1 / 34
第1章 告白編
第1話 (薫パート)
しおりを挟む
私は思う。誰にでも初恋は訪れる。けれども、一生涯に一度、1人だけという特別なものではないと思う。
初恋は何度でも訪れる。一生涯に何度でも訪れる。1人の異性に対して1回だけ初恋に落ちるのだ。初恋とは初めてその人を好きになった瞬間でしかない。
私はそう思いたい……。
❇︎
私の覚えている最初の初恋は小学4年生の時だった。同じ学年の別のクラスの女生徒で、キラキラと彼女だけが沢山いる同級生の中で輝いて見えていたのだ。
恋に落ちたその日から私の日常の1つに彼女の存在が大きく関わるようになっていった。恋をすると女性は綺麗になると聞いた事がある。それと同じで私も少しずつだが子供ながらに綺麗になる努力をしようとした。
彼女の好きな物、得意な事は自分も好きになりたいと思ったし、得意になろうと努力をするようになった。
彼女はピアノが弾けて、バスケット部に入っていた。成績もそれなりに優秀で私にとっては雲の上の存在だった。決して手の届かない憧れの存在……私に出来た事は彼女を意識する事だけだった。
お昼休みになると彼女は友達と一緒によくピアノを弾いていた。題名も分からないに10分も20分も彼女の演奏を喜んで聴き続けた。子供の私はそれだけで幸福を感じる事が出来たのだ。
だが、月日は流れて私の中に彼女以外の特別な女性が少しずつ増えていく。雲の上の存在の彼女よりも、一緒に居て、見て、触れて、楽しく遊べる近しい存在に私の心は傾いていった。
ただの女友達から特別な女友達へと変化するのは、ちょっとした出来事だけで十分だった。
❇︎
高校生になった私は初恋の彼女とは別々の学校に進む事になった。男友達2人と女友達3人で今日は話題の映画を見て、ファーストフード店で食事をして解散する事になった。その帰り際に明日香に呼び止められた。
「……ちょっといいかな?」
「いいけど…なんか言いにくそうだぞ。悪いニュースはあんまり聞きたくないんだけど」
「まだ、それは分かんない。薫君次第かな…」
「ふぅ~~ん? まあ、どっちでもいいけど……言いたい事があるなら言った方がいいぞ。スッキリするから。ほらほら、早く言ってみぃ」
「ねぇ、私の事どう思う? 可愛いと思う?」
「えっ~~と……本気で答えた方がいい?」
コクコク。
明日香は軽く頷いて返事をした。少し回答に困る質問だった。他の4人に助けを求めようにも、既にいなかった。いつもならもっとダラダラするのに今日はさっさと帰っていった。
明日香とは高校で仲良くなった女友達である。私の男友達の女友達の女友達として知り合ったのだ。知り合ってから約3ヶ月が過ぎて、お互いの事がある程度分かるようになってきた。
(可愛いとは思う。身長は平均的だし、太っている訳でもない。性格も大人しいけど暗い訳じゃない。普通に高校一年生の女子としては可愛い方だと思う。それに名前も……)
「可愛いと思うよ。個人的な意見かもしれないけど、俺は可愛いと思うよ」
「そう…可愛いんだ//// ありがとう」
私の返事を聞いて、明日香は満面の笑みになった。どうやら彼女が満足する答えだったようだ。きっと好きな男でも出来たのだろう。
だとしたら、瑛太か翔のどちらかかもしれない。男友達に春が来た事を密かに喜んで、ちょっとだけ嫉妬する事にしよう。
「もしかして、俺に聞きたい事は終わった? はっは…だとしたら帰ろうか」
「……まだ、聞きたい事があるの……私と付き合ってください」
「えっ……どういう意味の…」
彼女の言葉の意味が分からなくてパニックになる。これから遊びに付き合ってくださいなのか、恋人として付き合ってくださいなのか、どっちなのか分からなかった。正直な気持ち期待と混乱が頭の中でグチャグチャになってしまった。
「薫君の事が好きになりました。私と付き合ってください!」
「えっ……と、俺なの?」
コクコク。
馬鹿げた質問だった。私に好きだと言っているのに、私以外の誰がいるのだろう。彼女は真っ赤な顔でさっきと同じように軽く頷いた。その仕草を可愛いと思い、私も顔を熱くさせた。初めて女の子に告白された事に心臓はドキドキと激しく動揺していた。
「えっ……と、その………」
どう返事をすればいいのか正直分からない。傷付けないように断る方法も、恋人同士がやる事もまったく分からない。何も言い出せずに私はただ慌てる事しか出来ていなかった。
「返事は今すぐじゃなくていいから。ゆっくり考えて。いきなり、こんな事言われてもやっぱり困るよね。 ………ごめんね。私もう帰るからまた明日学校でね」
「うん…また明日」
(季節は夏なのに春が来てしまった)
早足で帰って行く彼女の後ろ姿を見ながら、フッとくだらない事を思ってしまった。こんな私を好きになる物好きな女の子が現れるなんて夢にも思ってなかった。
初恋は何度でも訪れる。一生涯に何度でも訪れる。1人の異性に対して1回だけ初恋に落ちるのだ。初恋とは初めてその人を好きになった瞬間でしかない。
私はそう思いたい……。
❇︎
私の覚えている最初の初恋は小学4年生の時だった。同じ学年の別のクラスの女生徒で、キラキラと彼女だけが沢山いる同級生の中で輝いて見えていたのだ。
恋に落ちたその日から私の日常の1つに彼女の存在が大きく関わるようになっていった。恋をすると女性は綺麗になると聞いた事がある。それと同じで私も少しずつだが子供ながらに綺麗になる努力をしようとした。
彼女の好きな物、得意な事は自分も好きになりたいと思ったし、得意になろうと努力をするようになった。
彼女はピアノが弾けて、バスケット部に入っていた。成績もそれなりに優秀で私にとっては雲の上の存在だった。決して手の届かない憧れの存在……私に出来た事は彼女を意識する事だけだった。
お昼休みになると彼女は友達と一緒によくピアノを弾いていた。題名も分からないに10分も20分も彼女の演奏を喜んで聴き続けた。子供の私はそれだけで幸福を感じる事が出来たのだ。
だが、月日は流れて私の中に彼女以外の特別な女性が少しずつ増えていく。雲の上の存在の彼女よりも、一緒に居て、見て、触れて、楽しく遊べる近しい存在に私の心は傾いていった。
ただの女友達から特別な女友達へと変化するのは、ちょっとした出来事だけで十分だった。
❇︎
高校生になった私は初恋の彼女とは別々の学校に進む事になった。男友達2人と女友達3人で今日は話題の映画を見て、ファーストフード店で食事をして解散する事になった。その帰り際に明日香に呼び止められた。
「……ちょっといいかな?」
「いいけど…なんか言いにくそうだぞ。悪いニュースはあんまり聞きたくないんだけど」
「まだ、それは分かんない。薫君次第かな…」
「ふぅ~~ん? まあ、どっちでもいいけど……言いたい事があるなら言った方がいいぞ。スッキリするから。ほらほら、早く言ってみぃ」
「ねぇ、私の事どう思う? 可愛いと思う?」
「えっ~~と……本気で答えた方がいい?」
コクコク。
明日香は軽く頷いて返事をした。少し回答に困る質問だった。他の4人に助けを求めようにも、既にいなかった。いつもならもっとダラダラするのに今日はさっさと帰っていった。
明日香とは高校で仲良くなった女友達である。私の男友達の女友達の女友達として知り合ったのだ。知り合ってから約3ヶ月が過ぎて、お互いの事がある程度分かるようになってきた。
(可愛いとは思う。身長は平均的だし、太っている訳でもない。性格も大人しいけど暗い訳じゃない。普通に高校一年生の女子としては可愛い方だと思う。それに名前も……)
「可愛いと思うよ。個人的な意見かもしれないけど、俺は可愛いと思うよ」
「そう…可愛いんだ//// ありがとう」
私の返事を聞いて、明日香は満面の笑みになった。どうやら彼女が満足する答えだったようだ。きっと好きな男でも出来たのだろう。
だとしたら、瑛太か翔のどちらかかもしれない。男友達に春が来た事を密かに喜んで、ちょっとだけ嫉妬する事にしよう。
「もしかして、俺に聞きたい事は終わった? はっは…だとしたら帰ろうか」
「……まだ、聞きたい事があるの……私と付き合ってください」
「えっ……どういう意味の…」
彼女の言葉の意味が分からなくてパニックになる。これから遊びに付き合ってくださいなのか、恋人として付き合ってくださいなのか、どっちなのか分からなかった。正直な気持ち期待と混乱が頭の中でグチャグチャになってしまった。
「薫君の事が好きになりました。私と付き合ってください!」
「えっ……と、俺なの?」
コクコク。
馬鹿げた質問だった。私に好きだと言っているのに、私以外の誰がいるのだろう。彼女は真っ赤な顔でさっきと同じように軽く頷いた。その仕草を可愛いと思い、私も顔を熱くさせた。初めて女の子に告白された事に心臓はドキドキと激しく動揺していた。
「えっ……と、その………」
どう返事をすればいいのか正直分からない。傷付けないように断る方法も、恋人同士がやる事もまったく分からない。何も言い出せずに私はただ慌てる事しか出来ていなかった。
「返事は今すぐじゃなくていいから。ゆっくり考えて。いきなり、こんな事言われてもやっぱり困るよね。 ………ごめんね。私もう帰るからまた明日学校でね」
「うん…また明日」
(季節は夏なのに春が来てしまった)
早足で帰って行く彼女の後ろ姿を見ながら、フッとくだらない事を思ってしまった。こんな私を好きになる物好きな女の子が現れるなんて夢にも思ってなかった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
寝る間が極楽、だが寝れない
Hk
恋愛
【第14回恋愛小説大賞にて奨励賞を頂きました】
修道女のステファニーは国王の庶子だが、幼い頃から修道院で暮らしていた。ある日還俗してオーウェン・バートン伯爵の元へ降嫁することを命じられる。
一方、オーウェンは自身が携わった鉱山採掘における崩落事故のトラウマで、不眠と閉所恐怖症に悩まされていた。強制的な結婚だったので、3年で離縁することをステファニーに約束するオーウェン。
しかし降嫁してきたステファニーはなんだか変わっていて、一緒に過ごすうちにトラウマが薄れだんだんステファニーのことが気になって仕方なくなってきて…
※本編完結。たまに番外編を更新しています
※他サイトにも投稿しています
※主人公の仕事については一部ふわふわ設定です
※表紙イラストはあまもり様(@amamori_stst)に描いて頂きました
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
【完結】ぽっちゃりなヒロインは爽やかなイケメンにひとめぼれされ溺愛される
まゆら
恋愛
食べる事と寝る事が大好きな社会人1年生の杉野ほたること、ほーちゃんが恋や仕事、ダイエットを通じて少しずつ成長していくお話。
恋愛ビギナーなほーちゃんにほっこりしたり、
ほーちゃんの姉あゆちゃんの中々進まない恋愛にじんわりしたり、
ふわもこで可愛いワンコのミルクにキュンしたり…
杉野家のみんなは今日もまったりしております。
素敵な表紙は、コニタンさんの作品です!
母になる、その途中で
ゆう
恋愛
『母になる、その途中で』
大学卒業を控えた21歳の如月あゆみは、かつての恩師・星宮すばると再会する。すばるがシングルファーザーで、二人の子ども(れん・りお)を育てていることを知ったあゆみは、家族としての役割に戸惑いながらも、次第に彼らとの絆を深めていく。しかし、子どもを愛せるのか、母親としての自分を受け入れられるのか、悩む日々が続く。
完璧な母親像に縛られることなく、ありのままの自分で家族と向き合うあゆみの成長と葛藤を描いた物語。家庭の温かさや絆、自己成長の大切さを通じて、家族の意味を見つけていく彼女の姿に共感すること間違いなしです。
不安と迷いを抱えながらも、自分を信じて前に進むあゆみの姿が描かれた、感動的で温かいストーリー。あなたもきっと、あゆみの成長に胸を打たれることでしょう。
【この物語の魅力】
成長する主人公が描く心温まる家族の物語
母親としての葛藤と自己矛盾を描いたリアルな感情
家族としての絆を深めながら進んでいく愛と挑戦
心温まるストーリーをぜひお楽しみください。
[完結済み]メイドの私から証拠隠滅できると、お思いですか?
BBやっこ
恋愛
ショートショート『お嬢様、いろんな方との恋の駆け引きを楽しんでいらっしゃいますが、証拠隠滅するのは私なんですね?』からの長編版。読まなくてもわかるように展開。
マライヤ・チェンバラスは、令嬢ながらメイドとして王城で働いていた。
実家の財政危機のため、決まっていた婚約を破棄。
相手への気持ちを封印して、日々仕事に励んでいた。その相手は次期宰相。家同士の婚約だったが、親愛の情を育んでいた。しかし。マライヤの実家が嵐の被害で復興に集中する以上。宰相家の負担になる。
若い2人の間を考え、家長同士の婚約破棄に。
…その後の2人は?
大賞向けに1ヶ月で完結まで書き上げるぞ!と気合を入れて。投稿中です。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる