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25 第二王子セドムの処罰

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セドム王子の声に反応したのはファミー伯爵だった。

「セドム様!正気ですか!?リーナは貴方様の妻となったのですよ!?ずっと共に生きるのですよ!?」
オロオロと慌てふためく様に令嬢たちの父親は心痛慮るように渋い顔で軽く俯いている。

「どちみちセドム様は王位に興味なんてないわよ?王太子妃様が男の子を産まれたら下がっていく継承権ですし」
そう慌てる父親をからかうように笑うリーナ。
青い顔でそんなリーナを見つめる伯爵だったが「お前は本当に私の手には負えないよ…」と呟き肩を落とした。

「ではセドム第二王子、王族でなく、いち貴族としての処罰を望まれると?」
宰相が両陛下の方へ一度確認を取るように顔を向け、もう一度問うた。
「それで反逆や国家転覆の疑いが無くなるのならそれを望みます!」
「確かに越権行為、執務妨害、国益損失は変わらぬが継承権放棄を言い出せばその二つは問わない事になっています」
宰相の言葉にパッと明るい顔になったセドム王子はその表情ままの明るい声で「では放棄します!」と宣言した。

「ではその場合の処罰を言い渡す!これより第二王子セドムは廃嫡によりその身分の剥奪と「待て!廃嫡!?父上!?母上!?」
宰相の言葉を遮り今更慌てふためくセドム王子…改めセドム。
そんなセドムを王様は少し憂いのある目で見やった。

「セドム、王位継承権は王である私の子である証のようなものなのだから放棄をすれば廃嫡は当然であろう」
「臣籍降下ではないのですか!?」
両陛下は顔を見合わせ一つ、ため息をつかれた。

「ねぇセドム、継承権を放棄しても越権行為、執務妨害、国益損失の罪は残っているのよ?臣籍降下は叙爵を伴います。罪人に叙爵なんてありえますか?」
ずっと黙っていた王妃様がゆっくりと、しかしハッキリとセドム王子に問いかける。
「罪人だなんて…そこは王子だったのですから考慮とかないんですか…?」
情に訴えかけるように悲しげな声と表情で王妃様を見上げるセドム。
そんなセドムを見返す王妃様の表情はどこかお辛そうに見えた。

少しの沈黙が流れる。

やがてゆっくり瞼を閉じられた王妃様は
「どうしてお前だけこうなってしまったのでしょうね…」
そう悲しげに呟かれた。

「廃嫡は取り下げられないって事ですか!?王子だったのに!?息子ですよ!?そん……」
リーナが大きな声で喚き出し…たが不自然に遮られる。
そして少し息苦しそうにパクパクとした後で顔色悪く口を閉じた。

確か声を遮る風魔法の仕組みは空気が振動しなくなる魔法を口元にかける、だったはずだ。
そのため呼吸がしずらくなり、無理に話そうとすると苦しいらしい。
鼻が詰まっている人は失神する事もあるという。
せっかく解いて貰っていたのに…と呆れ半分同情半分…いや半分も同情して無いか。

ゴホンと宰相は咳払いすると改めて処罰を言い渡しはじめた。
「改めて処罰を言い渡す!第二王子セドムは廃嫡によりその身分の剥奪と権利を失う事とする!越権行為の罰としセドムより数えて三代までは国民に与えられている叙爵の機会は消失!国益を大きく損なう危機を呼び、またその事により実際に発生する損失を平民の身でも補うため追加課税を課すものとする!金額と期限は追って連絡する。また逃亡などし行方が分からなくなった場合は捜索をかけ発見し次第死罪とする!ただし王子の身分であった事を考慮し住まいは一度だけこちらが提供する。移転などする場合は自身で賄うように!」

三代まで…ならば子や孫が幾ら功績ある行いをしても叙爵されることはない。
セドムが貴族になる機会は自身だけでなく縁続きのものでも無くなってしまった。
その事に真っ青になっているのはリーナだ。
首を左右に振り、口をパクパクさせるが息が苦しくなるだけだ。
やがてボロボロと涙を零しはじめ、ファミー伯爵がそれを沈痛の面持ちで見つめていた。

「住まいは用意されているんだ!案ずるなリーナ!大丈夫さ」
平民の暮らしなんか全く分からないだろうにあの余裕はどこから出てくるんだろう。
危機を全く感じず、明らかに軽く考えているセドム。

そんなセドムを少し悲しげに見つめる両陛下が印象的だった。
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