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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?

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「いやいや、ちょ、ちょっと待った! 落ち着け! この子、子どもだから! まだ十二歳だからっ」
「……歳は関係ない。いくつであろうと男である限りたとえ赤ん坊でもソウシに馴れ馴れしく触れることは許さない」
「なにそのミクロとかくらいの次元の狭量!」

 心が狭いにもほどがある……!
 
 だが、剣の先を向けられているというのにさすがはというべきか、エグバードは少しも怯んでいなかった。
 
「フン、無礼者が。誰に向かって剣を向けておる。私は国王エゼルバルドが嫡男、エグバード・セルディック。次期国王であるぞ」
「そ、そうそう! この子、次期国王様なんだよ! だからいろいろヤバいからここは剣を引こう? な? な?」

 頼むからこれ以上面倒ごとを増やすなと懇願混じりに優しく言い諭すが、ドゥーガルドに通じるはずがなかった。
 
「……次期国王だから何だ。ソウシと私の間を裂く者はたとえ神でも許さない」
「じゃあもう一体何なら許すわけ!?」

 怖いもの知らずにも程があるだろ! 少しは俺の長いものには巻かれろ精神を見習え!
 
 エグバードは小馬鹿にするように鼻でハッと息を吐いた。
 
「ソウシとどういう関係かは知らぬが、ソウシはこれからこのダイナの世話係として仕えるのだ。ダイナの世話係ということはつまりは飼い主である私専属の侍女でもある。今後は私の許可なく会うことを禁ずる!」
「え! いや、ちょ、待っ……!」
「……残念だがソウシは俺の嫁だ。明日にでも家族に紹介して正式に夫婦の契りを結ぶ予定だ。我がベレスフォード家に嫁いだソウシを外で働かせるはずがないだろう。嫁のソウシの勤めは俺の帰りを家で待ち笑顔で出迎えることのみだ」
「初耳ですけど!?」

 なんでこいつら俺の意思を無視してここまで具体的なこと未来予想図が描けるんだ!?
 
「フッ、ソウシも嫌がっているじゃないか。嫌がる女を無理矢理嫁にするとは、名家ベレスフォード家も落ちたものだな」

 エグバードの挑発的な言葉に、ドゥーガルドの眉がぴくりと動いた。
 
「……俺のことはいくら馬鹿にしてもいいが、家のことを悪く言うのは聞き捨てならない」

 目が鋭くなったドゥーガルドに、俺は慌てて間に入った。

「ちょ、ちょっと待てよ! 子ども相手にマジになるなよ」
「……じゃあ俺の家に嫁入りすることをこの子どもにソウシからちゃんと説明してやってくれ。そうすれば俺も引く」
「なにどさくさに紛れて嫁入りコースに持って行かせようとしてんの!? 嫁になんかいかねぇよ!?」

 というか、嫁云々の前に俺は男だから! 嫁入り不可!

「いいぞ、ソウシ。その調子だ。ちゃんときっぱり断っておけ。これからダイナと私に仕えるのだ。面倒な色恋沙汰はここで片付けておけ」
「え、いや、それも違うくて……」
「貴様ら、さっきから黙ってれば勝手なことばかり! ソウシは私の番だ!」

 ついには耐えかねたようで鼻息を荒くしたクロまで参戦してくる始末……。
 頭が痛いどころか破裂しそうだ……。
 
「私の専属侍女だ!」
「……俺の嫁だ」
「番だ!」

 三方向から各々の主張という名の妄言が激突して醜い火花を散らせる。
 
 というか、俺の意思をガン無視でよくここまで力強く主張できるな!
 いっそ感心する……って、いや、感心してる場合じゃない!
 
 どうやってこの妄言合戦の渦中から抜け出そうかと必死に考えていると、
 
「見つけたぞ! この腐れ淫乱荷物持ち!」

 罵声に近い大声が上から降ってきた。
 声の主を確かめるまでもない。こんな下品な言葉選びをするのは俺の知る中で一人だけだ。
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