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さぁ、遊戯(ゲーム)のお時間です
1話
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「これより第三回、入学試験の説明を行う」
総勢三千人の前に立つ一人の女性教師が試験の説明をするためにマイクを握りそう言った。
二千百八十年。今から二年前に三大都市圏に各一校ずつ建設されたばかりの学校。この学校では遊戯の強さが成績等全てを決める。
今日。俺、紅羽駿はその学校の入学試験にやって来た。
勿論、遊戯の強さが全てなだけあって、入学試験では小中の成績なんて一切関係ない。どんなに勉強ができなくても、授業態度が悪くても、どれだけ学校を休んだりしても、遊戯が強ければ全く関係なく合格し、入学ができる。そのため、今まで勉強を人一倍頑張ってきたとしても、遊戯が強くなければここでは意味がない。
「まずは先程君たちに配った端末を確認してくれ」
この大ホールに入る前、教師から一人一つ端末を受け取っていた。
言われた通りに端末を確認すると、学校側から入学試験の詳細が書かれた資料が送られてきた。
「今送った資料を見ながら聞いてくれ。入学試験は三日間で行う。三日間の間は寮で生活してもらう。寮には必要最低限の家具などはあるから自由に使ってくれ。朝食や昼食、夕食に関しては学校の敷地内にある飲食店を使用してくれ。今みんなが持っている端末を提示すれば金銭の負担は学校側が受ける。つまり端末さえ持っていれば無料というわけだ」
「駿! 無料だって、無料!」
そう言って目を輝かせながら俺の名前呼んできたのは幼馴染である七海麦。
俺と同じくこの学校を受験する生徒の一人。
綺麗な栗色の髪に可愛らしい容貌。この学校に入ってから殆どの生徒が麦を見つめていた。
「何食べようかな~」
「お前な……入学試験を受けに来たんだろ?」
「そうだけど~、無料なら沢山食べないと損でしょ?」
「それはそうなんだろうけど目的が違うだろ」
そんな会話をしていると、俺達が居たホールがいつの間にか大カジノに変わっていた。
俺と麦は勿論、周りの生徒もこの状況を理解できずに驚いている。
「仮想現実だ。これから行う遊戯は全て仮想現実で行ってもらう。そして一番最初の遊戯会場はここだ」
女教師がそう言うと同時に端末に新たに資料が送られてきた。
〇第一回目入学試験遊戯詳細
・これから十二時間の間に所持チップが多い生徒上位70パーセント、且つ合計所持チップ数が十万枚を超えた最大二千百人が合格者とし、第二回目入学試験遊戯に参加することができる。
・合計チップ数が十万枚を超えた生徒が70パーセントを切っていた場合、超えている生徒のみが合格とする。
・どちらも達成できなかった生徒は即不合格とする。
・生徒の初期チップは一律1000チップ。
・遊戯中にチップが0枚になった場合は不合格とする。
・チップの譲渡、暴力、脅迫行為は禁止行為として、行った生徒は不合格とする。
・生徒には三つ、ランダムで遊戯が有利に進む『スキル』を配布する。ランクはCからSまで効果の強い順にランク付けされている。ランクが高ければ使用条件が厳しくなり入手も困難となる。
・スキルに使用上限はない。ただし、使用してから一時間は使用ができない。
・『スキル』の入手方法はチップでの交換、特定の遊戯の勝利報酬の二つ。
・端末を使用すれば現実世界、仮想現実を好きな時に行き来することができる。ただし、遊戯中の移動は不可能。
・全生徒のチップ数、順位は端末からリアルタイムで確認することができる。
「遊戯のルールを確認出来たら一番下にある確認完了のボタンを押してくれ」
俺はルールを一通り頭に叩き込んだ後、言われた通り確認完了ボタンを押した。
今の時刻は八時。遊戯終了は二十時か。
時間はたっぷりとあるが、一つの遊戯にどれだけ時間がかかるか分からない。なるべく仮想現実の世界でチップを稼いだ方が良いだろう。
現実世界に戻って来るのは昼食を取る時だけにしよう。
「よし。たった今全生徒の確認完了が確認できた。これより第一回目入学試験遊戯を開始する」
それと同時に端末に制限時間のカウントダウンが表示された。
「ねぇ、駿。これからどうする?」
「どうするって、チップを増やすに決まってるだろ」
こんな一回目の遊戯から不合格なんて笑えないし。
てか逆に麦はこれから何をしようとしていたんだよ……。まさかカフェにでも行こうとしてたんじゃないだろうな……。
「じゃあ私も付いて行っても良い?」
「ああ、別に良いよ」
麦とは小さい頃から色々な遊戯をして遊んできた。麦も遊戯は得意な方だし、足手まといになることは絶対にない。
むしろペアで行う遊戯の時は信頼できる麦と組んだ方が良いし。
「駿、駿! あれルーレットじゃない⁉ 私初めて見た!」
麦の指さす方には、カジノの定番で誰もが知っているであろうルーレットがあった。
ルーレットの最高倍率は三十六倍。最低倍率は二倍。
賭けて負けたら同じ場所に前の二倍のチップを賭ける賭け方、マーチンゲール法が使えるが、今の手持ちチップは千枚。
マーチンゲール法は手持ちチップ数が多くなければ得られるチップも少ない。
仮に最初に百チップを黒に賭けて外れたとして、次に賭けるのは黒に二百。これも負ければ次は四百。これに負ければ俺の手持ちチップは三百枚になる。それに、もし二回目、三回目でも良いが、勝ったとしても得られるチップ数は百枚。この遊戯の合格ラインは十万枚。どれだけ時間を使えば到達できるか……。
それに、この大カジノには、普通のルーレットやバカラ、ポーカー以外にも、オリジナル遊戯や、元々ある遊戯のルールを少し変えたものもあるらしい。
「ねえ、君」
後ろから声がして振り返ると、一人の男子生徒が立っていた。
「俺と遊戯しないか?」
「……何故俺を選んだ? あそこに行けばルーレットもできるしポーカーもできる。何故わざわざ俺に声をかけてきた?」
「いや、特に理由はないぜ」
「…………まぁいい。それで、どんな遊戯をするんだ?」
「お!? やってくれるのか⁉」
「まだやるとは言っていない。遊戯のルール説明もされていない状態で受けるわけないだろ」
そんなの当たり前だ。
俺は値段も見ないで物を買うような奴でも書類をパッと見て判子を押す奴でもない。
「あれの外ウマだ」
そう言って男子生徒が指を差したのは二人が座るポーカーの台。
外ウマ。遊戯には参加していない第三者が遊戯の参加者の勝敗、順位を予想して賭けること。
「丁度あそこに二人ポーカーをしているだろ? あの二人のどっちが勝つかを賭ける」
ポーカーの台には男子生徒二人がトランプのカードを見つめて座っている。
「勝つ確率は単純計算で二分の一。俺から誘ったんだ、お前が先に選んでいいぜ。俺はお前の選ばなかった方にするよ」
そう言って自身満々の表情を浮かべ腕を組んだ。まぁ、そんな表情をするのも無理ないか。
「そうだな、じゃあ――――」
俺はポーカー台の方を向いた。
「なんてな。俺が選ぶとでも思ったのか?」
俺はどちらも選ばない。選んではダメ。選んだ瞬間に俺のチップは減る。それは確定されている。
「気づかないと思ったのか? 俺に話しかけてくる前にお前、あそこの二人と何やら会話をしていただろ?」
カジノ全体を見渡す時に見た光景。少し前の事くらいは覚えていられる。
「まぁ、端末を通話状態にしておいて、俺が選んだ方のプレイヤーがフォールドして俺からチップを奪おうと思っていたんだろうな」
どんなに手が強くてもフォールドしたら負けになる。三人で手を組んでいるんだとしたら、負けても後から同じようなプレイでチップを均等にすればいいだけ。俺が三百チップを賭けていたとしたら三人に均等に分けて一人百チップを得られる。ただフォールドするだけでな。
「ほう。証拠はあるのか?」
「証拠なんて要らないだろ。俺がこの遊戯を受けなければいいだけなんだからな。まぁ、俺の条件を吞むならやってあげても良いんだけどな」
「条件?」
「ああ」
そう言って俺は隣に立つ麦の小さな頭に手を置いた。
「へ⁉」
麦は急に肩に手を置かれて驚き、顔をほんのりと赤らめた。
「麦とそこの二人のどちらか片方でポーカーをしてもらう。そうすればわざとフォールドして負けるなんて小細工はできないだろ? それと、遊戯中は俺とお前は一切声を発さない。そして遊戯は近くで見る。そして――スキルの使用は禁止だ」
「ちょ、ちょっと駿!?」
「…………あ、ああ。いいぜ。それでも」
これで小細工は使えない。普通は俺の提案は却下するところだが、矜持が許さなかったのか?
「駿ってば~!」
「大丈夫だから普通にやってこい」
そう言って俺は麦の背中を押した。
「わ、分かった」
その後ろを俺達も付いていく。
男子生徒はポーカーをしていた二人に事情を説明してどっちがするかを選んでいる。
「決まったぞ」
「なら始めるぞ」
「それで、お前はどっちを選ぶ」
「言わなくても分かるだろ。俺は麦に賭ける」
「だろうな。ちなみに言っていなかったが、賭けるチップは五百チップだからな。これ以下もこれ以上も無い。俺達も、こいつらも」
これは俺の推測だが、もし麦との勝負になっていなかったら五百チップじゃなくて千チップを賭けることになっていただろう。これは相手が負けた時にチップがゼロにならないための保険だろう。
「ああ、それでいい」
「それでは手札を配ります」
そう言ってディーラーが麦達にカードを配った。
麦の手札は『♧A ♢9』一方相手の手札は『♡7 ♡9』
今の所、♧Aを持っている麦の方が強い。
だが相手はハートが二枚。場に三枚ハートが出れば相手はフラッシュが完成する。
フラッシュに勝てる役はたったの四つ。だがどの役も麦の手札では相当低い確率でしか作ることができない。
「それでは一枚目……二枚目……三枚目」
ディーラーがポーカー台に出したカードは『♢2 ♡4 ♡J』
今の所、両方ともに役無しのハイカード。だが、あと一枚ハートのカードが場に出れば、相手はフラッシュの完成。最悪の結果だ。
一方麦は結構厳しい状況だ。この時点でロイヤルストレートフラッシュ、ストレートフラッシュ、フラッシュ、フォーオブアカインドは絶対に作ることができない。
ただ、残り二枚のカードが2と5ならフラッシュが作れる。……相当確率は低いが…………こればかりは祈るしかない。
「では四枚目……」
ゆっくりと場に出されたカードは『♧Q』
次のカードで決まる。もし両方ハイカードならAを持っている麦の勝ち。
カードを持つ麦の手に力が入ったのが分かった。
麦は自身のチップが減るのを恐れているわけでは無い。多分、自分が負けたら俺のチップが減る事を気にしている。
「それでは五枚目」
総勢三千人の前に立つ一人の女性教師が試験の説明をするためにマイクを握りそう言った。
二千百八十年。今から二年前に三大都市圏に各一校ずつ建設されたばかりの学校。この学校では遊戯の強さが成績等全てを決める。
今日。俺、紅羽駿はその学校の入学試験にやって来た。
勿論、遊戯の強さが全てなだけあって、入学試験では小中の成績なんて一切関係ない。どんなに勉強ができなくても、授業態度が悪くても、どれだけ学校を休んだりしても、遊戯が強ければ全く関係なく合格し、入学ができる。そのため、今まで勉強を人一倍頑張ってきたとしても、遊戯が強くなければここでは意味がない。
「まずは先程君たちに配った端末を確認してくれ」
この大ホールに入る前、教師から一人一つ端末を受け取っていた。
言われた通りに端末を確認すると、学校側から入学試験の詳細が書かれた資料が送られてきた。
「今送った資料を見ながら聞いてくれ。入学試験は三日間で行う。三日間の間は寮で生活してもらう。寮には必要最低限の家具などはあるから自由に使ってくれ。朝食や昼食、夕食に関しては学校の敷地内にある飲食店を使用してくれ。今みんなが持っている端末を提示すれば金銭の負担は学校側が受ける。つまり端末さえ持っていれば無料というわけだ」
「駿! 無料だって、無料!」
そう言って目を輝かせながら俺の名前呼んできたのは幼馴染である七海麦。
俺と同じくこの学校を受験する生徒の一人。
綺麗な栗色の髪に可愛らしい容貌。この学校に入ってから殆どの生徒が麦を見つめていた。
「何食べようかな~」
「お前な……入学試験を受けに来たんだろ?」
「そうだけど~、無料なら沢山食べないと損でしょ?」
「それはそうなんだろうけど目的が違うだろ」
そんな会話をしていると、俺達が居たホールがいつの間にか大カジノに変わっていた。
俺と麦は勿論、周りの生徒もこの状況を理解できずに驚いている。
「仮想現実だ。これから行う遊戯は全て仮想現実で行ってもらう。そして一番最初の遊戯会場はここだ」
女教師がそう言うと同時に端末に新たに資料が送られてきた。
〇第一回目入学試験遊戯詳細
・これから十二時間の間に所持チップが多い生徒上位70パーセント、且つ合計所持チップ数が十万枚を超えた最大二千百人が合格者とし、第二回目入学試験遊戯に参加することができる。
・合計チップ数が十万枚を超えた生徒が70パーセントを切っていた場合、超えている生徒のみが合格とする。
・どちらも達成できなかった生徒は即不合格とする。
・生徒の初期チップは一律1000チップ。
・遊戯中にチップが0枚になった場合は不合格とする。
・チップの譲渡、暴力、脅迫行為は禁止行為として、行った生徒は不合格とする。
・生徒には三つ、ランダムで遊戯が有利に進む『スキル』を配布する。ランクはCからSまで効果の強い順にランク付けされている。ランクが高ければ使用条件が厳しくなり入手も困難となる。
・スキルに使用上限はない。ただし、使用してから一時間は使用ができない。
・『スキル』の入手方法はチップでの交換、特定の遊戯の勝利報酬の二つ。
・端末を使用すれば現実世界、仮想現実を好きな時に行き来することができる。ただし、遊戯中の移動は不可能。
・全生徒のチップ数、順位は端末からリアルタイムで確認することができる。
「遊戯のルールを確認出来たら一番下にある確認完了のボタンを押してくれ」
俺はルールを一通り頭に叩き込んだ後、言われた通り確認完了ボタンを押した。
今の時刻は八時。遊戯終了は二十時か。
時間はたっぷりとあるが、一つの遊戯にどれだけ時間がかかるか分からない。なるべく仮想現実の世界でチップを稼いだ方が良いだろう。
現実世界に戻って来るのは昼食を取る時だけにしよう。
「よし。たった今全生徒の確認完了が確認できた。これより第一回目入学試験遊戯を開始する」
それと同時に端末に制限時間のカウントダウンが表示された。
「ねぇ、駿。これからどうする?」
「どうするって、チップを増やすに決まってるだろ」
こんな一回目の遊戯から不合格なんて笑えないし。
てか逆に麦はこれから何をしようとしていたんだよ……。まさかカフェにでも行こうとしてたんじゃないだろうな……。
「じゃあ私も付いて行っても良い?」
「ああ、別に良いよ」
麦とは小さい頃から色々な遊戯をして遊んできた。麦も遊戯は得意な方だし、足手まといになることは絶対にない。
むしろペアで行う遊戯の時は信頼できる麦と組んだ方が良いし。
「駿、駿! あれルーレットじゃない⁉ 私初めて見た!」
麦の指さす方には、カジノの定番で誰もが知っているであろうルーレットがあった。
ルーレットの最高倍率は三十六倍。最低倍率は二倍。
賭けて負けたら同じ場所に前の二倍のチップを賭ける賭け方、マーチンゲール法が使えるが、今の手持ちチップは千枚。
マーチンゲール法は手持ちチップ数が多くなければ得られるチップも少ない。
仮に最初に百チップを黒に賭けて外れたとして、次に賭けるのは黒に二百。これも負ければ次は四百。これに負ければ俺の手持ちチップは三百枚になる。それに、もし二回目、三回目でも良いが、勝ったとしても得られるチップ数は百枚。この遊戯の合格ラインは十万枚。どれだけ時間を使えば到達できるか……。
それに、この大カジノには、普通のルーレットやバカラ、ポーカー以外にも、オリジナル遊戯や、元々ある遊戯のルールを少し変えたものもあるらしい。
「ねえ、君」
後ろから声がして振り返ると、一人の男子生徒が立っていた。
「俺と遊戯しないか?」
「……何故俺を選んだ? あそこに行けばルーレットもできるしポーカーもできる。何故わざわざ俺に声をかけてきた?」
「いや、特に理由はないぜ」
「…………まぁいい。それで、どんな遊戯をするんだ?」
「お!? やってくれるのか⁉」
「まだやるとは言っていない。遊戯のルール説明もされていない状態で受けるわけないだろ」
そんなの当たり前だ。
俺は値段も見ないで物を買うような奴でも書類をパッと見て判子を押す奴でもない。
「あれの外ウマだ」
そう言って男子生徒が指を差したのは二人が座るポーカーの台。
外ウマ。遊戯には参加していない第三者が遊戯の参加者の勝敗、順位を予想して賭けること。
「丁度あそこに二人ポーカーをしているだろ? あの二人のどっちが勝つかを賭ける」
ポーカーの台には男子生徒二人がトランプのカードを見つめて座っている。
「勝つ確率は単純計算で二分の一。俺から誘ったんだ、お前が先に選んでいいぜ。俺はお前の選ばなかった方にするよ」
そう言って自身満々の表情を浮かべ腕を組んだ。まぁ、そんな表情をするのも無理ないか。
「そうだな、じゃあ――――」
俺はポーカー台の方を向いた。
「なんてな。俺が選ぶとでも思ったのか?」
俺はどちらも選ばない。選んではダメ。選んだ瞬間に俺のチップは減る。それは確定されている。
「気づかないと思ったのか? 俺に話しかけてくる前にお前、あそこの二人と何やら会話をしていただろ?」
カジノ全体を見渡す時に見た光景。少し前の事くらいは覚えていられる。
「まぁ、端末を通話状態にしておいて、俺が選んだ方のプレイヤーがフォールドして俺からチップを奪おうと思っていたんだろうな」
どんなに手が強くてもフォールドしたら負けになる。三人で手を組んでいるんだとしたら、負けても後から同じようなプレイでチップを均等にすればいいだけ。俺が三百チップを賭けていたとしたら三人に均等に分けて一人百チップを得られる。ただフォールドするだけでな。
「ほう。証拠はあるのか?」
「証拠なんて要らないだろ。俺がこの遊戯を受けなければいいだけなんだからな。まぁ、俺の条件を吞むならやってあげても良いんだけどな」
「条件?」
「ああ」
そう言って俺は隣に立つ麦の小さな頭に手を置いた。
「へ⁉」
麦は急に肩に手を置かれて驚き、顔をほんのりと赤らめた。
「麦とそこの二人のどちらか片方でポーカーをしてもらう。そうすればわざとフォールドして負けるなんて小細工はできないだろ? それと、遊戯中は俺とお前は一切声を発さない。そして遊戯は近くで見る。そして――スキルの使用は禁止だ」
「ちょ、ちょっと駿!?」
「…………あ、ああ。いいぜ。それでも」
これで小細工は使えない。普通は俺の提案は却下するところだが、矜持が許さなかったのか?
「駿ってば~!」
「大丈夫だから普通にやってこい」
そう言って俺は麦の背中を押した。
「わ、分かった」
その後ろを俺達も付いていく。
男子生徒はポーカーをしていた二人に事情を説明してどっちがするかを選んでいる。
「決まったぞ」
「なら始めるぞ」
「それで、お前はどっちを選ぶ」
「言わなくても分かるだろ。俺は麦に賭ける」
「だろうな。ちなみに言っていなかったが、賭けるチップは五百チップだからな。これ以下もこれ以上も無い。俺達も、こいつらも」
これは俺の推測だが、もし麦との勝負になっていなかったら五百チップじゃなくて千チップを賭けることになっていただろう。これは相手が負けた時にチップがゼロにならないための保険だろう。
「ああ、それでいい」
「それでは手札を配ります」
そう言ってディーラーが麦達にカードを配った。
麦の手札は『♧A ♢9』一方相手の手札は『♡7 ♡9』
今の所、♧Aを持っている麦の方が強い。
だが相手はハートが二枚。場に三枚ハートが出れば相手はフラッシュが完成する。
フラッシュに勝てる役はたったの四つ。だがどの役も麦の手札では相当低い確率でしか作ることができない。
「それでは一枚目……二枚目……三枚目」
ディーラーがポーカー台に出したカードは『♢2 ♡4 ♡J』
今の所、両方ともに役無しのハイカード。だが、あと一枚ハートのカードが場に出れば、相手はフラッシュの完成。最悪の結果だ。
一方麦は結構厳しい状況だ。この時点でロイヤルストレートフラッシュ、ストレートフラッシュ、フラッシュ、フォーオブアカインドは絶対に作ることができない。
ただ、残り二枚のカードが2と5ならフラッシュが作れる。……相当確率は低いが…………こればかりは祈るしかない。
「では四枚目……」
ゆっくりと場に出されたカードは『♧Q』
次のカードで決まる。もし両方ハイカードならAを持っている麦の勝ち。
カードを持つ麦の手に力が入ったのが分かった。
麦は自身のチップが減るのを恐れているわけでは無い。多分、自分が負けたら俺のチップが減る事を気にしている。
「それでは五枚目」
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