11 / 11
11
しおりを挟む
そんな二人であったが、事態は思いがけず良い方向に進んで行った。
レティは両親である公爵夫妻に、ステアが自分の呪いを解いてくれた恩人であることを告げたのだ。
かねてよりレティがステアに思いを寄せていたことに気付いていた両親は、今回の件をもってステアとの結婚を認めることにしたのだ。
それだけではない。
捕らえられた呪術師が、レティにかけられた呪いに王太子ノアが関与していることを仄めかしたため、国王が慌てて公爵家に対し謝罪を行ったのだ。
王太子の醜態を国中に広めることだけは避けたかったのだろう。
せめてもの罪滅ぼしとして……と、国王はステアに伯爵位を与えた。
これによりステアとレティの結婚を妨げる障壁は、完全に取り払われたのである。
ちなみに王太子ノアはと言うと、父王からきつくお灸を据えられたらしく。
個人の財産の没収、行動の際には監視を付けること、などの条件で未だ王太子の座にいるらしいのだが。
肝心の本人はレティを失った喪失感から、王位などいらないと言い始めているらしいから困ったものである。
「レティ、ここにいたのですか」
半年後、二人は結婚式を挙げて正式な夫婦となった。
親しい間柄の人々のみを招待したこじんまりとした式であったが、居心地の良い素敵な式にすることができた。
ステアは伯爵となり、レティは伯爵夫人として、慣れない夫の社交をサポートしている。
未だにステアはレティに対して敬語を使う癖が抜けないらしく。
「あなたは私にとって、いつまでも高嶺の花なので」
いつまでもこんなことを言っている。
「ふふ。またあなたはそんなことを言って。この子が生まれたら、困ってしまうわよ? 」
レティの腹には新たな命が宿っていた。
「お父様らしく、堂々として欲しいわ 」
「……善処致します」
「ああ! もうダメじゃない! 」
「無理ですレティっ……」
二人の間には幸せな空気が流れていた。
……実はレティにかけられた呪いには、未だ知られていない秘密があった。
呪いをかけられた人物は愛し愛された人物からの口付けにより記憶を失った後、再度同じ相手と口付けを交わすと失った記憶を取り戻すのだ。
二人がその事実を知ることは生涯無いであろう。
レティは両親である公爵夫妻に、ステアが自分の呪いを解いてくれた恩人であることを告げたのだ。
かねてよりレティがステアに思いを寄せていたことに気付いていた両親は、今回の件をもってステアとの結婚を認めることにしたのだ。
それだけではない。
捕らえられた呪術師が、レティにかけられた呪いに王太子ノアが関与していることを仄めかしたため、国王が慌てて公爵家に対し謝罪を行ったのだ。
王太子の醜態を国中に広めることだけは避けたかったのだろう。
せめてもの罪滅ぼしとして……と、国王はステアに伯爵位を与えた。
これによりステアとレティの結婚を妨げる障壁は、完全に取り払われたのである。
ちなみに王太子ノアはと言うと、父王からきつくお灸を据えられたらしく。
個人の財産の没収、行動の際には監視を付けること、などの条件で未だ王太子の座にいるらしいのだが。
肝心の本人はレティを失った喪失感から、王位などいらないと言い始めているらしいから困ったものである。
「レティ、ここにいたのですか」
半年後、二人は結婚式を挙げて正式な夫婦となった。
親しい間柄の人々のみを招待したこじんまりとした式であったが、居心地の良い素敵な式にすることができた。
ステアは伯爵となり、レティは伯爵夫人として、慣れない夫の社交をサポートしている。
未だにステアはレティに対して敬語を使う癖が抜けないらしく。
「あなたは私にとって、いつまでも高嶺の花なので」
いつまでもこんなことを言っている。
「ふふ。またあなたはそんなことを言って。この子が生まれたら、困ってしまうわよ? 」
レティの腹には新たな命が宿っていた。
「お父様らしく、堂々として欲しいわ 」
「……善処致します」
「ああ! もうダメじゃない! 」
「無理ですレティっ……」
二人の間には幸せな空気が流れていた。
……実はレティにかけられた呪いには、未だ知られていない秘密があった。
呪いをかけられた人物は愛し愛された人物からの口付けにより記憶を失った後、再度同じ相手と口付けを交わすと失った記憶を取り戻すのだ。
二人がその事実を知ることは生涯無いであろう。
4
お気に入りに追加
139
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫
梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。
それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。
飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!?
※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。
★他サイトからの転載てす★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる