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第九話

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 人生にもゲームにも目標が必要だ。
 現実世界の目標がとにかく生きる!なら、ゲームの目標はとにかく楽しむ!だ。

 さて、ロードして、出発直前の村のセーブクリスタルに戻って来た。
 ここから地道に森のモンスターを倒し続けてレベルを9、10と上げたいが、それは面倒だ。
 ここは裏技を使ってみたいと思う。

 村娘の獲得経験値とお金は分かったので、次は村少年、村少女を知りたい。
 8歳程度の子供を倒すとか人間のする事じゃないが、ここはゲームだ。
 倒せるなら倒すに決まっている。

「うわーん!」

 俺って鬼畜かもしれない。村少年を斬殺した。
 獲得経験値は75、獲得ゴールドは100だった。

「いやーん!」

 俺って変態かもしれない。村少女を斬殺した。ついでにエッチもした。
 獲得経験値は75、獲得ゴールドは100だ。
 村少年と同じだが、村少女は気持ち良かった。

「なるほど、なるほど」

 調べ終わったので、一旦ロードして無かった事にした。
 そして、ゲームには法則がある。村少年と村少女が同じ獲得経験値なら、村息子の獲得経験値は村娘と同じだ。
 だとしたら、あと調べる必要があるのは村オヤジと村爺さんの二人だけだ。
 経験値とお金がちょうど良いのがいたら、そいつでレベル上げ開始だ。

「あっ! 待てよ……」

 名案を思い付いた。閉店後の道具屋に押し入って、店主オヤジを倒す。
 そしたら、蘇生薬をタダで使い放題、オヤジを殺し放題できるかもしれない。
 それが可能なら、翌日の開店時間まで誰にも邪魔されずにレベル上げし放題。
 さらに寝床も風呂も手に入る。まさに完璧な計画レベル上げ犯罪だ。

 そうと決まったら、道具屋の開店時間まで森でレベル上げだ。
 レベル9までは村娘一人分の経験値だから、すぐになれる。
 それが終わったら、村の中を彷徨く村オヤジと村爺さんを倒そう。

 道具屋オヤジを倒して、無限店主オヤジ殺しが可能になっても、店主オヤジの獲得経験値が低いなら意味がない。
 レベル上げするなら一番経験値が高いのを倒すのが良いと決まっている。

「そろそろ行くか」

 道具屋の開店時間は9:00だ。レベルは11まで上げてみた。
 9:00過ぎたので、セーブしてから村爺さん倒しだ。

「ほぎゃあああ!」

 獲得経験値は200、獲得ゴールドは800だった。やっぱり年寄りは金を持っている。
 経験値も良いし、これはオヤジ狩り変更で、ジジイ狩りかもしれない。

 でも、キチンと調べないと駄目だ。ロードして道具屋に向かった。
 店主オヤジの経験値とゴールドが知りたい。

「いらっしゃい」

 警戒するだけ時間の無駄だった。辺境の田舎村に客なんていない。
 店内には俺と店主オヤジだけだ。素早く倒して獲得経験値を調べよう。

「すまん、欲しいものがあるんだが」

 俺は一流の悪だ、俺は一流の悪だ、と心で唱えながらカウンターの店主に声をかけた。

「はい、何でしょうか?」
「あんたの命だ」
「はい?」

 鞘からロングソードを抜き放つと、キョトン顔の店主の頭に振り下ろした。

「フンッ‼︎」
「ぐぅっ!」

 平気で人を斬れるなんて、俺ってやっぱり悪だ。それも超一流の悪だ。
 振り下ろしたロングソードを素早く引いて突きの構えを取った。
 雷突き!と店主の喉に切っ先をブチ込んだ。

「ぐべぇっ!」

 店主が喉を押さえて後退した。効いてる効いてる、だ。
 このまま斬殺させてもらう。命だけじゃなく、金・道具・家もいただく。

「もぉー、さっきから何なの? 騒がしいわ……」

 あれ?もう一人いたんだ。

「きゃああああ‼︎」

 カウンターの横にある扉が開いて、村オバサンが出てきた。
 40歳の小太りオバサンなので、生かしておく必要はない。だが、まずは最優先目標だ。
 カウンターを乗り越えると、オバサンを無視して店主を斬りまくった。

「いやぁー‼︎ やめてぇ、やめてぇ、誰かぁー‼︎ 助けて、強盗よ‼︎」

 悪いな、オバサン。多少は心は痛むが、アンタら人間じゃないんだよ。
 よく出来たフィギュア人形を壊しているだけなんだよ。
 殺してんじゃなくて、壊してんだよ。

「おばさん、どうしたんだ!」

 初めての失敗だ。道具屋の扉が勢いよく開いて、赤い髪の男が慌てて入ってきた。
 主人公の男で、村では猟師をやっていて、左手に盾、右手に剣を装備した俺と同じ戦闘スタイルだ。
 ヒロインと同じで、貴重な戦闘経験を持つ数少ないキャラクターの一人だ。

「あああ、うちの人が強盗に……」
「この野朗ッ!」

 そんな主人公が激怒して、腰から剣を抜き放って、カウンターを飛び越えて剣を振り下ろしてきた。
 こっちは第一目標は完了している。いつでも殺してくれていい。
 店主オヤジの獲得経験値は200、獲得ゴールドは600だった。
 村爺さんが一番良い獲物だが、商品が無限に使えるなら店主が一番だ。
 一回死んで、今度は目撃者が助けを呼ぶ前に店主もオバサンも始末する。

 でも、その前に今の俺がどのぐらい主人公に通用するか腕試しだ。
 殺されるつもりはあるが、殺すつもりもめちゃくちゃある。

 フンッ!と盾で剣を受け止めると、こっちもロングソードで斬りつけた。
 それを盾で弾き飛ばされると、そのまま体当たりされた。
 力は主人公の方が上、技術も上、おそらくレベルも上。
 勝てる要素が見つからない。

「おばさん、コイツは俺がどうにかするから、おじさんを頼む!」
「あ、ああ、頼んだよ、ミカエル!」
「任せろ! 絶対許さねえからな!」

 ミカエル=ロングウェル——普段はのんびり屋のやる気のない主人公だが、仲間のピンチには熱くなるタイプだ。
 しかも、ゲーム終盤には世界に数人しか存在しない特殊能力持ちに覚醒する。
 だが、ここは序盤中の序盤。今はただの村の猟師。
 互角は無理でも、一撃ぐらいは喰らわせてやる。

「五月雨突き!」
「あぐぐぐっ……!」

 新撰組の沖田総司以上だ。驚異の高速突きだ。3段突き以上、15段突き以下だ。
 こんなの防げるかぁー!だ。ドスドス手足に突き刺さる。

「猛虎嵐牙!」
「はぐぅっ!」

 駄目だ駄目だ駄目だ、絶対に勝てる気がしない。
 俺、サンドバッグだ。下からの強烈な振り上げに両手が切断、さらに頭に強烈な一撃がブチ込まれた。
 両手から血ブシュー、頭クラクラ血ドバドバだ。
 俺が村人切っても血が出ないのに、俺だけ再現度が異常に高い。
 これ、改良点ねえ。
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