上 下
94 / 111
第八章 小島の王vs偉大なる大国の聖女

第94話 国外追放された弟探し

しおりを挟む
『封印完了だ』

 地面に土で出来た宝箱が現れた。もう二度と戦わない。
 広がった尻穴の中に入って、C4爆弾を設置して、馬の胴体を木っ端微塵に爆発した。
 姿を維持できなかったのか、ケンタウロスがチビタウロスに戻った。
 ボロ賽銭箱を瀕死のチビタウロスの身体をくっ付けて、封印が完了した。

「あとは神格を上げればいいんだな?」
『危険な土地神の力を上げてどうする? 死にたいのか?』

 土の宝箱を吸収した賽銭箱が、信じられない感じに聞き返してきた。
 やっぱりギリギリの戦いだった。この嫌なパターンは知っている。
 今までのパターンなら、この後に最大のピンチがやって来る。

 弱小土地神を倒しまくって、中級か上級の土地神を怒らせる。
 俺のヘイゼル町が襲われて、絶対に逃げられない状況で倒さないといけない。
 もうそのパターンにはさせない。安全第一で行動する。

「死ぬつもりはないよ。まさか、別の土地神を探せとか言わないよな? 今度も危険な土地神なんだろ?」
『その可能性が高いだろうな。力を付けてから出直した方がいい』
「当たり前だ。日本の下級賽銭箱を集めて、お前の力を上げるに決まっている」

 安全でまともな計画に変更になった。
 油で汚れた服を脱ぎ捨てて、瞬間移動のボタンを押した。
 女子寮の空室の個室でシャワーを浴びて、髪に付いた油を洗い流していく。
 出来れば全身を、女の子達のおっぱいスポンジで洗ってほしい。

「ふぅー、手始めに千葉の中級賽銭箱でも奪うか?」

 シャワーを浴びて、柔らかいタオルで身体を拭いていく。
 このままベッドで寝たいけど、休んでいる暇はない。
 神村島にいるはずの偽警官を探しに出掛けた。

「お兄ちゃん、お兄ちゃん、肩車してぇー」
「千葉ちゃんなら、魚釣りしてたよぉー。大トロ握ってくれるよぉー」
「そうなんだ。探してみるね」

 蒼桜遥じゃないのに、幼女十歳以下は大歓迎してくれるから好きだ。
 女子寮の前で遊んでいた幼女達に聞いてみた。砂浜からマグロが釣れるとは思えない。
 幼女達以上に遊んでいるようだ。情報提供のお礼にお菓子袋を渡して、砂浜に向かった。

(随分と綺麗になったな)

 ゴミと流木だらけの砂浜だったのに、今は綺麗な砂浜になっている。
 砂浜で集めた小石と貝殻で作られた、小さな四角いプールもある。
 ここで子供達と中国娘が水着で遊んでいるのかもしれない。

「釣れますか?」
「ああ、神村さんですか。まあまあですね」

 砂浜でサボっている偽警官に聞いた。今日は日番なのか、赤いアロハシャツに黄色の半ズボンだ。
 パラソルの下に椅子を置いて、釣り竿を持っている。バケツの中には、赤い魚と青い魚が七匹泳いでいる。

「マグロは釣れてないみたいだな。寿司は買ってくるのか?」

 このバケツの大きさなら、最初から釣るつもりはない。
 俺なら築地で冷凍マグロの小さいのを買ってくる。

「あっははは。マグロを知らない子供に、マグロを食べさせる必要ありますか? これで十分ですよ」
「クズだな。船ぐらいあるだろ? それで今すぐに釣って来いよ」
「嫌ですよ。それよりも用事があって来たんでしょう? 土地神でも捕まえたんですか?」

 買いに行くつもりも、釣りに行くつもりもないようだ。まあ、俺もマグロはどうでもいい。
 察しがいい千葉が聞いてきたので、賽銭箱を奪いに来た事を教えてやる。

「土地神は捕まえたが、協力的な奴じゃなかった。だから、俺の賽銭箱の力を上げる事にした。マグロは俺が代わりに用意するから、お前の賽銭箱を寄越せ」
「ああ、なるほどなるほど。そういう事ですか。でも、私が死んだらシスターが来ますよ?」
「大丈夫だ。身代わりも用意する。俺の為に都合の良い報告をしてくれる、素晴らしい身代わりだ」

 殺して困るなら最初から来ない。ここに来た時点で殺していいのは決定している。
 そして、お前の超能力が強力な念力なのは知っている。もう食らわない。
 
「都合が悪い人間は排除するとは鬼ですね。では、私よりも格上の賽銭箱の情報を教えるので見逃してください。『スサノオ』という国外追放された神様なんですが、知っていますよね?」

 命乞いをするかと思ったけど、千葉も身代わりを用意してきた。
 スサノオと言えば、ヤマタノオロチを倒して、草薙の剣を手に入れた男神だ。

『ああ、私の弟だ。居場所を知っているのか?』
「なっ⁉︎」

 ……えっ、弟? 俺、聞いてないよ。
 賽銭箱が有名な神の親戚だとは知らなかった。
 その前に神爺の名前も知らない。

「正確には心当たりがあるだけです。色々な国にコネがあるから情報が入ってくるんですよ」
『居場所が分かっても、スサノオは上級神だ。倒せない相手の居場所を教えられても意味はない』
「弟ならば、兄に協力してくれるんじゃないですか?」
「俺も会った方が良いと思う。たまには兄弟で飯でも食べろよ」

 神爺は弟を倒すつもりらしいけど、もっと穏便な方法がある。家族とイチモツの危機だ。
 千葉の言う通り、理由を話せば協力してくれるに決まっている。

『確かに都合は良い。スサノオは厄祓いの能力を持っている。お前の封印を解けるかもしれない』
「よし、行こう! 千葉さん、居場所を教えてください!」

 チンチンを治療できるなら行くしかない。
 千葉に満面の笑みを向けて、スサノオの居場所を聞いた。

「神村さんは本当に最低ですね。まあ、知っているのでいいです。『領域』と呼ばれる凄腕の傭兵がいるんですよ。何でも百発百中のスナイパーで、射程圏内に入った瞬間に死亡するそうです」
「それがスサノオなんだな?」

 流石は銃社会だ。俺みたいに刀で戦う方が珍しいみたいだ。

「まさか。賽銭箱持っているなら、このぐらいは出来ますよ。この領域が日本人だと噂で聞いただけです」
「……適当な事言って、逃げるつもりじゃないだろうな?」

 ヘラヘラと喋っているけど、作り話の匂いがしてきた。ここまで期待させておいて、冗談では済まされない。
 偽情報だったら、容赦なく賽銭箱を強奪する。むしろ、今すぐに賽銭箱を人質に渡してもらう。

「信用させてないですね。アフリカで弟さんの気配は感じましたか?」
「アフリカにスサノオがいるのか?」

 まさか感動の再会を計画していたとは思わなかった。

「傭兵ですから、紛争地域にいると思ったんですよ。北アフリカかもしれないですね」
「かもかよ。結局土地神探しのついでにやるしかないのか」

 希望が見えたと思ったのに、振り出しに戻された気分だ。
 C4爆弾を大量に作るか、ミサイルが撃てる戦闘機を作りたい。

「神爺、弟の近くに行けば分かるのか?」
『近くとは言えないが、三キロ範囲なら分かるはずだ』
「三キロか……分かった。ヘリコプターでアフリカ観光するしかないな」

 三キロは広すぎる。車で地道に探すつもりはない。
 戦闘機を作るついでに、ヘリコプターも作ろう。
 藤原さんとの空中デートや、幼女達との空中散歩に使えそうだ。
 飛べない神村はただの神村だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

憧れの剣士とセフレになったけど俺は本気で恋してます!

藤間背骨
BL
若い傭兵・クエルチアは、凄腕の傭兵・ディヒトバイと戦って負け、その強さに憧れた。 クエルチアは戦場から姿を消したディヒトバイを探し続け、数年後に見つけた彼は闘技場の剣闘士になっていた。 初めてディヒトバイの素顔を見たクエルチアは一目惚れし、彼と戦うために剣闘士になる。 そして、勢いで体を重ねてしまう。 それ以来戦いのあとはディヒトバイと寝ることになったが、自分の気持ちを伝えるのが怖くて体だけの関係を続けていた。 このままでいいのかと悩むクエルチアは護衛の依頼を持ちかけられる。これを機にクエルチアは勇気を出してディヒトバイと想いを伝えようとするが――。 ※2人の関係ではありませんが、近親相姦描写が含まれるため苦手な方はご注意ください。 ※年下わんこ攻め×人生に疲れたおじさん受け ※毎日更新・午後8時投稿・全32話

異世界転生したノンケの書生は、華族の貴公子に不埒な関係を望まれているが回避したい。

アナマチア
BL
ある日突然、交通事故で両親を亡くした、美大生の山田樹。 葬儀を終えて日常生活を送り始めるが、うつ状態になっていた樹は、葬儀後初めての登校時に接触事故で線路に落下する。 頭を強く打ち付けて視界が暗転し、目覚めると、見知らぬ部屋の布団の中に横たわっていた。 樹が夢でも見ている心地でいると、女中の花が現れて、樹のことを「早乙女さん」と呼んだ。 頭がぼうっとして何も考えられず、強い睡魔に襲われ、眠りに落ちようとしていた樹の前に、国防色の軍服を身にまとった偉丈夫――花ヶ前梗一郎(はながさきこういちろう)が現れた。 樹の名を切なそうに呼びながら近づいてきた梗一郎。驚いた樹は抵抗することもできず、梗一郎に抱き締められる。すると突然、想像を絶する頭痛に襲われた樹は、絶叫したのちに意識を失ってしまう。 そして気がつけば、重力が存在しない、真っ白な空間に浮かんでいた。そこで樹は、自分によく似た容姿の少年に出会う。 少年の正体は、早乙女樹の肉体を借りた、死を司る神――タナトスだった。そしてもう一柱、タナトスよりも小柄な少女、生を司る神――ビオスが現れる。 ビオスが言うには、樹は『異世界転生』をしたのだという。そして転生後の肉体の記憶は、特定の条件下で徐々に蘇ると告げられ、樹は再び異世界で目を覚ます。 樹が目覚めると、梗一郎が涙を流していた。 「樹が生きていて、本当によかった……!」 そう言って、梗一郎が樹の額に口付けた瞬間、樹の脳内に早乙女樹の幼少期と思われる映像が流れ、眠るように意識を失う。 『特定の条件下』とは、梗一郎との愛ある接触のことだった。 無事にひとつ目の記憶を取り戻した樹は、公家華族・花ヶ前伯爵家お抱えの書生(画家見習い)・『早乙女樹』を演じながら、花ヶ前家で生活を送る。 スペイン風邪による後遺症で『記憶喪失』になってしまった樹を心配して見舞いに来たのは、楚々とした容貌の美少女――梗一郎の妹である、花ヶ前椿子だった。 樹は驚愕に目を見開いた。 目の前に立つ少女は、樹が描いた人物画。 『大正乙女』そのままの姿形だったのである。 なんと樹は、自分が描いた油画の世界に異世界転生していたのだ。 梗一郎と恋仲であった早乙女樹として転生してしまった樹(ノンケ)は、男と恋愛なんて出来るはずがないと、記憶喪失を理由に梗一郎と距離を置くが……。

【R18】転生聖女は四人の賢者に熱い魔力を注がれる【完結】

阿佐夜つ希
恋愛
※加筆修正しました (2024.6.18) 『貴女には、これから我々四人の賢者とセックスしていただきます』――。  三十路のフリーター・篠永雛莉(しのながひなり)は自宅で酒を呷って倒れた直後、真っ裸の美女の姿でイケメン四人に囲まれていた。  雛莉を聖女と呼ぶ男たちいわく、世界を救うためには聖女の体に魔力を注がなければならないらしい。その方法が【儀式】と名を冠せられたセックスなのだという。  今まさに魔獸の被害に苦しむ人々を救うため――。人命が懸かっているなら四の五の言っていられない。雛莉が四人の賢者との【儀式】を了承する一方で、賢者の一部は聖女を抱くことに抵抗を抱いている様子で――?  ◇◇◆◇◇ イケメン四人に溺愛される異世界逆ハーレムです。 タイプの違う四人に愛される様を、どうぞお楽しみください。(毎日更新) ※性描写がある話にはサブタイトルに【☆】を、残酷な表現がある話には【■】を付けてあります。 それぞれの該当話の冒頭にも注意書きをさせて頂いております。 ※ムーンライトノベルズ、Nolaノベルにも投稿しています。

堕ちた英雄

風祭おまる
BL
盾の英雄と呼ばれるオルガ・ローレンスタは、好敵手との戦いに敗れ捕虜となる。 武人としての死を望むオルガだが、待っていたのは真逆の性奴隷としての生だった。 若く美しい皇帝に夜毎嬲られ、オルガは快楽に堕されてゆく。 第一部 ※本編は一切愛はなく救いもない、ただおっさんが快楽堕ちするだけの話です ※本編は下衆遅漏美青年×堅物おっさんです ※下品です ※微妙にスカ的表現(ただし、後始末、準備)を含みます ※4話目は豪快おっさん×堅物おっさんで寝取られです。ご注意下さい 第二部 ※カップリングが変わり、第一部で攻めだった人物が受けとなります ※要所要所で、ショタ×爺表現を含みます ※一部死ネタを含みます ※第一部以上に下品です

※ハードプレイ編「慎也は友秀さんの可愛いペット」※短編詰め合わせ

恭谷 澪吏(きょうや・みおり)
BL
攻め→高梨友秀(たかなし・ともひで)。180センチ。鍛え上げられたボディの商業デザイナー。格闘技をたしなむ。 受け→代田慎也(よだ・しんや)。雑誌の編集者。友秀によく仕事を依頼する。 愛情とも友情とも違う、「主従関係」。 ハードプレイ、野外プレイ、女装プレイでエスエムをしています。痛い熱い系注意。

アリスと女王

ちな
ファンタジー
迷い込んだ謎の森。何故かその森では“ アリス”と呼ばれ、“蜜”を求める動物たちの餌食に! 謎の青年に導かれながら“アリス”は森の秘密を知る物語── クリ責め中心のファンタジーえろ小説!ちっちゃなクリを吊ったり舐めたり叩いたりして、発展途上の“ アリス“をゆっくりたっぷり調教しちゃいます♡通常では有り得ない責め苦に喘ぐかわいいアリスを存分に堪能してください♡ ☆その他タグ:ロリ/クリ責め/股縄/鬼畜/凌辱/アナル/浣腸/三角木馬/拘束/スパンキング/羞恥/異種姦/折檻/快楽拷問/強制絶頂/コブ渡り/クンニ/☆ ※完結しました!

身代わり聖女は悪魔に魅入られて

唯月カイト
ファンタジー
21話までのあらすじ  小説『孤独な聖女と皇子様』の異世界に転生した「サラ」は、自分が本物の『聖女』である事を知らずに、我儘に育てられた侯爵令嬢「オリビア」が聖女だと信じて、オリビアに献身的に尽くす日々を送っていた。  ある事件のせいで酷い罰を受け地下牢に投獄されたサラは、侯爵家から離れることを決意して釈放されるのを待っていたが、無理矢理脱獄させようとしたオリビアに抵抗して誤って階段から一緒に落ちてしまい、オリビアだけが目覚めない体になってしまう。  オリビアから『聖女の力』を分け与えられたせいでその力が使えるようになってしまったと思い込むサラに対して、野心家のオリビアの父マティアス侯爵は、サラを娘の身代わりとして強制的に王都へ連れていく事を決断する。  冷酷な侯爵への恐怖感と、オリビアを救えなかった事への罪悪感から逃れられないサラは、オリビアの腹違いの兄キースの監視下で過ごしていく事になるが、聖女サラの運命は誰も気づかないうちにすでに悪魔の手の内にあった―――― ※本作品は「アルファポリス」サイトでも掲載しております。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/904000448/141487313

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

処理中です...