7 / 25
試練
試練
しおりを挟む
あれから数ヶ月が経った。
俺は猛練習を重ねていた。選手やコーチ、スタッフの皆さんとも打ち解け順調に日々を重ねていた。
今日は休みの日だ。俺は昔から馴染みの喫茶店に向かった。マスターとはボクシングの時から親しくしている。喫茶店のドアをあける、ガランゴロンとベルが鳴る。
「やあ、上山くん久しぶり。元気そうじゃない、よかったよ!」
「ご無沙汰してます。ちょっといろいろありまして」
俺がそういうとマスターはミルクティーを入れてくれた。あたたかいカップを手で包むと心までぬくもるようだ。
「上山くん、聞いたよ。今,サッカーしてるんだってね。しかもあの秋山譲治が監督のクリムゾンウォーリアズだっていうじゃない。柴田さんも安心してたよ」
柴田さんというのは俺がボクシングをしていた時の会長でコーチだ。あのオッサン、マスターは褒めてるけど、そんなに凄いのか?
俺はマスターに聞いた。
「オッサ、いや秋山譲治ってそんなに凄かったんですか?」
「すごいすごい!現役の時は日本だけでなく欧州でも活躍してね、"疾風のサムライ"って呼ばれた名選手だよ」
へぇー、あのオッサンが"疾風のサムライ"ね。なんでもかんでも日本人なら"サムライ"って、つけりゃいいってもんじゃないぜ。
しかし、そんな風に言われるとなるとすげー選手なのは間違いない。
「上山くん、あの秋山譲治に鍛えてもらうんだ。本当に良かったよ」
マスターはそう言ってニコニコしている。ボクシングの会長も安心しているならよかった。とにかく、あとは俺が"疾風のサムライ"をアッと言わせてやるだけだな。
俺がそんなことを考えているとドアが開いた。相変わらずデカい音でベルが鳴る。
「よう。上山じゃないか。なんだお前もここの喫茶店知っていたのか?」
「あ、立石さん。足立さんも」
俺はそういうと頭を下げた。2人共チームメイトで、もちろん先輩だ。
「上山、監督はお前に期待しているぞ。頑張れよ」
立石さんの言葉に俺は思わずミルクティーを、ブッー吐いてしまった。
「汚い奴だな。監督は期待している奴しか、しごかない。というより、指導しない」
ええ?俺を指導?俺はただ蹴られたりして走ってばっかりだったぜ。本当に指導しているのか?
「ハハハ。まあ、そのうちわかるさ。ウチの監督はひねくれてるからな」
足立さんがそう言った。2人はまた笑い始めた。オッサンが凄い選手なのはわかった。
しかし、あんな指導で本当に上手くなるのか?
そう思っているとまたドアが開いた。
真由さんだ。
「あっ、上山くん、やっぱりここにいた。監督に聞いたら、ここだっていうから。ねえ、スパイクはもう一足いるでしょ?今日はお休みだし一緒に買いに行って、帰りにどこか寄らない?」
「ひゅー。真由は上山にぞっこんか。俺たちは邪魔みたいだな。上山、じゃあな」
そういうと立石さんと足立さんはお金を支払い帰っていった。
「ほら、スパイクは必需品でしょう?行くわよ」
「スパイクなら俺1人で買いにいけますよ。今日はゆっくりしたいんスよ」
真由さんが俺の腕を強引に掴み連れていこうとする時、またドアが開いた。
「あ、蓮くん……その人は?」
ほのかさんだ。ほのかさんは何の用だ。
「ほのかさん、なんか用事ですか?」
俺がそういうとほのかさんは横を向いた。横を向いたまま、ほのかさんが言った。
「今日はお休みだから父が蓮くんに、何か栄養のあるものをご馳走してやれって……でも蓮くん行くとこあるのね。ごめんね」
そういうとほのかさんはそのまま走り去っていこうとした。俺はほのかさんの腕を握って、笑顔で言った。
「俺、今日は暇ですよ。何食わせてくれるんですか?オッサンにしごかれてクタクタなんスよ。なんか栄養あるもん食いに行きましょう」
すると真由さんがほのかさんの腕を握っている俺の手を払った。
「何?あなた。ほのかさんっていうの。父ってまさか監督?だったら監督に言っておいてください。私はトレーナーとして責任持って上山くんのスパイクを買って、栄養あるものを食べさせます」
ほのかさんは黙ってしまった。真由さんはほのかさんを睨みつけている。
俺は2人の手を握って言った。
「まあまあ、せっかくですから3人で行きましょう。そのほうが楽しいですよ。あ、俺、マスターにお茶代渡しに行きますから、待っててください」
そう言って俺は喫茶店のお勘定を払い2人と出かけた。真由さんは横を向いたままだ。ほのかさんはうつむいている。気まずい雰囲気のまま買い物と食事に俺たちは出かけた。
俺は猛練習を重ねていた。選手やコーチ、スタッフの皆さんとも打ち解け順調に日々を重ねていた。
今日は休みの日だ。俺は昔から馴染みの喫茶店に向かった。マスターとはボクシングの時から親しくしている。喫茶店のドアをあける、ガランゴロンとベルが鳴る。
「やあ、上山くん久しぶり。元気そうじゃない、よかったよ!」
「ご無沙汰してます。ちょっといろいろありまして」
俺がそういうとマスターはミルクティーを入れてくれた。あたたかいカップを手で包むと心までぬくもるようだ。
「上山くん、聞いたよ。今,サッカーしてるんだってね。しかもあの秋山譲治が監督のクリムゾンウォーリアズだっていうじゃない。柴田さんも安心してたよ」
柴田さんというのは俺がボクシングをしていた時の会長でコーチだ。あのオッサン、マスターは褒めてるけど、そんなに凄いのか?
俺はマスターに聞いた。
「オッサ、いや秋山譲治ってそんなに凄かったんですか?」
「すごいすごい!現役の時は日本だけでなく欧州でも活躍してね、"疾風のサムライ"って呼ばれた名選手だよ」
へぇー、あのオッサンが"疾風のサムライ"ね。なんでもかんでも日本人なら"サムライ"って、つけりゃいいってもんじゃないぜ。
しかし、そんな風に言われるとなるとすげー選手なのは間違いない。
「上山くん、あの秋山譲治に鍛えてもらうんだ。本当に良かったよ」
マスターはそう言ってニコニコしている。ボクシングの会長も安心しているならよかった。とにかく、あとは俺が"疾風のサムライ"をアッと言わせてやるだけだな。
俺がそんなことを考えているとドアが開いた。相変わらずデカい音でベルが鳴る。
「よう。上山じゃないか。なんだお前もここの喫茶店知っていたのか?」
「あ、立石さん。足立さんも」
俺はそういうと頭を下げた。2人共チームメイトで、もちろん先輩だ。
「上山、監督はお前に期待しているぞ。頑張れよ」
立石さんの言葉に俺は思わずミルクティーを、ブッー吐いてしまった。
「汚い奴だな。監督は期待している奴しか、しごかない。というより、指導しない」
ええ?俺を指導?俺はただ蹴られたりして走ってばっかりだったぜ。本当に指導しているのか?
「ハハハ。まあ、そのうちわかるさ。ウチの監督はひねくれてるからな」
足立さんがそう言った。2人はまた笑い始めた。オッサンが凄い選手なのはわかった。
しかし、あんな指導で本当に上手くなるのか?
そう思っているとまたドアが開いた。
真由さんだ。
「あっ、上山くん、やっぱりここにいた。監督に聞いたら、ここだっていうから。ねえ、スパイクはもう一足いるでしょ?今日はお休みだし一緒に買いに行って、帰りにどこか寄らない?」
「ひゅー。真由は上山にぞっこんか。俺たちは邪魔みたいだな。上山、じゃあな」
そういうと立石さんと足立さんはお金を支払い帰っていった。
「ほら、スパイクは必需品でしょう?行くわよ」
「スパイクなら俺1人で買いにいけますよ。今日はゆっくりしたいんスよ」
真由さんが俺の腕を強引に掴み連れていこうとする時、またドアが開いた。
「あ、蓮くん……その人は?」
ほのかさんだ。ほのかさんは何の用だ。
「ほのかさん、なんか用事ですか?」
俺がそういうとほのかさんは横を向いた。横を向いたまま、ほのかさんが言った。
「今日はお休みだから父が蓮くんに、何か栄養のあるものをご馳走してやれって……でも蓮くん行くとこあるのね。ごめんね」
そういうとほのかさんはそのまま走り去っていこうとした。俺はほのかさんの腕を握って、笑顔で言った。
「俺、今日は暇ですよ。何食わせてくれるんですか?オッサンにしごかれてクタクタなんスよ。なんか栄養あるもん食いに行きましょう」
すると真由さんがほのかさんの腕を握っている俺の手を払った。
「何?あなた。ほのかさんっていうの。父ってまさか監督?だったら監督に言っておいてください。私はトレーナーとして責任持って上山くんのスパイクを買って、栄養あるものを食べさせます」
ほのかさんは黙ってしまった。真由さんはほのかさんを睨みつけている。
俺は2人の手を握って言った。
「まあまあ、せっかくですから3人で行きましょう。そのほうが楽しいですよ。あ、俺、マスターにお茶代渡しに行きますから、待っててください」
そう言って俺は喫茶店のお勘定を払い2人と出かけた。真由さんは横を向いたままだ。ほのかさんはうつむいている。気まずい雰囲気のまま買い物と食事に俺たちは出かけた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
幽子さんの謎解きレポート~しんいち君と霊感少女幽子さんの実話を元にした本格心霊ミステリー~
しんいち
キャラ文芸
オカルト好きの少年、「しんいち」は、小学生の時、彼が通う合気道の道場でお婆さんにつれられてきた不思議な少女と出会う。
のちに「幽子」と呼ばれる事になる少女との始めての出会いだった。
彼女には「霊感」と言われる、人の目には見えない物を感じ取る能力を秘めていた。しんいちはそんな彼女と友達になることを決意する。
そして高校生になった二人は、様々な怪奇でミステリアスな事件に関わっていくことになる。 事件を通じて出会う人々や経験は、彼らの成長を促し、友情を深めていく。
しかし、幽子にはしんいちにも秘密にしている一つの「想い」があった。
その想いとは一体何なのか?物語が進むにつれて、彼女の心の奥に秘められた真実が明らかになっていく。
友情と成長、そして幽子の隠された想いが交錯するミステリアスな物語。あなたも、しんいちと幽子の冒険に心を躍らせてみませんか?
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる