1 / 3
1 幸運な草
しおりを挟む
それは民衆に広がる迷信めいたものだった。
はるかな昔、『落ち人』がこの世界にもたらした幸福の一つ。そう呼ばれる遺物や植物、文化はゆるやかに衰退しつつもこの世界に浸透していった。
「ハルー、この村には『幸運な草』があるんだって」
この世界に来て、運よく人の良い冒険者に拾われた。彼は獣人と呼ばれる種族だった。打ち解けるまでは酷かったが、それでも右も左も分からない私の事が見捨てられない良い人だ。
徐々に慣れてきたのか、今ではとても仲良く過ごせている。
今も尻尾がぶんぶんと揺れており、何だか元の世界に置いてきてしまった飼い犬を思い出す。
「今行くわ」
村人に教えられた話によると『幸運の草』には、植物に愛された落ち人と森の女王ドリアードの契約の物語が伝えられているそうだ。
その昔、人と森は敵対していた。
森の女王ドリアードは、森で獣を乱獲し、植物を根こそぎ奪っていく人間が嫌いだった。女王の子株たちに出会えば村人は容赦なく殺されていた。
別の世界から落ちくる人――落ち人は、旅の途中であったがその惨状を悲しんだ。
そしてドリアードに出会い、人と森の仲介人となって友好的な関係を結ぶことができた。人は恵みに感謝し、森に作物や衣服や酒を捧げた。それは後に夏と秋に行われる豊穣祭りのはじまりだった。
「そういえば、明日がそのお祭りだって。ハルー、一緒に行こうね!」
「うん」
彼の名前はウルフラム。私はウルと呼んでいる。
どう見ても大型犬といったイメージのウルだが、先祖は狼獣人の英雄と言っていた。
ウルは思い出したかのようにお祭りについて楽しそうに話している。どこの世界でも祭りはテンションが上がるもののようだ。
今、私たちは『落ち人』『渡り人』と呼ばれる異世界人たちの足跡をたどる旅をしている。
なぜなら私がその『落ち人』の一人だからだ。
日本に住んでいた私は、今、元の世界に戻るための手がかりを探している。ウルはそれにつき合ってくれる頼もしい仲間だ。
彼は彼で世界の様々な場所を巡り、世界を広げることを目的にしているそうだ。それがウルの種族の成人の儀だという。
世界を巡り、またこの地へ戻る。
氏族に伝わる英雄の言葉だ。
はるかな昔、『落ち人』がこの世界にもたらした幸福の一つ。そう呼ばれる遺物や植物、文化はゆるやかに衰退しつつもこの世界に浸透していった。
「ハルー、この村には『幸運な草』があるんだって」
この世界に来て、運よく人の良い冒険者に拾われた。彼は獣人と呼ばれる種族だった。打ち解けるまでは酷かったが、それでも右も左も分からない私の事が見捨てられない良い人だ。
徐々に慣れてきたのか、今ではとても仲良く過ごせている。
今も尻尾がぶんぶんと揺れており、何だか元の世界に置いてきてしまった飼い犬を思い出す。
「今行くわ」
村人に教えられた話によると『幸運の草』には、植物に愛された落ち人と森の女王ドリアードの契約の物語が伝えられているそうだ。
その昔、人と森は敵対していた。
森の女王ドリアードは、森で獣を乱獲し、植物を根こそぎ奪っていく人間が嫌いだった。女王の子株たちに出会えば村人は容赦なく殺されていた。
別の世界から落ちくる人――落ち人は、旅の途中であったがその惨状を悲しんだ。
そしてドリアードに出会い、人と森の仲介人となって友好的な関係を結ぶことができた。人は恵みに感謝し、森に作物や衣服や酒を捧げた。それは後に夏と秋に行われる豊穣祭りのはじまりだった。
「そういえば、明日がそのお祭りだって。ハルー、一緒に行こうね!」
「うん」
彼の名前はウルフラム。私はウルと呼んでいる。
どう見ても大型犬といったイメージのウルだが、先祖は狼獣人の英雄と言っていた。
ウルは思い出したかのようにお祭りについて楽しそうに話している。どこの世界でも祭りはテンションが上がるもののようだ。
今、私たちは『落ち人』『渡り人』と呼ばれる異世界人たちの足跡をたどる旅をしている。
なぜなら私がその『落ち人』の一人だからだ。
日本に住んでいた私は、今、元の世界に戻るための手がかりを探している。ウルはそれにつき合ってくれる頼もしい仲間だ。
彼は彼で世界の様々な場所を巡り、世界を広げることを目的にしているそうだ。それがウルの種族の成人の儀だという。
世界を巡り、またこの地へ戻る。
氏族に伝わる英雄の言葉だ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる