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7  魔道具『偽りの住処』』

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思いもよらぬ一文に私達は顔を見合わせる。
「これ…再起動したらどうなるの?」
「わからないけど…ボロ小屋がキレイになるとか?」
「中の家具とか荷物はどうなるのかしら?」

なんせ魔道具なんて教科書で知っている程度の物。
誰も知らない。

「どうせこれで使えなくなっても中はホコリまみれだし荷物も古そうだったわ。よく分からないけど再起動したいわね」

ディボラ様がそう言うと核の光が一瞬消え、再び光る。
「え…?再起動したのかしら?終わり?」
戸惑うしか出来ない。
見た目は先ほどと変わらず崩れそうなボロ小屋だ。
ただ、表示された文は消え『98%』と数字を浮かべているだけに戻った。

しかし中に入ると変化は一目瞭然だった。
床や壁だけでなく家具なども新しくなっている。
奥の、荷物がごちゃごちゃあった小部屋も小さな机と簡素なベッドがあるだけと片付いている。
さっきまで足跡が付くほど積もっていた全体の埃も無くなった。

「さっきまで無かったものがあります!」
サマナが大部屋の机にあったそれを手に取る。
『偽りの住処・取り扱い説明書』
と表紙に書かれてあるそれは中々の厚みがある。

パラリと表紙をめくると挨拶文が書いてあった。
『この度は魔道具『偽りの住処』をご利用頂きありがとうございます。こちらの魔道具は冒険者の為に作られた量産品です。説明をよくお読みの上でご活用ください。また…云々かんぬんー…』
そして最後に販売日という日付が書いてある。

「これ…200年くらい前じゃない?」
サマナが言うには今の王族に変わったかどうかくらい昔でまだ魔法が一般的だった時代だという…。
「じゃあ…持ち主は多分もう死んでるよね?」
「ありがたく使わせて貰いましょうか」

こうして幸運なことに暮らすのに問題ない住処を手に入れられた。
サマナがパラパラと流し読みした所、この小屋は結界機能も保有しているという。
森にいて魔物に怯えず過ごせるなんて…!

そして魔力が無くなると再利用は販売店に持っていかねばならなかったらしく(当然今や魔道具店なんてない)この地にあったから偶然残っていたのが分かった。

「荷物が無くなったからどんな持ち主だったか確認のしようがないですわね」
そんな事を言いながら部屋を見回していたレリアーナが気付く。
「ベッドの数が足りませんわ…!」

サマナと説明書を読んでいたラナも気付く。
「所々が旧時代の文字で読めませんわ!」

そして私も思い出す。
「さっきの猪捌かなきゃ!」

「皆さんに役割を充てがうわ」
私達の声を聞いてかディボラ様が声を上げた。

「まずはサマナ、貴方は旧時代の文字も読めるわね?この家について説明書を読み解いて頂戴。ただ家具以外に掃除道具や大工道具もあるのか先に探して」

「次にレリアーナ、貴方は先ほど薬草を見付けていたわね。食用の植物も分かるかしら?」
「はい!キノコの見分けも出来ますわ」
「ではこの近くに食べられる物がないか探してきてね。魔物や獣に気をつけ周辺から離れないようにね」

「次にアリア、猪の解体を。…調理は出来るのかしら?」
「丸焼きくらいなら…」
「そう、火は任せて」
「あの…!」

私が指示されている時にラナが手をあげ口を挟んだ。
「失礼をして申し訳ありません。調理ですが丸焼きにするくらいなら私にさせて下さいませんか?」

皆驚き目を見張る。
ディボラ様が私に調理が出来るか確認されたのは恐らく私に野営経験があるのをご存知だから。
男爵家とはいえ令嬢には変わりないのだから普通は調理など出来ない。
したことがあっても大抵は調理担当の使用人が付きっきりで助けたり菓子作りだったり程度だ。

「我が家は裕福ではないので…調理師が腰を痛めた時に私が手伝って…そこから料理をするようになったんです」
少し恥ずかしそうに教えてくれたが今ではその調理師顔負けに何でも作れるそうだ。
「まぁ!一番心配だった食事の問題が片付くわ!ではラナ、食事の用意のため台所に必要な物があるか確認してちょうだい」

こうして私達はディボラ様の指示のもとそれぞれが出来る事を行動し始めた。
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