1 / 35
1
しおりを挟む
「「セディ、ディディ、誕生日おめでとう!」」
今日は私、ディルアーナ・ディオ・ブレビリーと双子の兄、セルディ・ディア・ブレビリーの7歳の誕生日当日。
藍色に近い濃い青髪色をしたガッシリ逞しい騎士団長のお父様に、美しい銀の髪をもつ若々しいお母様。
揃いの深い緑の瞳が私達兄妹を優しく見守る。
「「お父様、お母様、ありがとうございます!」」
週末にはホールで誕生日を祝うパーティが開かれるのだが当日は今日なので内々にお祝いして貰っている。
当家で働く使用人たちの賄いも今日はお祝いで豪華なはずだ。
私は横に座るお兄様と顔を見合わせタイミングを合わせて大きなケーキに息を吹きかけた。
お兄様は青のロウソク、私は水色のロウソクを吹き消す。
ふー…と息を吹いている時だった。
急に目眩のようなものを感じ、バーッと頭の中に何かが流れる。
走馬灯というのはこういうものか、なんて考えが過るうちにその何かが流れる感覚は終わり拍手の音でハッとした。
両親に使用人たちが手をたたき祝福してくれている。
そこにいるのに、テレビの向こう側の事のような、そこにいないような不思議な感覚に戸惑いつつ(テレビなんてこの世界にないわ…)と思った。
でも私はテレビを知っている。
なんだか急に大人になってしまったような、でもプレゼントと渡されたクマのぬいぐるみはとても嬉しいし子供のままのような、そわそわとして落ち着かない。
(私、どうしちゃったのかしら?何か変だわ?)
そんな事を思いながらケーキを口に運ぶ。
その途端色々どうでも良くなった。
「おっいしーい!」
たっぷりのクリームにフワッフワの生地、フルーツはどれも甘くたっぷりと乗っている。
「ふふっ…ディディは本当にクリームのケーキが好きね」
そう微笑む母はそれはそれは美しい。
いや、お母様めちゃ美人だな!
改めてそんな事を思う。
「俺は甘いのちょっと苦手なんだけどなー」
そう言いながらフルーツの部分を中心に食べるセルディ。
いやっ!可愛いな!超美形キッズじゃん!
「お祝いのものだから少しは食べれないと将来困るぞ」
自分も甘い物が苦手だから気持ちが分かるのだろう。
困ったように笑う父はどうみてもイケオジ。
騎士団長だがゴリマッチョではない。逞し美しい筋肉じゃないか。
なんじゃこの美形一家。
なんで私、改めてこんなの思うの?
見慣れた家族なのに初めて見る感覚もある。
美味しいケーキにパクつきながら家族をじっくりと観察し、部屋に戻って侍女が下がったあと全身鏡で自分を確かめる。
見慣れた顔のはずなのに美少女過ぎて感動する。
私可愛い!可愛すぎ!
お母様の銀髪にお父様の青髪を混ぜたような水色に輝く髪。
両親のように深い緑色したクリクリと大きな猫目。
コレを美少女と言わずして何という。
そうマジマジと全身を見つめていると雷にあったような衝撃を感じた。
自分の中の違和感が繋がりハッとしたとも言える。
(あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ー!わかった!私ってば悪役じゃない!俗に言う悪役令嬢ってやつじゃない!)
気付いてしまった。
そしてあの走馬灯は一回見たやつだ。死ぬ時に。
(私!転生してる!創作物で読んだことある!間違いない!)
ヨロヨロとノートを取り出して記憶を書き出す。
まず、私自身はディルアーナ・ディオ・ブレビリーだ。
間違いない。
でも、ここはゲームの世界だ…。
そんな記憶がある。
前世は日本人の19歳。
産まれてすぐに高校卒業まで生きられないと言われつつ19歳まで生きた私は若すぎる晩年、殆ど病院のベッドで過ごした。
両親は長く生きてくれてありがとうと泣きながら最後まで愛情を注いでくれ、弟と妹も見守ってくれている中、死んだ。
なんとか出席日数ギリギリで高校を卒業した後はずっと入院していた。
体が辛くて恋愛らしい恋愛なんか出来なかった。
そんな私に妹が教えてくれたのがいわゆる乙女ゲーム。
ベッドで出来る恋愛を私は色々楽しんだ。
最後にプレイしたのは私好みの作品を多く出すゲーム会社の新作体験版。
ダウンロード特典に詳細キャラ設定や世界観紹介がありそれを何度も読んでは本編を楽しみにしていたが発売される頃にはゲームが出来る状態じゃなかった。
妹が攻略し、ストーリーを話しスチルを見せてくれる。
それを楽しむのが精いっぱい。
クリア前に死んだ私は悪役令嬢の結末も何も知らない…。
とにかく思い出せる範囲でキャラ設定や世界観、妹が話してくれたストーリーを書き出していく。
ノートに書く文字は当たり前のようにこの世界のものだった。
(やっぱり私はディルアーナだ…)
前世の記憶に色々引っ張られた気がしたけどそうでも無いのかもしれない。
(そういやさっき当たり前に着替えさせてもらったもんな)
前世で元気な時にあんなに着替えさせてもらうとか有り得ないが違和感すら感じなかった。
得も言われぬ安心感を感じ、記憶の違和感も消えた。
(とにかく未来を把握しよう)
私は夜遅くまで作業に没頭したのだった。
今日は私、ディルアーナ・ディオ・ブレビリーと双子の兄、セルディ・ディア・ブレビリーの7歳の誕生日当日。
藍色に近い濃い青髪色をしたガッシリ逞しい騎士団長のお父様に、美しい銀の髪をもつ若々しいお母様。
揃いの深い緑の瞳が私達兄妹を優しく見守る。
「「お父様、お母様、ありがとうございます!」」
週末にはホールで誕生日を祝うパーティが開かれるのだが当日は今日なので内々にお祝いして貰っている。
当家で働く使用人たちの賄いも今日はお祝いで豪華なはずだ。
私は横に座るお兄様と顔を見合わせタイミングを合わせて大きなケーキに息を吹きかけた。
お兄様は青のロウソク、私は水色のロウソクを吹き消す。
ふー…と息を吹いている時だった。
急に目眩のようなものを感じ、バーッと頭の中に何かが流れる。
走馬灯というのはこういうものか、なんて考えが過るうちにその何かが流れる感覚は終わり拍手の音でハッとした。
両親に使用人たちが手をたたき祝福してくれている。
そこにいるのに、テレビの向こう側の事のような、そこにいないような不思議な感覚に戸惑いつつ(テレビなんてこの世界にないわ…)と思った。
でも私はテレビを知っている。
なんだか急に大人になってしまったような、でもプレゼントと渡されたクマのぬいぐるみはとても嬉しいし子供のままのような、そわそわとして落ち着かない。
(私、どうしちゃったのかしら?何か変だわ?)
そんな事を思いながらケーキを口に運ぶ。
その途端色々どうでも良くなった。
「おっいしーい!」
たっぷりのクリームにフワッフワの生地、フルーツはどれも甘くたっぷりと乗っている。
「ふふっ…ディディは本当にクリームのケーキが好きね」
そう微笑む母はそれはそれは美しい。
いや、お母様めちゃ美人だな!
改めてそんな事を思う。
「俺は甘いのちょっと苦手なんだけどなー」
そう言いながらフルーツの部分を中心に食べるセルディ。
いやっ!可愛いな!超美形キッズじゃん!
「お祝いのものだから少しは食べれないと将来困るぞ」
自分も甘い物が苦手だから気持ちが分かるのだろう。
困ったように笑う父はどうみてもイケオジ。
騎士団長だがゴリマッチョではない。逞し美しい筋肉じゃないか。
なんじゃこの美形一家。
なんで私、改めてこんなの思うの?
見慣れた家族なのに初めて見る感覚もある。
美味しいケーキにパクつきながら家族をじっくりと観察し、部屋に戻って侍女が下がったあと全身鏡で自分を確かめる。
見慣れた顔のはずなのに美少女過ぎて感動する。
私可愛い!可愛すぎ!
お母様の銀髪にお父様の青髪を混ぜたような水色に輝く髪。
両親のように深い緑色したクリクリと大きな猫目。
コレを美少女と言わずして何という。
そうマジマジと全身を見つめていると雷にあったような衝撃を感じた。
自分の中の違和感が繋がりハッとしたとも言える。
(あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ー!わかった!私ってば悪役じゃない!俗に言う悪役令嬢ってやつじゃない!)
気付いてしまった。
そしてあの走馬灯は一回見たやつだ。死ぬ時に。
(私!転生してる!創作物で読んだことある!間違いない!)
ヨロヨロとノートを取り出して記憶を書き出す。
まず、私自身はディルアーナ・ディオ・ブレビリーだ。
間違いない。
でも、ここはゲームの世界だ…。
そんな記憶がある。
前世は日本人の19歳。
産まれてすぐに高校卒業まで生きられないと言われつつ19歳まで生きた私は若すぎる晩年、殆ど病院のベッドで過ごした。
両親は長く生きてくれてありがとうと泣きながら最後まで愛情を注いでくれ、弟と妹も見守ってくれている中、死んだ。
なんとか出席日数ギリギリで高校を卒業した後はずっと入院していた。
体が辛くて恋愛らしい恋愛なんか出来なかった。
そんな私に妹が教えてくれたのがいわゆる乙女ゲーム。
ベッドで出来る恋愛を私は色々楽しんだ。
最後にプレイしたのは私好みの作品を多く出すゲーム会社の新作体験版。
ダウンロード特典に詳細キャラ設定や世界観紹介がありそれを何度も読んでは本編を楽しみにしていたが発売される頃にはゲームが出来る状態じゃなかった。
妹が攻略し、ストーリーを話しスチルを見せてくれる。
それを楽しむのが精いっぱい。
クリア前に死んだ私は悪役令嬢の結末も何も知らない…。
とにかく思い出せる範囲でキャラ設定や世界観、妹が話してくれたストーリーを書き出していく。
ノートに書く文字は当たり前のようにこの世界のものだった。
(やっぱり私はディルアーナだ…)
前世の記憶に色々引っ張られた気がしたけどそうでも無いのかもしれない。
(そういやさっき当たり前に着替えさせてもらったもんな)
前世で元気な時にあんなに着替えさせてもらうとか有り得ないが違和感すら感じなかった。
得も言われぬ安心感を感じ、記憶の違和感も消えた。
(とにかく未来を把握しよう)
私は夜遅くまで作業に没頭したのだった。
25
お気に入りに追加
103
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】
ゆうの
ファンタジー
公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。
――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。
これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。
※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。
髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は…
悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。
そしてこの髪の奥のお顔は…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴットハンドで世界を変えますよ?
**********************
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
転生侍女シリーズ第二弾です。
短編全4話で、投稿予約済みです。
よろしくお願いします。
悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます
水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか?
私は、逃げます!
えっ?途中退場はなし?
無理です!私には務まりません!
悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。
一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間
夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。
卒業パーティーまで、残り時間は24時間!!
果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる