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14 むかしのおもいでside
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僕は落ちこぼれだ。
父上にそっくりな髪や目の色、母上にそっくりな顔。
みんな可愛がってくれるけど、年が離れた兄上たちには届かない。姉上たちにも敵わない。
魔法も剣も弓だってピアノだって絵だって、ぼくはたくさんの努力をした。
努力を始めたところで、届かない目標を見て絶望する。
なんでもそうだった。
そんなぼくのことを、みんなは飽きっぽいと言った。
どうしてぼくはこうなんだろう。
ぼくだって兄上のように魔法や剣や弓がうまくなりたい。乗馬だって練習してるけど、兄上と違ってうまくできてないのに、みんなぼくのことを褒める。
ぼくは皇子と言っても五番目だから。
皇帝になることなんてないだろう。
ぼくも皇帝になれるなんて思ってない。優秀な兄上が継げば、民もみんなも安心する。
誰も、ぼくに期待なんかしていないんだ。
それでも、ぼくを愛してくれている両親にそんなことは言えない。
悟られてもいけない。
皇宮で行われたパーティーに参加すると、大人も子供もぼくじゃなくて、ぼくを通して父上を見ている。
それが本当に嫌だった。
ぼくは優秀じゃありません。ごめんなさい。
パーティーでつまらなそうにしている少女を見つけた。
とても可愛らしくて、つい顔が熱くなってしまう。
ぼくの顔は赤くなってないかな、心配しつつも彼女に声をかけることにした。
「パーティー楽しくないの?」
「楽しい?」
少女は首をかしげた。
「みんなは向こうで遊んでるよ」
「うん」
会話が続かなくて焦ってしまうが、なんだか一人にもできなくて彼女と一緒にいることにした。
ぼくが隣にいることに、彼女は不思議そうにしていたが拒絶されることもなかった。
しばらく二人で空を眺めたり、会場をぼーっと眺めていると、見覚えのある少年が走り寄ってきた。
確か、彼の母親が皇族だったと思う。ぼくの親戚だ。
彼はぼくに気づいてぺこりと会釈した。
そして少女の手を引いて、パーティー会場の人込みに消えてしまった。
その時の少女は、さきほどまでの人形のように不気味な無表情は消えてとてもかわいらしい笑顔だった。
ぼくはその少女の笑みに恋をした。
彼女は誰だろう。
どうにかしてまた会えないだろうか?
僕は家庭教師に「気になる子がいる」と相談した。
家庭教師はそれは楽しそうに、女の子に好かれる方法を教えてくれた。
ぼくはラッキーなことに皇族だ。たいていの子は、婚約してくれると言う。
そしてぼくが気弱なのは、嫌われるかもしれないから訓練するべきだと注意した。
「どうすれば治ると思う? 自信がないんだ」
「まずはフリでも、強くなることです」
「フリ?」
「形だけでもそういう言動をすれば、いつか実力が追い付いてきますよ」
ぼくはその言葉を信じて、信じて、信じて――。
彼女にふさわしい男になれば、きっと……。
けれどエミリアは、俺のことを覚えていなかったし、あの時の思い出なんて一欠片も覚えていなかった。
暗い部屋に閉じ込められてまるで犬のようだ。
こうなってしまってから、ずっと。俺はあの時の事を思い返している。
父上にそっくりな髪や目の色、母上にそっくりな顔。
みんな可愛がってくれるけど、年が離れた兄上たちには届かない。姉上たちにも敵わない。
魔法も剣も弓だってピアノだって絵だって、ぼくはたくさんの努力をした。
努力を始めたところで、届かない目標を見て絶望する。
なんでもそうだった。
そんなぼくのことを、みんなは飽きっぽいと言った。
どうしてぼくはこうなんだろう。
ぼくだって兄上のように魔法や剣や弓がうまくなりたい。乗馬だって練習してるけど、兄上と違ってうまくできてないのに、みんなぼくのことを褒める。
ぼくは皇子と言っても五番目だから。
皇帝になることなんてないだろう。
ぼくも皇帝になれるなんて思ってない。優秀な兄上が継げば、民もみんなも安心する。
誰も、ぼくに期待なんかしていないんだ。
それでも、ぼくを愛してくれている両親にそんなことは言えない。
悟られてもいけない。
皇宮で行われたパーティーに参加すると、大人も子供もぼくじゃなくて、ぼくを通して父上を見ている。
それが本当に嫌だった。
ぼくは優秀じゃありません。ごめんなさい。
パーティーでつまらなそうにしている少女を見つけた。
とても可愛らしくて、つい顔が熱くなってしまう。
ぼくの顔は赤くなってないかな、心配しつつも彼女に声をかけることにした。
「パーティー楽しくないの?」
「楽しい?」
少女は首をかしげた。
「みんなは向こうで遊んでるよ」
「うん」
会話が続かなくて焦ってしまうが、なんだか一人にもできなくて彼女と一緒にいることにした。
ぼくが隣にいることに、彼女は不思議そうにしていたが拒絶されることもなかった。
しばらく二人で空を眺めたり、会場をぼーっと眺めていると、見覚えのある少年が走り寄ってきた。
確か、彼の母親が皇族だったと思う。ぼくの親戚だ。
彼はぼくに気づいてぺこりと会釈した。
そして少女の手を引いて、パーティー会場の人込みに消えてしまった。
その時の少女は、さきほどまでの人形のように不気味な無表情は消えてとてもかわいらしい笑顔だった。
ぼくはその少女の笑みに恋をした。
彼女は誰だろう。
どうにかしてまた会えないだろうか?
僕は家庭教師に「気になる子がいる」と相談した。
家庭教師はそれは楽しそうに、女の子に好かれる方法を教えてくれた。
ぼくはラッキーなことに皇族だ。たいていの子は、婚約してくれると言う。
そしてぼくが気弱なのは、嫌われるかもしれないから訓練するべきだと注意した。
「どうすれば治ると思う? 自信がないんだ」
「まずはフリでも、強くなることです」
「フリ?」
「形だけでもそういう言動をすれば、いつか実力が追い付いてきますよ」
ぼくはその言葉を信じて、信じて、信じて――。
彼女にふさわしい男になれば、きっと……。
けれどエミリアは、俺のことを覚えていなかったし、あの時の思い出なんて一欠片も覚えていなかった。
暗い部屋に閉じ込められてまるで犬のようだ。
こうなってしまってから、ずっと。俺はあの時の事を思い返している。
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