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学園編
08 クラスメイト
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「俺は玖村渥美! 好きなもの、というよりことは、運動です。特にEO! よろしくお願いします!」
急に立ち上がった時は驚いたが、どうやらただの自己紹介だったようだ。
亜堂付近から「暑苦し」という声が聞こえた気がしたが、玖村君は無反応だった。聞こえてなかったのだろうか。
「じゃあ、次研間君」
すると、研間と呼ばれた生徒がスッと立ち上がる。髪の色はマゼンタ、より少し暗い色で、瞳は深い緑だ。
「研間直記です。基本工業科の授業に出るので皆さんとはあまり話す機会は無いかもしれませんが、まぁ、取り敢えずよろしく」
後半面倒になったのか適当に切り上げていたが、真面目そうな印象を受けた。
その生徒が座ると、次の生徒が立ち上がった。
「さ、桜川桜花です。好きなものは……えと、ゲーム……かな?」
かな? ってなんや。と思いつつ、一瞬女性に見えた彼の容姿も確認しておく。髪色は名前と同じ桜色で、瞳の色はよく見えないが、明るい茶色……だと思う。
身長はやや小さめだった。160センチをぎりぎり越えている位だろうか。
「曽根灰斗。君……は、今日は休みね」
入学式当日に欠席? いくら特別枠とはいえそんな生徒がいるとは。
全員がそう思っているだろう間に、次の生徒に自己紹介をするよう先生が催促する。
「立花蓮之助です。趣味……というか、映画を見るのは好きです」
立花蓮之助。髪は茶色よりだいぶ明るい、栗色位の色だろうか。瞳は藍色。第一印象は歌舞伎役者みたいな名前。
「津川海境じ……です。よろしくお願いします」
どもったのが少々気になったが、それはそれとして、津川海境の特徴も観察する。
髪の色は小豆色。瞳の色は先ほどの藍色より明るい青。第一印象は筋肉ムキムキ。
「時東明日真です。EOには自身があります。よろしくお願いします」
その言葉を聞いた生徒(主に男子)達が、一斉に、そして睨むように時東明日真に視線を浴びせた。
髪色は漆黒で、瞳の色は少し茶色の混じった黒。なオーソドックス日本人で地味目な彼だが、EO名門校であの発言は些か不味かった。
「えっと、次俺なんでやってもいいですか?」
雰囲気に堪えきれず立ち上がり、先生にそう問う。
時東明日真は、ちらりと俺に視線を送ってから着席した。
「名前は無梨刀真です。趣味とか好きなものは……あー、今のところ無いです」
無梨という名字は、元々〝名無し〟だったことから自分でそう付けた。
俺はクラスから奇妙なものを見る視線を感じながら、「以上です」と終わらせる。その後、すぐさまアデリナが起立する。
「私はアデリナ・ズィカンシナ。EOでは誰にも負ける気は無いのでよろしく」
バカバカ煽るな! と脳内で注意しても、彼女の耳には届かない。
しかし、アデリナに送られた視線は、時東明日真や俺に向けられたものとは全く別のものだった。
この視線に込められている感情は……なんだ? 緊張のような、あるいは、何かに押し潰されそうなプレッシャーに、耐えているようにも見える。
しかし、アデリナが着席すると、僅かに重くなった気がした空気も元に戻った。その事で安堵したのか、次の生徒が椅子から腰を離す。
「上杉心です。好きなものは甘いものです。よろしくお願いします」
アデリナとは対照的にほんわかした少女が、ふわふわと自己紹介をする。
髪色は茶色。瞳の色は淡い水色で、目を引くのはその圧倒的……その、あれだ。アデリナが質なら、この子は量だな。
クラスの雰囲気に軽さを与えながら、上杉心は腰を椅子に落とした。
「笠原ミカエル。名前でなんか文句あるやつはぶっつぶす」
「ミカエルって名前の天使、性別男じゃね? なんで男の天使の名前なの?」
「おい誰だ今言ったの! ぶっつぶす!」
右側から聞こえて来たので、一桁台の連中のうちの誰かが犯人だろうが、放っておく。
天使の髪色は、可哀想な程に金色で、瞳は赤く輝いているが、つり目でちょっと怖い印象だ。
先生が興奮気味の天使を落ち着かせ着席させたところで、次の生徒が立つ。
「矢口雅弓です。得意なものは裁縫……ですかね。中学の実習とかでやった時も楽しかったですし」
矢口雅弓。髪の色は暗い茶色。瞳の色は髪と同色。眼鏡を掛けているが、かなりスマートで未来的なデザインだ。
「はいはーい。最後の紹介を承りました私の名は渡辺恵でーす! 好きなものはー、うーん、カラオケとかはよく行くから、歌とかかなぁ? あ、可愛いものとかは好きかも!」
入学式から異常までにハイテンションな渡辺恵。髪色は染めているのではと思う程に透き通る水色。瞳の色は黒だ。
これにてクラス全員の紹介が終わったわけだが、なんか、あれだ。皆協調性とか無さそうだ。と思うと同時に、自分もその中のひとりだということに気付き、ため息を漏らした。
急に立ち上がった時は驚いたが、どうやらただの自己紹介だったようだ。
亜堂付近から「暑苦し」という声が聞こえた気がしたが、玖村君は無反応だった。聞こえてなかったのだろうか。
「じゃあ、次研間君」
すると、研間と呼ばれた生徒がスッと立ち上がる。髪の色はマゼンタ、より少し暗い色で、瞳は深い緑だ。
「研間直記です。基本工業科の授業に出るので皆さんとはあまり話す機会は無いかもしれませんが、まぁ、取り敢えずよろしく」
後半面倒になったのか適当に切り上げていたが、真面目そうな印象を受けた。
その生徒が座ると、次の生徒が立ち上がった。
「さ、桜川桜花です。好きなものは……えと、ゲーム……かな?」
かな? ってなんや。と思いつつ、一瞬女性に見えた彼の容姿も確認しておく。髪色は名前と同じ桜色で、瞳の色はよく見えないが、明るい茶色……だと思う。
身長はやや小さめだった。160センチをぎりぎり越えている位だろうか。
「曽根灰斗。君……は、今日は休みね」
入学式当日に欠席? いくら特別枠とはいえそんな生徒がいるとは。
全員がそう思っているだろう間に、次の生徒に自己紹介をするよう先生が催促する。
「立花蓮之助です。趣味……というか、映画を見るのは好きです」
立花蓮之助。髪は茶色よりだいぶ明るい、栗色位の色だろうか。瞳は藍色。第一印象は歌舞伎役者みたいな名前。
「津川海境じ……です。よろしくお願いします」
どもったのが少々気になったが、それはそれとして、津川海境の特徴も観察する。
髪の色は小豆色。瞳の色は先ほどの藍色より明るい青。第一印象は筋肉ムキムキ。
「時東明日真です。EOには自身があります。よろしくお願いします」
その言葉を聞いた生徒(主に男子)達が、一斉に、そして睨むように時東明日真に視線を浴びせた。
髪色は漆黒で、瞳の色は少し茶色の混じった黒。なオーソドックス日本人で地味目な彼だが、EO名門校であの発言は些か不味かった。
「えっと、次俺なんでやってもいいですか?」
雰囲気に堪えきれず立ち上がり、先生にそう問う。
時東明日真は、ちらりと俺に視線を送ってから着席した。
「名前は無梨刀真です。趣味とか好きなものは……あー、今のところ無いです」
無梨という名字は、元々〝名無し〟だったことから自分でそう付けた。
俺はクラスから奇妙なものを見る視線を感じながら、「以上です」と終わらせる。その後、すぐさまアデリナが起立する。
「私はアデリナ・ズィカンシナ。EOでは誰にも負ける気は無いのでよろしく」
バカバカ煽るな! と脳内で注意しても、彼女の耳には届かない。
しかし、アデリナに送られた視線は、時東明日真や俺に向けられたものとは全く別のものだった。
この視線に込められている感情は……なんだ? 緊張のような、あるいは、何かに押し潰されそうなプレッシャーに、耐えているようにも見える。
しかし、アデリナが着席すると、僅かに重くなった気がした空気も元に戻った。その事で安堵したのか、次の生徒が椅子から腰を離す。
「上杉心です。好きなものは甘いものです。よろしくお願いします」
アデリナとは対照的にほんわかした少女が、ふわふわと自己紹介をする。
髪色は茶色。瞳の色は淡い水色で、目を引くのはその圧倒的……その、あれだ。アデリナが質なら、この子は量だな。
クラスの雰囲気に軽さを与えながら、上杉心は腰を椅子に落とした。
「笠原ミカエル。名前でなんか文句あるやつはぶっつぶす」
「ミカエルって名前の天使、性別男じゃね? なんで男の天使の名前なの?」
「おい誰だ今言ったの! ぶっつぶす!」
右側から聞こえて来たので、一桁台の連中のうちの誰かが犯人だろうが、放っておく。
天使の髪色は、可哀想な程に金色で、瞳は赤く輝いているが、つり目でちょっと怖い印象だ。
先生が興奮気味の天使を落ち着かせ着席させたところで、次の生徒が立つ。
「矢口雅弓です。得意なものは裁縫……ですかね。中学の実習とかでやった時も楽しかったですし」
矢口雅弓。髪の色は暗い茶色。瞳の色は髪と同色。眼鏡を掛けているが、かなりスマートで未来的なデザインだ。
「はいはーい。最後の紹介を承りました私の名は渡辺恵でーす! 好きなものはー、うーん、カラオケとかはよく行くから、歌とかかなぁ? あ、可愛いものとかは好きかも!」
入学式から異常までにハイテンションな渡辺恵。髪色は染めているのではと思う程に透き通る水色。瞳の色は黒だ。
これにてクラス全員の紹介が終わったわけだが、なんか、あれだ。皆協調性とか無さそうだ。と思うと同時に、自分もその中のひとりだということに気付き、ため息を漏らした。
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