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第1章 告白編

第5話 (明日香パート)

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(下手くそなドリブルだなぁ~)

 薫の不器用なドリブルを見ながら、そう思ってしまいます。体育館の床とは違い、公園は固められた砂地です。バスケットボールの弾み方に違和感を感じてしまいました。

 先に10点先取した方が勝ちというシンプルなルールでしたが、私が普通にやってしまうと簡単に勝ててしまいそうです。折角、2人っきりになれたのに直ぐに終わらせてしまうのは、少し勿体無いように思ってしまいました。出来れば少しでも長く一緒にいたいと、私はモヤモヤした気持ちでまったくバスケットに集中出来ないでいました。

 ガァーン‼︎

「くっ…あと少しだったのに……おい、早く始めろよ」

「うん、分かってる」

 薫の打ったシュートはゴールリングに当たって、私の方に落ちてきました。ボールを拾ったので次は私のターンになります。私がシュートを打とうと、ドリブルでゴールに近づくと、薫が必死に止めようと目の前まで近づいてきました。ほんの少しでも手を前に伸ばせば、薫の身体に触れる事が出来そうです。

(結構、体付きが大人っぽ……って//// なに変な事考えているんだろう! 今は集中しないと!)

 中学2年生ぐらいまではほとんど体格差はなかったのに、たったの1年で身長は追い越されてしまいました。身体も一回り大きくなったように見えます。今まであまり意識した事がなかった従姉弟を、改めて男の子として意識してしまいました。

 ❇︎

「あの時は皆んなの前で突然変な事言うからビックリしたんだから。学校ではいつも他人のフリしているのにどうしたの?」

 薫のお金で自動販売機の温かいココアを飲みながら、ハローキティ事件の事を聞いてみました。あの後、薫は空気が読めない男子として、クラスでの地位を確立してしまいました。

「なんか嫌だったんだよ。ありがとうって言いながら、迷惑かけてごめんなさいって、誤っているように見えたんだよ」

「私、やっぱり皆んなに迷惑かけてたのかな?」

「……ちょっとだけだろ。気にする程の事じゃないさぁ。それにもうすぐ卒業式だから今更気にしてもしょうがないだろ。そんな無駄な事を考えずに高校生活を楽しめよ。行くんだろう?」

「うん、お父さんが大学までは行くようにって言ってたからね。あっはは……薫とは小、中と一緒だったのに、高校は別々になっちゃったね。何だか少し寂しくなるね」

「毎年お盆とか、正月に会えるだろう。学校でもロクに話さなかったし、ほとんど今までと一緒だよ」

「そうかもしれないね……」

 薫の言う通り、今みたいに2人っきりになって話した事はほとんどありません。いつもお母さんか伯母さんが近くにいたので、子供同士で馬鹿みたいな話は出来ませんでした。

「あっ! だったら、スマホ貸してよ。私の連絡先まだ登録してないよね。今日みたいにまた話そうよ。高校生になったら色々と相談したい事も増えると思うよ。そんな時に何でも聞けるお姉さんがいると心強いでしょう」

「はぁ~~。今まで明日香をお姉ちゃんと思った事はないよ。あと数週間でまた同い年だろ」

「そうだけど……年上なのは事実なんだから仕方ないでしょう。さあ、携帯貸してよ。困った事があればいつでも連絡していいから」

「意外と強引なんだな。まったく……気が向いたら連絡するよ。気が向いたら…」

「ふっふ…気が向いたらそうしてね」

 私は夏生まれ、薫は冬生まれです。私の方が5ヶ月だけ年上のお姉ちゃんになります。薫から無理矢理にスマホを奪い取ると私の連絡先を登録しました。ついでに薫の連絡先を私の方にもしっかりと登録しました。多分、薫からは連絡はしないと思いますが、私が連絡すればいいだけです。

 ❇︎

「あれ? 珍しい……薫の方から連絡が来るなんて」

 水泳部の練習が終わり、更衣室で着替えて家に帰ろうとしていたら、薫からメールが届いていました。これから会って話がしたいそうです。週に何度かメールで近況報告をやり取りはしていましたが、直接会って話すのは高校入学式以来になると思います。

「何だろう? メールで聞けない事かな? まあ、時間もあるからいいかな」

 あまり待たせたら悪いので急いで薫にOKの返信を送りました。高校の制服で2人きりで会うのは少しドキドキしてしまいます。

(休日に2人で会うなんて、何だかデートしているみたい)

 私は身嗜みを念入りに確認すると、待ち合わせの場所に急ぐ事にしました。折角、シャワーを浴びて汗臭くないのに台無しになりそうです。

 
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