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番外編
先生は手に入れる(ヴォルフレットからの世界)
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ある日、3年の座学が終わったので廊下に出ると、アマリリスの声が聞こえた気がした。
振り返ると、彼女が3年の生徒とちょうどぶつかっているところだった。
あれは、ランプールか。あいつはアマリリスが気になるようでちょくちょく声をかけていた。
元々、距離の近い男でアマリリスにベタベタと触っているのが気に入らない。
婚約者とか言う公爵令嬢も、俺を知ったような口調で話しかけてくるのが気に食わない。
『先生、お辛かったでしょ。もう大丈夫ですからね』
とか言われた日にはこいつの脳内から俺の記憶を消してやりたくなった。
ランプールと一緒にいるアマリリスを見ては泣いて見せたり、変に2人をくっつけようとして傷ついたような顔をしたりしていた。やっぱり女はよくわからん。
そんな事を考えていたら、アマリリスが広範囲の魔法を発動した。青い綺麗な花が辺りに咲き誇る。
慌てて、走って逃げるアマリリスを捕まえて移動魔法で研究室へ飛ぶ。
胸の中に突っ込んできた時にみた、あの上目遣いの小動物のようなアマリリスの姿は…正直たまらなかった。
「すみません!先生。あの、慌てていて。」
と、気を遣ったのが慌てて俺の手元から離れていった。
それが少し悔しくて、そっけない口調になってしまう。
「俺を呼んだかと思えば、ランプールに絡まれて何やってんだ。」
「ち!!違いますよ!婚活とかじゃないです!!」
ぐさりと心臓にナイフが刺さったような痛みが走った。
俺が彼女にそう言ったんだ。ずっと気にしていたのかと。いますぐにでもあの時の記憶を消し去りたかった。
「わかってる。何を慌ててる?お前が魔法馬鹿だって言うことは俺が一番よくわかってる。」
何とか誤魔化そうと、褒めてみたがうまくいかない。一旦落ち着こうと、窓際のビーカーでお湯を沸かす。
「でも、先生怒ってますよね?私が魔法を使ったからですか?」
怒ってる?
俺が?
怒ってるんだ…そうか。そう思った瞬間、手に力が入ってしまい、コップ代わりのビーカーを握り潰していた。
「先生!血が出てる!洗わなきゃです!」
慌てたアマリリスはシンクの上まで無理やり俺の手を引っ張って持っていく。普段絶対に触ってこないのに。
よほど慌てていたのか、水道からの水ではなくわざわざ魔法で水を出して流してくれた。
癒しの力のある水のおかげで傷は半分以上塞がっていた。暖かくて穏やかな力だ。
まるで彼女のような。
もう、我慢できなかった。
「あ!よかった。先生、ほら全然切れてなかったです…よ?」
ふと見上げてきた彼女の唇に、いつのまにか無意識にキスをしていた。誰かに触れてほしくなかった。
誰にも触れてほしくなかった。
彼女も嫌がらず、受け入れてくれた。
今までの沸々とした怨みや苛つきが霧のように体から抜け出た。やっと手に入れた。
そう思ってからは、止められなかった。
まずは、魔力制御を完璧にするため今まで以上に復習、予習に力を入れた。短期間で成績優秀者になるほどに彼女はメキメキと上達した。
相変わらず、彼女からは触れてこなかった。時々手が触れると真っ赤になって慌てて距離を取る。
そこで俺が寂しそうな顔をすると、遠くの方で「ち…違くて!!」とてれている姿が可愛いかった。
少し疲れてホームシックになった時に、俺のローブの端をつまんで「あと少し一緒にいて欲しいです」と言われた時には「朝まで一緒にいよう」と言いそうになった。
我慢して言わなかった俺は偉いと思う。
校長が時々ニヤニヤしながら見ているのかムカついたが、これもあいつのおかげかと思うと何も言えなかった。
ランプールは相変わらずアマリリスにちょっかいを出していた。テスト期間近くになると、学園では不穏な噂が流れ始めた。
『アマリリスが魅了魔法をつかい、男を誑かしている』
と言う噂だ。出所は定かではないが生徒会も噂の調査に乗り出したらしい。魔法科の方ではランプールと、言い寄って相手にされなかった第二王子のブルースがゴタゴタ言い出したらしい。
クレア・ティンクラインが裏で手を回しているらしいと騎士科のカインとか言う坊主とその婚約者が俺に報告に来てくれた。
『あの子はいつも闘技場で練習をしているんです。僕は、努力している人間を陥れるようなことは許せない、先生、彼女は潔白です。時々練習の相手をしていましたが、彼女は僕が誰だかもわかっていないでしょう』
『私も騎士を目指していますから、カイン様と一緒に練習をしています。彼が彼女と関わる時はいつも私もいます。優しくて、頑張り屋さんの…妹のような子です。でも、我々では身分が低くてクレア様の言葉を否定することができません。先生、彼女を助けてあげてください』
その言葉を聞いて、校長と俺も調査に動き出すことにした。
調べていくうちにクレア・ティンクラインが本気でそう思っていて、本気でアマリリスのために動いているつもりである事を知った。
その時には、彼女の謹慎が決まっていた。
行き先は、嬉しいことに俺の国だ。
そのまま、その計画にのって彼女を連れて帰ることにした。
兄に久しぶりに連絡すると、両手をあげて喜んだ。
すまなかったと、落ち着いたからもう大丈夫だと。
想い人を連れて帰りたいと伝えると、兄と兄嫁が大騒ぎ、息子の王子たちも大騒ぎしていた。
「18歳で家出してはや10年!!やっとか!」
と大喜びしていた。
兄は40で息子たちは皆、16~18になる。アマリリスは17だ。なんだか合わせたくなくなってきた。しばらく隠しておこうかな?
いよいよ断罪の時。校長を連れて闘技場に姿を現すとアマリリスは言われのない罪を着せられている真っ最中だった。
さすがは代表者たち、俺の殺気を受けて皆青い顔をしていた。少しづつ近寄る俺を見て、アマリリスを守るようにして皆一様に一歩前へ出た。素晴らしい人材だ顔を覚えておいてやろう。
煩わしかったので、わざと野暮ったく見せていた幻覚魔法を解いて本当の姿でアマリリスに求婚する。
「妻として」
そう口にした瞬間、彼女は不安そうに
「先生も…魅了されていたら…」
と呟いた。
ちがう。
違う。
ちゃんと好きだから。
「子どもを作ろう」
後から考えるともっといいセリフなかったの?と思う。
我ながら、やばいセリフを口走ったと思う。慌てて挽回したが、子どもを作ろうがパワーワード過ぎてアマリリスは思考が停止してしまったようだ。
最後に彼女の癒しの魔力を見せつけて、実にあっさりその場を去ってやった。
彼女の癒しの魔力は継続してかけられることに意味がある。何度か重ねがけすることで、確実に回復する。あの程度では回復は一時的でやがて元に戻るだろう。
転移した先にしてやったりと兄夫婦が待ち構えていたこと以外は全てうまくいった。
彼女の希望で治療院を開き、そこで経験を積み魔力の制御をしながら彼女は美しく成長した。1年後18になったところで、結婚をした。
初夜に、「君がいいと言うまで手を出さない。大切にしたいんだ」と勇気を出して伝えたら、「あの時、こ…子どもを…つくろうって…いったのに?とても…嬉しかったんだよ?」と半べそ真っ赤な顔で言われて理性を捨てることとなった。
時々孤児院にも顔を出している。
あの日彼女の記憶で見た子どもたちが少し大人になっていた。
そして、今、彼女にそっくりの愛らしい男の子と自分に似たやけに凛々しい女の子の双子を抱きしめながら、明日のお披露目会に憂鬱なため息を漏らしている愛する妻の憂いをどう晴そうか…そればかりを考えている。
玄関ホールから騒がしい声がする。甥っ子達が、双子に会いにきたのか、アマリリスに治療してもらいにきたのか…両方か。どちらにせよ、ちょうどいい、皆で作戦を立てねばと思う。
振り返ると、彼女が3年の生徒とちょうどぶつかっているところだった。
あれは、ランプールか。あいつはアマリリスが気になるようでちょくちょく声をかけていた。
元々、距離の近い男でアマリリスにベタベタと触っているのが気に入らない。
婚約者とか言う公爵令嬢も、俺を知ったような口調で話しかけてくるのが気に食わない。
『先生、お辛かったでしょ。もう大丈夫ですからね』
とか言われた日にはこいつの脳内から俺の記憶を消してやりたくなった。
ランプールと一緒にいるアマリリスを見ては泣いて見せたり、変に2人をくっつけようとして傷ついたような顔をしたりしていた。やっぱり女はよくわからん。
そんな事を考えていたら、アマリリスが広範囲の魔法を発動した。青い綺麗な花が辺りに咲き誇る。
慌てて、走って逃げるアマリリスを捕まえて移動魔法で研究室へ飛ぶ。
胸の中に突っ込んできた時にみた、あの上目遣いの小動物のようなアマリリスの姿は…正直たまらなかった。
「すみません!先生。あの、慌てていて。」
と、気を遣ったのが慌てて俺の手元から離れていった。
それが少し悔しくて、そっけない口調になってしまう。
「俺を呼んだかと思えば、ランプールに絡まれて何やってんだ。」
「ち!!違いますよ!婚活とかじゃないです!!」
ぐさりと心臓にナイフが刺さったような痛みが走った。
俺が彼女にそう言ったんだ。ずっと気にしていたのかと。いますぐにでもあの時の記憶を消し去りたかった。
「わかってる。何を慌ててる?お前が魔法馬鹿だって言うことは俺が一番よくわかってる。」
何とか誤魔化そうと、褒めてみたがうまくいかない。一旦落ち着こうと、窓際のビーカーでお湯を沸かす。
「でも、先生怒ってますよね?私が魔法を使ったからですか?」
怒ってる?
俺が?
怒ってるんだ…そうか。そう思った瞬間、手に力が入ってしまい、コップ代わりのビーカーを握り潰していた。
「先生!血が出てる!洗わなきゃです!」
慌てたアマリリスはシンクの上まで無理やり俺の手を引っ張って持っていく。普段絶対に触ってこないのに。
よほど慌てていたのか、水道からの水ではなくわざわざ魔法で水を出して流してくれた。
癒しの力のある水のおかげで傷は半分以上塞がっていた。暖かくて穏やかな力だ。
まるで彼女のような。
もう、我慢できなかった。
「あ!よかった。先生、ほら全然切れてなかったです…よ?」
ふと見上げてきた彼女の唇に、いつのまにか無意識にキスをしていた。誰かに触れてほしくなかった。
誰にも触れてほしくなかった。
彼女も嫌がらず、受け入れてくれた。
今までの沸々とした怨みや苛つきが霧のように体から抜け出た。やっと手に入れた。
そう思ってからは、止められなかった。
まずは、魔力制御を完璧にするため今まで以上に復習、予習に力を入れた。短期間で成績優秀者になるほどに彼女はメキメキと上達した。
相変わらず、彼女からは触れてこなかった。時々手が触れると真っ赤になって慌てて距離を取る。
そこで俺が寂しそうな顔をすると、遠くの方で「ち…違くて!!」とてれている姿が可愛いかった。
少し疲れてホームシックになった時に、俺のローブの端をつまんで「あと少し一緒にいて欲しいです」と言われた時には「朝まで一緒にいよう」と言いそうになった。
我慢して言わなかった俺は偉いと思う。
校長が時々ニヤニヤしながら見ているのかムカついたが、これもあいつのおかげかと思うと何も言えなかった。
ランプールは相変わらずアマリリスにちょっかいを出していた。テスト期間近くになると、学園では不穏な噂が流れ始めた。
『アマリリスが魅了魔法をつかい、男を誑かしている』
と言う噂だ。出所は定かではないが生徒会も噂の調査に乗り出したらしい。魔法科の方ではランプールと、言い寄って相手にされなかった第二王子のブルースがゴタゴタ言い出したらしい。
クレア・ティンクラインが裏で手を回しているらしいと騎士科のカインとか言う坊主とその婚約者が俺に報告に来てくれた。
『あの子はいつも闘技場で練習をしているんです。僕は、努力している人間を陥れるようなことは許せない、先生、彼女は潔白です。時々練習の相手をしていましたが、彼女は僕が誰だかもわかっていないでしょう』
『私も騎士を目指していますから、カイン様と一緒に練習をしています。彼が彼女と関わる時はいつも私もいます。優しくて、頑張り屋さんの…妹のような子です。でも、我々では身分が低くてクレア様の言葉を否定することができません。先生、彼女を助けてあげてください』
その言葉を聞いて、校長と俺も調査に動き出すことにした。
調べていくうちにクレア・ティンクラインが本気でそう思っていて、本気でアマリリスのために動いているつもりである事を知った。
その時には、彼女の謹慎が決まっていた。
行き先は、嬉しいことに俺の国だ。
そのまま、その計画にのって彼女を連れて帰ることにした。
兄に久しぶりに連絡すると、両手をあげて喜んだ。
すまなかったと、落ち着いたからもう大丈夫だと。
想い人を連れて帰りたいと伝えると、兄と兄嫁が大騒ぎ、息子の王子たちも大騒ぎしていた。
「18歳で家出してはや10年!!やっとか!」
と大喜びしていた。
兄は40で息子たちは皆、16~18になる。アマリリスは17だ。なんだか合わせたくなくなってきた。しばらく隠しておこうかな?
いよいよ断罪の時。校長を連れて闘技場に姿を現すとアマリリスは言われのない罪を着せられている真っ最中だった。
さすがは代表者たち、俺の殺気を受けて皆青い顔をしていた。少しづつ近寄る俺を見て、アマリリスを守るようにして皆一様に一歩前へ出た。素晴らしい人材だ顔を覚えておいてやろう。
煩わしかったので、わざと野暮ったく見せていた幻覚魔法を解いて本当の姿でアマリリスに求婚する。
「妻として」
そう口にした瞬間、彼女は不安そうに
「先生も…魅了されていたら…」
と呟いた。
ちがう。
違う。
ちゃんと好きだから。
「子どもを作ろう」
後から考えるともっといいセリフなかったの?と思う。
我ながら、やばいセリフを口走ったと思う。慌てて挽回したが、子どもを作ろうがパワーワード過ぎてアマリリスは思考が停止してしまったようだ。
最後に彼女の癒しの魔力を見せつけて、実にあっさりその場を去ってやった。
彼女の癒しの魔力は継続してかけられることに意味がある。何度か重ねがけすることで、確実に回復する。あの程度では回復は一時的でやがて元に戻るだろう。
転移した先にしてやったりと兄夫婦が待ち構えていたこと以外は全てうまくいった。
彼女の希望で治療院を開き、そこで経験を積み魔力の制御をしながら彼女は美しく成長した。1年後18になったところで、結婚をした。
初夜に、「君がいいと言うまで手を出さない。大切にしたいんだ」と勇気を出して伝えたら、「あの時、こ…子どもを…つくろうって…いったのに?とても…嬉しかったんだよ?」と半べそ真っ赤な顔で言われて理性を捨てることとなった。
時々孤児院にも顔を出している。
あの日彼女の記憶で見た子どもたちが少し大人になっていた。
そして、今、彼女にそっくりの愛らしい男の子と自分に似たやけに凛々しい女の子の双子を抱きしめながら、明日のお披露目会に憂鬱なため息を漏らしている愛する妻の憂いをどう晴そうか…そればかりを考えている。
玄関ホールから騒がしい声がする。甥っ子達が、双子に会いにきたのか、アマリリスに治療してもらいにきたのか…両方か。どちらにせよ、ちょうどいい、皆で作戦を立てねばと思う。
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