48 / 77
第49話 褒美
しおりを挟むオーガの案内に従って上まで登り、腕を組んで見下ろしている赤いオーガの下まで来た。
赤いオーガの横には見たことのないオーガがおり、青いオーガとオーガらしくないスラッとした姿のオーガがいる。
「よくキタな! さっきたいりょうのショクザイをもってきたとホウコクをうけたゾ!」
「喜んでもらえたなら良かった。何か褒美でももらえるのか?」
「褒美? 随分と図々しいことを言いますね。ゴブリンの中じゃ優秀なようですけど、オーガの中じゃ最底辺なのを分かっていますか?」
話に割って入ってきたのは、スラッとした体形のオーガ。
口調には棘があり、俺を邪険にしていることはすぐに伝わってきた。
「ジルーガ、そんなにオコらなくていい。このゴブリンはホントウにユウシュウだからナ! それにホントウにホウビをあたえるためによんだ!」
「出過ぎた真似を申し訳ございません」
そう口では謝罪をしながらも、ジルーガと呼ばれたオーガは俺のことを睨みつけている。
ボスらしき赤いオーガの言葉は聞き取りにくいが、スラッとしたオーガの方の言葉は聞き取りやすいのは少し気になるな。
「褒美をくれるとのことだが、一体何をくれるんだ?」
「ゴブリン、口調に気をつけろ。……三度目はないぞ」
「ジルーガ、イイといっているだろ! ゴブリンにレイギなどおしえるヒツヨウがない!」
「申し訳ございません。ですが、このゴブリンはしっかりと話すことができ――」
そう弁明したところで、赤いオーガの拳がジルーガの顔面を捉えた。
スラッとした体形というのもあったからか、俺が想像していた以上に吹っ飛び、地面を転がっていった。
動きとしてはやはり相当速かったな。
いきなりということもあって立ち上がるまでは目で追えなかったが、殴るときはしっかりと目で追うことができた。
俺ならギリギリではあっただろうが躱すことができていたと思う。
「ムダなクチをはさむな! ゴブリン、すまないナ!」
「いや、大丈夫だ。それよりも本題に入ってほしい」
「ああ、そうだナ! ホウビというのは、まえにハナしたとおもうリーダーのけんだ!」
「俺をゴブリン達のリーダーにしてくれるって話か?」
「ああ、そうダ! ツギののうひんびから、オマエにゴブリンのリーダーをつとめてもらうことにきめタ!」
褒美が貰えると言ったから期待はしていたが、まさかのリーダーを任せてくれることだとは思っていなかった。
これは俺にとっては一番の褒美だし、変なものを貰うよりもよっぽど嬉しい。
「それは本当にありがたいが、そもそもゴブリンのリーダーって何をすればいいんだ?」
「ゴブリンたちをまとめるやくダ! もうオマエはショクリョウをおさめるひつようはなく、ゴブリンたちのあつめたショクリョウをオレのところにもってくればイイ!」
「オーガ達がやっていたことを俺がやればいいのか。もしノルマに届かなかったらペナルティとかはあるのか?」
「もちろんあるガ、サイショのさんかげつはタッセイしなくともバツはあたえない! うまくゴブリンたちをツカえるようになってくれ!」
「……分かった。しっかりと食材を納められるように力を尽くす」
深々と頭を下げ、赤いオーガに忠誠を誓う――フリを行う。
頭を下げながらも、俺の思考はどうオーガ達を出し抜いて下克上を果たせるかしか考えていない。
三ヶ月の猶予があるといいことは、三ヶ月間はノルマを気にする必要がないということ。
三ヶ月間でゴブリン達を纏め上げて、適当に食料を集めさせつつ下克上を果たす準備を整えるのが目標。
「ツギののうひんびからヨロシクな! オレからのはなしはいじょうダ! もどっていいゾ!」
「ああ、戻らせてもらう」
赤いオーガと別れて、その場を後にした。
今回の呼び出して得られたものが大きすぎるな。
青いオーガは一言も喋らず、唯一このオーガだけ測りかねたが、赤いオーガのパンチを間近で見ることができたし、ジルーガというオーガのことも見ることができた。
正直黙っていた青いオーガとボスである赤いオーガは、既に倒せる気がしている。
一番の問題はジルーガと呼ばれていたオーガであると睨んでいるのだが……。
「おい、ゴブリン。無礼な態度を取ったこと、私は許していないからな」
「黙って寝ていろ。またあの赤いやつに殴られるぞ」
「――ふっふっふ。いつか本気で殺しますね」
「やれるものならやってみろ」
鼻から大量の血を噴き出し、地面に倒れながら俺に絡んできたジルーガを挑発したが、睨むだけで流石に襲ってはこなかったか。
動き的には一番嫌だと思った相手であり、ここで俺に攻撃を仕掛けてきて詳細な情報を入手しておきたかったが仕方がない。
俺の目に映った限りでは、ジルーガは赤いオーガのパンチを見切っていて、拳がぶつかる直前に後ろに下がってダメージを軽くしていたように見えた。
目も開いたままだったし、赤いオーガの忠実な手下なようで一番の実力者と踏んでいる。
俺の近くにもバエルという似たような存在がいるため、バエルと同じ臭いをジルーガから香ったのだ。
基本的に流暢に喋ることのできる魔物は全て警戒すると心に決め、俺は気持ちを切り替えて下の広場にいる例のゴブリン達に話しかけることにした。
51
お気に入りに追加
211
あなたにおすすめの小説
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
外れスキル『レベル分配』が覚醒したら無限にレベルが上がるようになったんだが。〜俺を追放してからレベルが上がらなくなったって?知らん〜
純真
ファンタジー
「普通にレベル上げした方が早いじゃない。なんの意味があるのよ」
E級冒険者ヒスイのスキルは、パーティ間でレベルを移動させる『レベル分配』だ。
毎日必死に最弱モンスター【スライム】を倒し続け、自分のレベルをパーティメンバーに分け与えていた。
そんなある日、ヒスイはパーティメンバーに「役立たず」「足でまとい」と罵られ、パーティを追放されてしまう。
しかし、その晩にスキルが覚醒。新たに手に入れたそのスキルは、『元パーティメンバーのレベルが一生上がらなくなる』かわりに『ヒスイは息をするだけでレベルが上がり続ける』というものだった。
そのレベルを新しいパーティメンバーに分け与え、最強のパーティを作ることにしたヒスイ。
『剣聖』や『白夜』と呼ばれるS級冒険者と共に、ヒスイの名は世界中に轟いていく――。
「戯言を。貴様らがいくら成長したところで、私に! ましてや! 魔王様に届くはずがない! 生まれながらの劣等種! それが貴様ら人間だ!」
「――本当にそうか、確かめてやるよ。この俺出来たてホヤホヤの成長をもってな」
これは、『弱き者』が『強き者』になる――ついでに、可愛い女の子と旅をする物語。
※この作品は『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しております。
愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
Sランクパーティから追放された俺、勇者の力に目覚めて最強になる。
石八
ファンタジー
主人公のレンは、冒険者ギルドの中で最高ランクであるSランクパーティのメンバーであった。しかしある日突然、パーティリーダーであるギリュウという男に「いきなりで悪いが、レンにはこのパーティから抜けてもらう」と告げられ、パーティを脱退させられてしまう。怒りを覚えたレンはそのギルドを脱退し、別のギルドでまた1から冒険者稼業を始める。そしてそこで最強の《勇者》というスキルが開花し、ギリュウ達を見返すため、己を鍛えるため、レンの冒険譚が始まるのであった。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
さようなら、私の初恋。あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
幼馴染の婚約者に浮気された伯爵令嬢は、ずっと君が好きだったという王太子殿下と期間限定の婚約をする。
束原ミヤコ
恋愛
伯爵令嬢リーシャは結婚式を直前に控えたある日、婚約者である公爵家長男のクリストファーが、リーシャの友人のシルキーと浮気をしている場面に遭遇してしまう。
その場で浮気を糾弾したリーシャは、クリストファーから婚約の解消を告げられる。
悲しみにくれてやけになって酒場に駆け込んだリーシャは、男たちに絡まれてしまう。
酒場にいた仮面をつけた男性──黒騎士ゼスと呼ばれている有名な冒険者にリーシャは助けられる。
それからしばらくして、誰とも結婚しないで仕官先を探そうと奔走していたリーシャの元に、王家から手紙が届く。
それは、王太子殿下の侍女にならないかという誘いの手紙だった。
城に出向いたリーシャを出迎えてくれたのは、黒騎士ゼス。
黒騎士ゼスの正体は、王太子ゼフィラスであり、彼は言う。
一年前に街で見かけた時から、リーシャのことが好きだったのだと。
もう誰も好きにならないと決めたリーシャにゼフィラスは持ちかける。
「婚約者のふりをしてみないか。もしリーシャが一年以内に俺を好きにならなければ、諦める」と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる