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ケンソーク家

寝起き

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パチっと目覚めると、女の人の顔が見えた。

「あら、目覚めましたか?今日からお世話になります。メイドのディタです。よろしくお願いいたします」

「う!うわああああ!出てって!出てって!」

思わず近くにあったものを投げてしまう。なんだろう、あれ。すっごい高いもんに見えるけど、今は関係ない。この女の人から逃げなくちゃと思い、異様にふかふかするものから降りて、部屋の端っこへと逃げる。

メイドは困った顔をして、

「何かあったらお呼びください」

と、きれいな礼をして部屋から出ていった。

ここはどこ?なんだかキラキラとした装飾がいっぱいついていて、落ち着かない。

何より、皆の温かい感触がない。なんで?どこに行ったの?怖くなって、涙が出てきそうになってけれど、唇を噛んで溢れないようにする。

すごくびっくりした。だって、目覚めると、前世で僕を虐げていたお母さんの顔があった。でも、この世界には居ないはずだ。第一、僕に頭なんか下げない。

メイドに生まれ変わったのか?僕みたいに?とにかくここから出なきゃ。

そう思って、あたりを見回す。僕が今さっきまで寝ていたのはベッドみたい。天蓋がついていて、水色がモチーフになっているみたいだ。ベッドの上には白いくまさんのぬいぐるみがある。

今はないもふもふの感触が恋しくなって、ベッドに乗りぬいぐるみを抱きしめる。そして、顔をうずめた。けれど、ノウル達みたいなぬくもりは無くて、ああ、ぬいぐるみなんだなって実感してしまう。

今さっき投げたものは、枝で編まれたバスケットだったらしく、中に入っていたんだろうお菓子が床に散乱していた。本当に申し訳ない。今度メイドさんが入ってきたら謝ろう。

どうすればいいのかわからなくなって、扉を開けただけでは見つからないような場所を探す。前にもこうして隠れていた。だから、細い場所に隠れこむのは慣れている。

でも、ベッド以外には本当に小物しか無くてここは寝るだけの部屋なんだって分かった。窓も子供じゃ届かない場所にある。ここから逃げるには廊下に出るしかない。ノウルたちがどこにいるのかも知りたい。

どうしようも出来なくって、部屋の隅っこにぬいぐるみを抱きしめて座る。この感覚は懐かしい。いつも、殴られないように息を潜めて座っていた。声を出せば蹴られたから。

ハッと気づいて、自分の服装を見る。前みたいなボロボロの服じゃない。貴族の坊っちゃんが来ているような感じの服だ。誰が着替えさせてくれたんだろう?

クルル、クルルという、レドラの鳴き声が聞こえて顔を上げると、小さい赤色の鳥が居た。

『何を泣いている。心細かったか?すまない。私達のせいでちづきをとても危険な目に合わせてしまった』

そう言いながら、僕が見慣れている姿より少し小さいけど、大きくなってくれた。

僕はレドラの胸元に飛び込んでもふもふを堪能する。

『もう少しでノウルたちが来る。あのお菓子はどうしたんだ?散乱しているじゃないか』

「え、えっと・・・びっくりしてなげちゃって・・・」

『何にびっくりしたのだ?何か酷いことをされたのか?』

レドラに詰め寄ってこられたから、慌てて言う。

「えっと、おきたらメイドさんがいて、おかあさんの、かおににててびっくりしただけだよ」

『あの、メイドか・・・確かに、顔が似すぎているようだが・・・アケンナーは何も言ってなかったから別に大丈夫だろう。安心していい』

「う、うん・・・ここはどこなの?」

『ここはケンソーク領地内だ。出ていきたいなら、出ていってもいいが、借りを作ってしまったからな・・・』

レドラはう~んと悩んでいるようだ。

『もし、ケンソークのものになにか言われたら、二回目まではいうことを聞くように。流石に無理なことを言われたら断ってもいい。』

「へ?うん・・・?」

いきなり変な提案をされた。なんで聞かなきゃいけないんだろう。

『大丈夫だ。ここの人たちは優しいからな。そんなに酷いことは言われない』

レドラが笑いかけてくれたような気がした。レドラのことをギュッと抱きしめる。自分を安心させるように。
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