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二人の距離

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「ごめん!」


ローウェンが深々と頭を下げた。


因みに私は、意識を失っていたのは10分ほどだったらしく、目が覚めると服の乱れも直され、アソコも綺麗に拭かれていて下着も履いていた。

一瞬夢でも見ていたのかと思ったけど、草原の中、マントの上で寝ていて、さっきまでのは夢ではなく現実。


私は、こんなお天道様の下、あられもなく洋服を乱して、イキたいっておねだりまでしちゃったわけで。

いーやーーーー!!!


私、処女だよね?え、まだ処女って言っていいんだよね?
こんなんでも処女なわけ?
うっうっ、エッチな経験が始めからずっと外っていうのも、なんかイヤ。
処女なのに、経験値がヤバイ。


私がジロリとローウェンを睨むと、ローウェンがすかさず冒頭の「ごめん!」となり謝り倒すという流れになったわけだけど。

ここで許すと、またとんでもない経験値が増える予感がバリバリする。
気持ちいいよ?でも、簡単に股を開くと思われたくもない。
だって、今まで、全く経験がなくて、全てローウェンだけ。
しかも、私も知らないうちに、身体がいやらしくなっているのが怖い。

ローウェンのこと好きだけど、自分が自分じゃいられなくなるような恋は怖いし、出来ればお断りしたい。


ここは、ローウェンと距離を置いて、恋を少し覚ました方がいいかもと思い始めている。

ローウェンも、今は目新しくて情熱的でも、少ししたら覚めてしまうかもしれない。
そうなった時に、私が引くに引けないとこまで来ていたら目も当てられない!

良かった!気付いて!


なので、ローウェンには悪いけど、軽いキスならいいけど、深いキスや過度なスキンシップを避けるようにしようと思う。
だって、深いキスをしたらきっとまた何も考えられなくなるほど溶かされるに決まっているから。


はぁ、これって異世界云々よりも私の恋愛経験不足だからかな?
流させれちゃいけないって思うのに流させていくのが、いいことなのか悪いことなのか判断がつかない。


でも、ローウェンは、イケメン過ぎる見た目が良くないとも思う。
今は、私にだけ愛情を向けてくれてると信じることは出来たけど、それがずっと続くのか?と思うと信じられなくなる。


「ローウェンとのこと、私少し考えることにする」


何と言おうか、逡巡したかけれど、今、離れることは恐怖だし、ローウェンが頼りであることは間違いない。
ただ、恋人としての距離を見直すということで、一定の距離をおくという気持ちを込めている。


「それってどういうこと?」

ローウェンが傷付いた顔をしていた。

「好きって気持ちは変わらないけど、こう頻繁にこういうことするのに抵抗があるというか、付き合う前の関係に一度戻りたいの」


「そんなに嫌だった?」


「い、嫌・・嫌じゃない」


嫌と言うつもりだったのに、悲しそうなローウェンを前にして、嫌なんて言えない!!

パッとローウェンの顔が明るくなった。

「じゃあ、今のままでもいいじゃないか」


「うっ・・ダメよ」


好きになり過ぎてしまうから


「ちょっとだけ、距離を置いて欲しいの、私が恋愛初心者で、ローウェンが何もかも初めてで、戸惑ってるのよ」

お願い!分かって!


私の気持ちに、少し納得できたのか、眉をへにょんと情けない顔になった。

「分かった、レイナの気持ちを優先するよ」


ホッとすると、ローウェンがただし、と続けた。

「レイナが、誘ってきたり、さっきのように上目遣いで煽ってきた場合は、覚悟するように」


「ひぇ!さ、さっきの?さ、誘ってない!」

「無自覚でも、男は好きな女の子に上目遣いで見られたら、止まらないから!」


「わ、わかった。気をつける」


「ん」


はあぁぁと、ローウェンが大きく溜め息を着く。


「レイナとの距離が近付いたと思ったら、また離れてしまったみたいだ」


「あっ・・」


そうじゃないって言いたい。
だけど、距離を取ろうとしているのは間違いなく自分だった。


「だけど、レイナがまた近づいてきてくれるって信じてるよ」


強いなって思った。
ローウェンは、強い。
先の事ばかり心配して、今から悩んでローウェンから距離を置こうとしてるんだから。


でも、まだ異世界に来てたったの四日目。


心も身体も、いっぱいいっぱいで、ほんの少し弱い自分を許して欲しい。


「ありがとう」


ちょっと、短時間の内にローウェンと近付き過ぎたのだと思う。
寂しく思うのは、今だけ。


私達は、お互いに納得して、また草原の中を歩きだした。



ローウェンとの距離は、二歩分の間隔を開けて。


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