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第2章・異世界調査編

第15話・街に到着

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「おい、爺さん。本当にあんな約束して大丈夫なのかよ?治療薬を2個も用意しないと俺達全員が街から追い出されるんだぞ。」(とくに変身出来ない奴は確実だぞ。)

「分かんねぇよ。いきおいでつい言っちまったから仕方ねぇだろう。まあ、何とかなるだろうよ。それよりも弦音ちゃん、根暗ババアの傷の具合はどうなってんだ?」

 亜紀斗と鉄男の2人が治療薬の件でもめています。鉄男が勢いで見栄を張ってしまいましたが、あとあと取り返しのつかない事になるかもしれません。でも今はハナの心配をするべきです。そろそろ治療薬を飲んで1時間経過します。

「何とか大丈夫みたいです。血も止まっていますし、傷口も塞がっています。凄い効き目です。この治療薬を日本に持って帰る事が出来れば、私達大金持ちですよ。」

「フフン♪当たり前ルミ。この世界はお前達の世界の文明レベルを大きく超えているルミ。治って当然なんだルミ。」(フムフム、人間にも治療薬は効くようルミ。いい実験になったルミ。)

 ハナの側でずっと傷口の治り具合を観察していた弦音がもう大丈夫だと確信しています。看護学校を卒業した彼女が言うのなら間違いないでしょう。実務経験はほとんどなく、経験も浅いですが多分大丈夫です。国家資格は持っています。

「それよりも何だよ、ココは⁇街の端は端でも壁の外側の端かよ‼︎」(イジメかよ。)

 亜紀斗はビックリしていますが、用意されるだけマシです。これはイジメでも何でもありません。街の外壁という日本人と亜人達の心の壁が実体化した物なのです!ちょっと頑丈ですが根気よく叩けば壁は壊せるはずです。頑張りましょう。

「まぁ、何とかなるだろうさ。それよりもこれから何をするべきかしっかりと皆んなで話し合おうじゃないか。」(建築様式は中世のヨーロッパに現代の生活様式を組み合わせた感じだったな。)

 7人は街の亜人達にジロジロ見られながら、赤レンガの道を通って自分達の為に用意された街の端の居住スペースに到着しました。どう見ても、街の内側の端ではなく、外側の端です。こんな所で暮らしていたら獣グルミンや虫グルミンに襲われてしまいます。段ボールの家ぐらい欲しいところです。

「とりあえず大工職人と鍛治職人と調合職人がいるルミ。治療薬は草原に生えてる癒し草と街の中の井戸水を調合すれば簡単に作れるルミ。苦労するのは癒し草を草原から取って来る事だけルミ。」

「ほら見ろ、何とかなりそうじゃないか♪まずは戦える4人で癒し草を取って来ればいいんだろう?楽勝だぜ!」(今から取って来るか!)

「いやいや、安全に武器とか防具とか用意してから行こうぜ。俺達、最弱の羊にもボコボコにやられそうだったんだぜ。さすがに今のままは危険だって。」(それに俺は生身だし。)

 鉄男はやる気に満ちていますが、やっぱり亜紀斗は反対します。安全第一です!ここから先はルミルミは手助けしません。まずは7人の力だけで何とかしないと街の亜人達にマスターズとして認められる事はありません。その前に日本人というだけで差別されています。

「武器なら鍛治屋の俺の出番だな。ルミルミ、俺は何をしたらいいんだ?武器か?防具か?何から始めればいいんだ?」(結構RPGゲームはやってるぜ♪)

「ハァ~、鍛治屋じゃないルミ。鍛治職人ルミ。普通は銅綿とか鉄綿とかを集めてから、それを熱して延べ棒に加工するんだルミ。加工した延べ棒から色々な武器や防具を製造するんだルミ。まずは銅のハンマーを貸すから銅綿を集めて延べ棒に加工するルミ。」

「何だよ、道具を貸してくれるのかよ?そんな事したら街の亜人達に何か言われるんじゃねぇのか?」(もしかして俺に気があるのか?)

「問題ないルミ。この程度は街の亜人同士でも普通にやっている事ルミ。異世界人だから駄目だと言う方がおかしいんだルミ。他にも初心者の釣り竿と銅の斧を渡しておくんだルミ。僕の名前を言えば道具屋で全部受け取れるルミ。これで僕の役目は終わりなんだルミ。あとは頑張るんだルミよぉ~♪」『スタスタ』

 ルミルミは当たり前のように街の中に帰って行こうとしています。貰ったのはハンマー、斧、釣り竿だけです。これでどうやって生きていけばいいんですか!教えてくださいよ!

「ちょっと、ちょっと!ルミルミさん、待ってください!まだ聞きたい事が一杯あります。魚は何処で釣れるんですか?それに釣った魚グルミンはどうやって食べればいいんでしょうか?もっと色々と教えてください。」

「君達あっちの世界で何やってたルミ?魚は街の中を流れる川にいるルミ。木も鉱石も街の中にあるルミ。斧で木を叩けば木材綿が取れるし、ハンマーで鉱石を叩けば銅綿が取れるルミ。取り尽くしても、しばらく時間が経てばまた取れるようになるから頑張って集めるルミ。僕は翼の治療で忙しいんだルミ。」(やれやれ、これだから温室育ちは駄目ルミ。そんなんじゃ生き残れないルミ。)

「あっ!すみません。治るといいですね。」(そうよね。普通にしているけど、多分とっても痛いはずよね。だって人間だったら片腕が取れかかっているような状態なんだから。)

「フゥ~~、安心するルミ。しばらくしたら様子を見に来るルミよ。それまでには魚の1匹でも釣っているんだルミ。」

 確かに異世界でも、斧は木を切るのに使います。魚を釣りたいなら海か、川に行けば釣れるはずです。こっちの世界でも、元の世界でも変わらない事は沢山あるようです。

 ❇︎

「とりあえず俺とハチは木材綿と銅綿を集める事にしよう。おそらくは軽いだろうから1人でも持てるだろう。だが、それでもこの街では単独行動はやめた方がいいな。念の為に2人組になって行動するとしよう。」

「俺は弦音ちゃんと行動しようかな?弦音ちゃんもいいよね?」(きっと亜人達が怖くて、俺に抱きついて離れないぞぉ~♪)

 源造は危険な目に遭わないように2人組になるように提案しました。でも、ハチは弦音を誘ってデートをしたいようです。可哀想にハチのイチモツはこの世にもう存在していません。自慢の腰振りも役には立ちません。

「えっーと、ごめんなさい。まずは小夜さん、ハナさん、亜紀斗さんをマスターズにする方がいいと思うんです。ここに残って鉄男さんも協力してくれませんか?」

「そうだな。確かに戦える奴は少しでも多い方がいいしな。でも俺が変身出来た理由もよく分からねぇんだよ。あの時は羊をぶっ倒してやる!って気持ちしかなかったからな。ハチの言う通り気持ちを熱くする必要があるのかもな。」

 熱い気持ちが必要ならば、亜紀斗、ハナ、小夜の3人が変身出来ないのもうなずけます。だとしたら、気合を入れる事で熱くなれるかもしれません。ハチが早速頭にタオルを巻いて、アントニオ猪木の闘魂注入を始めようとしています。

 ◆次回に続く◆



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