マギアメイデン・マルアーク

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22日目 目覚め

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 肉の繭がほどけ、中から黄ばんだ白濁と共にマルアークがこぼれる様にして姿を現す。輝くような美しい金髪、情欲のままに抱けば壊れてしまいそうな華奢な躰はそのままに。肉繭の中で起きた出来事を彼女は知らない。
「はっ……あ、けほっ! げほっ……!」
 自身を包む生臭さと、久しぶりの外気にマルアークはむせ返る。タイルの冷えた床が火照ったカラダを癒す。
「わ……私は何を……?」
 頭の中にはいつどこのものかわからない、陽大との幸せで気持ちいい、セックスの記憶が巡っている。辺りを見渡すと、デリンジャーが見覚えのあるナメクジに犯されているところだった。ナメクジは彼女に覆いかぶさり、必死に腰を叩きつける。デリンジャーもナメクジに腕を回し、自ら逃げられない様に抱き着く。
「ん、ぁ……あっ……! あぁ、出てきた? んくうぅう!」
 ナメクジは腰を強くデリンジャーへ打ち付け、肉槍を押し込んで思い切り射精する。
「んあああっ!」
 びゅぼっ、と白濁がはじけ飛ぶ。彼女の足元には大量に精液がこぼれている。自分が出てくるまでずっと犯されていたのだろうか。
「いい、な……こいつの、気持ちいい……し」
 マルアークはあの日、このナメクジに犯された時のことを思い出していた。なぜかはっきりとわかる。あの時自分を犯したのはこのナメクジだ。もう最初に受けた嫌悪と屈辱は忘却の彼方へなくなってしまった。ただ今思い出せるのは、気持ちよかったということだけ。
「う……」
 今この場ではしたなく、床に垂れる精液を舐めたい。そんな欲望が腰の奥から湧いてくる。
「あはっ、そんなにしたいの? あっ、ああっ! ごめっ、ヤキモチ妬かないの……っ!」
 デリンジャーがマルアークに声をかけるとナメクジは自分へ意識を戻させるためピストンを速めた。
「んうぅぅっ!」
 そして遠慮なく射精。重なったデリンジャーとナメクジの隙間から、湯気の立つ白濁が噴き出す。きっと気持ちいいだろう。そんな思いばかりが首をもたげる。
「デリンジャー、こいつ孕ませてもいいのか?」
「あらこれは……」
 部屋にはマルアークの見知らぬ男がいた。男というより、少年という年齢だろうか。線の細い、中性的な美少年だ。黒い角を髪の隙間から覗かせる以外は人間に見える。
「あんた、孕ませ壊されちゃうかもね」
 デリンジャーは彼としたことがあるのだろう。何か含みのある言い方をしたが、妬いたナメクジに犯されながらどこかに連れていかれる。
「うあっ! ごめ、ごめんって……ぇっ! うぐっ、射精しながら、ピストンきてっ……! お詫びに私のこと……巣穴で種付け、して♡」
 デリンジャーが引きずられていった跡には粘っこくもったりした精液がこぼれていた。一方、マルアークは男の怒張したペニスを見つめていた。なぜか、視線が引き付けられる。頭の中ではこれで突かれることが史上の幸福であるかの様な、そんな気がしていた。
(わ、わた……し、犯され、た……い)
 彼女の中で反響する肉欲。しかし自分が出てきた肉の繭が気がかりだった。もしや、あれで何かされたのではないか。そんな疑惑を拭えない。
「あいつ、私に何かしたのか?」
「人のせいにするのはよくないな。ただ、お前を激しいセックスに耐えられる身体にしただけだ」
 少年に聞いてもとぼけたような回答が返ってくるだけ。デリンジャーはあの繭で眠っていた時に見た夢であろう、陽大とのセックスを思い返しながら身体を解析する。最強の魔法少女であるマルアークは自身にかけられたバフ、デバフも見える。さすがに孕まされるのには対応していなかった上に最初は凌辱のショックでまともに使えていなかったが、肉体への細工は見抜くことができた。確かに以前より、肉体の強靭さは格段に増したようだがそれだけだ。
(こんな頑丈さじゃなきゃ、耐えられないセックス……)
 マルアークは生唾を飲み込んだ。元々、魔法少女の方でも屈指の強固さを誇るマルアークでさえここ数日の凌辱は壊されそうになっていた。気持ちよかった記憶が執拗なまでに首をおもたげる。
「シャワー浴びてこい」
「……はい」
 さも抵抗する気力も残っていない様なフリをするマルアーク。しかし頭の中を支配する色欲を振り払うので必死になり、まともに皮肉一つ返せない状態なのは事実だ。
(なんで、私……えっちしたく……)
 陽大とのセックスが気持ちよかった。その記憶がこびりつく。だから他の男と寝ても気持ちいいのか、そんなはずがないのだが、どうしても、どうしても。
「ん……」
 気づけば、マルアークはシャワールームで水を被っていた。お湯ではなく冷水でないと冷静さが取り戻せない。冷たい水を被っても平気なくらいに身体が昂り火照っている。
(ほしい……ほしいほしいほしい……っ!)
 子種汁が欲しいと胎が疼く。肉の繭でなされたのは記憶のちょっとした選定。改ざんではなく選定であり、凌辱の際に感じた快感を記憶の表層へ運び出したのだ。全身が一度、昆虫が繭で変態する様にどろどろに溶かされて再構築されているのだ。身体に結び付いた快楽さえも表層へ運ばれている。
 デリンジャーはあくまで、マルアークを媚薬漬けにして性奴隷にしたいわけではなく、マルアーク自身が堕落し肉便器へと墜ちることを望んでいた。だからこそ一種、手ぬるいとまで言える手段を取り続けているのだ。表へ運ばれた快感の記憶も、マルアークが感じた事実である。
(あ、ここ……)
 マルアークはシャワーを浴びている途中で気づいた。ここは以前、この場所に連れていかれた時にシャワーを浴びた場所だと。ここで彼女は虫と人を組み合わせたような化け物に犯された。
「ん、ぐ……んくっ……」
 マルアークは虚空に喉を鳴らす。化け物に触手を突きこまれ、甘い粘液を飲まされた。身体に火が付くようなそんな、甘美な体験だった。
「ん、あ……あぅ……っ!」
 マルアークは無意識のうちに腰をくねらせ、指で自分を慰めていた。
「あ、ああ……ぅ」
 イボのついたペニスで膣を扱きあげられる。子宮の奥へ逞しい精液を注ぎ込まれるあの感覚が昨日、否、つい数秒前のことの様に思い浮かべられる。
(私……あれでそんなに……感じ……)
 ドクン、ドクン……どびゅ、びゅくびゅくっ……! 子宮を打ち据える精液の振動がマルアークを襲う。種付けされる幸福、今注ぎ込まれていない違和感、全てがマルアークをダメにしていく。
(また……わた……し……)
 化け物がいた天井をマルアークは見つめていた。今なら、もっと、胎が裂けるまで交尾できる。身体はその時よりも頑丈だ。気を失うまでまた、犯されたい。
「いこ……♡」
 マルアークは早く抱き潰してもらうために、シャワー室を後にする。犯され壊される、とあのデリンジャーが評した男。そのセックスが楽しみで仕方なかった。

「へぇ、待ちきれないんだ」
 マルアークが身体にタオルも巻かず出てきたのを見て、ベッドに座っている少年は微笑む。彼の瞳が妖しく輝く。その光を受けたマルアークは目を離せなくなっていた。
「あ、あ……ぁ……」
 胎が疼く。躰が火照る。夢か現か、陽大と肌を重ねた快感が頭の中を占める。
「うぁっ……!」
 ぷしゃっ、と股から愛液が噴き出す。床や内股を濡らしていく。失禁の様に蜜が零れ落ちる。途切れることなく股からひと繋ぎに。
「あ、ぁあっ……!」
 マルアークは膝を床につき、拳を握り込んで股へ手を伸ばさない様に耐える。
(あいつの目……絶対まずい……)
 少年の目が自身に異変をもたらすと考えたマルアークはどうにか立ち上がり、ふらりと自らベッドへ向かっていく。
「うぐっ、あ、あぁっ……! あぐぅっ!」
(見つめあいながらセックスなんかしたら……ぜったいやばい……)
 どうしても、あの目線を浴びながら犯されることを想像してしまい体が砕けそうになる。その想像でまた、マルアークは絶頂しそうになってしまう。
「うぐぅうぅっ!」
 歯を食いしばる。痴態を見られている。それだけで気持ちよかった記憶がどんどん持ち上がってくる。
「ふ、ふざけ……その目で、なにか……私に……っ」
「ん? これか? ああ、そうか」
 マルアークの抗議に少年はけだるそうに答えた。
「邪神としての俺の能力だ」
「私にそれで……」
「んなわけねぇだろ。聞いた通り、人のせいにするのが得意だな」
 ぎしっ、とスプリングを軋ませてマルアークはベッドに乗る。ベッドに四つん這いとなり、腰を少年の方に向ける。獣の交尾みたいな体勢に胸が高鳴る。だが、これであの目からは逃れられる。
 はずだった。
「バックがいいのか? いいだろう」
「あ、あぁっ!」
 目は合っていない。それなのに体がまだ、熱くてしかたない。今にも火を吹きだしそうだ。
「んっ、あぁあああああっ!」
 腰を少年が掴む。気持ちよかったことが思い浮かんでしまう。
「俺の目でこの反応か。デリンジャーの奴、あの繭を相当使いこなしてやがる」
「ど、どういうこと……だ……」
 シーツを強く掴みながらマルアークは少年に問う。目を合わせないように、顔を背けながら。
「あの繭は中に入ったやつに幸せな夢を見せる効果がある。お前はおそらく、恋人とのセックスでも夢見てたんじゃないか?」
「な、あっ……」
 たしかにマルアークは、そんな記憶がある。だがあまりにも鮮明過ぎて夢と現実がわからなくなっていた。今でも本当に夢か分からなくなる。
「デリンジャーはお前を犯させて、恋人とのセックスをあの繭で夢見るように仕向けていたようだな。そして俺の目は、幸せな記憶を表出する力がある。捧げものの雌を孕ませる時、逃げられない様にな」
「く……卑怯……な……」
 セックスが気持ちいいと、マルアークの脳裏にこびりついていたのは繭や少年の目による効果だったのだ。彼女は吐き捨てるが、少年に容赦なく肉槍を突き立てられて甘い声を出してしまう。
「あぁっ、んっ!」
「卑怯? あの繭はお前ら人間にされた仕打ちを忘れるために、俺たちが得たものだ」
 息が詰まる。内臓が押し上げられる。マルアークは自分たちが魔物と呼ぶ存在を追い詰め、迫害した。その現実から目を背けるために生まれたのがあの繭だ。それが自分に向かっているだけだった。
「あぐっ、やめ、やめろ……っ、うあああっ!」
 怒張したペニスに掻き回されていると、夢で陽大とまぐわった時の幸福感が押し寄せてくる。それは現状とごっちゃになり、少年に犯されることが気持ちいいと脳に刻まれてしまう。
「デリンジャーはお前が自分からエロ女になるのをお望みらしい。その気になればお前らは、俺たちの肉便器にだってできる」
「く、ぅうう……化け物、め……うああっ!」
 汁が飛び、ベッドが軋む。ペニスが擦れるとマルアークは声を抑えられない。硬く、火照った躰でもわかるくらいに熱い。胎のナカでびくびく震えている。これが何のサインか、マルアークにはわかってしまう。
「汁まみれですっげえ気持ちいい……。かなりの名器だな」
「ふざっ、ああぁぁぁっ! ぐぅうううううっ!」
 必死に歯ぎしりして嬌声を抑え込む。しかし肉槍を子宮の奥へ突きこまれ、ぐりぐりとこじ開ける様に亀頭を押しあてられるとそうもいかない。
(あ……これ、わたし……)
 幸福な夢の中で何度も味わった、孕ませるための行為。子宮の奥深くまで精液を注ぎ込む、あれだ。

 びゅぐっ! びゅぐぐぐっ!

「う、あ……あああああああぁぁぁぁぁぁっ!」
 少年のペニスから、事前の断りなしに煮えるような精液が放たれる。望まない快感から逃れようとマルアークは腰を揺らすが、それはただ突き立てられたペニスを撫でつけるだけで、さらなる射精の助けにしかならない。

 びゅーっ! びゅるっ!

「く、あああっ! ダメっ、こんな……っ!」
 卵管までみちみちと精液を詰め込まれているのがわかる。勢いは衰えない。精液は熱く、子宮にへばりつくほど濃いままだ。少年に腰を解放され、肉棒を引き抜かれる。
「んぁああっ!」
 性器がこすれ合うだけでも甘い声を上げてしまう。腕は体を支えるほどの力もなく、そのままマルアークはベッドへ崩れ落ちてしまう。
「う、あ……」
「今、お前の子宮には卵子が一つか」
「適当……言う、な……」
 少年はマルアークの体のことを知っていた。マルアーク自身のスキャンは孕まされることまで対応していない。つまり、自分の子宮がどうなっているかは見えないのだ。
「デリンジャーの『孕ませ壊される』って言葉、期待してくれてたか?」
「だれが……そんな……。はっ、はぁっ、はぁーっ♡」
 デリンジャーは少年を確かにそう評した。息こそ上がってしまったし、はしたない声を出してしまったが、到底そこまでとはマルアークには思えなかった。
「え……?」
 しかし、彼女はその言葉の真意を、文字通り身を以て知ることになる。胎で精子が蠢いているのを感じた。

 ぷちゅん。

「あ……」
 卵子に精子が入り込む。瞬間、マルアークの体が熱くなり、汗が噴き出す。受精した。その実感と喜びが躰の奥底からやってくる。
「あ、あぁ……あっ♡」
 胸が高鳴る。なぜ体から排出され、まだ繋がっていないはずの卵子に起きた変化を身体で感じることができたのか、それはマルアークにもわからない。
「あぁぁ……あ、ああっ♡」
 ただ今は、少年の子を孕む悦びに浸りたかった。
「あっ♡ あぁぁあ“あ”あ“あ”っ!」
 マルアークは体を反らし、喉が裂けそうになるくらい絶叫した。その声は途中で、文字であらわすことができない、獣のようなものへ変化していく。
「うぐっ♡」
 イキながら、潮を吹きだす。その中には子宮へ注ぎ込まれた精液や、性器を受け入れるための愛液も混ざっていた。胎内で胎動する命の奔流に耐えるため、ベッドに仰向けで身体を預ける。
「あ、あ……ま、まって……」
 口では拒絶しながらも、これが『クる』とわかっていたから体勢を変えたのだ。受精したての卵子へ、一斉に遅れて精子が飛び込んでくる。
「だ、だめっ……やめ、て……」

 ぶちゅっ、ぶちゅちゅっ! ぶちゅん。

「あ……あぁぁああっ! 孕……むっ、やめ、おね、が……いっ♡ これ以上、孕みたくなっ、うああっ♡」
 懇願している間にも少年の精子はマルアークの卵子へ殺到する。人間では受精を感じることも、一つの卵子に複数の精子が入ることもないはずだ。
「も、もう、や……♡」

 どちゅっ、じゅぷぷっ!

「あああっ♡ やめっ、やめ、てっ♡ おかしく……なるっ♡」
 脚をピンと伸ばし、シーツを強く掴んで襲い来る快感を受け入れる。それだけがマルアークに許されていた。
「く、うぅうぅううう♡」
 身悶えして、体を抱きながらベッドをのたうちまわる。数度寝返りを打ってうつ伏せで枕にしがみつき、デリンジャーの言葉を反芻する。
(孕まされ壊されるって……これの……♡)

 ぶちゅん、ぶちゅん。

「っっっ!!!!」
 永遠かのように受精と絶頂が続く。声を上げないようにマルアークは枕を噛み、ひたすら耐える。陽大以外の男に嬌声など聞かせたくない。喘いでいると自分でも認識したくない。そうして耐えているうちに意識は遠のいていく。
「う、ぐ……ああ……」
 マルアークはぱったりと停止する。部屋に聞こえるのは寝息だけ。気絶してしまったようだ。少年は彼女の股を濡らす愛液を拭い、姿勢を整えて布団をかけてやる。
「声も反応もないのでは退屈だからな。起きたらまた、孕ませてやるよ」
 壊れるほど気持ちいい、孕ませの日々が始まった。マルアークは自我が壊れても、何度孕んで産んでも、この快楽の地獄から逃げることはできないだろう。
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