断すると、僅かだけど紹介される仕事が『居酒屋』の可能性も出てきた。
居酒屋なら酒のつまみにマジックも必要だろうし、酒に酔った客を腕力で追い出す妖怪怪力ババアの力も必要だ。
もちろん男性客を常連客に導く巨乳美人や、女性客を常連客に導く美少年女子も必要になる。
定食屋の可能性も少しはあるけど、定食屋で酔っている客は想像がつかない。
「セラ、ラナ、良いところに来たね。ちょうど三人目が見つかったところだよ」
「えっ? 本当ですか⁉︎」
やるとは言ってないのに、お婆さんの中では決定事項みたいだ。
それを聞いて、巨乳美人が喜んでいるけど、もう一人の方は違うみたいだ。
「ちょっと婆さん、そんな変な格好の奴を仲間に入れるつもりか? 信用できるのかよ?」
美少年女子の方が疑うような目つきで私を見ると、お婆さんに向きなおって訊いている。
まあ、ステージ衣装だし、いつもより派手だし、こう思われても仕方ない。
「信用なんて出来るわけないだろ。私を含め、あんた達もね。私が唯一信用しているのは実力だよ。私の目から見て、この娘の力は十分に信用できるレベルだったよ」
「へぇー、婆さんがそこまで言うなら多少はやるんだろうな。あんた、職業は何なんだ?」
「職業は……マジシャンです」
美少年女子に聞かれて、少し考えてから答えた。
正直に異世界マジシャンだと答えたら、異世界人だとバレてしまう。
それにステータスの職業にマジシャンと書かれていたから、マジシャンなのは間違いない。
「聞いたことがない職業だな。まあ、マジシャンってことは魔法使い系か? ずいぶんと幅広い答え方だな? 詳しい能力は秘密ってわけか?」
「ええ、まぁ……」
美少年女子が色々訊いてくるけど、自分でもよく分からないのでよく分からない返事をした。
「この娘の職業は幻術士だよ。ほら、こんな所で立ち話しするなんて私は御免だよ。続きは家に帰ってからやるよ」
「はい、お婆様。よろしくね♪ ……えっと?」
「藤咲星来です」
巨乳美人に笑顔で聞かれたので、普通にフルネームで答えてしまった。
「フジサキセイラ……じゃあ、セイラねぇ♪ 本当にちょうどいいわね。名前も含めて。私はラナ。こっちは姉のセラよ。セラとラナの妹でセイラなんて、なんだか運命を感じるわね」
「そ、そうですね……」
まさか巨乳の方が妹だったとは……。
全然運命なんて感じないけど、同意するしかない。あっちは三人、こっちは一人だ。
私の戦いはまだ終わってない。相手がチンピラから居酒屋店員(仮)に変わっただけだ。
仲間二人に肩を貸してもらい、去り際にボンジョビがお婆さんに定番の捨て台詞を言い放った。
不思議なもので大声出した方が勝ったように見える。これが試合に負けて、勝負に勝った状態だろうか。
私がやられたら、メチャムカつくので、すぐに追いかけてトドメを刺しそうだ。
「年寄りは忘れっぽいんだよ。文句があるなら今すぐ来な」
「よし、行くぞ‼︎」
「「おお‼︎」」
文句ないみたいだ。というより全力で聞こえないフリした。
仲間二人に支えられて、ボンジョビが両足を引きずられながら三人四脚で去っていった。
きっと家には帰らずに病院に行くんだろうな。
「あっ。助けていただきありがとうございました」
こういう時は素直にお礼を言った方がいい。チンピラが消えたので、お婆さんに頭を下げてお礼を言った。
「助けてくれなくても、私一人でどうにかなったのに」とか余計なこと言うと、妖怪怪力ババアになって頭を踏み潰されてしまう。
「別に大したことしてないよ。それよりもあんたに話しがあるんだ」
「話しですか……?」
「そう、話だよ。あんたにやってほしい仕事があるんだけど聞くかい?」
「仕事ですかぁ~」
上品なお婆さんの仕事なら喜んで引き受けただろうけど、妖怪怪力ババアだと知った今は考えてしまう。
上品お婆さんならオシャレなカフェ店員、妖怪怪力ババアなら汗まみれの土木作業員を紹介されそうだ。
「そうだね。立ち話も何だから——」
「『フェアリーゴッドマザー』、こちらにいらっしゃいましたか!」
フェ、フェアリーゴッドマザー⁇ ああ、もう駄目だ。絶対断ろう。
カフェ店員か、土木作業員か、どっちか考えていたら若い女性が二人走ってきた。
どちらも二十歳前か、二十代前半にしか見ない若い女性だ。
その一人がお婆さんの名前っぽいのを言った。明らかにイタリアマフィア系の名前だ。
だけど、瞬間移動マジックで逃げるのはまだ早い。マフィアか、カフェ店員かまだ分からない。
女性の一人は長い栗色の髪で、背が高く、巨乳で、優しそうな顔立ちをしている。
モテモテ人生間違いなしの美人だ。
服装は頭にハンカチのような布を広げて被っていて、踊り子のような民族衣装を着ている。
もう一人も同じような服装だけど、こっちは小柄で鎖骨まで伸びる黒髪、不良みたいな鋭い目つき、ペタンコな胸、軽く焼いたような薄い小麦色の肌だ。
遠くからなら男の子にも見えてしまう、中性的な美少年女子だ。
女子にはモテモテだろうけど、男子には男扱いされる残念なタイプだ。
ゴッドマザー、巨乳美人、美少年女子……三人の容姿と服装から総合的に判断すると、僅かだけど紹介される仕事が『居酒屋』の可能性も出てきた。
居酒屋なら酒のつまみにマジックも必要だろうし、酒に酔った客を腕力で追い出す妖怪怪力ババアの力も必要だ。
もちろん男性客を常連客に導く巨乳美人や、女性客を常連客に導く美少年女子も必要になる。
定食屋の可能性も少しはあるけど、定食屋で酔っている客は想像がつかない。
「セラ、ラナ、良いところに来たね。ちょうど三人目が見つかったところだよ」
「えっ? 本当ですか⁉︎」
やるとは言ってないのに、お婆さんの中では決定事項みたいだ。
それを聞いて、巨乳美人が喜んでいるけど、もう一人の方は違うみたいだ。
「ちょっと婆さん、そんな変な格好の奴を仲間に入れるつもりか? 信用できるのかよ?」
美少年女子の方が疑うような目つきで私を見ると、お婆さんに向きなおって訊いている。
まあ、ステージ衣装だし、いつもより派手だし、こう思われても仕方ない。
「信用なんて出来るわけないだろ。私を含め、あんた達もね。私が唯一信用しているのは実力だよ。私の目から見て、この娘の力は十分に信用できるレベルだったよ」
「へぇー、婆さんがそこまで言うなら多少はやるんだろうな。あんた、職業は何なんだ?」
「職業は……マジシャンです」
美少年女子に聞かれて、少し考えてから答えた。
正直に異世界マジシャンだと答えたら、異世界人だとバレてしまう。
それにステータスの職業にマジシャンと書かれていたから、マジシャンなのは間違いない。
「聞いたことがない職業だな。まあ、マジシャンってことは魔法使い系か? ずいぶんと幅広い答え方だな? 詳しい能力は秘密ってわけか?」
「ええ、まぁ……」
美少年女子が色々訊いてくるけど、自分でもよく分からないのでよく分からない返事をした。
「この娘の職業は幻術士だよ。ほら、こんな所で立ち話しするなんて私は御免だよ。続きは家に帰ってからやるよ」
「はい、お婆様。よろしくね♪ ……えっと?」
「藤咲星来です」
巨乳美人に笑顔で聞かれたので、普通にフルネームで答えてしまった。
「フジサキセイラ……じゃあ、セイラねぇ♪ 本当にちょうどいいわね。名前も含めて。私はラナ。こっちは姉のセラよ。セラとラナの妹でセイラなんて、なんだか運命を感じるわね」
「そ、そうですね……」
まさか巨乳の方が妹だったとは……。
全然運命なんて感じないけど、同意するしかない。あっちは三人、こっちは一人だ。
私の戦いはまだ終わってない。相手がチンピラから居酒屋店員(仮)に変わっただけだ。
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