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③ 押しかけ奴隷が押しかけ夫だったという罠

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 今日は本当に疲れた。
 師匠が亡くなってからの数年は、数日に一回程度の間隔でしか他人と―――しかも仕事関係か買い物の時位にしか会話をしないような生活に落ち着いていたので、不特定多数の人間と接したなんて、今でも信じられない。
 やっぱり、お外に出ていくと疲れるわね…今日はお気に入りの入浴剤を使って、長めにお湯に浸かろう…。
 そして、何も考えないでいつもより早く寝てしまおう。
 ……そう思っていたのだ。奴隷を買うことを諦めた、ほんの1時間前までは。
 それなのに―――


 あんなにキッパリとお断りしたというのに、何故か白虎の獣人―――リカルドがなんやかんやで付いてきてしまったのは解せなかった。
 なんやかんやっていうか、まぁ、出口向かうや否やゼスさんに泣き落とされ、リカルドに押しまくられて押し付けられたというのが正しいのだけども。
 いくら押し付けられたからって、女の一人暮らしの家に得体の知れない男を連れ帰るとか、有り得ない…とは思う。
 思うのだが、

「決して失礼な事などしないよう、ちゃんと責任持って隷属の首輪も着けますし、奴隷紋も刻み込みます。
 数日の間のお試しだとしても構いませんので、騙されたと思ってお持ち帰りくださると助かります」

 何て、大の男に涙目で頼み込まれ…そこまでしなくても…と思いながら、押しに弱い温厚な日本人としても、なんとなく無下にすることができなかった。
 隷属の首輪に奴隷紋まで着けちゃうとは、まるで重罪犯した犯罪奴隷位に厳重な扱いである。
 ここまでされれば、どんな犯罪者だって借りてきた猫のように大人しくなるほどの拘束があるはずなんだけど…

「おい、騙されたって大概失礼なヤツだな…。俺は犯罪者か。
 まぁ、そういう訳で、とりあえず試しと思って持ち帰ってくれると助かるな」

 なんだってこの男はこんなに平然としていられるのだろうか?

 私が訝しく思っていると、ローブに隠された状態であっても何か感じるものがあるのか、男は自信満々に微笑んだ。

「俺がどんなになったって、あんたに危害を加えることは決してない。絶対だ」

 その力強い笑顔に、何故かドキッと胸が跳ね…顔に熱が集まるのを感じた。…不整脈だろうか…?

 いや、でも…やっぱなぁ……

 顔の熱を冷ますように、俯きながら頬に両手をあてて深呼吸していたのだったが、意を決して断ろうと顔を上げた時、

「じゃ、よろしくな」

 そう言って、銀色の隷属の首輪がガッチリと嵌められた太くて逞しい首と、朱色の奴隷紋を刻まれた厚い胸板を見せつけられ、私は断るタイミングを完全に逸したと感じた。

 こんな時ばっかり、仕事早すぎね!?
 やっぱりちょっと、こんなに押される理由が納得行かないんですけど?

 ひっそりと心の内で反論を試みるも、言い出すことはできなかった。
 ちなみに、一応魔術師の端くれとして、これらの2つが魔法的に有効な存在であることは当然確認させてもらった。
 これなら、どんなに粗雑な扱いをされたって、私に髪の毛一筋の傷をつけることもできないだろう、恐ろしい効力を感じた。

「仕方ないですね…。まぁ、一応奴隷を受け入れるつもりで整えた部屋もありましたし……数日はお試し期間として持ち帰ります。
 どうしても合わない、一緒に暮らせないとなったら、その間の記憶を消した上で返品させていただきますので、よろしく」

 記憶処理って…そういう魔法があるんですよ。ホントに。
 容易く人の記憶を扱うと宣言している私も、大概こちらの価値観に染まっているなぁと思うわけで。

 ただ、自分が要求する前にここまで整えられてしまうと、コミュ的な能力に乏しい私は、この場で返品するのを諦めつつ、もため息まじりに返答するしかないではないか。

「ええ、ええ。お代はその時で結構ですのでーーーーっ!」

「お前……返品なんて、なんねーよ」

 泣き出しそうな程喜んで、太い狐の尻尾をブンブン振る商人に対し、面白くなさそうに不貞腐れる奴隷の態度が対照的である。
 もう何でもいいよ…私は苦笑しながら魔法具を展開し―――夕方に差し掛かった時刻に予定外の奴隷を連れて家へと帰っていったのだった。

「ここがマリアの家か。ちょっと手狭な気もするが、二人で暮らすには丁度いい広さだな。
 何より隠匿や侵入者排除の魔法陣が、これでもかと充実しているのも良い。
 思った以上に防犯がしっかりしてる家で助かったぜ」


 家の門前に着くよう調整した魔法具で転移すると、リカルドは物珍しそうに辺りを見回した。

「まぁ、師匠から譲り受けた家だけど、経年劣化防止やら自然災害によるダメージ補修やら外敵排除やら…色々手を掛けてる家だから、防犯に関しては最高峰の技術を詰め込まれた家だと思うよ。
 私も、色々企業秘密的な研究もしてるから、登録した人間以外には気づかれないようにもしてるの」

 言いながら扉を開け、家の中を案内しようと手を引いた瞬間、逆にグッと腕を引っ張られ…気づいたらリカルドの腕の中に抱き留められていた。

「ちょ…何す…んぷっ」

 厚い胸板の固さを感じるも、突然の暴挙に抗議の声をあげようとするのだが、それを遮るように唇を重ねられ…その声の行き場を無くす。

「んーーっ!んーーーっ!!」

 奴隷のくせに、いきなり何してくれとんじゃ!

 心のなかで罵倒しながら逞しい腕の中から出ていこうと胸板を叩いてもがいていると、グッと顎を持ち上げられて自然に唇が薄く開いた。
 そのスキを逃さないように、肉厚の舌を差し込まれ、唾液を流し込むように角度を変えて口腔内を弄られると…何故か頭がフワフワして、頬が熱くなっていくのを感じる。

「んっ…んぁっ……やぁ…」

 クチュクチュと鼓膜に直接水音を響かせるように、舌を吸われて絡め取られている内に……思考が溶けていくような熱を感じ始めていた。

 ん……なに…ふんわりする。…あまい…。

「ああ、やっぱり。いい顔してるな。
 番の体液は頭が溶けるほど、気持ちいいだろ? …俺も気持ちいいよ」

「つがい……? なにそれ…?」

 唇を離した合間に問いかけられても、熱に浮かされたように頭がぼやけて、思考がまとまらない。

「知らないのか? 伝説みたいなもんだが、実際世間には番と呼ばれる伴侶同士がいるんだがな。
 お互いを唯一無二の存在と認め合い、互いの運命を共にする者だ。
 俺は、お前と出会う前からそうだと気づいていたんだが……まぁいい。これから時間はたっぷりあるしな」

 リカルドは、嬉しそうに綺麗な青灰色の瞳を潤ませて、私の体を両手で抱き込むと、再び覆い被さるように唇を貪った。

 そして、無理矢理に奪われた唇だったが…私がその行為を受け入れた瞬間、ガシャーンと音を立てて、リカルドの首輪が床に落ちたのだった。



「ふぁっ…んんっ」

 リカルドは、私の両腕を玄関脇の応接室の壁に押し付けて壁ドンすると、身動きも取れないように抑え込んだ。
 最初はぺろりと唇を舌先で味わうように舐め、下唇を甘噛するだけだったのだが、背筋がゾクゾクと粟立つような感覚に襲われる。
 私はたまらず唇を開き、中に侵入してくる舌を迎え入れると、応えるように絡ませた。
 ピチャピチャと啜るような水音が静かな室内に響き、飲み込めない唾液が頬を伝っていくのを感じたが、口の中に溜まる唾液を一生懸命飲み干すと、それに比例するほど体が熱く火照っていく。
 飲んでも飲んでも飽きない程、甘い甘い甘露を飲んでいる様だった。

「ん…もっと…ちょうだい…」

 押し付けられて、貪られていると思っていたが、気づけば求めているのは私の方だった。
 リカルドは、私の求めに応じる様に、歯列を舌でなぞって口蓋を舌先で撫で、舌の奥まで責め立てるので、口付けだけで立っていられない程腰が砕ける。
 しかし、そのまま座り込むことも許されず、唇を合わせたまま両手で体を抱き込まれると、股間に膝を差し込まれてはグリグリと敏感な所を擦られた。

「んんっんっんっ…」

 キスの合間にローブのフードはすっかり下ろされて、ゆとりのあるローブを纏ったまま、濡れた股間を遠慮なく責められると、上からも下からもグチュグチュと水気のある音が響いて、興奮を掻き立てられる。

「はは…ヌルヌルだな。わかるか? 上も下も物欲しそうにヨダレを垂らしてるのが」

「ふぁんっ…やだ……わかってるから…言わないで……」

 上とか下とかお構いなしに、全身ビクビクと震えながら、リカルドの与える刺激を待っている状態なのは、言われなくてもわかっている。
 もちろん、私の股間は下着どころか膝越しに擦られたローブごとしっとりと湿っていることだろう。
 だけど、そんなことはどうでも良かった。今はただ……このオスの与える刺激が欲しかった。

「…俺が、お前の番だって、ちゃんと理解したか?」

 出会った頃からふてぶてしいまでに堂々としていたので気づかなかったが、私が徹頭徹尾無関心だったのが結構堪えていたらしい。
 不敵に笑っているような表情で問いかけてはきたが、その瞳は動揺を表すように微かに揺れている。

「つがいって…あんまり…よくわかんないけど、今はあなたが欲しいと思うよ?」

 そう言いながら、ニコッと微笑んで厚い胸板に抱きついて首元に顔を埋めると、耳元で「チッ」と微かに舌打ちした音が聞こえた。

 この答えじゃダメだったのかな? 
 でも、番って…この世界特有のシステムだと思うけど…概念がよくわかんないし。
 普通の夫婦とどう違うんだろう?

 ボンヤリと考えていると、マキシ丈のローブをたくし上げられて、直接下着の中に指を差し入れられた感触に、腰がビクッと震える。

「もう、なんか無知で無垢とか可愛いすぎるだろ。
 言いたいこともあるが、後だ、後。
 取りあえず……今はヤラせろ」

 軽く開かれた股間に差し入れられた指先に、グチュリと粘つく蜜が絡まって、卑猥な音を奏でた。
 そして、空いた左腕で両手を纏めて頭上で壁に押し付けられると、項や耳元を舐め上げられ、同時に蜜でヌルつく隘路を手で嬲られるので、指先の動きに合わせて声が漏れる。
 両サイドが紐で結ばれていた紐パンは、すでにズクズクに濡れたまま、床に落ちていた。

「ひっ…ふぁっ…やっ…そこ、きもちっ」

「珍しい耳の形だが、何の種族なんだろうな…。
 毛皮もなくて舐めやすい、卑猥な耳だが…お前に合った可愛い形だ」

「んっ…耳元で囁かないでぇ…っ」

 低いテノールの声が鼓膜を震わし、それに合わせて陰核を揉み込まれると、蜜孔がキュッと収縮して下腹部にズクズクと衝撃が響く。
 いつの間にか解放された両腕は目の前の太い首に絡まって、床に沈み込まないようにしがみついた。

「しっかり掴まってろよ?」

 近すぎて表情を見ることはできないが、震えた声で嗤っていると感じたけれども…その直後襲った刺激で頭を埋め尽くされて、それどころでは無くなった。
 私は、リカルドの体と壁に挟まれた状態で体を固定され、首筋や鎖骨などを舐めしゃぶられながら、蜜孔に指を入れられて…手のひらで陰核を捏ねられては、太くて長い指でナカから感じる所を探られるようにグチュグチュとかき混ぜられる。

「ふぁぁんっ! あっあっ…ひぃっ…」

 目の前の体にしがみつき、敏感な項や耳裏を舐め上げられ、何も入れたことのない処女孔を責められながら、過ぎた快感をやり過ごすように、体をくねらせたけれども、1本…2本と指を増やされていくと、何も考えられず…ただただその刺激に身を任せた。

「…思ったより狭いな……初めてなのか?」

 3本の指をバラバラに動かしながらクチュクチュと浅い所をかき混ぜ、深い所を穿っては、反応の良かった所を重点的に責められて、私の思考はグズグズに溶けていた。
 なので、問われたことにも何も考えられず、

「んっ、んっ…はじめて…はじめてだからぁっ……やぁぁっ」

 と、声高く叫ぶように答えることしかできなかった。
 リカルドは、その答えを聞くと動きをピタリと止め、真剣な表情で数秒私を見下ろして、足元に座り込むように屈んだ。

「…りか…るど…?」

 暴力的とも思える刺激が急に止んで、生理的な涙を浮かべたまま見下ろすと、不意にローブの裾を捲くりあげられた。

「初めてなら、優しくしてやらないとな…」

 ローブの中からそんな声が聞こえてきたかと思うと、ドロドロに蜜を溢れさせていた蜜穴に、熱くてヌルリと湿ったもので擦られている感触がして、腰がガクガクと震えた。

「ひぃんっ! やっやっ…それだめっ! やだ、いやぁっ!」

 これまでの比ではないほどの快感が、私の全身を襲って来たかのようだった。

「やらっやらっ…そんなとこなめないでぇっ!」

 リカルドの肉厚な舌が、しとどに濡れる隘路を上下に舐め回し、穴の上部の陰核に吸い付いてはコリコリと弾かれる。
 そして、チュクチュクと吸い付かれながら、腿まで蜜をこぼす蜜穴に指を入れられてクリトリスの内側を擦られると、背中を弓なりに反らして目の前が一瞬真っ白になった。
 それでも、リカルドの責め苦は止まず……腰を壁に押し付けられ、逃げ場のない状態で何度も絶頂を極める程イカされ……
 何度イッたのか数えられないほど達した後に解放され…気づいた時にはリカルドの厚い胸板にもたれかかるようにして、抱きついていた。

「ここまでイケたら、もう大丈夫だろう…」

 こっちは膝も立たない程になっているというのに、平気そうな顔で覗き込んでくる男に若干イラッとしたが…股間に当てられた異物の存在感に、目を見張った。

「や…なにそれ……やだ…入んないよぉ…」

 それは、余りに大きくて立派なものだった。
 こんなに臨戦態勢を取った男性器など、もちろん見たことはなかったが…そんな私でもそれが、標準以上に大きなものだと瞬時に悟らされた。
 それは使い込んだように赤黒く、ビクビクと太い血管が脈打っており、カリ高な先端の穴からは先走りが溢れていた。

「悪いが…俺も我慢の限界だ。出来る限り解したが、痛みがあるかもしれない。…しかし、悪いが…ちょっと我慢してくれ」

 ヌルリヌルリと押し開いた花弁に先っぽを擦りつけながら言われると、その刺激だけでもビクッと腰が跳ねて、言葉が出ない。
 そして、丸くて滑らかな亀頭で陰核を擦られると、何も言えなくて…その動きに応えるように、リカルドの首にしがみついて腰を揺らした。
 開いた両腿の間にリカルドの逞しい体躯が入り込み、腰や体幹を支えられて何とかバランスを取っている。

 せめて寝室でしたいなぁと思わなくもなかったが……もう、限界ギリギリで、それどころではないらしい。

「ぁっ……ゆっくり…入れるから……痛かったら俺の肩でも噛んでくれればいいから…」

 言いながら、ズブズブ…と鈍い音を立てて、切っ先が蜜穴を侵入してくる感覚があった。
 私は思わず息を止めて体を強張らせたが、気を紛らわせるように口付けされ、胸を弄られると「ふぁっ」と力が抜けた。

「…はっ…狭っ……少しは楽になるから…力を抜いて、身を任せてくれ」

「んっ…んっ…くるし…」

 そうは言っても、随分執拗に解されたせいか挿入時の蜜のヌメリは十分で、最初の太い部分が無事に胎内に収まると、その後は何とか我慢できる。
 ただ…思った以上に圧迫感と異物感が私の内蔵を圧迫しているのを感じているけれども。

 クチュクチュとキスを繰り返しながら、少しずつ…少しずつ侵入を果たし…ようやく全長を収めることができたと言われた時…思わず生理的な涙が溢れた。

「すまん、痛いか?」

「だ、だいじょぶ……ちょっと苦しいだけ…」

 そう言うリカルドだって、苦しそうに見える。

「俺も…というか、良すぎて…辛いだけだから……少し、動いていいか?」

 そう言うや否や、少しずつゆっくりと前後に揺すられ……その圧迫感と刺激で再びリカルドの首にしがみついた。
 そして、何度か出し入れされている内に少しずつコツを掴んできたのか、力加減がわかってきて…ナカのとある所を擦られると、ビクッと体が反応を返す所があるのに気づく。
 リカルドは慎重に腰を動かしながら、そんな私の感じる所をじっくり観察しているようで…一際反応の良い所を探り当てると、ゴリゴリと太いモノでそこを執拗に擦り始めた。

「ひぁっあっ…やっ…そこっ…ぁあんっ!」

「ここか?…この辺りがイイのか?」

 前後に抜き差ししていたかと思うと、腰を回すようにグチュグチュ中を捏ねられて、全身がより深い快楽を捉えだす。
 蜜穴から止めどなく滴る蜜は、性器から溢れる白濁と混じり合い、どちらとも言えないヌメリでその動きを助長させた。

「あっあっあっ……リカルド…りかるど…もっと…もっと奥までちょうだい…」

 何も考えられなくなるほどの深い快楽が思考を奪い、私はただただリカルドに与えられる刺激を求めて腰を揺らして、更なる快楽を求めた。
 すっかり快楽でグズグズになっている私に対して、リカルドはそんな私の要求を叶え続ける程度には余裕があるようだったのだが。

「マリアっマリアっ………ヤバいな…良すぎてあんまり持たねぇ…」

 私の上体を抱きしめながらそう呟くと、胸元に顔を埋めて腰の動きを少しずつ早めていった。
 それに合わせて私も、頭頂部にあるリカルドの白い虎柄の耳を食んでは、微かな喘ぎをこぼしていく。

「…はっはっ……そろそろ、一回イクぞ」

 そう言って、ラストスパートをかける様に荒い息遣いでズンズンと穿たれ、

「あぁーーっ!!」

 と、背を弓なりに反らして絶頂し…「うっ…」と小さく喘ぐ声を聞きながら、胎内に熱が放たれたのを感じて意識を飛ばしたのだった。

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