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「ここは……?」
「ほら、行くぞ。」
「え、ちょ、ちょっと待って!」
戸惑いながらも彼の後に続き、扉を開けると同時に鐘の音が鳴る。
中に入ると、そこには――一面の花畑が広がっていた。
赤や黄緑、白といった様々な色の花々が咲き誇っている。風に乗って花の香りが流れてくる。とても綺麗で幻想的な光景に目を奪われた。
「わぁ……すごい……!」
呟いた言葉に、ザックスは満足げに笑って言った。
「気に入ったか?」
「もちろん。でもどうしてここに連れてきてくれたの?何か思い入れがあるとか……?」
そう尋ねると、彼は懐かしむように目を細めた後で言う。
「……この景色をお前に見せたかったんだ。」
「私に?」
「ああ。前に話したことあったよな?俺には"家族がいない""故郷もない"って。この場所は、俺が初めて冒険者として認められた場所なんだ。」
「……初めて?でもSランクなんじゃ……」
「まあ、そうなんだけどな。」
ザックスは苦笑しながら続ける。
「俺の容姿を馬鹿にする奴らはどこにだっているからな。そういう連中に絡まれたり、謂れのない中傷を受けて心が疲弊した時によくここに来てたんだ。」
その言葉に胸が痛くなる。彼がどんな気持ちで過ごしてきたのか、想像するだけで苦しくなった。私が黙ったまま俯いていると、頭上から声が降ってきた。
顔を上げると、優しい眼差しと目が合う。
「そんな顔するな。今はもう平気だからさ。それに――」
「――俺には、大切な人がいるから。」
その言葉に、じんわりと心が満たされていく。嬉しくて堪らない。私もザックスさんを大切にしたい。
「だから思うんだ。お前だけは絶対に失いたくないってな。」
「ザックス……」
(私もザックスと同じ気持ち。急に異世界転移して一人ぼっちで……ザックスがいなくなるなんてことはもう考えられないくらい。今こうしているだけで、すごく幸せ!)
「ねぇザックス。あなたに出会えたことが私にとって一番の幸せだよ。だからこれからも、ずっとずっと一緒にいようね。」
想いが伝わってほしくて彼の手をぎゅっと握り返すと、「ありがとう」という言葉とともに額に優しいキスが落とされた。ふわりと抱きしめられれば、大好きな香りに包まれて胸の奥が甘く疼く。
それからしばらくの間、私達はお互いの存在を確かめ合うかのように寄り添っていた。
帰り道の途中、ふと思ったことを口にする。
「ねえ」
「ん?どうかしたか?」
「来年もその先も、またこうして此処に来ようね。」
耳元で囁くように言うと、彼は一瞬目を見開いた後、嬉しそうに笑った。
それから数年後、再びこの場所を訪れた二人は誓い通り結婚することになるのだが……それはもう少し先の話である。
再び手を繋いで歩き出す。私達の未来に向かって。
彼等の日常は続いていく。愛しい人と笑いながら過ごす、甘く、穏やかな日々の中で。
【END】
――――――――――――――――――――
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。 少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
番外編も投稿する予定なので、またお付き合いくださいませ。
「ほら、行くぞ。」
「え、ちょ、ちょっと待って!」
戸惑いながらも彼の後に続き、扉を開けると同時に鐘の音が鳴る。
中に入ると、そこには――一面の花畑が広がっていた。
赤や黄緑、白といった様々な色の花々が咲き誇っている。風に乗って花の香りが流れてくる。とても綺麗で幻想的な光景に目を奪われた。
「わぁ……すごい……!」
呟いた言葉に、ザックスは満足げに笑って言った。
「気に入ったか?」
「もちろん。でもどうしてここに連れてきてくれたの?何か思い入れがあるとか……?」
そう尋ねると、彼は懐かしむように目を細めた後で言う。
「……この景色をお前に見せたかったんだ。」
「私に?」
「ああ。前に話したことあったよな?俺には"家族がいない""故郷もない"って。この場所は、俺が初めて冒険者として認められた場所なんだ。」
「……初めて?でもSランクなんじゃ……」
「まあ、そうなんだけどな。」
ザックスは苦笑しながら続ける。
「俺の容姿を馬鹿にする奴らはどこにだっているからな。そういう連中に絡まれたり、謂れのない中傷を受けて心が疲弊した時によくここに来てたんだ。」
その言葉に胸が痛くなる。彼がどんな気持ちで過ごしてきたのか、想像するだけで苦しくなった。私が黙ったまま俯いていると、頭上から声が降ってきた。
顔を上げると、優しい眼差しと目が合う。
「そんな顔するな。今はもう平気だからさ。それに――」
「――俺には、大切な人がいるから。」
その言葉に、じんわりと心が満たされていく。嬉しくて堪らない。私もザックスさんを大切にしたい。
「だから思うんだ。お前だけは絶対に失いたくないってな。」
「ザックス……」
(私もザックスと同じ気持ち。急に異世界転移して一人ぼっちで……ザックスがいなくなるなんてことはもう考えられないくらい。今こうしているだけで、すごく幸せ!)
「ねぇザックス。あなたに出会えたことが私にとって一番の幸せだよ。だからこれからも、ずっとずっと一緒にいようね。」
想いが伝わってほしくて彼の手をぎゅっと握り返すと、「ありがとう」という言葉とともに額に優しいキスが落とされた。ふわりと抱きしめられれば、大好きな香りに包まれて胸の奥が甘く疼く。
それからしばらくの間、私達はお互いの存在を確かめ合うかのように寄り添っていた。
帰り道の途中、ふと思ったことを口にする。
「ねえ」
「ん?どうかしたか?」
「来年もその先も、またこうして此処に来ようね。」
耳元で囁くように言うと、彼は一瞬目を見開いた後、嬉しそうに笑った。
それから数年後、再びこの場所を訪れた二人は誓い通り結婚することになるのだが……それはもう少し先の話である。
再び手を繋いで歩き出す。私達の未来に向かって。
彼等の日常は続いていく。愛しい人と笑いながら過ごす、甘く、穏やかな日々の中で。
【END】
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ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。 少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
番外編も投稿する予定なので、またお付き合いくださいませ。
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