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第5話
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「君達が言いたい事は分かっている。厳しくは教えているのに、それでも望む結果が出ない時はある。そんな時、母親ならば、その頑張った過程を褒めてあげるべきだと思うんだ。そうだろう?」
『厳しいか? まだまだ激甘だろう?』『いや、結構厳しいぞ。俺はあんなに厳しく娘に言えないぞ』『所詮教育なんて飴と鞭だろう。そこさえ分かってたら簡単だよ』
新米母親達が自分なりの子育て論を語り合っています。1人目の子育てを失敗して、ショックのあまりゲームクリアを諦めたプレイヤーも多い中、2人目に挑戦した母親達は結構残っていました。
「やはり、子育てには情報交換が大切だと思うんだ。あのスタンプの意味を知っている母親はいないだろうか?」
スタンプとは《大変良く出来ました》《良く出来ました》《もう少し頑張りましょう》の事です。
『あれ、レベルのようなものらしいぞ。《大変良く出来ました》が、レベル3アップ。《良く出来ました》が、レベル1アップ。《もう少し頑張りましょう》が、変化なしらしい』『へぇ~~、厳しくすればレベルアップするのかぁ~』『いやいや、厳しくし過ぎると、家出するから、適度に厳しくしないと駄目なんだよ』『ぐっす、俺の娘はグレてから、家出したよ。二度と戻って来なかったから、皆んなも気をつけろよ』
「お前達も苦労してるんだな。分かった。ほどほどに厳しくすればいいんだな。あんな可愛いルナマリアが寒空の下で暮らすなんて考えたくもない。よし、頑張るぞ!」
☆
☆
☆
バァン、ガシャン! バァン、バァン、バァン、ガシャン!
(結構、命中率がアップしてきたけど、動かない的はそろそろ卒業しないとね)
「ルナマリア、もう動かない的は終わりです。次は動く的を撃つ訓練をします」
「はい、ママ」
ポチっと、裏庭に設置されているスイッチを押すと、モンスターの赤プヨや青プヨが描かれた木の板が地面から現れました。
グルグルグルと回転するレールに乗ったように、木の板が私とルナマリアの周囲を回り続けます。
「わぁ~、可愛い♬」
「ルナマリア、気をつけなさい。アイツらは悪魔よ。さあ、撃ちなさい!」
「はい、ママ」
バァン、バァン、バァン、パァコン! 青プヨの板に銃弾が当たると、木の板は地面に潜って隠れてしまいました。けれども、次の瞬間には黄プヨの木の板が地面から現れました。
「その調子よ、ルナマリア。プヨプヨ達は危険なモンスターだから、絶対に油断せずに殲滅するのよ」
「はい、ママ」
訓練中は無駄口を叩かないようにルナマリアに厳しく言っています。キチンと集中しないと実際の戦いでは命を落とすのです。
バァン、パァタン! バァン、バァン、パァタン! バァン、パァタン!
「そこまで! 今日の訓練は終わりです。お風呂に入って汗を流してきなさい。今日の夕食はカレーとアップルパイですよ」
「わぁーい♬ ハッ! はい、ママ」
トタトタトタと可愛いルナマリアは私に敬礼すると、お風呂に入りに行きました。残念ながら、お風呂場を覗くと家出するらしいので、絶対に覗かないようにしないといけません。それを覚悟で覗いた母親達は娘の水着姿を見るだけで終わってしまいます。
(さて、ルナマリアのレベルは《30》を超えるぐらい。訓練初日の5日間を乗り越えたら、ほとんどが《良く出来ました》のスタンプを貰えたし、これならば結構いい所まで進めるはずよ。もうエステルのような悲劇は絶対に起こさせない)
☆
「ママの作ってくれたカレー、甘くて美味しい♬ ニンジンさんも、ジャガイモさんも♡マークだよ。凄く美味しくて可愛い~~」
「ふっふふ、冒険の旅が終わったら、作り方を教えてあげるから頑張るのよ」
「はぁ~い」
ルナマリアとの楽しいは食事はあと数回しかありません。このフルダイブVRゲームは何故だか、母親が家事をする決まりがあります。洗濯、掃除、料理とかなりスキルアップしました。
特に料理は娘への愛情ポイントを増やす絶好の機会です。不味い飯を食べさせたら、キツい訓練を頑張った娘の好感度は下がりまくりです。
手堅く市販の料理でもいいのですが、市販の料理は好感度の変化は起こりません。S級冒険者に育てたいなら、美味しい手料理は母親の必須科目です。
☆
「ママ、行ってきます」
「ルナマリア、絶対にモンスターには気をつけるのよ。可愛いモンスターでも怖いモンスターでも、迷わずに撃ち倒すの! ママと約束してちょうだい」
「もう、ママは心配症だなぁ~。ルナはとっても強いから大丈夫だよ。モンスターなんて簡単に倒して、一杯仕送りするね」
娘が待ちに待った冒険の旅への出発の日。私は本当は危険な冒険の旅なんて行ってほしくはないのですが、これは避けられない運命なのです。私の意思と娘の意思は違うのです。いえ、娘の意思というよりも、開発者の意思でしょうか? 私の可愛い娘を無理矢理死地へと追いやるなんて本当に許せません。
「じゃあ、行きまぁ~~す」
「ルナマリア、絶対に帰ってくるのよぉ~~!!」
トコトコトコと娘は元気一杯に冒険の旅に出掛けて行きました。仕送りなんてどうでもいいのです。元気で家に戻ってくれさえすれば、私はそれでいいのです。でも、嫌な予感は当たるものです。
(今度も駄目かもしれない……)
私は薄々はそうなる事を予感しながらも、気づかないフリをして、娘を死地へと送り出す事しか出来ませんでした。
★
『厳しいか? まだまだ激甘だろう?』『いや、結構厳しいぞ。俺はあんなに厳しく娘に言えないぞ』『所詮教育なんて飴と鞭だろう。そこさえ分かってたら簡単だよ』
新米母親達が自分なりの子育て論を語り合っています。1人目の子育てを失敗して、ショックのあまりゲームクリアを諦めたプレイヤーも多い中、2人目に挑戦した母親達は結構残っていました。
「やはり、子育てには情報交換が大切だと思うんだ。あのスタンプの意味を知っている母親はいないだろうか?」
スタンプとは《大変良く出来ました》《良く出来ました》《もう少し頑張りましょう》の事です。
『あれ、レベルのようなものらしいぞ。《大変良く出来ました》が、レベル3アップ。《良く出来ました》が、レベル1アップ。《もう少し頑張りましょう》が、変化なしらしい』『へぇ~~、厳しくすればレベルアップするのかぁ~』『いやいや、厳しくし過ぎると、家出するから、適度に厳しくしないと駄目なんだよ』『ぐっす、俺の娘はグレてから、家出したよ。二度と戻って来なかったから、皆んなも気をつけろよ』
「お前達も苦労してるんだな。分かった。ほどほどに厳しくすればいいんだな。あんな可愛いルナマリアが寒空の下で暮らすなんて考えたくもない。よし、頑張るぞ!」
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バァン、ガシャン! バァン、バァン、バァン、ガシャン!
(結構、命中率がアップしてきたけど、動かない的はそろそろ卒業しないとね)
「ルナマリア、もう動かない的は終わりです。次は動く的を撃つ訓練をします」
「はい、ママ」
ポチっと、裏庭に設置されているスイッチを押すと、モンスターの赤プヨや青プヨが描かれた木の板が地面から現れました。
グルグルグルと回転するレールに乗ったように、木の板が私とルナマリアの周囲を回り続けます。
「わぁ~、可愛い♬」
「ルナマリア、気をつけなさい。アイツらは悪魔よ。さあ、撃ちなさい!」
「はい、ママ」
バァン、バァン、バァン、パァコン! 青プヨの板に銃弾が当たると、木の板は地面に潜って隠れてしまいました。けれども、次の瞬間には黄プヨの木の板が地面から現れました。
「その調子よ、ルナマリア。プヨプヨ達は危険なモンスターだから、絶対に油断せずに殲滅するのよ」
「はい、ママ」
訓練中は無駄口を叩かないようにルナマリアに厳しく言っています。キチンと集中しないと実際の戦いでは命を落とすのです。
バァン、パァタン! バァン、バァン、パァタン! バァン、パァタン!
「そこまで! 今日の訓練は終わりです。お風呂に入って汗を流してきなさい。今日の夕食はカレーとアップルパイですよ」
「わぁーい♬ ハッ! はい、ママ」
トタトタトタと可愛いルナマリアは私に敬礼すると、お風呂に入りに行きました。残念ながら、お風呂場を覗くと家出するらしいので、絶対に覗かないようにしないといけません。それを覚悟で覗いた母親達は娘の水着姿を見るだけで終わってしまいます。
(さて、ルナマリアのレベルは《30》を超えるぐらい。訓練初日の5日間を乗り越えたら、ほとんどが《良く出来ました》のスタンプを貰えたし、これならば結構いい所まで進めるはずよ。もうエステルのような悲劇は絶対に起こさせない)
☆
「ママの作ってくれたカレー、甘くて美味しい♬ ニンジンさんも、ジャガイモさんも♡マークだよ。凄く美味しくて可愛い~~」
「ふっふふ、冒険の旅が終わったら、作り方を教えてあげるから頑張るのよ」
「はぁ~い」
ルナマリアとの楽しいは食事はあと数回しかありません。このフルダイブVRゲームは何故だか、母親が家事をする決まりがあります。洗濯、掃除、料理とかなりスキルアップしました。
特に料理は娘への愛情ポイントを増やす絶好の機会です。不味い飯を食べさせたら、キツい訓練を頑張った娘の好感度は下がりまくりです。
手堅く市販の料理でもいいのですが、市販の料理は好感度の変化は起こりません。S級冒険者に育てたいなら、美味しい手料理は母親の必須科目です。
☆
「ママ、行ってきます」
「ルナマリア、絶対にモンスターには気をつけるのよ。可愛いモンスターでも怖いモンスターでも、迷わずに撃ち倒すの! ママと約束してちょうだい」
「もう、ママは心配症だなぁ~。ルナはとっても強いから大丈夫だよ。モンスターなんて簡単に倒して、一杯仕送りするね」
娘が待ちに待った冒険の旅への出発の日。私は本当は危険な冒険の旅なんて行ってほしくはないのですが、これは避けられない運命なのです。私の意思と娘の意思は違うのです。いえ、娘の意思というよりも、開発者の意思でしょうか? 私の可愛い娘を無理矢理死地へと追いやるなんて本当に許せません。
「じゃあ、行きまぁ~~す」
「ルナマリア、絶対に帰ってくるのよぉ~~!!」
トコトコトコと娘は元気一杯に冒険の旅に出掛けて行きました。仕送りなんてどうでもいいのです。元気で家に戻ってくれさえすれば、私はそれでいいのです。でも、嫌な予感は当たるものです。
(今度も駄目かもしれない……)
私は薄々はそうなる事を予感しながらも、気づかないフリをして、娘を死地へと送り出す事しか出来ませんでした。
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