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快適空間

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馬車の中は、さすが王室御用達なだけあって、広くて椅子の座り心地も良く、揺れも少なかった。
アルバートさんは、護衛の仕事についたので馬車の近くを馬に乗って移動して、この空間にはローウェンと二人。


どのくらいで着くのか聞いたら、何と順調よくいって10日間らしい。

遠いっ!新幹線無いのっ?って言ったところで無駄だってわかってる。
せめて異世界チートで、魔法とかでパッと飛んだり、テレポートとかで消えたり出来ればいいのにって思う。


と思っていたけど、すぐにそんな考えは1時間もすると消えてしまった。
窓の外はなんといっても異世界。
情緒溢れる自然の景色、見たことのない動物や木々や花、行く先々で、全てが新しくて、私は馬車の旅最高かよ!とめちゃ興奮した。
新幹線なんてとんでもない。
この旅をこんな素敵な馬車で移動できる幸せを感じていた。

「ねぇ!あれ!あれは何て言う動物?」

「わ、綺麗!あれは何て言う花?」

私がしつこいくらいに、ローウェンに質問しても、ローウェンは嫌な顔をしないで、丁寧に教えてくれたりするし、私にはストレージで、喉が乾けば飲み物を出せるし、今までに味わったことのない幸せを感じていた。

ふと思い返してみると、私って日本で旅行したことなかった。
高校の二泊三日の修学旅行が最後で、家族旅行や卒業旅行もなかったし、就職してからは、仕事に追われる毎日だったから、突然異世界に来て驚いたけど、好きな人と同じ空間で、のんびりと旅行が出来るなんて思ってもみなかった。
楽しいな、そう思ってローウェンを見ると、ローウェンも私を見つめていて、目があった。

「「・・・」」


最初に、クスリと笑ったのはローウェンで、私も笑った。

「レイナがこんなに楽しんでくれて良かった。城に向かうのが憂鬱そうだったから心配してたけど安心した」

「ちょ、忘れてたのに!」

「・・はぁ・・忘れてたのか・・」

ローウェンが呆れ顔だ。

「だ、だって、こんな素敵な景色見たら興奮するし、ローウェンと居られて楽しいんだから仕方ないよ」

「・・・」

「見るものが全部目新しいし、ローウェンは、説明が丁寧だし、始めは10日もやだなって思ったけど、今はたったの?とか思ったりして、お城までの道のりが楽しみで!」

「・・・」

「それに・・好きな人との旅行を嫌がる人なんて居ないよ」


一気にまくし立てて、ローウェンがさっきから黙ったままでいるのが気になってチラリと見ると、ローウェンが嬉しそうにジッと私を見てた。


「嬉しいな。僕との旅行を楽しんでくれてるってことか・・よしっ!王都に着くまでの道中、あまり寄り道は出来ないと思うけど、大きい街へは必ず寄るから、短い時間でも街歩きをしようか?」

「本当?デートだね!」

「デート?デートって何?」

思わず、二人きりだと思ったからデートと言ってしまったけど、多分護衛もつくだろうし、厳密に言えば二人きりではないだろうからデートではないか。

「あ、ええと、好きあった男女が二人きりで街を歩いたり、美味しい物を食べたり楽しんだりする行為をデートって言ったりするんだけど、護衛の方達もいらっしゃるだろうから、デートとは違うよねっ、アハハ」


私が照れ笑いすると「いいね!デート!」とめっちゃ興奮してる。
大きなシッポがブンブンと振ってる幻影まで見えてきそうだ。

「護衛達には、距離を空けてもらって僕達はデート楽しもう?」

「う、うん」

「好きあった男女・・」


頬をほんのり赤く染めた、ローウェンは色気がマシマシになっている。

案の定、トロリとした瞳に、私は魅せられてススッと重力に逆らえなず寄り添った。

どちらからともなく、二人の顔が近づき甘く濃厚なキスが始まった。

景色も最高だけど、ローウェンの色気にはどうやら敵わないなと思う麗奈だった。



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