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第1話 職業・異世界マジシャン
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【ステータス画面】
【名前:藤咲星来(ふじさきせいら) 年齢:十六歳 職業:異世界マジシャン】
……うん、間違いない。完全に異世界だ。奇術の女神様が言ってたとおりだ。
私、藤咲星来は数分前までどこにでもいる、高校二年生の普通の女子高生だった。
それが今は知らない森の中にいる。
鮮やかな緑色の葉っぱをつけた樹木、ピーンと伸びた細長い草の茂みに囲まれた森の中だ。
「すぅー、はぁー、あぁ~美味しい空気♪」
こういう時は深呼吸だ。すぅーと吸って、はぁーと吐いた。
涼しげな気温は春頃だろうか? 森は清々しい空気で満ちている。
陽の光以外の音はなく、静寂が満ち溢れ、喧騒な都会とは明らかに別世界だと自覚させられる。
乾いた地面は学校のグラウンドに似ていて、ゴロンと横になれば、樹木のカーテンが私を眠りの世界に優しく連れていってくれそうだ。
「だぁー‼︎ こんな所で寝られるか‼︎」
そうだ。こんな所で寝ている場合じゃない。
頭に乗せている小さな黒帽子・シルクハットを地面に叩きつけた。
「くおおおおおおお‼︎ この野朗、この野朗、この野朗‼︎」
もちろんこの程度で私の怒りは収まらない。
ローキック、ローキック、ローキックだ。
近くに生えていた無抵抗な木が私の右足の餌食になっていく。
「フゥーッ、フゥーッ、フゥーッ……今日はこの辺で勘弁してやる!」
このまま蹴り続けると私の方が立っていられなくなる。
右足を引きずりながら、木から離れて座ってあげた。
「ぅぅぅぅ……痛いぃ」
右足をさすっていると自然と涙が溢れてきた。
痛いから泣いているんじゃない。悲しいから泣いている。
日給五千円貰って使ってないのに死んだ。いや、あれはもう殺人だ。
『女子高生マジシャン助手炎上脱出マジック失敗殺人事件』だ。
犯人はマジシャンの叔父『ルーイン小早川』だ。本名『小早川茂雄』だ。三流マジシャンだ。
いや、三流以下だ。いやいや、三流以下だとまだプロっぽい。五流でも論外。五浪マジシャンだ。
年齢的に考えれば二十五浪は絶対に超えている。
大学受け続けて、不合格になり続けて『いい加減諦めなさい!』と親に言われる親不孝馬鹿だ。
【名前:藤咲星来(ふじさきせいら) 年齢:十六歳 職業:異世界マジシャン】
……うん、間違いない。完全に異世界だ。奇術の女神様が言ってたとおりだ。
私、藤咲星来は数分前までどこにでもいる、高校二年生の普通の女子高生だった。
それが今は知らない森の中にいる。
鮮やかな緑色の葉っぱをつけた樹木、ピーンと伸びた細長い草の茂みに囲まれた森の中だ。
「すぅー、はぁー、あぁ~美味しい空気♪」
こういう時は深呼吸だ。すぅーと吸って、はぁーと吐いた。
涼しげな気温は春頃だろうか? 森は清々しい空気で満ちている。
陽の光以外の音はなく、静寂が満ち溢れ、喧騒な都会とは明らかに別世界だと自覚させられる。
乾いた地面は学校のグラウンドに似ていて、ゴロンと横になれば、樹木のカーテンが私を眠りの世界に優しく連れていってくれそうだ。
「だぁー‼︎ こんな所で寝られるか‼︎」
そうだ。こんな所で寝ている場合じゃない。
頭に乗せている小さな黒帽子・シルクハットを地面に叩きつけた。
「くおおおおおおお‼︎ この野朗、この野朗、この野朗‼︎」
もちろんこの程度で私の怒りは収まらない。
ローキック、ローキック、ローキックだ。
近くに生えていた無抵抗な木が私の右足の餌食になっていく。
「フゥーッ、フゥーッ、フゥーッ……今日はこの辺で勘弁してやる!」
このまま蹴り続けると私の方が立っていられなくなる。
右足を引きずりながら、木から離れて座ってあげた。
「ぅぅぅぅ……痛いぃ」
右足をさすっていると自然と涙が溢れてきた。
痛いから泣いているんじゃない。悲しいから泣いている。
日給五千円貰って使ってないのに死んだ。いや、あれはもう殺人だ。
『女子高生マジシャン助手炎上脱出マジック失敗殺人事件』だ。
犯人はマジシャンの叔父『ルーイン小早川』だ。本名『小早川茂雄』だ。三流マジシャンだ。
いや、三流以下だ。いやいや、三流以下だとまだプロっぽい。五流でも論外。五浪マジシャンだ。
年齢的に考えれば二十五浪は絶対に超えている。
大学受け続けて、不合格になり続けて『いい加減諦めなさい!』と親に言われる親不孝馬鹿だ。
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