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傀儡子の館編
36話 疑惑の血痕
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「なっ.......んだ、これ......」
俺は腹部から右腕にかけてべっとりと付着した血液を見つめ、硬直していた。
「ど、どうされたの?」
女性の声が聞こえ、俺は無意識のうちにふりかえってしまった。
「「「キャアアアアアッ!」」」
そこにいた女性は、あの女子部屋にいた全員だった。
エリュ以外の女性は、俺を見て屋敷に轟く程の声で絶叫していた。
「いや、これは違っ......!」
違うと言いかけると、俺の弁明など聞くものかと、へたりと座り込んだ男が遮る。
「こ、こいつだ! こいつがリーチャを殺したんだ!」
その言葉を聞いた者の殆どは、俺から後ずさる。
俺に誰かを殺した記憶は無いが、身体に血液が付着しているため、気分は殺人犯だ。
当然ながらそれはいい気分ではない、むしろ全身の血が引くような感覚に見舞われた。まぁ、俺の場合体内の血液も機能はしていないが。
「ね、ねぇルファー。リーチャが死んだって嘘、よね......?」
赤髪の女性が、先ほど俺を殺人犯呼ばわりしていたルファーなる男に聞く。
もう一人の茶髪の女性、というよりは少女といった方が適切であろう人が、わなわなと身体が震えていた。
「......嘘じゃない。でも、確認はしない方が良い」
確認しない方が良いのは、恐らく死体の損傷が酷いからだろう。
一瞬で頭の中でそう思考しした時、茶髪の少女がその場でがくりと膝を着いた。
「そんな......そんな......」
少女は嗚咽混じりに涙を流した。
なんだろう。俺が殺したわけではないのに、罪悪感が込み上げてくる。
「俺は......」
何か喋ろうとしても、それしか言葉が発せられなかった。
そして、少しの沈黙、聞こえるのは少女の嗚咽だけであった。
「違うわ......」
誰かがぽつりとそう呟いた。
ぎりぎり聞こえるくらいの声量だったが、俺はすぐにエリュのものだと悟った。
「違う。コウキがそんなことする筈無いわ。コウキが犯人なわけない」
エリュのその声は、僅かに震えていた。
「じゃあ誰がリーチャを殺ったんだよ......」
ルファーがそう良いながら拳を握る。
「......私が見つけるわ。真犯人」
「......エリュ」
俺はふと、エリュの名を呟いていた。
「真犯人探しはいいが、コウキはどうする。流石にこのまま自由にさせとくわけにはいかないだろう」
ラヘルのその言葉にエリュが何か返そうとしたが、俺が手振りでやめさせる。
「そ、それなら丁度いい所があるぜ......!」
「ちょ、丁度いい所......?」
俺は胡散臭さを感じながら、そう聞き返していた。
俺は腹部から右腕にかけてべっとりと付着した血液を見つめ、硬直していた。
「ど、どうされたの?」
女性の声が聞こえ、俺は無意識のうちにふりかえってしまった。
「「「キャアアアアアッ!」」」
そこにいた女性は、あの女子部屋にいた全員だった。
エリュ以外の女性は、俺を見て屋敷に轟く程の声で絶叫していた。
「いや、これは違っ......!」
違うと言いかけると、俺の弁明など聞くものかと、へたりと座り込んだ男が遮る。
「こ、こいつだ! こいつがリーチャを殺したんだ!」
その言葉を聞いた者の殆どは、俺から後ずさる。
俺に誰かを殺した記憶は無いが、身体に血液が付着しているため、気分は殺人犯だ。
当然ながらそれはいい気分ではない、むしろ全身の血が引くような感覚に見舞われた。まぁ、俺の場合体内の血液も機能はしていないが。
「ね、ねぇルファー。リーチャが死んだって嘘、よね......?」
赤髪の女性が、先ほど俺を殺人犯呼ばわりしていたルファーなる男に聞く。
もう一人の茶髪の女性、というよりは少女といった方が適切であろう人が、わなわなと身体が震えていた。
「......嘘じゃない。でも、確認はしない方が良い」
確認しない方が良いのは、恐らく死体の損傷が酷いからだろう。
一瞬で頭の中でそう思考しした時、茶髪の少女がその場でがくりと膝を着いた。
「そんな......そんな......」
少女は嗚咽混じりに涙を流した。
なんだろう。俺が殺したわけではないのに、罪悪感が込み上げてくる。
「俺は......」
何か喋ろうとしても、それしか言葉が発せられなかった。
そして、少しの沈黙、聞こえるのは少女の嗚咽だけであった。
「違うわ......」
誰かがぽつりとそう呟いた。
ぎりぎり聞こえるくらいの声量だったが、俺はすぐにエリュのものだと悟った。
「違う。コウキがそんなことする筈無いわ。コウキが犯人なわけない」
エリュのその声は、僅かに震えていた。
「じゃあ誰がリーチャを殺ったんだよ......」
ルファーがそう良いながら拳を握る。
「......私が見つけるわ。真犯人」
「......エリュ」
俺はふと、エリュの名を呟いていた。
「真犯人探しはいいが、コウキはどうする。流石にこのまま自由にさせとくわけにはいかないだろう」
ラヘルのその言葉にエリュが何か返そうとしたが、俺が手振りでやめさせる。
「そ、それなら丁度いい所があるぜ......!」
「ちょ、丁度いい所......?」
俺は胡散臭さを感じながら、そう聞き返していた。
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