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第二章:ゾンビ編
第88話 クリスタルゴーレム
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「セイッ‼︎」
パキィン! 力を込めて斜めに振り下ろした剣が、太さ七十センチはある水晶柱を叩き折った。
折れた水晶柱が地面にドスンと落下した。
「ふぅー、これで四個目だ。これで三十八階に行けるな」
どうやって入れたのか分からないが、水晶柱の中に埋め込まれていた赤い宝箱を回収した。
三十七階にあった四個の宝箱は回収したので、これで次の階を目指せる。
「はいはい、休んでいる暇はないから、さっさと撃ちなさい」
「チッ……」
リエラに言われて、仕方なく両手を前に構えて歩き出した。
両手から直径百十センチ程の大きな弾丸を次々に発射して、歩くのに邪魔な水晶を破壊していく。
射撃LV4の手袋をはめて、射撃のアビリティを習得する為の修行中だ。
一ヶ月前に閉じ込められていた時に、岩塊なら壁に向かって撃ちまくっていた。
あれだけ撃っても習得できなかったのに、手袋をはめただけで習得できるわけがない。
嘘に騙されてやるつもりだったけど、何時間も付き合っていると、馬鹿らしくなってきた。
ドガァン、ドガァン——
「なあ、何日間やれば習得できるんだ?」
「えっ? なに?」
後ろを振り向いて、楽しそうに歩いている二人の片方に聞いた。
どうやら水晶が壊れる音が大きすぎて、聞こえないようだ。
左耳に左手を当てて、聞こえない仕草をした。
「いつまで続ければ習得できるんだ!」
だから、撃つのをやめて、大声でもう一度聞いた。
「ああ、それなら手袋のLVが高いと習得しやすいから、多分すぐよ。その調子で頑張って!」
すると、軽い調子でリエラが答えた。だから、それが信じられない。
でも、他に攻撃力を上げる方法を知らないから、撃ち続けるしかない。
これが負の悪循環というか、信じる者は救われる状態なのだろう。
♢
地下三十八階……
下の階に下りても、巨大水晶柱の洞窟は変わらない。
手抜きの神様が作ってくれたお陰だ。
ここには剣の強化素材の『クリスタルゴーレム』がいる。別名は魔法使い殺しだ。
炎や水などの魔法攻撃が効きにくいそうだが、完全な物理魔法攻撃の俺には関係ない話だ。
デカイ動く的に巨大弾丸をぶち込んで、粉々にぶっ壊してやる。
「えーっと……三個あるみたいです」
「うーん、やっぱり少ない。誰か宝箱を集めているパーティがいるみたいね」
「私達以外にもここまで来れる人が、いっぱいいるんですね」
宝箱の数を気配で調べたのか、メルがリエラに報告している。
確かに最大で八個ある、宝箱の五個も取られているのは意外だ。
これだとヴァン達を追い抜いて、宝箱を集める作戦が台無しになる。
「だったら宝箱を先に回収しよう。修行はその後でも出来るだろ?」
もうチマチマ修行したくない。二人に提案した。
そもそも進化すれば強くなるんだから、俺に修行なんて必要ない。
「まあ、確かにそうね。じゃあ、取られる前に走りましょう。全部取り終わったら私達は休憩して、あんたは修行再開よ」
「ああ、それでいいぞ」
修行再開するつもりはないが、二人が休憩するなら、サボっていても分からない。
二つ返事で了承してやった。
「ハァ、ハァ……」
走るというよりもランニングだが、横に広い楕円形の通路を、三人で縦に並んで走っていく。
先頭は何があっても大丈夫だと、自信満々のリエラが走り、その後ろをメルが走っていく。
やれる事が一つもない俺はまた最後尾に回された。
「ストップ、ストップ! 敵が現れたから、さっさと倒して来て!」
だけど、六分ぐらいで出番がやって来た。
前を走る二人と一緒に立ち止まったが、俺には先に行けという指示が出た。
先頭は走らせないのに、戦闘には走らせるみたいだ。
やれやれという気持ちでいっぱいだが、仕方ないので走った。
しばらくすると、太い手足が生えている、動く水晶の塊と遭遇した。
「グゴォー!」
「元気いっぱいだな」
目の前のクリスタルゴーレムの大きさは、二百七十センチぐらい。
知能はレッドゴーレムよりも上らしい。
水晶柱を右手で掴むとへし折って、鋭い先端を俺に向けてきた。
水晶の長さは俺の身長と同じぐらいはある。剣と見るか、槍と見るか微妙な長さだ。
まあ、予定通りに射撃の的になってもらうとしよう。
両手を前方のクリスタルゴーレムに向けた。その棒と一緒に砕いてやろう。
ドォン——
「ウガァ!」
バキィン! 発射された大きな弾丸はゴーレムの左手に殴り壊された。
「何だと!」
右手の水晶剣は使わないようだ。だが、驚いている暇はない。
弾丸を殴り壊すと、即座にゴーレムが攻撃を開始した。
右手を振りかぶって、水晶柱を槍のように投げつけてきた。
ビューン——
「チッ!」
胸に向かって飛んでくる、デカイ槍を右に飛んで回避した。
ゴーレムの方は二本目を左手でへし折って、すでに投げる準備万端だ。
「くそ、剣を借りておけば良かった!」
立ち止まって撃つ余裕も、魔力を地面に溜めて突き出す余裕もない。
飛んでくる水晶を避けながら、剣を抜いた。
接近戦で戦いたいようだから相手をしてやる。
「行くぞ!」
全身を薄い岩で覆っていく。これで防御力と機動力の両方をアップできる。
自分の身体を魔力で操って、地面スレスレを飛ぶように走らせていく。
悪いが、相手が悪かったな。
飛んでくる水晶槍を軽々と避け続ける。
そして、隙だらけの水晶の右太ももを剣で切りつけた。
ガキィーン‼︎
「硬いぁー!」
会心の一撃が信じられないぐらいに切れなかった。
薄くは切れるだろうと思ったのに、完全に弾かれた。
「何だ、この剣⁉︎ こんなに使えない剣だったのか⁉︎」
長年愛用した剣に失礼だが、これだと姉貴に捨てられて当然だ。
きっと強化素材を集めるのが面倒だったから、俺に渡したに決まっている。
「なっ⁉︎」
だが、文句を言っている暇はなかった。
目の前に振り回された水晶の柱が迫ってきていた。
ガキィーン!
「ぐぅがああぁー!」
水晶柱の一撃を何とか剣を盾にして正面で受け止めた。
だけど、完全に力負けしていた。そのままの勢いで吹き飛ばされて、壁にドンと叩きつけられた。
「ぐはぁ‼︎ ……フフッ、面白い。俺を本気にさせたいようだ」
壁に強打されたが、すぐに笑って立ち上がった。多分、立ち上がれるから骨は折れてない。
剣で防御したし、身体に岩を纏っていた。それに雑魚の攻撃で俺を倒せるはずがない。
ちょっと脳が揺れて立ち眩みがするけど、コイツを全力でブチ壊すには何も問題ない。
ビューン——
「危ねえ‼︎」
闘志を燃やしている途中なのに、水晶槍が飛んできたので急いで避けた。
「ハァ、ハァ……さっきの亀よりも手強い!」
硬いし、賢いし、空気も読めない。動かない的の千本亀と違って強敵だ。
ゴーレムLV4なら力負けはしないと思うが、それはもう出来そうにない。
近づいていた足音が止まった。
「ウソ! まだ倒してなかったの? 信じられない役立たずね。もう何もしなくていいから」
「ぐっ!」
まだ本気を出してないだけなのに、現れた黒髪の女に好き放題言われてしまう。
あと二分もあれば倒せていたのに、リエラは剣を二本抜くと、ゴーレムに向かっていった。
「くっ! 俺の剣が切れていたら、右足を切った後は、首も切り落としてたのに!」
リエラの剣は信じられない程に、スパァ、スパァとゴーレムの身体を切断している。
こんなのは明らかに詐欺だ。Cランク上位とBランク下位に、これ程の差があるわけない。
絶対に武器の性能が違いすぎるだけだ。
パキィン! 力を込めて斜めに振り下ろした剣が、太さ七十センチはある水晶柱を叩き折った。
折れた水晶柱が地面にドスンと落下した。
「ふぅー、これで四個目だ。これで三十八階に行けるな」
どうやって入れたのか分からないが、水晶柱の中に埋め込まれていた赤い宝箱を回収した。
三十七階にあった四個の宝箱は回収したので、これで次の階を目指せる。
「はいはい、休んでいる暇はないから、さっさと撃ちなさい」
「チッ……」
リエラに言われて、仕方なく両手を前に構えて歩き出した。
両手から直径百十センチ程の大きな弾丸を次々に発射して、歩くのに邪魔な水晶を破壊していく。
射撃LV4の手袋をはめて、射撃のアビリティを習得する為の修行中だ。
一ヶ月前に閉じ込められていた時に、岩塊なら壁に向かって撃ちまくっていた。
あれだけ撃っても習得できなかったのに、手袋をはめただけで習得できるわけがない。
嘘に騙されてやるつもりだったけど、何時間も付き合っていると、馬鹿らしくなってきた。
ドガァン、ドガァン——
「なあ、何日間やれば習得できるんだ?」
「えっ? なに?」
後ろを振り向いて、楽しそうに歩いている二人の片方に聞いた。
どうやら水晶が壊れる音が大きすぎて、聞こえないようだ。
左耳に左手を当てて、聞こえない仕草をした。
「いつまで続ければ習得できるんだ!」
だから、撃つのをやめて、大声でもう一度聞いた。
「ああ、それなら手袋のLVが高いと習得しやすいから、多分すぐよ。その調子で頑張って!」
すると、軽い調子でリエラが答えた。だから、それが信じられない。
でも、他に攻撃力を上げる方法を知らないから、撃ち続けるしかない。
これが負の悪循環というか、信じる者は救われる状態なのだろう。
♢
地下三十八階……
下の階に下りても、巨大水晶柱の洞窟は変わらない。
手抜きの神様が作ってくれたお陰だ。
ここには剣の強化素材の『クリスタルゴーレム』がいる。別名は魔法使い殺しだ。
炎や水などの魔法攻撃が効きにくいそうだが、完全な物理魔法攻撃の俺には関係ない話だ。
デカイ動く的に巨大弾丸をぶち込んで、粉々にぶっ壊してやる。
「えーっと……三個あるみたいです」
「うーん、やっぱり少ない。誰か宝箱を集めているパーティがいるみたいね」
「私達以外にもここまで来れる人が、いっぱいいるんですね」
宝箱の数を気配で調べたのか、メルがリエラに報告している。
確かに最大で八個ある、宝箱の五個も取られているのは意外だ。
これだとヴァン達を追い抜いて、宝箱を集める作戦が台無しになる。
「だったら宝箱を先に回収しよう。修行はその後でも出来るだろ?」
もうチマチマ修行したくない。二人に提案した。
そもそも進化すれば強くなるんだから、俺に修行なんて必要ない。
「まあ、確かにそうね。じゃあ、取られる前に走りましょう。全部取り終わったら私達は休憩して、あんたは修行再開よ」
「ああ、それでいいぞ」
修行再開するつもりはないが、二人が休憩するなら、サボっていても分からない。
二つ返事で了承してやった。
「ハァ、ハァ……」
走るというよりもランニングだが、横に広い楕円形の通路を、三人で縦に並んで走っていく。
先頭は何があっても大丈夫だと、自信満々のリエラが走り、その後ろをメルが走っていく。
やれる事が一つもない俺はまた最後尾に回された。
「ストップ、ストップ! 敵が現れたから、さっさと倒して来て!」
だけど、六分ぐらいで出番がやって来た。
前を走る二人と一緒に立ち止まったが、俺には先に行けという指示が出た。
先頭は走らせないのに、戦闘には走らせるみたいだ。
やれやれという気持ちでいっぱいだが、仕方ないので走った。
しばらくすると、太い手足が生えている、動く水晶の塊と遭遇した。
「グゴォー!」
「元気いっぱいだな」
目の前のクリスタルゴーレムの大きさは、二百七十センチぐらい。
知能はレッドゴーレムよりも上らしい。
水晶柱を右手で掴むとへし折って、鋭い先端を俺に向けてきた。
水晶の長さは俺の身長と同じぐらいはある。剣と見るか、槍と見るか微妙な長さだ。
まあ、予定通りに射撃の的になってもらうとしよう。
両手を前方のクリスタルゴーレムに向けた。その棒と一緒に砕いてやろう。
ドォン——
「ウガァ!」
バキィン! 発射された大きな弾丸はゴーレムの左手に殴り壊された。
「何だと!」
右手の水晶剣は使わないようだ。だが、驚いている暇はない。
弾丸を殴り壊すと、即座にゴーレムが攻撃を開始した。
右手を振りかぶって、水晶柱を槍のように投げつけてきた。
ビューン——
「チッ!」
胸に向かって飛んでくる、デカイ槍を右に飛んで回避した。
ゴーレムの方は二本目を左手でへし折って、すでに投げる準備万端だ。
「くそ、剣を借りておけば良かった!」
立ち止まって撃つ余裕も、魔力を地面に溜めて突き出す余裕もない。
飛んでくる水晶を避けながら、剣を抜いた。
接近戦で戦いたいようだから相手をしてやる。
「行くぞ!」
全身を薄い岩で覆っていく。これで防御力と機動力の両方をアップできる。
自分の身体を魔力で操って、地面スレスレを飛ぶように走らせていく。
悪いが、相手が悪かったな。
飛んでくる水晶槍を軽々と避け続ける。
そして、隙だらけの水晶の右太ももを剣で切りつけた。
ガキィーン‼︎
「硬いぁー!」
会心の一撃が信じられないぐらいに切れなかった。
薄くは切れるだろうと思ったのに、完全に弾かれた。
「何だ、この剣⁉︎ こんなに使えない剣だったのか⁉︎」
長年愛用した剣に失礼だが、これだと姉貴に捨てられて当然だ。
きっと強化素材を集めるのが面倒だったから、俺に渡したに決まっている。
「なっ⁉︎」
だが、文句を言っている暇はなかった。
目の前に振り回された水晶の柱が迫ってきていた。
ガキィーン!
「ぐぅがああぁー!」
水晶柱の一撃を何とか剣を盾にして正面で受け止めた。
だけど、完全に力負けしていた。そのままの勢いで吹き飛ばされて、壁にドンと叩きつけられた。
「ぐはぁ‼︎ ……フフッ、面白い。俺を本気にさせたいようだ」
壁に強打されたが、すぐに笑って立ち上がった。多分、立ち上がれるから骨は折れてない。
剣で防御したし、身体に岩を纏っていた。それに雑魚の攻撃で俺を倒せるはずがない。
ちょっと脳が揺れて立ち眩みがするけど、コイツを全力でブチ壊すには何も問題ない。
ビューン——
「危ねえ‼︎」
闘志を燃やしている途中なのに、水晶槍が飛んできたので急いで避けた。
「ハァ、ハァ……さっきの亀よりも手強い!」
硬いし、賢いし、空気も読めない。動かない的の千本亀と違って強敵だ。
ゴーレムLV4なら力負けはしないと思うが、それはもう出来そうにない。
近づいていた足音が止まった。
「ウソ! まだ倒してなかったの? 信じられない役立たずね。もう何もしなくていいから」
「ぐっ!」
まだ本気を出してないだけなのに、現れた黒髪の女に好き放題言われてしまう。
あと二分もあれば倒せていたのに、リエラは剣を二本抜くと、ゴーレムに向かっていった。
「くっ! 俺の剣が切れていたら、右足を切った後は、首も切り落としてたのに!」
リエラの剣は信じられない程に、スパァ、スパァとゴーレムの身体を切断している。
こんなのは明らかに詐欺だ。Cランク上位とBランク下位に、これ程の差があるわけない。
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