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しおりを挟む無事家に辿り着き、外観を見上げる。まだ真新しく綺麗な外観をしているその家は、1人で使うには些か大きいように見えた。
(でも部屋数多い方が便利だよね。掃除は大変かもしれないけど、まぁなんとかなるかな。)
そう思いながら扉を開け、改めて内装を見て回る。
(へぇ~…思ったより綺麗だしやっぱり広い!結構良い感じじゃない。)
玄関とお店のスペースは区切られており、奥に階段がある。そこから2階へと上がれるようだ。廊下に沿って並ぶ部屋は全部で5部屋。そのうちの一室は物置になっている。
奥の扉を開けると、そこには洗面台と風呂場があるだけのシンプルな空間が広がっていた。手前の部屋には既にベッドやソファなどの家具が一式揃っているので、ここで暮らす準備は事足りそうだ。残る二部屋の片方は寝室で、もう片方は作業部屋にしようかと考える。
(とりあえず荷物整理をしておこうっと。……疲れたし、今日はこれくらいでいいかな。)
***
―――翌日。
いよいよ開店初日を迎えた。元々の荷物にあった手作りの雑貨小物を並べてみたけど……
(うーん、ちょっと地味かも。やっぱりもっと可愛いものにしないとなぁ。お店の広さに対して品数も少ないし、やること沢山だ。頑張ろう。)
なんて考え込んでいると、―カランコロン―来客を告げる鐘の音が鳴った。お客様だ。慌てて挨拶をしつつ頭を下げる。
「いらっしゃいませ!こんにちは。」
入ってきたのはお爺さんのようで、
「こんにちは。お嬢さん。こちらで手芸品を売っていると聞いたのですが。」
とにこやかに問うた。
「はい。当店で手芸品の販売をしていますよ。宜しかったらゆっくりと店内も見ていってくださいね。」
「ありがとう。素敵な品ばかりだねぇ。新しい店は活気があって善い善い。」
どうやらそのお爺さんは新しい店が好きなようで、商業ギルドで噂を聞きつけ私の店にもわざわざ足を運んでくれたみたい。ありがたいことだ。商品について質問を受けたので、分かる範囲で答えるとお爺さんはとても嬉しそうな表情をした。
「ほっほっほ。お嬢さんは若いのにしっかししているねぇ。」
と言ってくれる。その後、私の拙い説明でも納得してくれたようで幾つか手に取って会計を済ませた後、満足そうに帰っていった。その後もポツリポツリとお客さんがやって来て、その都度丁寧に接客していく。そうして、最初の忙しさを乗り越える頃には日も暮れ始めていた。
そろそろ店を閉めようと考えつつ外を見ると、夕焼けに染まる町並みが見えて、何となく見惚れてボーッと眺めた。
あまりにも綺麗な夕焼けに、この世界から歓迎されているような気がして。生まれ変われたような気がして、ツンと目頭が熱くなる。
(折角きっかけを貰えたんだから、今度は前向きに生きていこう。)
思わず込み上げた涙を、決意表明するかのようにぐっと拭ったのだった。
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