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玉の力
玉の力
しおりを挟む翌日、私は職場に向かった。久しぶりの出勤にすごく緊張したけど、真希や静佳に会えると思うと嬉しい。
風がすごく気持ちよくて、空もとてもまぶしい。何より自分の病気が治ったことでなんだかワクワクする。足取りも軽い感じで本当に心地よい。
やがて、職場に着いた。私の職場は施設なんだけど、お年寄りの方々の施設。
真希や静佳は現場で働いているけど、私は内気で人と話すことが苦手だから、事務の仕事をしている。
「やあ、かの子ちゃん。久しぶりだね。本当に良かった。完治したんだってね」
施設長が嬉しそうに私に笑顔で言った。
「かの子!おめでとう!よかったね!本当によかった!」
「かの子!待ってたよ!これからは、また3人で楽しくやろうね!」
真希と静佳が私に抱きつきながら言う。私はとても幸せだと思いながら、みんなに頭を下げて言った。
「施設長、真希、静佳、本当にありがとうございます!これから私がんばります!」
私は本当に素敵な良い人達に囲まれている。自分の幸せが本当に有り難くて涙が出てきた。
「何、他人行儀なことしてんのよ。さあ、今日も頑張るわよ!かの子、帰りどこかでご飯食べよう」
静佳はそういうとすごくいたずらっぽく笑った。そのまま、静佳と真希は私に手を振りながら職場に戻った。
「さあ、かの子ちゃん、また頑張ろうか。でも無理しないで下さいよ。病後だからね。ゆっくりでいいからね」
「はい」
施設長の言葉に私はこたえ、会釈した。
そのまま机に向かっていく、私の机は隅っこだ。
以前、施設長に頼んで隅っこにしてもらった。
こんなところも内気だからなんだろうか。
「施設長!施設長!」
突然、誰かの大声が聞こえてきた。なんだろう?よく聞くと静佳の声だ。
「施設長、真希が倒れたんです!かの子、救急車呼んで!早く!」
静佳があわてて落ち着かない様子で大声で叫ぶ。真希は口から泡を吹いている。
施設長もあわてた様子だ。
「かの子!何してるの!早く救急車!真希が倒れたんだよ!」
静佳がまたそう言ったけど、私は冷静だった。私はゆっくり真希の近くに近づき、手をかざして真希が治るように念じた。
「う、うーん。あれ?私どうしたの?」
そういうと真希はスクッと立ち上がった。
「真希、大丈夫なの?かの子、真希に何かした?」
真希はなんとも無いと手足を伸ばしたり縮めたりして私達に示す。
この部屋にいるすべての人の視線が私に注がれる。視線がとても痛い。
「あっ、あのー。わ、私、真希治しただけで……」
私がそういうとみんな目をまん丸にして、中にはキョトンとしている人もいる。
「かの子、治したって、どうやって治したの?」
「あっ、あのね、私、念じたら、なんでもできるの。私の病気もそうやって治したんだけど……」
私は静佳にそういうと、部屋の端にある本箱を指差して、本箱が浮くように念じた。
本箱はまるで風船のように浮かんでいる。
「かの子、すごいよ!いつそんな力、身につけたの?」
静佳が大喜びでじゃれつくようにしがみつきながら言う。
「あのー。真希、大丈夫かな?」
私がそう言うと真希は私の手を握り、すごく感謝しながら、私に何度もお礼を言ってくれた、
「かの子.本当にありがとう!かの子がいなかったら私危なかったよ。本当にありがとう!」
私は黙って、うなずいた。
そう、この出来事からなんだ。私があんな恐ろしい出来事に巻き込まれるのは…。今はそんなことも知らずに私は真希や静佳と静かに流れる時の中、笑顔ではしゃいでいた。
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