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誰もが魅了される花宮大地という男について、前から面白い奴だなと思っていた。自分から近づかなくとも噂は勝手に耳に入ってくるし、初めてクラスが一緒になった時は人だかりが出来ていても眩しくて笑ってしまった。ただより気になり始めたのは水月と話すようになってからだ。
「よう花宮君、今から帰り?」
「ああ……えっと、ささ……」
「佐々木な」
「そうそう佐々木君!さっきまで子猫ちゃん達の相手をしていてね!」
相変わらず花宮は告白されまくっているようだ。なかなか大変だろうな。それにしても、俺はずっと気になっている事があった。もしかしたら地雷だったらまずいな、とは思ったけど聞かずにはいられなかった。
「ずっと思ってたんだけど花宮君ってさ、水月以外の事に興味無いよね」
「…………」
「全然俺の名前覚えてないし、もしかして周りの奴の名前も覚えてない?」
「…………はは」
花宮はふわりと微笑んだ。それはまるで絵画のように美しい光景だった。
「佐々木君は興味も無い人間の名前をいちいち覚えてるかい?」
「そりゃ……覚えてねえな」
「そういうことだよ。だから俺のファンはみんな子猫ちゃんなのさ、そうすれば楽だからね」
花宮的にはあれが全員ファンだと思ってるんだな、ガチっぽい奴結構居るけど。ファンクラブの奴らがこの話を聞いたらどう思うんだろう。
「あ、あともう一個良いか?」
「何かな?」
「どう見ても水月と両思いなのに付き合わないの?」
「……はあ、佐々木君ってぼーっとしてるように見えてよく見てるんだね」
水月と話しているとめっちゃ視線を感じるし、水月と話している花宮は一段と楽しそうだし輝きが増している。水月自身も「ただの腐れ縁」とか言ってた割に満更でもなさそうだし、こいつらいい加減にしろよといつも思っていた。しかし花宮の顔を見るとどうやら事情が違いそうだ。
「水月は無意識に俺を追いかけてるんだ。俺の事を好きだってまだ自覚してない。そんなところも可愛いから気付くまで泳がせておいてるんだよ」
「うわ……花宮君って結構ヤバい奴だね」
「はは!褒め言葉として受け取っておこう」
水月の前ではそうだったが、花宮は完璧超人でも何でもない、好きな子しか見えていない男子高校生なのだ。それにしても確信犯、一番めんどくさいタイプかよ。正直これから受験なのにこいつらの恋愛のゴタゴタに巻き込まれるのは嫌すぎるからさっさとくっついて欲しい。でも水月は超がつくほどの鈍感なのは目に見えてる。自分の気持ちをいつ理解するのか見当もつかない。
仕方ない、ここは俺が助け舟を出してやろうじゃないか。
「でも良いのか?水月の事気になってる女子そこそこ居るけど」
「は?」
「あいつ押しに弱そうだし告白されたら断れないかもなあ」
「……ふーん?」
花宮は何かを考え込んでいる。顔は涼しそうだけどこれはかなり焦ってるみたいだな。
「……なあ佐々木君、少し協力してもらっても良いかな?」
噂というのはこうもすぐに広まるのかと驚いた。次の日には花宮の好きな人の話で持ちきりである。よし、水月はめちゃくちゃ動揺しているな。俺に出来る事はやったから、後は花宮に任せるしかない。はあ……早く全部丸く収まりますように。
「よう花宮君、今から帰り?」
「ああ……えっと、ささ……」
「佐々木な」
「そうそう佐々木君!さっきまで子猫ちゃん達の相手をしていてね!」
相変わらず花宮は告白されまくっているようだ。なかなか大変だろうな。それにしても、俺はずっと気になっている事があった。もしかしたら地雷だったらまずいな、とは思ったけど聞かずにはいられなかった。
「ずっと思ってたんだけど花宮君ってさ、水月以外の事に興味無いよね」
「…………」
「全然俺の名前覚えてないし、もしかして周りの奴の名前も覚えてない?」
「…………はは」
花宮はふわりと微笑んだ。それはまるで絵画のように美しい光景だった。
「佐々木君は興味も無い人間の名前をいちいち覚えてるかい?」
「そりゃ……覚えてねえな」
「そういうことだよ。だから俺のファンはみんな子猫ちゃんなのさ、そうすれば楽だからね」
花宮的にはあれが全員ファンだと思ってるんだな、ガチっぽい奴結構居るけど。ファンクラブの奴らがこの話を聞いたらどう思うんだろう。
「あ、あともう一個良いか?」
「何かな?」
「どう見ても水月と両思いなのに付き合わないの?」
「……はあ、佐々木君ってぼーっとしてるように見えてよく見てるんだね」
水月と話しているとめっちゃ視線を感じるし、水月と話している花宮は一段と楽しそうだし輝きが増している。水月自身も「ただの腐れ縁」とか言ってた割に満更でもなさそうだし、こいつらいい加減にしろよといつも思っていた。しかし花宮の顔を見るとどうやら事情が違いそうだ。
「水月は無意識に俺を追いかけてるんだ。俺の事を好きだってまだ自覚してない。そんなところも可愛いから気付くまで泳がせておいてるんだよ」
「うわ……花宮君って結構ヤバい奴だね」
「はは!褒め言葉として受け取っておこう」
水月の前ではそうだったが、花宮は完璧超人でも何でもない、好きな子しか見えていない男子高校生なのだ。それにしても確信犯、一番めんどくさいタイプかよ。正直これから受験なのにこいつらの恋愛のゴタゴタに巻き込まれるのは嫌すぎるからさっさとくっついて欲しい。でも水月は超がつくほどの鈍感なのは目に見えてる。自分の気持ちをいつ理解するのか見当もつかない。
仕方ない、ここは俺が助け舟を出してやろうじゃないか。
「でも良いのか?水月の事気になってる女子そこそこ居るけど」
「は?」
「あいつ押しに弱そうだし告白されたら断れないかもなあ」
「……ふーん?」
花宮は何かを考え込んでいる。顔は涼しそうだけどこれはかなり焦ってるみたいだな。
「……なあ佐々木君、少し協力してもらっても良いかな?」
噂というのはこうもすぐに広まるのかと驚いた。次の日には花宮の好きな人の話で持ちきりである。よし、水月はめちゃくちゃ動揺しているな。俺に出来る事はやったから、後は花宮に任せるしかない。はあ……早く全部丸く収まりますように。
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