フューチャーソード

勇崎シュー

文字の大きさ
上 下
4 / 10
決闘編

04 光刀

しおりを挟む
「……なんでこんなことに」

 俺は白い全身タイツのようなスーツを着ながらそう呟いた。

「お前が留学生にちょっかい出すからだろ」

 カーテン越しで先輩がそうツッコむ。

「いやだから違うんですって!」

 辛辣な先輩への悲痛な弁解も空しく、俺はため息をついた。
 なぜこうなったのか、話は数十分前まで遡る。


「えっと、本当にすみませんでした」

 俺は額を地面すれすれまで下げ土下座する。

「いいわよ。どちらにしろころすから。謝らなくて」

 相変わらず物騒な事を口走る美少女に、顔を上げどうしたものかと頭を悩ませていると、先輩が慌ただしく二階から駆け降りるのが見えた。

「あのー、これは……?」

 少女が仁王立ちし、そこに土下座している少年がいれば、怪奇な状態であることは間違いない。

「この子が私に無礼をしたからころすの。EOで」

 え? 何? EOってデスゲームかなんかなの?

「えっと、こいつが何したかは分かりませんけど、勘弁してあげれませんか?」

「駄目。ころす」

「えー……」

 先輩の言葉すら聞かない強情娘についそんな声を吐くと、朱色の相貌からぎらりと睨まれる。

「あ、はい。やります。やらせていただきます」

 有無を言わせない状況なのもあり、俺は渋々この少女とEOをすることになったのである。
 それから学園のEO特設フィールドに移動し、現在に至るわけだが……。

「先輩、なんかこの服恥ずかしんですけど、この上からなんか着てもいいんですか?」

「まぁ、そこらへんは向こうも何も言ってなかったし、大丈夫だろ。大会によっては駄目だったりするけど」

 先輩の説明に頷きながら、俺は私服のパーカーとズボンをスーツの上から重ねた。
 もう一枚パーカーの下にシャツも着ていたのだが、スーツの上からだと少しきつかったので今回はお留守番だ。

「あ、着替え終わりました」

 しゃっ、とカーテンを開け、教室ひとつ分はあるこの白い部屋に出る。

「じゃ、次は武器選びだな。どれがいい?」

 ほぼ円形のこの部屋には、壁に幾つもの武器が掛けられていた。
 銃のようなものや、剣の柄しかない様な見た目の謎の物体まで、様々な種類の武器が立ち並んでいた。

「えっと、初心者おすすめのやつってあります?」

 恐る恐る先輩に聞くと、うーん、と目を瞑り腕を組んで頭を傾げた。

「そうだなぁ、ハンドガンタイプかワンハンドソードのどっちかだけど、片方得意でもう片方はすげー苦手……ってこともあるからなぁ。今は試す時間も無いし……」

 先輩が悩むなか、俺が辺りを見回してみると、あるものが目に写った。

「これ……」

 見つけた瞬間、何の躊躇も無く俺はそれを手にする。

「ん? それ、刀タイプのアーツじゃん」

 〝アーツ〟というのは、EOで使用される武器の総称━━学園に来るまでに幾つかの基礎知識は教わった━━である。
 しかしこの中にあるものは全て〝アーツ・レプリカ〟と呼ばれ、誰でも使えるが威力はそこそこのものしか無いらしい。因みに、個人専用で威力が充分に発揮されるアーツのことは〝オリジンアーツ〟と呼ばれる。

「あのー、これどうやって使うんですか? 持つところしか無いんですけど」

 刀にしては近未来的でスマートなデザインだが、重要な刃の部分がこのアーツには欠けていた。

「スイッチが親指辺りにあるだろ。それ押してみ」

 言われた通り親指でまさぐってみると、スイッチらしきものが見つかる。
 そのままカチッ、と押すと、ヴンッと音をたてながら青白い光の刃が迸る。

「おぉ、かっけぇー……!」

 刃渡り八十センチ程の近未来刀をブンブン振り回しながら感動する。

「それ結構扱うの難しいんだけど……まぁ、いいか。じゃ、気をつけて行ってら」

 緊張感の無い激励を受け、頷きながら俺はフィールドに向かった。
 聞いた話によると、フィールドは半径二百メートルの真円らしく、見たところ半径はともかく、形状は真円で間違い無さそうだ。

「ルールは私が決めさせて貰うわ」

 既に向かい側で佇んでいる少女がそう言いながら何やら操作をしている。手元をよくみると半透明のパソコンスクリーンの様なものが浮かんでいた。

「あ、俺どのみちなんもわからないんでどうぞ」

 手元に置いていた集中力を戻し、そう答える。

「了解。じゃあ制限時間は五分で、アイテムとアーツスキルは無し。決着方法はライフ制で良いわね?」

「あ、はい。じゃあそれで」

 アイテムやら決着方法やらよく分かっていない俺には、そう答える他無かった。

「じゃあデータ上のルールはこれくらいで……次はそれ以外のルールね」

 え? なにそれ? という言葉をなんとか呑み込む。

「使う武器はアーツ・レプリカだけで、勝者は敗者にひとつなんでも言うことを聞くこと」

 成る程、ルール外ってのはアーツ・レプリカを使うとかそういう…………ん?

「えっ、なんすかそれ。聞いて無いんですけど!?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王子妃だった記憶はもう消えました。

cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。 元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。 実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。 記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。 記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。 記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。 ★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日) ●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので) ●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。  敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。 ●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

戦艦大和、時空往復激闘戦記!(おーぷん2ちゃんねるSS出展)

俊也
SF
1945年4月、敗色濃厚の日本海軍戦艦、大和は残りわずかな艦隊と共に二度と還れぬ最後の決戦に赴く。 だが、その途上、謎の天変地異に巻き込まれ、大和一隻のみが遥かな未来、令和の日本へと転送されてしまい…。 また、おーぷん2ちゃんねるにいわゆるSS形式で投稿したものですので読みづらい面もあるかもですが、お付き合いいただけますと幸いです。 姉妹作「新訳零戦戦記」「信長2030」 共々宜しくお願い致しますm(_ _)m

もういいよね?

玲羅
SF
AIがパートナーとして身近になり、仮想空間へのフルダイブが一般的になった近未来で起こった、いつかあるかもしれないお話

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

性転換タイムマシーン

廣瀬純一
SF
バグで性転換してしまうタイムマシーンの話

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

【完結】記憶を失くした旦那さま

山葵
恋愛
副騎士団長として働く旦那さまが部下を庇い頭を打ってしまう。 目が覚めた時には、私との結婚生活も全て忘れていた。 彼は愛しているのはリターナだと言った。 そんな時、離縁したリターナさんが戻って来たと知らせが来る…。

危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました

しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。 自分のことも誰のことも覚えていない。 王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。 聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。 なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。

処理中です...