【R-18】初恋相手の義兄を忘れるために他の人と結婚しようとしたら、なぜか襲われてしまいました

私の初恋

　私の初恋は五歳の時だった。
　相手は私の両親の元へ養子として引き取られた四歳年上のアンソニー。

　私の義兄である。

　侯爵令嬢として生まれた私は、何不自由のない子ども時代を送ることができていたのだが、実家であるアルメリア侯爵家には後継となるべく男子が生まれなかったのだ。
　この国では貴族の家を継ぐのは男子でなければならないと言う古くからの決まりがある。
　このままではお家存続の危機となってしまった私の実家は、慌てて養子を迎え入れることを決めたのであった。
 
　そうして白羽の矢が立ったのが、遠縁にあたる当時九歳のアンソニーであった。

　遠縁とは言うもののその暮らしは平民に近いものであったらしく、私の両親はアンソニーをもらい受ける代わりに、彼の家族に援助をすることを約束したらしい。
 
　アンソニーはとても優しく面倒見のいい少年で、私に本を読んでくれたり一緒に庭で花を観察したりと、これまで本当の兄妹のように過ごしてきたのだ。

　年齢にそぐわないほどの落ち着きを兼ね備えた見目麗しい年上の少年に、幼いながらも恋心を抱くにはそう時間はかからなかった。

　いずれは彼と結婚して侯爵家を継いでいきたい。
　私の中でそんな淡い期待が生まれ始めたのはいつ頃であっただろうか。
　それと同時に、いつまで経っても私のことを子ども扱いする彼に対して、切ない気持ちを感じるようになった。
 
「アンソニーお義兄様。私はお義兄様のことをお慕いしております」
 
　そんな中迎えた私の十六歳の誕生日。
　社交界のデビューを控えた私は、アンソニーに長年の気持ちを遂に告白した。
　貴族の娘は社交界デビューをきっかけに婚約者探しが始まる。
　誰か知らない相手との縁談が舞い込む前に、自分の気持ちを伝えておきたかったのだ。

　しかし彼の答えは私が期待していたものではなかった。
 
「アリア、ありがとう。でも君には俺よりもっとふさわしい相手がいるはずだよ」
 
　さすがに世間知らずの私でさえ、やんわりと断られたのだとわかる。
　いつもと同じ優しい微笑みを、これほど残酷だと感じたことはない。

　そしてデビュタントの当日。
　私のエスコートを断ったアンソニーは、どこかの令嬢と並んで手を取りダンスを踊っていた。

　社交界デビューを迎えたばかりでまだ特定の相手がいない私は、父に連れられてその様子を張り裂けそうな思いで見つめていたのである。