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二十八話 ミア視点
しおりを挟む夕方前、私の部屋にイオンから連絡を預かったという人間がやって来た。
少しでもイオンの役に立つために始めた治療の仕事はここ最近、昼までしかやっていない。
一日に来る人間を全て治療していたら私の身がもたない。相変わらず、冒険者は魔力を多く使うような怪我をして来る事が多いし。
本当に学習しない奴らね。
頑張ってる感が出ればいいと思って始めた事だから無償でやっていた治療だけど、王都には有償だけど治療院は沢山あるから私が昼までしか治療を受け付けなくても問題はない。
命に関わるような怪我ならお金を払ってでも治療を受けるはず。
昼までしか営業しないとシスターに伝えたら「マリア様が居なくなって魔物の被害が今までとは比べ物にならないくらい大きくなっているのに……」と言われたが、そんなのは私に言わないで欲しい。
お姉ちゃんが全て悪いんだから。
「イオン殿下から連絡を預かって参りました。
国王陛下が崩御なさいました」
「そう、ですか……」
連絡を伝えに来た人はそれだけ伝えるとすぐに帰って行った。
朗報だわ!
一週間が山とか言われていたくせに長々と生きるから、回復しちゃうんじゃないかって心配したわよ。
仮に回復したら、今回の件が伝わっちゃうかもしれないもんね。
お姉ちゃんから聖女の資格を剥奪したのはイオンだけど、聖女になりたいって言ったのは私だし。それに聖女の仕事もできてないし、処罰されるかもって思ってたけどちゃんと死んでくれてよかった。
イオンが処罰される可能性も高かったし、そうなったらせっかくイオンの婚約者になった意味が無くなる可能性もあったから。
せっかくお姉ちゃんから奪ったのにそうなったら台無しだったから本当に死んでくれて良かった。
「これで不安の一つは消えたかな」
あとは私の嘘を知っている人間が死んでくれればいいんだけど……魔物に食べられたりしないかな?
お姉ちゃんが髪飾りを破壊して姿を消した事はまだ国民に公表されていない。
シスター達みたいにお姉ちゃんの関係者の一部は経緯は知らずとも二年前に破壊されたことは知っているみたい。だけど、国王陛下から口止めされているから基本誰かに話したら死罪らしい。
私は聖女だから例外だけどね。
こんな状況の中公表すればパニックは免れない。イオンが言うには出来れば事態が終息してから公表したいとのこと。
国王陛下が死んだってことは、イオンが国王になるから例え私の嘘を公表したとしても、知っている人間が何も言わない可能性もある。
だけど、もし知っている人間がイオンに真実を話したら私の嘘がバレてしまう。
それだけはダメ。
だから今回の件で知っている人間が全員死んでくれたらいいのに……まぁ、そんな上手くはいかないよね……
今はイオンの耳に真実が入らないことを祈るしかない、か。
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