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第一章
クロード視点〜ケインはデキる奴
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クロードは机から体を離し、大きく伸びをする。
ケインに馬車馬の様に働かされたおかげで、ようやく婚約指輪の代金分の働きを終えたのだ。
(あぁ……エルシアに会いたい)
エルシアとは、ご褒美にナデナデしてもらって以来、会えていなかった。
クロードはいつでも来て欲しかったが、彼の激務さに遠慮させてしまったようである。
だが代わりにエルシアから3日に1度、体調を心配する手紙が届き、それがクロードの生き甲斐であった。
(……よしっ!)
「ケイン、エルシアにお忍びで会いに行くと連絡してくれ」
クロードは側に控えているケインに声をかける。
「……殿下、その前にお伝えしたいことが」
「これ以上の仕事は嫌だぞ!」
恨みがましい目とその子供っぽい言い草に、ケインはハァーー。と溜め息をついた。
「違いますよ。エルシア嬢にお会いになるなら、一緒にお披露目パーティーのドレスを選んでは?」
ハッ!
クロードはその言葉で、パーティーまでもう一月もない事を思い出した。
今からではオーダーメイドのドレスを特注するのは無理がある。
(俺としたことがっ。)
後悔で頭を抱えるクロードにケインは呆れた表情で語りかけた。
「やっぱり忘れてましたね……まぁ仕事で忙殺されていたので、こちらにも責任がありますが」
これはお詫びです、と言ってケインは1枚の予算案を差し出した。
ーー次期王太子妃の予算案についてーー
「……何だ、コレは?」
「エルシア嬢の服飾費及び社交費が、正式に国家予算に付いたと言うことです」
「本当かっ!!」
エルシアは国王陛下への謁見も経て、婚約の許しは得ている。
だが、お披露目パーティー直前に婚約を結ぶこととなったため、今はまだ只の伯爵令嬢の一人だ。
そのため彼女への贈り物は婚約指輪であっても、ドレスであってもクロードの自費(足りない分は労働)で賄うのが通例である。
勿論、クロードはいくらでも残業に明け暮れるつもりだったのだが。
「本当ですよ。陛下には渋い顔をされましたが。これでも敏腕側近なんで」
「やるな! ありがとう、ケイン!!」
予算案を片手にエルシアの元へ飛び出そうとするクロード。
だが、ケインはもう一つ付け足す。
「殿下、もっと褒めて下さい。貴族御用達しのブティック・ヴィテスに本日午後より予約を入れております。エルシア嬢にも予定を開けて頂いております」
にっこりと笑うケインが天使に見えるクロードは抱きついた。
「……愛してるっ。ケイン!!」
「フッ。いってらっしゃいませ」
こうして、数人の護衛騎士を連れて伯爵家に向かったクロードであった。
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