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1.社畜は猫神様になり、猫ヲタ神官長と出会う
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………やっぱりね、飲まず食わず寝ずの社畜生活してれば、いずれ早死する未来はあったんだよね。
まさか、享年28歳で過労死とか……ないわー……
働きすぎダメ。絶対。
私は、涼しい木陰に設置された豪奢な寝台に優雅に寝転び、高そうなクリスタルの器に盛り付けられたリンゴに似た甘酸っぱい果実を齧りながら、心の中で呟いた。
カシュッと小気味いい音を立てて齧ったそれは、程よい汁気で私の喉を潤す。
キラキラしくも精緻な刺繍が施された、寝心地抜群の弾力を誇るクッションに埋もれる私の傍らには、料理人の腕を奮った美味しいデザートや甘くて瑞々しい果物が並ぶ。
そして側に控えるお付き神官たちは皆目鼻立ちがスッキリと整った美男美女揃いで、その美しい眼差しはうっとりと私の一挙一動を見守っていた。
「あぁ……ミーア様…。
なんて美しく、お可愛らしい……はぁはぁ……」
中でも一番側近くで跪き、頬を紅潮させながら鼻息荒く私を見下ろす従者(自称)は、そんな世話係の中でも異彩を放つほど、デレデレと蕩けそうな微笑みを湛えて私を見つめ―――いや、ガン見していた。
『…………』
淡い金の髪に、晴れた夏空の様な鮮やかな碧空の瞳が印象的な美青年。
ややタレ気味の目元が彼の美貌を甘めに彩っているが、その整った容姿や所作はスキがなく、少々おかしな言動があっても空耳かと錯覚してしまう所である。
そんな彼の視線を真っ向から受け止めないよう微妙に視線をずらしながら、無言で小首をかしげてやり過ごす。
種族的特徴上、私の表情は読めないだろうが、ニコニコと張り付いた笑顔(営業スマイル)のイメージを心がけた。
何か御用ですか? お客様 (訳:こっち見てんじゃね―よ)
真面目な顔をしていれば、賢そうな絶世の美形だというのに、この残念な下僕(自称)――アスラン神官長(23歳)は、誰に憚ることなく私にぞっこんラブラブ(笑)なのである。
いや、自意識過剰だと言うなら、その方がなんぼかマシ。
誤解であって欲しいと何度も思ったけれども、この常軌を逸する程圧のかかった視線とか、誤解のしようもない程の執着具合。
…行き過ぎた愛情は、嬉しいを通り越して重苦しいもんだって、初めて知りました。
線の細い中性的な顔立ちは、いかにもデキる男という印象を与え、日々の鍛錬で鍛えているためシュッと締まった体躯と長身は手足も長くモデル体型。
そんな奇跡の造形を誇る美青年が、事あるごとに私を構い倒して機嫌をとり、何とか密着して体を撫で回そうと必死になる様は、哀れというか、滑稽というか……
前世でもそうそうお目にかからないレベルのイケメンなだけに、その残念さが際立っている。
常ならば…というか、この執着に危機感を覚えるまでは、私もこんな美しいお兄さんに愛される幸せを素直に享受することができていたのだが。
如何せん、今の私は人間の女子ではない。
美醜の感覚は人間のそれであるが、他種動物の私が人間のイケメンに性的興奮を覚えたりしないのだ。
しかし一応、神官長たる彼を筆頭に、大事に大事にお世話されてセレブ生活を満喫している身としては、あまり冷たい態度をとるのも憚られるし、良心が痛む。
ちゃんと社会人として真面目に働き、周囲との軋轢などないよう努めてきた記憶は根強く残っている。
大人の対応と距離感は無駄な諍いを排除し、人間関係を円滑にするためにある…筈。
「ぶっっ…。小首を傾げるとか…なんて可愛いっ…」
そんな私の葛藤など、当の本人は知ってか知らずか…
アスラン神官長は、自分で自分を抱きしめるポーズで打ち震えながら、寝言の様な世迷い言を宣った。
きっと、彼の心のフォルダは、可愛いネコ動画が永久保存されているのだろうとちらりと思ったが、一瞬で思考を断ち切った。
考えてしまうと、薄ら寒いものが背中を駆け抜けて全身の毛が逆だって、気づかれてしまうから。
そして彼は、そんな私の姿ですら心の栄養にしてしまうという特殊スキルを有する、生粋の猫ヲタだ。
ご褒美ダメ、絶対。
基本的に束縛を嫌い自由を愛する私は、割とこの手の思い込みが激しいタイプが苦手だったりするのだが…
……私と会話できる相手がこの人しかいないし、声と顔は良いんだから、我慢だ私。
引くんじゃない、私…
潤んだ碧空色の瞳を煌めかせ、頬を紅潮させ身悶える彼の姿を横目でチラリと見、黒い毛皮に覆われた前足の間に顔を突っ込んでため息を飲み込んだ。
今の私は、とある世界に転生した猫―――しかも家猫のようなもので。
そんな私に傅き仕える従者であると―――出会った頃からずっと―――アスランたちは夢見るように訴えた。
まさか、享年28歳で過労死とか……ないわー……
働きすぎダメ。絶対。
私は、涼しい木陰に設置された豪奢な寝台に優雅に寝転び、高そうなクリスタルの器に盛り付けられたリンゴに似た甘酸っぱい果実を齧りながら、心の中で呟いた。
カシュッと小気味いい音を立てて齧ったそれは、程よい汁気で私の喉を潤す。
キラキラしくも精緻な刺繍が施された、寝心地抜群の弾力を誇るクッションに埋もれる私の傍らには、料理人の腕を奮った美味しいデザートや甘くて瑞々しい果物が並ぶ。
そして側に控えるお付き神官たちは皆目鼻立ちがスッキリと整った美男美女揃いで、その美しい眼差しはうっとりと私の一挙一動を見守っていた。
「あぁ……ミーア様…。
なんて美しく、お可愛らしい……はぁはぁ……」
中でも一番側近くで跪き、頬を紅潮させながら鼻息荒く私を見下ろす従者(自称)は、そんな世話係の中でも異彩を放つほど、デレデレと蕩けそうな微笑みを湛えて私を見つめ―――いや、ガン見していた。
『…………』
淡い金の髪に、晴れた夏空の様な鮮やかな碧空の瞳が印象的な美青年。
ややタレ気味の目元が彼の美貌を甘めに彩っているが、その整った容姿や所作はスキがなく、少々おかしな言動があっても空耳かと錯覚してしまう所である。
そんな彼の視線を真っ向から受け止めないよう微妙に視線をずらしながら、無言で小首をかしげてやり過ごす。
種族的特徴上、私の表情は読めないだろうが、ニコニコと張り付いた笑顔(営業スマイル)のイメージを心がけた。
何か御用ですか? お客様 (訳:こっち見てんじゃね―よ)
真面目な顔をしていれば、賢そうな絶世の美形だというのに、この残念な下僕(自称)――アスラン神官長(23歳)は、誰に憚ることなく私にぞっこんラブラブ(笑)なのである。
いや、自意識過剰だと言うなら、その方がなんぼかマシ。
誤解であって欲しいと何度も思ったけれども、この常軌を逸する程圧のかかった視線とか、誤解のしようもない程の執着具合。
…行き過ぎた愛情は、嬉しいを通り越して重苦しいもんだって、初めて知りました。
線の細い中性的な顔立ちは、いかにもデキる男という印象を与え、日々の鍛錬で鍛えているためシュッと締まった体躯と長身は手足も長くモデル体型。
そんな奇跡の造形を誇る美青年が、事あるごとに私を構い倒して機嫌をとり、何とか密着して体を撫で回そうと必死になる様は、哀れというか、滑稽というか……
前世でもそうそうお目にかからないレベルのイケメンなだけに、その残念さが際立っている。
常ならば…というか、この執着に危機感を覚えるまでは、私もこんな美しいお兄さんに愛される幸せを素直に享受することができていたのだが。
如何せん、今の私は人間の女子ではない。
美醜の感覚は人間のそれであるが、他種動物の私が人間のイケメンに性的興奮を覚えたりしないのだ。
しかし一応、神官長たる彼を筆頭に、大事に大事にお世話されてセレブ生活を満喫している身としては、あまり冷たい態度をとるのも憚られるし、良心が痛む。
ちゃんと社会人として真面目に働き、周囲との軋轢などないよう努めてきた記憶は根強く残っている。
大人の対応と距離感は無駄な諍いを排除し、人間関係を円滑にするためにある…筈。
「ぶっっ…。小首を傾げるとか…なんて可愛いっ…」
そんな私の葛藤など、当の本人は知ってか知らずか…
アスラン神官長は、自分で自分を抱きしめるポーズで打ち震えながら、寝言の様な世迷い言を宣った。
きっと、彼の心のフォルダは、可愛いネコ動画が永久保存されているのだろうとちらりと思ったが、一瞬で思考を断ち切った。
考えてしまうと、薄ら寒いものが背中を駆け抜けて全身の毛が逆だって、気づかれてしまうから。
そして彼は、そんな私の姿ですら心の栄養にしてしまうという特殊スキルを有する、生粋の猫ヲタだ。
ご褒美ダメ、絶対。
基本的に束縛を嫌い自由を愛する私は、割とこの手の思い込みが激しいタイプが苦手だったりするのだが…
……私と会話できる相手がこの人しかいないし、声と顔は良いんだから、我慢だ私。
引くんじゃない、私…
潤んだ碧空色の瞳を煌めかせ、頬を紅潮させ身悶える彼の姿を横目でチラリと見、黒い毛皮に覆われた前足の間に顔を突っ込んでため息を飲み込んだ。
今の私は、とある世界に転生した猫―――しかも家猫のようなもので。
そんな私に傅き仕える従者であると―――出会った頃からずっと―――アスランたちは夢見るように訴えた。
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