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第四章:商人編
第142話 回復水
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「失敗しても水の指輪が手に入るだけか……完璧だな」
昨日、手に入れた魔術の指輪を使って、ある実験を開始した。
聖水を作るのに必要なのは、『綺麗な水+魔石+聖魔法、回復魔法、薬草など』だ。
この情報から導き出せる答えは、水属性と木属性を混ぜると『聖なる物』が作れるだ。
木属性のウッドエルフを一個、水属性のブルータートルの魔石を二個、交互に指輪に吸収させていく。
木属性は赤魔石、水属性は白魔石を使用する。魔石の力関係を考えて、比率は1:2にしてみた。
「おっ!」
しばらく地味な作業を続けていると、指輪が光り出した。
炎の指輪の時は、紫色の宝石が赤色に変わった。
水の指輪ならば、青色に変わるはずだ。
「白か……」
予想は外れたが、水の指輪にするつもりはない。
左手に持った白い宝石に変わった指輪を調べてみた。
【神器の指輪:使用者に回復魔法LV1を与える】
【強化素材:ウッドエルフの枝50本、ブルータートルの甲羅50枚】
「回復魔法か……LV8で聖魔法に変化するのか?」
また予想が外れたが、とりあえず実験は成功したと言っていい。
あとは実験体を用意するだけだが、実験体はもう店員として用意している。
本人に大人にしてやると言って、同意が取れたら、ダンジョンでゾンビにする。
あとは進化させて、習得した回復魔法を使わせまくれば、LV8の超回復魔法の完成だ。
「ターニャ、話がある」
早速、二階の作業場から客のいない店内に向かった。
新商品の炎竜黒剣を、限定一本千ギルで販売しているのに売れてない。
まだまだ宣伝が足りないようだ。
「何ですか、社長?」
「大人になれば給料を三倍払う。大人にならないか? 少し痛いだけだぞ」
「痛いのは嫌ですけど、お金は欲しいです。何をすればいいんですか?」
黒妖犬の黒革の服を着ているターニャは興味があるようだ。
午前十時から午後三時までの店番で、日給二千ギルを支払っている。
店員が足りないから、ターニャに子供の勧誘をさせているが全て断られている。
給料が安すぎるみたいだ。
「新薬の実験だ。命に危険はないが、一週間から二週間は家に帰れないかもしれないな」
「えぇー、何だか危なそうですね。やっぱりやめておきます」
「大丈夫だ。最短なら四時間で終わる」
「四時間ならいいですよ」
「じゃあ、契約成立だな。同意書を作るから、そこに署名してくれ」
「はい、分かりました」
「準備に三日かかるが、その間の給料も三倍にしてやる。しっかり働くんだぞ」
「やったぁー! お任せください!」
二週間の長時間労働で断られそうだったが、俺の仕事場はホワイトだから問題ない。
店員の事情もキチンと考えて、変更させてもらった。
パパッと俺に都合のいい同意書を手書きで作って、ターニャに渡して署名させた。
あとは三日以内に進化素材セット一人分を用意するだけだ。
♢
地下1階……
「本当に治療方法が見つかったんですか?」
「ああ、これを見ろ。回復の指輪だ。これを研究すれば、人間に戻れる可能性がある」
鉱山洞窟を進んでいると、小船の後ろに座るメルが聞いてきた。
左手に嵌めている回復の指輪を見せてやった。進化素材を見つけるには、メルの協力が必要だ。
それに騙しているわけではない。
超回復魔法ならば、ゾンビ魔人を人間に戻す事が出来るかもしれない。
その可能性が1%だとしても、希望があると信じる心が大切なんだ。
「その研究は何年かかるんですか? いい加減にAランクダンジョンに行きましょうよ」
「まだその時じゃない。それに調子に乗るな。Aランクダンジョンは、こことは比べものにならないぐらいに危険なんだ。舐めてかかると死ぬぞ」
俺の言う事を信用していないメルに、世界の広さと厳しさを教えてやる。
Bランク如きは誰でも制覇できる初心者ダンジョンだ。
ここで調子に乗って、天才だとか無敵だとか言っている奴は馬鹿だ。
「いいか。俺達みたいな田舎者はあっという間に殺されるんだ。重武装して行かないと死ぬんだからな」
「行った事もないくせに……もう分かりました。そこ左です!」
自分から聞いたくせに、話を途中で終わらせるなんて、我儘に育ったものだ。
こんな時は親の顔が見てみたいとか言うべきだが、親(仮)は俺だから我慢しよう。
まったく図体ばかりデカくなりやがって、中身は全然成長していないな。
子供への不満を思いながら、進化素材を宝箱から回収していく。
換金所を出禁になったから、自分で全部集めないといけなくなった。
階段の買取り冒険者も圧力をかけられているのか、誰も協力しないから最悪だ。
おそらく町の有力者が俺の才能に嫉妬し恐怖している。
だが、もう遅い。超回復魔法を手に入れて、医療方面にも商売を拡大する。
超格安回復薬を大量販売して、今の回復薬販売業者には倒産してもらう。
町の医療を支配したら、もう俺に逆らえる奴は存在しない。
♢
「よしよし、今回は大量だったな」
50階まで行って、進化素材と回復マント、魔術の指輪、魔石製造のアビリティを入手してきた。
ダンジョンの神様が俺の商売を応援しているようだ。
正直、怪我を治療できる回復マントは不要だが、47階で手に入れた魔石製造は良い。
魔力を流すと、無属性の魔石が作れるという便利な神器だ。
魔術の指輪を水の指輪に変えれば、この場所で回復薬が作り放題だ。
完成した回復薬は一本100ギルで販売する予定だ。
市販の一本1650ギルの回復薬と、どちらを買うべきか子供でも分かる。
しかも、こちらの回復効果が上なら間違いなく勝てる。
でも、色々と考える前に回復薬が完成しないと始まらない。
魔術の指輪を水の指輪に変えて、次に魔石製造の手袋で青魔石を作っていく。
岩桶の中に水魔法で五リットル程の水を入れて、青魔石を五個入れる。
最後にLV2に強化した回復の指輪を嵌めて、回復薬になれば完成だ。
【回復薬LV2:飲むと身体の損傷が回復する】
「チッ。LV2か」
回復薬は完成したが、一般的な回復薬はLV4だ。LV2では負けている。
水の量を同じにして、青魔石を二倍にしたが結果は同じだった。
青魔石から赤魔石に変更しても同じだった。LV2が限界のようだ。
だが、こちらの材料費はタダだ。
ターニャを使って、店の前を通る通行人に無料で配ろう。
回復薬ではなく、回復ジュースとして配れば、怪しまれる心配はない。
ついでにジュースなら、医療系の面倒な手続きと許可証も必要ない。
「いや、待てよ……流石に危険がないか調べるのが先か」
回復ジュースを10本作ると、早速配ろうとしたが、俺の直感が言っている。
味が美味しくても、副作用が出たらマズイ事になる。
まずはターニャに試飲させて、味をチェックしてもらおう。
「ターニャ、回復ジュースを作ったから、飲んで感想を聞かせてくれ」
「いいですよ」
作業場から店内に移動すると、カウンターに座るターニャが暇そうにしていた。
何も説明せずに黒い瓶に入った回復ジュースを渡した。店員の仕事をしてもらう。
瓶の岩栓を引き抜いて、ゴクゴク透明なジュースを飲み始めた。
「うーん、水ですね。ジュースじゃないです」
「じゃあ、回復水でいいや。料理に使えば身体の疲れが取れるとか言って、無料で配ってくれ」
「分かりました」
名前が回復薬以外ならば問題ない。無味無臭ならば回復水として売ればいい。
騙されたと思って購入してもらおう。とりあえず百本ぐらいばら撒いておくか。
昨日、手に入れた魔術の指輪を使って、ある実験を開始した。
聖水を作るのに必要なのは、『綺麗な水+魔石+聖魔法、回復魔法、薬草など』だ。
この情報から導き出せる答えは、水属性と木属性を混ぜると『聖なる物』が作れるだ。
木属性のウッドエルフを一個、水属性のブルータートルの魔石を二個、交互に指輪に吸収させていく。
木属性は赤魔石、水属性は白魔石を使用する。魔石の力関係を考えて、比率は1:2にしてみた。
「おっ!」
しばらく地味な作業を続けていると、指輪が光り出した。
炎の指輪の時は、紫色の宝石が赤色に変わった。
水の指輪ならば、青色に変わるはずだ。
「白か……」
予想は外れたが、水の指輪にするつもりはない。
左手に持った白い宝石に変わった指輪を調べてみた。
【神器の指輪:使用者に回復魔法LV1を与える】
【強化素材:ウッドエルフの枝50本、ブルータートルの甲羅50枚】
「回復魔法か……LV8で聖魔法に変化するのか?」
また予想が外れたが、とりあえず実験は成功したと言っていい。
あとは実験体を用意するだけだが、実験体はもう店員として用意している。
本人に大人にしてやると言って、同意が取れたら、ダンジョンでゾンビにする。
あとは進化させて、習得した回復魔法を使わせまくれば、LV8の超回復魔法の完成だ。
「ターニャ、話がある」
早速、二階の作業場から客のいない店内に向かった。
新商品の炎竜黒剣を、限定一本千ギルで販売しているのに売れてない。
まだまだ宣伝が足りないようだ。
「何ですか、社長?」
「大人になれば給料を三倍払う。大人にならないか? 少し痛いだけだぞ」
「痛いのは嫌ですけど、お金は欲しいです。何をすればいいんですか?」
黒妖犬の黒革の服を着ているターニャは興味があるようだ。
午前十時から午後三時までの店番で、日給二千ギルを支払っている。
店員が足りないから、ターニャに子供の勧誘をさせているが全て断られている。
給料が安すぎるみたいだ。
「新薬の実験だ。命に危険はないが、一週間から二週間は家に帰れないかもしれないな」
「えぇー、何だか危なそうですね。やっぱりやめておきます」
「大丈夫だ。最短なら四時間で終わる」
「四時間ならいいですよ」
「じゃあ、契約成立だな。同意書を作るから、そこに署名してくれ」
「はい、分かりました」
「準備に三日かかるが、その間の給料も三倍にしてやる。しっかり働くんだぞ」
「やったぁー! お任せください!」
二週間の長時間労働で断られそうだったが、俺の仕事場はホワイトだから問題ない。
店員の事情もキチンと考えて、変更させてもらった。
パパッと俺に都合のいい同意書を手書きで作って、ターニャに渡して署名させた。
あとは三日以内に進化素材セット一人分を用意するだけだ。
♢
地下1階……
「本当に治療方法が見つかったんですか?」
「ああ、これを見ろ。回復の指輪だ。これを研究すれば、人間に戻れる可能性がある」
鉱山洞窟を進んでいると、小船の後ろに座るメルが聞いてきた。
左手に嵌めている回復の指輪を見せてやった。進化素材を見つけるには、メルの協力が必要だ。
それに騙しているわけではない。
超回復魔法ならば、ゾンビ魔人を人間に戻す事が出来るかもしれない。
その可能性が1%だとしても、希望があると信じる心が大切なんだ。
「その研究は何年かかるんですか? いい加減にAランクダンジョンに行きましょうよ」
「まだその時じゃない。それに調子に乗るな。Aランクダンジョンは、こことは比べものにならないぐらいに危険なんだ。舐めてかかると死ぬぞ」
俺の言う事を信用していないメルに、世界の広さと厳しさを教えてやる。
Bランク如きは誰でも制覇できる初心者ダンジョンだ。
ここで調子に乗って、天才だとか無敵だとか言っている奴は馬鹿だ。
「いいか。俺達みたいな田舎者はあっという間に殺されるんだ。重武装して行かないと死ぬんだからな」
「行った事もないくせに……もう分かりました。そこ左です!」
自分から聞いたくせに、話を途中で終わらせるなんて、我儘に育ったものだ。
こんな時は親の顔が見てみたいとか言うべきだが、親(仮)は俺だから我慢しよう。
まったく図体ばかりデカくなりやがって、中身は全然成長していないな。
子供への不満を思いながら、進化素材を宝箱から回収していく。
換金所を出禁になったから、自分で全部集めないといけなくなった。
階段の買取り冒険者も圧力をかけられているのか、誰も協力しないから最悪だ。
おそらく町の有力者が俺の才能に嫉妬し恐怖している。
だが、もう遅い。超回復魔法を手に入れて、医療方面にも商売を拡大する。
超格安回復薬を大量販売して、今の回復薬販売業者には倒産してもらう。
町の医療を支配したら、もう俺に逆らえる奴は存在しない。
♢
「よしよし、今回は大量だったな」
50階まで行って、進化素材と回復マント、魔術の指輪、魔石製造のアビリティを入手してきた。
ダンジョンの神様が俺の商売を応援しているようだ。
正直、怪我を治療できる回復マントは不要だが、47階で手に入れた魔石製造は良い。
魔力を流すと、無属性の魔石が作れるという便利な神器だ。
魔術の指輪を水の指輪に変えれば、この場所で回復薬が作り放題だ。
完成した回復薬は一本100ギルで販売する予定だ。
市販の一本1650ギルの回復薬と、どちらを買うべきか子供でも分かる。
しかも、こちらの回復効果が上なら間違いなく勝てる。
でも、色々と考える前に回復薬が完成しないと始まらない。
魔術の指輪を水の指輪に変えて、次に魔石製造の手袋で青魔石を作っていく。
岩桶の中に水魔法で五リットル程の水を入れて、青魔石を五個入れる。
最後にLV2に強化した回復の指輪を嵌めて、回復薬になれば完成だ。
【回復薬LV2:飲むと身体の損傷が回復する】
「チッ。LV2か」
回復薬は完成したが、一般的な回復薬はLV4だ。LV2では負けている。
水の量を同じにして、青魔石を二倍にしたが結果は同じだった。
青魔石から赤魔石に変更しても同じだった。LV2が限界のようだ。
だが、こちらの材料費はタダだ。
ターニャを使って、店の前を通る通行人に無料で配ろう。
回復薬ではなく、回復ジュースとして配れば、怪しまれる心配はない。
ついでにジュースなら、医療系の面倒な手続きと許可証も必要ない。
「いや、待てよ……流石に危険がないか調べるのが先か」
回復ジュースを10本作ると、早速配ろうとしたが、俺の直感が言っている。
味が美味しくても、副作用が出たらマズイ事になる。
まずはターニャに試飲させて、味をチェックしてもらおう。
「ターニャ、回復ジュースを作ったから、飲んで感想を聞かせてくれ」
「いいですよ」
作業場から店内に移動すると、カウンターに座るターニャが暇そうにしていた。
何も説明せずに黒い瓶に入った回復ジュースを渡した。店員の仕事をしてもらう。
瓶の岩栓を引き抜いて、ゴクゴク透明なジュースを飲み始めた。
「うーん、水ですね。ジュースじゃないです」
「じゃあ、回復水でいいや。料理に使えば身体の疲れが取れるとか言って、無料で配ってくれ」
「分かりました」
名前が回復薬以外ならば問題ない。無味無臭ならば回復水として売ればいい。
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