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二十一話 騎士団員視点
しおりを挟む俺は赤いオーガ討伐に出発する日の朝、副団長の話を聞いていた。
「これから討伐に行く魔物は皆も知っている通り、王国騎士団長を無傷で殺すような化け物だ。
だが、今回結成された討伐隊は騎士団と魔導師団から精鋭を集めた総勢五十名の討伐隊だ。たとえ騎士団長を無傷で殺そうともこのメンバーなら必ず勝つことが出来るだろう。
赤いオーガを野放しにすれば多くの国民が死ぬことになり、王国に甚大な被害をもたらす。王国の運命は我々に託されたと言っても過言では無い。
王国のため、国民のために全力を尽くせ!」
「「「「「はいッ」」」」」
「以上だ。全員馬車に乗り込め」
副団長の言葉を聞いた後、騎士と魔導師団の人達はすぐに馬車に乗り込んで行く。
「ちょっと君たち」
俺は副団長に声をかけられた。
俺の横にはルデウスも居る。
「カイル君とルデウス君だったね。
今回の支援部隊に名乗りを上げてくれて本当にありがとう。
だが、今回の討伐は支援部隊といえど死ぬ可能性がないわけじゃ無い。今までの討伐に比べたら比較にならないくらい死ぬ確率は高い。
それでもいいのかい?」
昨日の夜、副団長に散々言われたことだ。
死ぬ可能性は少なくない。むしろ高い。だから俺とルデウス以外支援部隊に名乗りを上げなかったんだろう。
「はい。少しでも何かお役に立てるように頑張ります」
俺たちの仕事は道中の魔物の警戒、討伐、食事の管理、討伐対象の付近で馬車を降りるので荷物の運搬などだ。
正直二人でやるにはきつい。
「そうか。ルデウス君、君は?」
「俺も大丈夫です」
「そうか。じゃあ、頼んだよ」
「「はいッ」」
その後、馬車の御者が到着するまでしばし時間があった。
「なぁ、何でこんな危険な支援部隊をやろうと思ったんだよ?」
馬車の近くで御者を待っていると、ルデウスが聞いてきた。
「お前こそ、何でだよ?」
俺は不思議に思っていた。
こんな危険な仕事、俺以外誰もやりたがらないと思っていたがルデウスが一緒にやると言い出したからだ。
「俺の理由は簡単だよ。お前が行くからだ」
「はぁ?」
「友達がこんな危険な仕事に行くんだ。ほっとけないに決まってんだろ」
友達、か。
いくら友達でも死地に一緒に行きたいと思うか?
はぁ……有難い友達だな。
「……そうか、ありがとう」
「それで、お前の理由は?」
「ネケラスに妹がいるんだ。今13歳で学校に通ってる。
なんでも、かっこいい魔法使いになりたいらしくてさ」
「魔法使いか」
「そんなの相当才能がなきゃ独学なんて無理だから学校に行かなきゃいけないだろ?
だけど、俺の両親三年前に死んでるから学費を払うために俺がこうして騎士として働いてるんだ。幸い、剣の腕には多少自信があったからな。
まぁ、こんな世界じゃよくある話だ」
「じゃあ、赤いオーガから妹を守るためってことか?」
「あぁ、それも目的の一つかな」
「他にもあるのか?」
「……ルデウス。お前にだけは言っとくことにするよ。俺は今回の仕事で行方不明になる」
「は?」
ルデウスの顔が困惑の表情に変わる。
「最近王都に魔物が入り込むこと多いだろ?
あれって、他の街でも同じことが起こってるだろ? 妹が心配だから帰りたいんだけど……」
「あぁ、そういうことか」
納得したような声色でルデウスが言う。
ここ連日魔物が街に入り込み、街道によく魔物が現れるようになり、明らかに異常な強さの魔物が多く出現している。
このことから現在騎士団は一週間に六日の勤務を義務付けられ、騎士団を辞めることも許されていない。
ネケラスに帰るとなると数日は騎士としての仕事はできないし、俺としては当分はネケラスにとどまりたい。
魔物が街に侵入する頻度も多くなっているし、この事態が収束するのはいつになるか分からない。
なら、ネケラスに帰るためにとれる行動は一つだけだ。
今回の討伐で俺は行方不明になる。
こんな世界だから名前を変えるなんて簡単だ。他の仕事を見つけることも出来るだろう。
今回の討伐なら行方不明=死だ。勝手に騎士団から逃げ出したら捜索される可能性もなくはないし、運悪く何かの拍子に見つかるかもしれない。
だが、死亡していると思われていたらその心配もないだろう。
「納得してくれたか?」
「おう、なんかあったら協力してやるよ」
「助かる」
俺とルデウスが会話を終えた後すぐに御者が到着し、馬車が出発した。
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