80 / 266
第2章 異世界でももふもふは正義!?
10
しおりを挟む
どうやらアーロンが剣でモンスターを薙ぎ払ってくれたようだ。
吹っ飛ばされたモンスターは木にぶつかって卒倒していた。
「アーロン……!」
正直、あの利己主義の塊であるアーロンが助けに来てくれるとは微塵も思っていなかった。
一日に平均して約三百回は死ねと思っている相手の顔が、こんなにも眩しく見える日がくるとは思ってもいなかった。
ありがとう、と言い掛けて、いやいや待て待てと思い留まる。
考えてみればこんな状況になったのも全てこいつが俺に水汲みへ行けと命じたせいだ。
俺は目尻を吊り上げてキッとアーロンを睨みつけた。
「助けに来てやった、じゃねぇよ! 全部お前のせいだろうが!」
「は? なんで俺のせいになるんだよ」
心底不可解そうに眉を顰める男に、ぴきりとこめかみに青筋が立った。
「お前が水汲みに行けなんて言わなければこんなことにならなかったからだよ! というか、魔除けも全然効かねぇし!」
首からぶら下げている魔除けの小袋を手に持ってアーロンに突き出した。
「魔除けとはいってないだろ。魔除けみたいなもん、って言ったんだ」
「魔除けみたいなもんって言われたら魔除けの効果を期待するだろっ」
軽い調子で言葉遊びのような言い逃れをするアーロンに食ってかかると、面倒臭そうに溜め息を吐かれた。
「いいじゃねぇか、細かいことは。おかげで命は助かったみたいだし」
そう言ってアーロンは口元にニッと嫌な笑みを浮かべた。
アーロンの視線が俺の股間に向けられている気付いて、俺は慌てて脚を閉じた。
「人の股間をじっと見るな!」
「いやぁ、濡れてるなぁと思って。あまりの怖さに漏らしたか?」
「誰が漏らすか! これは、その……」
自分の名誉のため力強く否定したが、事実を話すのは憚られた。
モンスターに欲情されて一物をすりつけられたというのもなかなかに男の威信を傷付けるものだ。
言い淀んでいると、アーロンが鼻でハッと笑った。
「当ててやろうか? モンスターに欲情されてチンコをすりつけられたんだろ」
「え!」
な、なんで分かったんだ!?
まるで一部始終を見ていたかのような……、いや本当にどこかから一部始終を見ていたのかもしれない。
そしてギリギリのところで俺を助け、その謝礼を請求する魂胆なのかもしれない。
あり得る、大いにあり得る。アーロンはそういう人間なのだ。
「見てたなら最初から助けろよ!」
「は? 何言ってんだ?」
心底意味が分からないといった表情でアーロンが眉を顰めた。
その白々しさにイラッとする。
吹っ飛ばされたモンスターは木にぶつかって卒倒していた。
「アーロン……!」
正直、あの利己主義の塊であるアーロンが助けに来てくれるとは微塵も思っていなかった。
一日に平均して約三百回は死ねと思っている相手の顔が、こんなにも眩しく見える日がくるとは思ってもいなかった。
ありがとう、と言い掛けて、いやいや待て待てと思い留まる。
考えてみればこんな状況になったのも全てこいつが俺に水汲みへ行けと命じたせいだ。
俺は目尻を吊り上げてキッとアーロンを睨みつけた。
「助けに来てやった、じゃねぇよ! 全部お前のせいだろうが!」
「は? なんで俺のせいになるんだよ」
心底不可解そうに眉を顰める男に、ぴきりとこめかみに青筋が立った。
「お前が水汲みに行けなんて言わなければこんなことにならなかったからだよ! というか、魔除けも全然効かねぇし!」
首からぶら下げている魔除けの小袋を手に持ってアーロンに突き出した。
「魔除けとはいってないだろ。魔除けみたいなもん、って言ったんだ」
「魔除けみたいなもんって言われたら魔除けの効果を期待するだろっ」
軽い調子で言葉遊びのような言い逃れをするアーロンに食ってかかると、面倒臭そうに溜め息を吐かれた。
「いいじゃねぇか、細かいことは。おかげで命は助かったみたいだし」
そう言ってアーロンは口元にニッと嫌な笑みを浮かべた。
アーロンの視線が俺の股間に向けられている気付いて、俺は慌てて脚を閉じた。
「人の股間をじっと見るな!」
「いやぁ、濡れてるなぁと思って。あまりの怖さに漏らしたか?」
「誰が漏らすか! これは、その……」
自分の名誉のため力強く否定したが、事実を話すのは憚られた。
モンスターに欲情されて一物をすりつけられたというのもなかなかに男の威信を傷付けるものだ。
言い淀んでいると、アーロンが鼻でハッと笑った。
「当ててやろうか? モンスターに欲情されてチンコをすりつけられたんだろ」
「え!」
な、なんで分かったんだ!?
まるで一部始終を見ていたかのような……、いや本当にどこかから一部始終を見ていたのかもしれない。
そしてギリギリのところで俺を助け、その謝礼を請求する魂胆なのかもしれない。
あり得る、大いにあり得る。アーロンはそういう人間なのだ。
「見てたなら最初から助けろよ!」
「は? 何言ってんだ?」
心底意味が分からないといった表情でアーロンが眉を顰めた。
その白々しさにイラッとする。
51
お気に入りに追加
2,807
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です
35歳からの楽しいホストクラブ
綺沙きさき(きさきさき)
BL
『35歳、職業ホスト。指名はまだ、ありません――』
35歳で会社を辞めさせられた青葉幸助は、学生時代の後輩の紹介でホストクラブで働くことになったが……――。
慣れないホスト業界や若者たちに戸惑いつつも、35歳のおじさんが新米ホストとして奮闘する物語。
・売れっ子ホスト(22)×リストラされた元リーマン(35)
・のんびり平凡総受け
・攻めは俺様ホストやエリート親友、変人コック、オタク王子、溺愛兄など
※本編では性描写はありません。
(総受けのため、番外編のパラレル設定で性描写ありの小話をのせる予定です)
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる