8 / 13
8 安らぎ
しおりを挟む
兄がくるまでもいつも通りに過ごしていたが、その街のギルド長に相談して長期的に休息をとる事を告げた。
活動しないギルド員には一年に一度、登録更新料を払わないといけないらしい。兄なら代わりに払ってくれるだろうが、そこまで迷惑をかけるわけにもいくまい。
僕は高いわけでもない更新料を先に十年分納めた。そして、それ以上の更新費は王都イクシリオンにあるデウスの神殿に請求するように伝えた。
人間界では最高神と呼ばれているだけあってこの国でかなりの地位があるらしい。
帝国と違い王がおさめるクリビア王国で王に次ぐ権力者だ。僕のように顕現している時は現人神として神の代弁者としてふるまっている。うまい仕組みを作ったものだ。
兄が迎えに来た時、あまりに豪華な馬車がやってきたので街中がざわめいた。街の代表者である町長が慌てふためいて出迎えて、兄が訪れた冒険者ギルドはいつもの喧騒はどこへ行ったのか静まり返っていた。
「これは、ずいぶんと可愛らしい子に宿ったものだね。弟よ」
「兄さんは今は守られてひ弱に見えるよ。今なら僕の方が強いんじゃないかな!」
僕たちの会話は表情が凍り付いた受付嬢とギルドマスターの前で楽しく繰り広げられた。
途中で、袖を引かれて受付嬢に小さく「敬語を使ってください」と注意されたが僕は無視した。
「この子はローズマリー。ロベリアのウィスタリア公爵の娘だよ。僕はこの子を幸せにするためにいるんだ。『悪い』願いではないだろ?」
「ああ、調べてはついている。苦労しただろう。現在ロベリアではローズマリーの行方を捜している。悲劇の令嬢としてな」
「今さら何を調べることがあるのか分からないけれど。兄さんに頼みたいんだ。まだローズの魂はボロボロだからしばらく眠らせてあげたいんだ。しばらく居候させてよ」
「ケルヌ……今はケルゥだったな。早く神殿に行こう。つもる話は馬車で」
「やっぱり兄さんは話が早い!」
僕は兄さんの後ろをついてあるいてギルドの外に出た。ギルドを出る時は後ろを振り返って皆に手を振った。
「じゃあね! みんなローズマリーの事を受け入れてくれてありがとう!」
少し寂しい気もするが、この世界、文明の中で過ごすなら何よりも金が必要だ。金を稼ぐには無茶をする必要がある。
ローズマリーの魂はボロボロでなるべく刺激を与えたくなかった。
僕は馬車の中で兄さんに様々な話をした。ローズの母親から得た記憶、冷遇される事情。全ては誤解から始まっていた。
本来、彼女は父母と共に幸せに暮らし、少しわがままだが可愛らしい女性になるはずだった。
そして弟は私生児として平民として育ち、母親が無くなってから公爵家に引き取られる、そうなるはずだったらしい。
活動しないギルド員には一年に一度、登録更新料を払わないといけないらしい。兄なら代わりに払ってくれるだろうが、そこまで迷惑をかけるわけにもいくまい。
僕は高いわけでもない更新料を先に十年分納めた。そして、それ以上の更新費は王都イクシリオンにあるデウスの神殿に請求するように伝えた。
人間界では最高神と呼ばれているだけあってこの国でかなりの地位があるらしい。
帝国と違い王がおさめるクリビア王国で王に次ぐ権力者だ。僕のように顕現している時は現人神として神の代弁者としてふるまっている。うまい仕組みを作ったものだ。
兄が迎えに来た時、あまりに豪華な馬車がやってきたので街中がざわめいた。街の代表者である町長が慌てふためいて出迎えて、兄が訪れた冒険者ギルドはいつもの喧騒はどこへ行ったのか静まり返っていた。
「これは、ずいぶんと可愛らしい子に宿ったものだね。弟よ」
「兄さんは今は守られてひ弱に見えるよ。今なら僕の方が強いんじゃないかな!」
僕たちの会話は表情が凍り付いた受付嬢とギルドマスターの前で楽しく繰り広げられた。
途中で、袖を引かれて受付嬢に小さく「敬語を使ってください」と注意されたが僕は無視した。
「この子はローズマリー。ロベリアのウィスタリア公爵の娘だよ。僕はこの子を幸せにするためにいるんだ。『悪い』願いではないだろ?」
「ああ、調べてはついている。苦労しただろう。現在ロベリアではローズマリーの行方を捜している。悲劇の令嬢としてな」
「今さら何を調べることがあるのか分からないけれど。兄さんに頼みたいんだ。まだローズの魂はボロボロだからしばらく眠らせてあげたいんだ。しばらく居候させてよ」
「ケルヌ……今はケルゥだったな。早く神殿に行こう。つもる話は馬車で」
「やっぱり兄さんは話が早い!」
僕は兄さんの後ろをついてあるいてギルドの外に出た。ギルドを出る時は後ろを振り返って皆に手を振った。
「じゃあね! みんなローズマリーの事を受け入れてくれてありがとう!」
少し寂しい気もするが、この世界、文明の中で過ごすなら何よりも金が必要だ。金を稼ぐには無茶をする必要がある。
ローズマリーの魂はボロボロでなるべく刺激を与えたくなかった。
僕は馬車の中で兄さんに様々な話をした。ローズの母親から得た記憶、冷遇される事情。全ては誤解から始まっていた。
本来、彼女は父母と共に幸せに暮らし、少しわがままだが可愛らしい女性になるはずだった。
そして弟は私生児として平民として育ち、母親が無くなってから公爵家に引き取られる、そうなるはずだったらしい。
1
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~
たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!!
猫刄 紅羽
年齢:18
性別:男
身長:146cm
容姿:幼女
声変わり:まだ
利き手:左
死因:神のミス
神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。
しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。
更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!?
そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか...
的な感じです。
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
青年は勇者となり、世界を救う
銀鮭
ファンタジー
主人公、高校三年生の十八歳。中肉中背の平凡な青年である。
彼は帰宅途中、突然体調を崩してしまう。風邪を引いたと思い、急いで帰ろうとするものの、不思議なことに体の自由がきかなくなっていた。ついには自分の意志とは無関係に体が動きはじめ、道路へと飛び出してしまう。そこに車が迫り、間一髪で助けられるが……
※この小説は『小説家になろう』様でも掲載しています。
この歴代最強の新米魔王様、【人間界】の調査へと駆り出される~ご都合魔王スキルでなんとか頑張ります!~
詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
過去に人間族との闘いに敗れて魔王が封印され、人間界から完全追放された魔王軍はその復讐と野望を胸に復興を掲げ、努力の末に人間界への復活に成功する。
主人公のイブリス・エル・サタニールは元魔王であった父親の跡を受け継ぎ、歴代最強の魔王としてその座についたばかりの新米魔王であった。
軍が復活による人間界支配という野望に燃える中、イブリスは魔王軍幹部の一人から人間に関する生態調査をするべくデータが最も集めやすいとされる人間界の学園へと潜入調査をしてほしいと提案される。
イブリスは理由を聞くとそれを受け入れ、魔王でありながら学園へと潜入することとなる。
初めて人間界へと降り立ち、不安を露わにするもののその強大な力と魔王特有のカリスマ性で潜入調査にも関わらず学園内で一気に有名人となってしまう。
そんな支配するはずの人間たちに次々と好かれてしまい、困惑するイブリス。
これはそんな最強魔王様が右も左も分からない人間界で様々な初体験をしていきながら奮闘していく……そんな物語である。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる