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本編2
ヒロインは仕事をする
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「だれ?」
後ろを振り向いて見ても、の横を見ても誰もいない。
聞き間違いとは思えないほどはっきり聞こえた気がした…
「無視ね。やっぱりわたくしのこと恨んでるんじゃない!みてくださる?こんな酷い態度を取られているんです!わたくしの言ってることが正しかったですわよね?ヴォルフレットさまぁ!!早く私のところに来てください!!」
「…あなたは誰?」
試しに真っ赤になって怒っているクレア様に向かって話しかけてみる。この場にはもう、この人しかいないから…
「わたくしは…わたくしはクレア・ティンクライン!公爵令嬢よ?何を言っているの?!はやく、あなたのポジションを私に譲りなさいよ!!そういう物語でしょ?!」
「そういう物語って?私には私の人生があるの。あなたに譲るつもりも、お裾分けするつもりもないわ。」
「平民のくせに公爵家に楯突くの?!どうなっても知らないわよ」
余計怒ってしまったクレア様は再び両手に黒い炎を纏わせる。先程よりも大きな炎がゆらめいている。
「アマリリス、もうだめだ。始末しよう」
「そんな!!まって…」
「お姉ちゃん、あまいよ。ここはワタシが…」
ヴォルフとイルーラが構える。一気に勝負をつけるつもりのようま。その時また、声がする。
『もう我儘なんて言わない、優しくなるお願い、返して!!』
待って!!と止めようとした時、ヴォルフの青い炎がクレア様に直撃する。
「きゃあああああ!!!よくもやったわね!ドレイクに言いつけてやるんだから!!!」
『熱い!やめて!!助けて!』
咄嗟に水をクレア様に向かって打ち込む。水流で倒れてしまったのは少し多めに見てもらいたい。ちょっと…いいえ、だいぶ仕返ししても許されるとおもうの。
「…な…なによ…何であんたが助けるの?」
「お姉ちゃんは、あまいね。」
イルーラがはぁ、とため息をつきながら私のすぐ後ろに控えてくれる。何かあった時にはすぐに…と呟く。
何かあることがないように気をつけながら、恐る恐る話しかけてみる。
「クレア様、あなたは…だれ?」
「わたくしは…わたくし…は…」
「返してって、言ってるよ。あなたの心が。」
「返したらわたくしはどうなるのよ!!」
ヴォルフとイルーラがキョトンとした顔をしている。私だってよくわからない。クレア様はその場に尻餅をついたまま、ガタガタと震え出した。
「返して返してって騒ぐだけで、人に嫌われてるクレアはこの後どうなってしまうの?!婚約破棄されて、みんなに嫌われて…一人寂しく生きていくのよ?!だから、わたくし…」
ピタッと動きが止まった。
そのまま、感情の篭らない顔で何かを考え込んでいるみたいだ。そっと近づいてみる。手を触れられるくらいそばにいくと、クレア様がボソッと小さな声で呟く。
「わたくしもクレアよ。でも、もう一つの記憶もクレアなの。愛して欲しくて必死だった。だから、わたくしがうまくやろうと思ったの。愛されたかった。いけない?」
ポロポロ涙を流しながら、いつもはピンとたった背中を小さく丸めて、小さな子供みたいにうずくまってしまった。
「一人で抱えていたことが大きすぎて、辛かったんですね。」
「失敗したら、わたくしはひとりぼっちよ。そんなの耐えられないわ!誰もかれもみんなあなたを好きになってわたくしを捨てるのよ。」
「本当の…クレア様はどんな人なんですか?」
「うっひっく…ブラッドリー様を取らないでって叫びたかった。わたくしのことを誰か認めてって言いたかった。でも、誰も…何かあげないとわたくしを見てくれない。泣いてないと心配してくれない。どうしたらよかったの?」
「それは…私にはわかりません。あなたがしたことで許されないこともたくさんあります。イルーラを傷つけたこと、私を嘘で貶めた事。それを償って、その間にどうしたらいいか一緒に考えませんか?」
「?一緒にって?」
「私があなたを治療します。心の治療です。治ったら、イルーラと私に謝罪してください。学園の方達にも、ちゃんと説明してください。それが責任です。」
「辛いわね…」
「自分でしたことは自分で責任をとってもらいます。私もそんなにお人好しじゃないんですから。」
ヴォルフが外に控えていた護衛たちに合図を送る。
暴れる様子のないクレア様は大人しく連れて行かれた。
後ろを振り向いて見ても、の横を見ても誰もいない。
聞き間違いとは思えないほどはっきり聞こえた気がした…
「無視ね。やっぱりわたくしのこと恨んでるんじゃない!みてくださる?こんな酷い態度を取られているんです!わたくしの言ってることが正しかったですわよね?ヴォルフレットさまぁ!!早く私のところに来てください!!」
「…あなたは誰?」
試しに真っ赤になって怒っているクレア様に向かって話しかけてみる。この場にはもう、この人しかいないから…
「わたくしは…わたくしはクレア・ティンクライン!公爵令嬢よ?何を言っているの?!はやく、あなたのポジションを私に譲りなさいよ!!そういう物語でしょ?!」
「そういう物語って?私には私の人生があるの。あなたに譲るつもりも、お裾分けするつもりもないわ。」
「平民のくせに公爵家に楯突くの?!どうなっても知らないわよ」
余計怒ってしまったクレア様は再び両手に黒い炎を纏わせる。先程よりも大きな炎がゆらめいている。
「アマリリス、もうだめだ。始末しよう」
「そんな!!まって…」
「お姉ちゃん、あまいよ。ここはワタシが…」
ヴォルフとイルーラが構える。一気に勝負をつけるつもりのようま。その時また、声がする。
『もう我儘なんて言わない、優しくなるお願い、返して!!』
待って!!と止めようとした時、ヴォルフの青い炎がクレア様に直撃する。
「きゃあああああ!!!よくもやったわね!ドレイクに言いつけてやるんだから!!!」
『熱い!やめて!!助けて!』
咄嗟に水をクレア様に向かって打ち込む。水流で倒れてしまったのは少し多めに見てもらいたい。ちょっと…いいえ、だいぶ仕返ししても許されるとおもうの。
「…な…なによ…何であんたが助けるの?」
「お姉ちゃんは、あまいね。」
イルーラがはぁ、とため息をつきながら私のすぐ後ろに控えてくれる。何かあった時にはすぐに…と呟く。
何かあることがないように気をつけながら、恐る恐る話しかけてみる。
「クレア様、あなたは…だれ?」
「わたくしは…わたくし…は…」
「返してって、言ってるよ。あなたの心が。」
「返したらわたくしはどうなるのよ!!」
ヴォルフとイルーラがキョトンとした顔をしている。私だってよくわからない。クレア様はその場に尻餅をついたまま、ガタガタと震え出した。
「返して返してって騒ぐだけで、人に嫌われてるクレアはこの後どうなってしまうの?!婚約破棄されて、みんなに嫌われて…一人寂しく生きていくのよ?!だから、わたくし…」
ピタッと動きが止まった。
そのまま、感情の篭らない顔で何かを考え込んでいるみたいだ。そっと近づいてみる。手を触れられるくらいそばにいくと、クレア様がボソッと小さな声で呟く。
「わたくしもクレアよ。でも、もう一つの記憶もクレアなの。愛して欲しくて必死だった。だから、わたくしがうまくやろうと思ったの。愛されたかった。いけない?」
ポロポロ涙を流しながら、いつもはピンとたった背中を小さく丸めて、小さな子供みたいにうずくまってしまった。
「一人で抱えていたことが大きすぎて、辛かったんですね。」
「失敗したら、わたくしはひとりぼっちよ。そんなの耐えられないわ!誰もかれもみんなあなたを好きになってわたくしを捨てるのよ。」
「本当の…クレア様はどんな人なんですか?」
「うっひっく…ブラッドリー様を取らないでって叫びたかった。わたくしのことを誰か認めてって言いたかった。でも、誰も…何かあげないとわたくしを見てくれない。泣いてないと心配してくれない。どうしたらよかったの?」
「それは…私にはわかりません。あなたがしたことで許されないこともたくさんあります。イルーラを傷つけたこと、私を嘘で貶めた事。それを償って、その間にどうしたらいいか一緒に考えませんか?」
「?一緒にって?」
「私があなたを治療します。心の治療です。治ったら、イルーラと私に謝罪してください。学園の方達にも、ちゃんと説明してください。それが責任です。」
「辛いわね…」
「自分でしたことは自分で責任をとってもらいます。私もそんなにお人好しじゃないんですから。」
ヴォルフが外に控えていた護衛たちに合図を送る。
暴れる様子のないクレア様は大人しく連れて行かれた。
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