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第二章:ゾンビ編

第63話 地魔法対水魔法

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「なるほど。他のパーティはああやって倒しているのか……」

 俺のトレントの倒し方は効率が悪いので、他のパーティの戦闘を隠れて見学する。

「顔を狙って怯ませろ! 俺は足を切り落とす!」

 三人組パーティの一人がトレントの前を走って、仲間二人が後ろから剣や弓矢で攻撃している。
 つまり、トレントの背後は腕の攻撃が届かない安全地帯で、背後を取れば倒しやすいという事だ。
 俺の場合は囮がいないので、背後から攻撃するところだけを参考にする。

「あぁー、終わった。やっぱり腕を落としたら楽勝だな」
「ハァ、ハァ……何が楽勝だよ、こっちはめちゃくちゃきちぃーよ!」
「ハハッ! ほら、水でも飲めよ。次も頼むぜ」

「さてと、行くとするか……」

 三人組がトレントを倒し終わったので、今度は俺が三人組を倒す番だ。
 ウルティマブローの練習はトレントじゃなくて、動かない森の大木でする。
 トレントの素材は三人から貰えばいい。
 剣を持って流星拳で飛んでいったら、普通に腕で撃墜させられた。

「やあ、三人とも強いね。良いアビリティ装備とか持っているのかな?」
「誰だ、お前? 怪しいな」
「おっとと! 勘弁してくれよ」

 仮面を着けているけど、ご近所さんのように明るい感じで近づいていった。
 三人中二人が弓矢を向けてきたけど、そういうのはやめてほしい。
 立ち止まると、慌てて左右の手の平を前に突き出して、やめてほしいとお願いした。

「それ以上、近づくなよ。何の用だ?」
「そんなに警戒するなよ。強盗じゃないんだから、よっ!」

 準備が出来たので、地面に流した魔力を爆発させた。
 弓矢を構える二人の足元から、棒状の無数の石柱が飛び出した。

「ぐがぁ!」

 ドガガッ! 石柱に手足を強打されて、二人は痛がっているが、弓矢は落とさない。
 なかなか我慢強い二人には、さらに顔面に突き出した手の平から岩塊をプレゼントしてやった。
 大丈夫。先は尖らせてない峰打ちだから死にはしない。ただの鞭打ちになるだけだ。

 ダァン——

「このクソ野郎がぁー!」
「おっと!」

 盾で岩塊をガードしながら、無傷の剣士が突っ込んできた。
 イノシシ並みに低く素早い突進から、右手に持った剣を下から上に振り上げた。
 顎下から頭の天辺まで切られたら死んでしまう。後方に素早く数歩飛び退いて回避した。

 ピキィ……

「へぇー、やるねぇ」

 けれども、仮面が剣先に少しだけ掠ったようだ。岩の仮面に少しだけヒビが走った。
 まあ、すぐに修復できるので問題ない。

「テメェー、冒険者狩りか。襲う相手を間違えたようだな。このクソ野郎が!」
「いやいや、間違えてないでしょう。だって、雑魚じゃん」

 仲間二人は地面の上で苦しんでいる。
 気を失わないだけ凄いけど、今すぐに戦えるようには見えない。
 俺と一対一になった時点で勝負は終わっている。

「雑魚かどうかは死んでから理解しろやぁー!」
「んっ?」

 ブチ切れている灰色髪の剣士の身体から、水が溢れ出している。
 剣士じゃなくて、魔法剣士だったようだ。水魔法LV3か4はありそうだ。

 警戒していると、水溜りから回転する水円板が三枚飛び出してきた。
 当たると肉が切れそうだから、遠慮なく回避させてもらう。

「バラバラにしてやるよ」
「弱い者イジメは好きじゃないだけど……まあ、仕方ないな」

 魔法剣士を中心に弧を描くように、連続発射される水円板を走って避け続ける。
 長期戦だと仲間二人が回復して不利になりそうだ。
 走りながら右手を剣士に向けた。圧倒的な連射能力の差を見せつけてやる。

 ドガガガガガッッ——

「フンッ、効くかよ」

 発射された岩塊を剣士は避けようともしない。余程身体を守る水の鎧に自信があるようだ。
 水の鎧にぶつかった岩塊が、ポチャンと可愛らしい音を出して停止していく。
 水の鎧に岩が加わり、さらに強度を増してしまった感じに見える。

「意外とやるな。じゃあ、こっちはどうかな」

 ニッと笑うと、右手で攻撃を続けながら、左手を岩の手で大きくしていく。
 予想よりも少しは出来るみたいだが、流星拳で水の鎧ごと殴り飛ばせば終わりだ。

「脱落者一号はお前だ」

 一気に勝負を決める為に、水円板を避けずに左手でガードしながら突き進んでいく。
 悪いがこの岩の手は盾にも含まれる。
 アビリティ盾術LV3の効果で、衝突した水円板が砕け散っていく。

「チッ、硬いな……あれで行くか」

 水遊びに飽きたのか、それとも勝てないと理解したのか、剣士は苦々しい顔をした。
 でも、まだ諦めてないようだ。
 両手で持った水を纏った剣を高々と持ち上げて、垂直に振り下ろそうと構えている。

 だが、もう射程距離は十分だ。反応できない速さで拳をブチ込んでやる。
 左腕に溜めた魔力を撃ち放った。

 ズパァン——

「ぐっ、ごがぁ……‼︎」

 ゴドォン‼︎ 岩と水の砕ける音を鳴らして、胸部を強打された剣士が殴り飛ばされた。
 けれども、流星拳の速さに反応できた剣士が、殴られる直前に左肩に剣を振り下ろしてきた。

「くっ、やってくれたな、この雑魚が!」

 ドバァドバァと左肩から血が噴き出している。
 切断された左腕は剣士の男と一緒に飛んでいった。
 身体に痛みは感じないが、俺のような繊細な人間は心で痛みを感じる事が出来る。

「怒るのは後だ。早く治療しないとヤバイ!」

 剣士の元に急いで走ると、左腕の岩の手を壊して左肩にくっ付けた。
 あとは動かないように左手を下に伸ばして、ピッタリと身体と左腕を岩で覆って固定した。
 これで取れたり落ちたりしない。あとの治療は自然治癒力にお任せするしかない。

「このクソ野郎が!」
「ぐっふ‼︎」

 ドガッ! とりあえず気絶している魔法剣士を蹴り飛ばした。
 過度な激しい運動は左腕の大傷に障るので、この辺で許してやる。
 ついでにあっち側にいる仲間二人も、岩塊を発射して痛めつけてやる。
 回復して抵抗されたら厄介だ。
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