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幼馴染
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「ねえ、相変わらず太陽の光は苦手なの? 」
私は幼馴染のカリュードにそう尋ねた。
ここは私の実家であるトクソン伯爵家と、彼の実家であるミュラー侯爵家の屋敷の境にある山に存在している洞窟の中。
外からの太陽の光で何とかお互いの姿は見えるが、薄暗いそこは私とカリュードの秘密基地のような場所であった。
「ああ。太陽の光に当たると、次の日皮膚が爛れてしまうんだ。それにひどい頭痛も」
カリュードは幼い頃から太陽の光を浴びることができない体質であった。
皮膚が弱く、刺激の強い日光は火傷の原因ともなりうる。
そして極め付けは激しい頭痛ときた。
領地が隣り合わせの私たちは、幼い頃から一緒に遊ぶことが多く、それは十六歳と十七歳にになる今でも変わらない。
もちろん今では、昔のように曇りの日に野原を駆け回るような真似はしないが。
彼と二人で語り合う時間はとても楽しく、あっという間に過ぎていく。
太陽の光が苦手な彼のために、二人で会うのはお互いの屋敷か雨の日の温室、そしてこの洞窟の中がほとんどだった。
「そう……だけど、侯爵の座を継いだらそんなこと言っていられないのでは無いの? 」
「ああ。少しずつ体を慣らす訓練をしなければならないな」
「訓練? 」
カリュードは十八歳を迎えたら、父である現ミュラー侯爵の跡を継ぐことが決まっていた。
侯爵ともなれば、いつまでもこのように暗闇で生活することなど許されないだろう。
残すところ後一年、カリュードの訓練というのは一体どんなことをおこなうのだろうか。
「シェイラは気にしなくていいよ。大丈夫、後一年もあるんだ。立派な侯爵になってみせるさ」
「そう……。あ、そろそろ行かなきゃ。年頃の娘がこんなに暗くなるまで外にいるなんてって、お父様に怒られちゃう」
「トクソン伯爵が? 」
「ええ。最近少しずつ縁談が持ち込まれるようになったの。だからお父様もなんだかピリピリとしていて。婚約前に何か粗相を起こすなと、口を酸っぱくして言われているわ」
私は笑いながらそう言った。
「縁談……? 」
カリュードがピクリと反応した。
その表情は先ほどと打って変わって険しいものになっている。
「そうよ。まだ目を通していないのだけれど。考えてみれば私たちも、もう十六歳だものね。そろそろそういったことを考えなければならない年頃だわ」
「まだ早いだろう……」
「そんなことはないわよ? カリュードなんて次期侯爵だわ。後継は絶対に必要でしょうに」
カリュードは俯いている。
洞窟の暗闇もてつだって、私には彼の表情が窺えない。
「とりあえず、帰るわね。また近いうちに」
「もう薄暗くなっているだろう、送るよ」
「大丈夫よ。うっすら陽の光も残っているだろうし、あなたに負担をかけたく無いわ」
私はカリュードに微笑むと、ゆっくり洞窟から身を乗り出した。
暗闇に慣れていた体には、夕焼けすら眩しく感じてしまう。
「シェイラ」
不意に後ろからカリュードに呼び止められ、私は振り向いた。
相変わらず彼の顔はよく見えないが、その声色はいつもの彼と同じである。
「気をつけて、帰れよ」
私は返事の代わりに頷くと、洞窟を後にした。
私は幼馴染のカリュードにそう尋ねた。
ここは私の実家であるトクソン伯爵家と、彼の実家であるミュラー侯爵家の屋敷の境にある山に存在している洞窟の中。
外からの太陽の光で何とかお互いの姿は見えるが、薄暗いそこは私とカリュードの秘密基地のような場所であった。
「ああ。太陽の光に当たると、次の日皮膚が爛れてしまうんだ。それにひどい頭痛も」
カリュードは幼い頃から太陽の光を浴びることができない体質であった。
皮膚が弱く、刺激の強い日光は火傷の原因ともなりうる。
そして極め付けは激しい頭痛ときた。
領地が隣り合わせの私たちは、幼い頃から一緒に遊ぶことが多く、それは十六歳と十七歳にになる今でも変わらない。
もちろん今では、昔のように曇りの日に野原を駆け回るような真似はしないが。
彼と二人で語り合う時間はとても楽しく、あっという間に過ぎていく。
太陽の光が苦手な彼のために、二人で会うのはお互いの屋敷か雨の日の温室、そしてこの洞窟の中がほとんどだった。
「そう……だけど、侯爵の座を継いだらそんなこと言っていられないのでは無いの? 」
「ああ。少しずつ体を慣らす訓練をしなければならないな」
「訓練? 」
カリュードは十八歳を迎えたら、父である現ミュラー侯爵の跡を継ぐことが決まっていた。
侯爵ともなれば、いつまでもこのように暗闇で生活することなど許されないだろう。
残すところ後一年、カリュードの訓練というのは一体どんなことをおこなうのだろうか。
「シェイラは気にしなくていいよ。大丈夫、後一年もあるんだ。立派な侯爵になってみせるさ」
「そう……。あ、そろそろ行かなきゃ。年頃の娘がこんなに暗くなるまで外にいるなんてって、お父様に怒られちゃう」
「トクソン伯爵が? 」
「ええ。最近少しずつ縁談が持ち込まれるようになったの。だからお父様もなんだかピリピリとしていて。婚約前に何か粗相を起こすなと、口を酸っぱくして言われているわ」
私は笑いながらそう言った。
「縁談……? 」
カリュードがピクリと反応した。
その表情は先ほどと打って変わって険しいものになっている。
「そうよ。まだ目を通していないのだけれど。考えてみれば私たちも、もう十六歳だものね。そろそろそういったことを考えなければならない年頃だわ」
「まだ早いだろう……」
「そんなことはないわよ? カリュードなんて次期侯爵だわ。後継は絶対に必要でしょうに」
カリュードは俯いている。
洞窟の暗闇もてつだって、私には彼の表情が窺えない。
「とりあえず、帰るわね。また近いうちに」
「もう薄暗くなっているだろう、送るよ」
「大丈夫よ。うっすら陽の光も残っているだろうし、あなたに負担をかけたく無いわ」
私はカリュードに微笑むと、ゆっくり洞窟から身を乗り出した。
暗闇に慣れていた体には、夕焼けすら眩しく感じてしまう。
「シェイラ」
不意に後ろからカリュードに呼び止められ、私は振り向いた。
相変わらず彼の顔はよく見えないが、その声色はいつもの彼と同じである。
「気をつけて、帰れよ」
私は返事の代わりに頷くと、洞窟を後にした。
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