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チート能力

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朝ごはんを済ますと、私は「花を摘んできますね」とトイレに行くと言うことを遠回しに言ってみた。

通じるかな?と思って言ってみたら「お花咲いてないと思うよ」と真剣に言われてしまったので「トイレ」というと、笑って行っておいでと言ってくれた。



ローウェンの目が優しい。
昨日ももちろん優しい目をしていたけど、一晩たって昨日のことがあるからか、とても甘いのだ。

しかも、かなりスキンシップが増えたと思う。
やたらと、頭を撫でたり、頬っぺをスリリと触れる。
告白されたわけでもないのに、心臓がバクバクするのでやめて欲しい。

これは、後から強く言っておいた方がいいのかも。



私は、少し森の奥に入ると、そこはしっかり用はたしてから、思いきってー。

「ステータス画面オープン!!」



何も出なかった。


はい、恥ずかしいです。



「ストレージ!!」



私は、収納ボックスのようなものを想像して叫ぶと、目の前に透明なドアが見えた。
しかもかなり大きめ。


「え、ホントに出た?」


恐る恐るドアを開くと、私の家の中にあった荷物が全て収まっていた。
え、これ冷蔵庫も入ってる?
しかも洗濯機に洋服だんすまで。

冷蔵庫を開くて、不思議なことにひんやりとして電気が繋がっているようだった。


「す、すごい!嬉しい!」


ということは、私が持ってる食材をこの中に入れておけば日持ちするし、冷凍庫ならもっと期間が長くなる。

私が今まで買った愛着があるものが常に近くにあるのは、ホッとするし安心する。

しかも、この中にベッドも布団もあるので、昨日のようにマントでくっつきあって過ごす必要もなくなった。

別に、残念なんて思ってない!



とりあえず、今後の旅がかなり楽になったことは確実。
あとは、魔法も使えるかどうか。


私は、自分の体内に魔力というものがあるのか、目を閉じて意識して探ってみた。

うん、よくわからない。


「水よ、出ろ!」


とりあえず言ってみた。


何も出ない。


「ウォーターカッター!」


知ってる、水の攻撃名を叫んでみた。


シーン



はい、とても恥ずかしいですね。
私は、ローウェンの前でやらなかった自分に感心する。
さすが、自分!と。



「レイナ?」


しかし、後ろから声をかけられた。


「ひゃ、ひゃい!」


ローウェンが後ろに居た。
どこから見てたの?


「えっと、遅いから心配で様子を見にきたんだけど、レイナが突然、ウォーターカッターって叫ぶからどうしたのかと思って」


そ、そこを聞いちゃってましたか。
は、恥ずかし死ぬ!!

私が赤くなって、口ごもっていると、ローウェンは、くぐっもって、肩を震わせ始めた。


「グッ、ハッ、ま、待って、もしかして水の攻撃を試そうとし、してた?」


正解である。
黙って硬直してる私を見て、更に苦し気にお腹を抱えるローウェン!
笑うなら、しっかり笑って!
声を出さないで、何とか抑えようと頑張ってる姿は、もういいよ、と言ってやりたい。
しかし、目から涙が零れてるし、何とも憎らしい。


「はぁ、ローウェン無理して笑うの止めなくていいよ。こっそり魔法が出ないか確かめてたの!」


「アッハッ!ハッ、そ、そっか。ククッ、わ、悪いね、すぐに笑うのと、止めるから、ハッ、ま、待って!ハハハッ」


しばらく、発作のようにローウェンが笑い転げるので、私も恥ずかしかったのが、だんだんとローウェンをここまで笑わせれたことが嬉しく、楽しく思えてきた。

ローウェンって、ただのイケメンと思ってたけど、笑い上戸なところもあって可愛いと考えてる自分がいた。
笑ってる顔も素敵だな、と。


はっ!ダメ、ダメ!
危うく、ローウェンの魅力に陥落してしまいそうだったわ。
油断のならないローウェンめ!


「もう笑うなら、お昼は抜きにしますよ?」

と言うと、ローウェンがピタリと笑いを止めた。

「す、すまない。ちょ、ちょっと調子に乗ってしまった」

「ほんとですよ。笑い過ぎです」


私が軽く睨むと、ローウェンがまた蕩けるようにこちらを見た。

「レイナが可愛い過ぎるのも悪い」


「か、可愛い?このやり取りでどこがですか?」

ローウェンの思う、可愛いポイントはどこだったのか?
考えてもわからない。

「まず、隠れて魔法を使ってみようと試みるのが可愛いし、魔法の呪文を叫んでるのも可愛いかった。それから、それを見られて恥ずかしそうに赤くなっているのも「す、ストップ!」可愛いかった」

途中で、ストップを掛けたにも関わらず、またもや可愛いを連発するローウェンは、ニコニコと嬉しそうだ。


「レイナ、魔法は、まず神殿に行き、魔力回路を使えるように神に礼拝しないと使えないんだよ」

「神殿!そうなんですね、なんだ、先に聞いておけば良かったです」

「これから何でも聞いて。知ってることなら教えるよ」

ローウェンの言葉に、私も嬉しくなる。


「じゃあ、まずローウェンのこと聞いてもいい?」

「僕?なんだい?」

「ローウェンは、この国に何しに来て、どうして襲われたの?」


このことは、ずっと気になったいたことだけど、深く関わってしまっていいのか不安もあって聞けなかった。


「そういえば、説明が不足してたね。僕は、この国にアルソードからの親善使として来たんだけど、この国、イリードの国王は、戦争を仕掛けてきたんだよ」

「せ、戦争!」

しかも、飛ばされてきた先の国は、イリードと言うのも初めて知った。

「そう、で、そういうことを回避するべく立ち回り、仲間とバラバラに逃げて、アルソードで落ち合うと約束したわけ。でも途中で襲われて、何とか森の中に逃げ込んだんだけど、知っての通り、食べ物も水もないからね、行き倒れるところをレイナに助けてもらったということだよ」


「え、じゃあ、追ってが来るの?」

「多分、来ないと思うよ。この森って、生き物居ないの気付いた?」

「あ、そうですね、まだ見かけてないです」

「この森は、別名死の森と言われてるんだ」

「死の森!」

何と恐ろしい別名


「この森には、木の実もキノコも育たないから、食べるのが全くないんだよ。だから虫もいない」

「え、虫も?」


ということは、昨日ローウェンが虫がウンチャラ言ってたのは嘘だったんだわ。


「夜は、虫が居なくても冷えるからね」

ローウェンは、私が考えたことがわかったようだ。


「虫のことは、もういいです。で、その死の森に入ったローウェンは、水も食べ物もないから生きて出てこないだろうと思われてるってことでしょうか?」


「そう、現に俺は、森の中で2、3日何も食べないで死にそうだったからね。人に会うとも思ってなかったよ」


「状況はわかりました。後、ローウェンって年はいくつなんですか?」


ローウェンは、嬉しそうに笑った。

「レイナが僕のことを知ろうとしてくれてるの嬉しいよ。僕は27だよ。レイナは?」



「私は、24です」


私がそう言うとローウェンは驚いた顔をした。

「レイナは若く見えるね。てっきり17くらいかと思ったよ」


「17?それは若く見え過ぎですよ」


こっちの異世界では、みんな成人するのに早く、女性は大人っぽいのかも。
小柄な身長だから、きっと子供っぽく見えるのね。


「そうか、レイナは自分の国で結婚とかしてたの?」


ローウェンがとんでもないことを言う。
結婚どころか、お付き合いしてる人も居たこともないというのに。

「いいえ、結婚してませんよ」

「お付き合いしてた人は?」

「いいえ」

誰とも付き合ったことも、とはプライドが邪魔をして言えないけど。


「じゃ、好きな人は?」


「そ、そんなことはいいじゃないですか!」

なぜかローウェンに、日本で1人寂しい独身女と思われたくなくてこれ以上言いたくなくなってしまった。
仕事は、楽しく充実していた毎日だったんだから、恥ずかしいと思う必要はないのに。


「ふーん」


ローウェンは、面白くなさそうに呟くと、パッと話題を変えた。


「じゃ、僕と付き合ってよ。レイナ」


「え、ローウェン?」


「昨日、僕に触られて嫌じゃなかった?」


「あ、別に嫌では」


「じゃあ、僕と付き合おうよ」


「で、でも私、いつか自分の国に帰るつもりだから付き合いとか出来ない」


「それじゃ、レイナが帰るまででもいいよ」


ローウェンと私が付き合う?
日本に帰るまで?
それは、とても魅力的な提案だった。
でも、とそこに落とし穴はない?と自分に聞いてみる。


そう、ローウェンは、別に私がどう返事をしたとろこで多分どっちでも構わないのだろう。
多分、暇潰しくらいしか考えてない。
それを間に受けて、付き合ったら間違いなく私は、ローウェンに溺れてしまうだろう。
その後に、日本に戻れると知って、帰れる?
否!帰れるわけがない!
しかも、ローウェンが私以外の人と付き合うと言って、振られる確率は高い。


私は、何もかも無くしてしまう未来が見えた。

やはり、ローウェンは油断がならない。


「ローウェンとはお付き合いしません」

私は、キッパリとローウェンにお断りをした。
この決断は正しいと信じて。


ローウェンは、悲哀にみちた目をしたけどすぐに笑顔を取り戻した。悲哀にみちたと思ったのは、多分勘違い。


「了解。でも、旅の間は僕のこと友達以上として思ってくれると嬉しいな」

「友達以上?」


「友達では、キス出来ないでしょ?それ以上の昨日のようなことも」


ローウェンは、甘く誘惑するように手のひらを私の頬に触れた。
ローウェンを見つめると、引き寄せられるようにキスをせがみたくなる。


「レイナ、君に触れたい。止めないで」


「あ、は、はい」


私は、つい頷いてしまった。
キスも、それ以上を許してしまうことを肯定してしまった。


ローウェンは、ニコリと微笑むとチュッとキスをした。
軽く、そっと触れるだけ。

でも、何故か私は物足りない。


それは、きっと昨日の夜、濃厚で濃密なキスを体験してしまったから。
もっと深く、もっと淫らなキスがしたくなってしまった。


「レイナ、誘ってるの?いいよ」



ローウェンは、私の唇にそっとキスを落としてから、舌を侵入させてきた。
ペロリと、舌先が私の歯列を舐め回す。
ゾクリと背中が震える。


「は、あ、あんっ」


キスがこんなに気持ちがいいなんて知らなかった。


付き合わなくても、友達以上なら許される関係があるなんて知らなかった。



私は、すっかりローウェンのペースに乗せられていることに気付いていなかった。




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