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伝説の終わり──もうひとつの始まり
【90】幸せの光景
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『夜明け前に海の上から絢朱の方角を見ていただくと、幻想的な光景が見られることでしょう』
鴻嫗城からの招待状には、なんとも興味深いことが書いてあった。深夜、忒畝はバルコニーへと出る。
一ヶ月ほど前に悠穂が目を覚まし、一週間前には職務に復帰した。思ったよりも目覚めも回復も遅いようだったが、
「私は大丈夫だから。ほら、充忠さんと馨民さんとみんなで結婚式に行って来て!」
ずいぶんゆっくり休んだからと悠穂は言った。母のことも、聖水のこともどうにか切り出そうと思っていたら、
「私、お兄ちゃんのこと大好きだからね! ずっーと、ずっと好きだから!」
と職務中に突然来て言い出し、忒畝を驚かせた。
「どうしたの、急に」
忒畝が冷静に問うと、悠穂は急に大人しくなり、下を向く。
「思ったの。お父さんが亡くなったとき、お兄ちゃんのこと……。何も悪くないのに責めちゃったから。あのときだって、私、お兄ちゃんのこと大好きだった。だから……今回、その、お兄ちゃん大変で……辛かっただろうし……」
父が亡くなってから二年。その間に悠穂はすっかり大人になったと実感し、もう子どものように抱き締めて頭をなでたら失礼かもしれないと寂しくもあった。今の悠穂は現実を受け入れる準備があると判断し、聖水のことを親戚だと話した。悠穂は一瞬驚き。しかし、母と一緒にいた女性だと気づけば、忒畝が説明するまでもなく。そして、
「聖水さんのことも、お兄ちゃんが留守の間は私がよくお話する。だから、ね、お兄ちゃん。お兄ちゃんはね、私にとっては大切な、大好きなお兄ちゃんだから! もう、何も心配しないでいいからね!」
照れをごまかすような早口で悠穂は言い、それは、母に似ていた。
「ありがとう」
母の記憶がなくても、悠穂は母に似ている。妹と母が重なり忒畝は微笑む。
「僕も悠穂のこと大好きだし、これからもずっと大切な存在だよ」
その表情、声は父、悠畝と重なるもの。──そうして、久しぶりに兄妹で父の墓参りをして、今に至る。
暗い波を目にしていても、悠穂を迎えに行った帰りとはまったく違う心持ちだ。無事に終わってよかったという安堵。それと、これから起こる見知らぬ現象を楽しみだと、まるで新たな人生の幕開けのような気持ち。
まだ夜が明けない。けれど、絢朱の方から神秘的な光が見えてきた。絢朱まではまだ遠いが、美しく海が光輝いている。思わず、その美しさに見入りそうになったとき、忒畝は何かを思い出し船の内部へと戻る。
「充忠、起きて!」
小声で言うが、起こし方はやさしくない。まだ寝ぼけている充忠に、
「馨民も起こして、すぐにバルコニーに来て!」
コソッと言うなり、忒畝はまたバルコニーへと戻る。すると、そこには──まるで朝日が海から出てくるかのように海面が輝かしい光を放っていて。幻想的な光景に息を呑む。
ほどなくして、充忠と馨民が来た。目の前の光景にふたりは驚いているが、忒畝は招待状を指さす。
「え? ああ、これのことなのか?」
「わあ、すごい……きれい……」
充忠も馨民も息を呑み、見入る。
やがて海の幻想的な光は徐々に消えていき、通常の海へと戻っていく。今度は朝日が辺りを照らし始める。
絢朱に着くと、いつになく街は賑わっていた。いつも厳かな街が、緋倉よりも賑わっている。『海胡が光を取り戻した』と、街中お祭り騒ぎだ。
街の人たちが言う意味はサッパリわからないが、喜びはヒシヒシと伝わってきた。この街の人たちも皆、これから行われる沙稀と恭良の婚礼を祝福しているのだと、忒畝たちは肌で感じる。
鴻嫗城に到着後、会場へと三人は案内された。会場は鴻嫗城の敷地内、婚約発表をされたバルコニーの周辺だ。
鐘が響き渡る。白のモーニングを着用した沙稀が司祭に先導されて入場し、右側で待機。ほどなくして恭良も姿を現した。淡い桃色のウエディングドレスに身を包んだ恭良は、これ以上のない幸せを表情に浮かべている。
となりにいるのは、大臣だ。恐らく会場にいる誰もが驚いたが、緊張している大臣を見て、当然自ら志願したわけではないのだろうと察する。そうなれば、大臣をこの役に使命したのは、誰か。推測するに恭良だろう。推測通りならば、意見できる者はいない。
沙稀の視線は一直線に恭良に注がれている。護衛のときの沙稀からは想像できないような、やわらかい微笑み。尚且つ、照れるのを隠し切れないまま、それはそれはうれしそうに恭良を待っている。
大臣の腕に置かれていた、恭良の手がスルリと離れる。
「ありがとう」
微かに聞こえる程度の声。参列者には、やはり恭良の願いだったのかと周知される。けれど、恭良は動じることなく。ゆっくりと沙稀に向き直し、差し出されている手を取る。
結ばれる手は、交わされる微笑みは、見ている誰もを幸福で包む。数秒であるのに、永久を誕生させる。永遠を刻み、時は流れていく。
ふたりが誓いの言葉を交わし、指輪の交換をしていく。その姿にこの場の者たちは魅了される。物語の始まりかのような、息を呑む美しい光景。
本来ひとつである者同志が求め合い、ひとつになっていくような感覚に陥る。手を取り、微笑み合い、結ばれていく。一連の流れが実に自然なことに思え、感動すら覚える。神秘的な現象だ。
挙式を終える鐘が響いた。ふと、忒畝は幻想的な空間から現実に戻ったが、視界に映していた人物に驚く。
忒畝が無意識に見つめていたのは、誄だった。誄の微笑む先には──瑠既がいる。当たり前のように、誄は瑠既に寄り添う。
いや、当たり前なんだと忒畝は思い直す。誄は『お兄様の婚約者』と恭良は言っていた。沙稀と恭良の立場が──これまでの出生と変わっても──ふたりが結婚したのだから、恭良にとって義姉になることは変らない。そういう意味でも、ふたりが結婚したのは、誰から見ても本当によかったのだろう。
おかしいのは自身だと忒畝は律する。貊羅の容態が回復に向かったときから、忒畝は誄の今のような笑顔を見たいと思っていた。あれから気にしないようにして、忘れたつもりでいたのに、この期に及んで再認識してしまったとは。
忒畝が会いたいと願っていたのは、誄だった。それを、忒畝は思い出したくなかった。それなのに、誄の笑顔を遠目で見て鼓動が高鳴っている。忒畝に向けられたものではないのに。
恥じるように忒畝は誄から視線を外す。馬鹿げている。婚約者のある人を想うだなんて。まして、その婚約者に向ける表情に見とれていたなんて。恋愛対象に入ることが、まずあり得ない。何をどう考えてみても、『ない』しか答えは出ないのにと自らの感情を疑う。
「忒畝、披露宴は向こうに移動だってよ」
充忠の声に、悪夢は吹き飛ぶ。
「ああ、ありがとう。行こうか」
きれいな挙式だったねと、新郎と新婦の話題で盛り上がりながら正門へと移動する。これから、鴻嫗城内で披露宴だ。
披露宴の会場には、丸いテーブルがいくつも並んでいた。最大四人がひとつのテーブルに座れるように、椅子が配置されている。席は自由なようで、すでにたくさんの席が埋まっていた。その中に捷羅や羅凍、凪裟の姿もある。だが、忒畝は違和感を持つ。
四人座れるはずなのに、椅子がひとつ空いている。羅凍も結婚したはずだと忒畝は思ったが、遠出ができない事情があるかもしれないと思い直す。
捷羅と羅凍に会ったら一言だけでも祝いたいと思っていた忒畝だったが、出遅れてしまい──。
「忒畝?」
「はやく来いよ」
馨民と充忠が呼ぶ。
忒畝は呼ばれるがままに着席。そのまま親友たちとの会話を楽しみ、新郎新婦の入場を待つ。
鴻嫗城からの招待状には、なんとも興味深いことが書いてあった。深夜、忒畝はバルコニーへと出る。
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「私は大丈夫だから。ほら、充忠さんと馨民さんとみんなで結婚式に行って来て!」
ずいぶんゆっくり休んだからと悠穂は言った。母のことも、聖水のこともどうにか切り出そうと思っていたら、
「私、お兄ちゃんのこと大好きだからね! ずっーと、ずっと好きだから!」
と職務中に突然来て言い出し、忒畝を驚かせた。
「どうしたの、急に」
忒畝が冷静に問うと、悠穂は急に大人しくなり、下を向く。
「思ったの。お父さんが亡くなったとき、お兄ちゃんのこと……。何も悪くないのに責めちゃったから。あのときだって、私、お兄ちゃんのこと大好きだった。だから……今回、その、お兄ちゃん大変で……辛かっただろうし……」
父が亡くなってから二年。その間に悠穂はすっかり大人になったと実感し、もう子どものように抱き締めて頭をなでたら失礼かもしれないと寂しくもあった。今の悠穂は現実を受け入れる準備があると判断し、聖水のことを親戚だと話した。悠穂は一瞬驚き。しかし、母と一緒にいた女性だと気づけば、忒畝が説明するまでもなく。そして、
「聖水さんのことも、お兄ちゃんが留守の間は私がよくお話する。だから、ね、お兄ちゃん。お兄ちゃんはね、私にとっては大切な、大好きなお兄ちゃんだから! もう、何も心配しないでいいからね!」
照れをごまかすような早口で悠穂は言い、それは、母に似ていた。
「ありがとう」
母の記憶がなくても、悠穂は母に似ている。妹と母が重なり忒畝は微笑む。
「僕も悠穂のこと大好きだし、これからもずっと大切な存在だよ」
その表情、声は父、悠畝と重なるもの。──そうして、久しぶりに兄妹で父の墓参りをして、今に至る。
暗い波を目にしていても、悠穂を迎えに行った帰りとはまったく違う心持ちだ。無事に終わってよかったという安堵。それと、これから起こる見知らぬ現象を楽しみだと、まるで新たな人生の幕開けのような気持ち。
まだ夜が明けない。けれど、絢朱の方から神秘的な光が見えてきた。絢朱まではまだ遠いが、美しく海が光輝いている。思わず、その美しさに見入りそうになったとき、忒畝は何かを思い出し船の内部へと戻る。
「充忠、起きて!」
小声で言うが、起こし方はやさしくない。まだ寝ぼけている充忠に、
「馨民も起こして、すぐにバルコニーに来て!」
コソッと言うなり、忒畝はまたバルコニーへと戻る。すると、そこには──まるで朝日が海から出てくるかのように海面が輝かしい光を放っていて。幻想的な光景に息を呑む。
ほどなくして、充忠と馨民が来た。目の前の光景にふたりは驚いているが、忒畝は招待状を指さす。
「え? ああ、これのことなのか?」
「わあ、すごい……きれい……」
充忠も馨民も息を呑み、見入る。
やがて海の幻想的な光は徐々に消えていき、通常の海へと戻っていく。今度は朝日が辺りを照らし始める。
絢朱に着くと、いつになく街は賑わっていた。いつも厳かな街が、緋倉よりも賑わっている。『海胡が光を取り戻した』と、街中お祭り騒ぎだ。
街の人たちが言う意味はサッパリわからないが、喜びはヒシヒシと伝わってきた。この街の人たちも皆、これから行われる沙稀と恭良の婚礼を祝福しているのだと、忒畝たちは肌で感じる。
鴻嫗城に到着後、会場へと三人は案内された。会場は鴻嫗城の敷地内、婚約発表をされたバルコニーの周辺だ。
鐘が響き渡る。白のモーニングを着用した沙稀が司祭に先導されて入場し、右側で待機。ほどなくして恭良も姿を現した。淡い桃色のウエディングドレスに身を包んだ恭良は、これ以上のない幸せを表情に浮かべている。
となりにいるのは、大臣だ。恐らく会場にいる誰もが驚いたが、緊張している大臣を見て、当然自ら志願したわけではないのだろうと察する。そうなれば、大臣をこの役に使命したのは、誰か。推測するに恭良だろう。推測通りならば、意見できる者はいない。
沙稀の視線は一直線に恭良に注がれている。護衛のときの沙稀からは想像できないような、やわらかい微笑み。尚且つ、照れるのを隠し切れないまま、それはそれはうれしそうに恭良を待っている。
大臣の腕に置かれていた、恭良の手がスルリと離れる。
「ありがとう」
微かに聞こえる程度の声。参列者には、やはり恭良の願いだったのかと周知される。けれど、恭良は動じることなく。ゆっくりと沙稀に向き直し、差し出されている手を取る。
結ばれる手は、交わされる微笑みは、見ている誰もを幸福で包む。数秒であるのに、永久を誕生させる。永遠を刻み、時は流れていく。
ふたりが誓いの言葉を交わし、指輪の交換をしていく。その姿にこの場の者たちは魅了される。物語の始まりかのような、息を呑む美しい光景。
本来ひとつである者同志が求め合い、ひとつになっていくような感覚に陥る。手を取り、微笑み合い、結ばれていく。一連の流れが実に自然なことに思え、感動すら覚える。神秘的な現象だ。
挙式を終える鐘が響いた。ふと、忒畝は幻想的な空間から現実に戻ったが、視界に映していた人物に驚く。
忒畝が無意識に見つめていたのは、誄だった。誄の微笑む先には──瑠既がいる。当たり前のように、誄は瑠既に寄り添う。
いや、当たり前なんだと忒畝は思い直す。誄は『お兄様の婚約者』と恭良は言っていた。沙稀と恭良の立場が──これまでの出生と変わっても──ふたりが結婚したのだから、恭良にとって義姉になることは変らない。そういう意味でも、ふたりが結婚したのは、誰から見ても本当によかったのだろう。
おかしいのは自身だと忒畝は律する。貊羅の容態が回復に向かったときから、忒畝は誄の今のような笑顔を見たいと思っていた。あれから気にしないようにして、忘れたつもりでいたのに、この期に及んで再認識してしまったとは。
忒畝が会いたいと願っていたのは、誄だった。それを、忒畝は思い出したくなかった。それなのに、誄の笑顔を遠目で見て鼓動が高鳴っている。忒畝に向けられたものではないのに。
恥じるように忒畝は誄から視線を外す。馬鹿げている。婚約者のある人を想うだなんて。まして、その婚約者に向ける表情に見とれていたなんて。恋愛対象に入ることが、まずあり得ない。何をどう考えてみても、『ない』しか答えは出ないのにと自らの感情を疑う。
「忒畝、披露宴は向こうに移動だってよ」
充忠の声に、悪夢は吹き飛ぶ。
「ああ、ありがとう。行こうか」
きれいな挙式だったねと、新郎と新婦の話題で盛り上がりながら正門へと移動する。これから、鴻嫗城内で披露宴だ。
披露宴の会場には、丸いテーブルがいくつも並んでいた。最大四人がひとつのテーブルに座れるように、椅子が配置されている。席は自由なようで、すでにたくさんの席が埋まっていた。その中に捷羅や羅凍、凪裟の姿もある。だが、忒畝は違和感を持つ。
四人座れるはずなのに、椅子がひとつ空いている。羅凍も結婚したはずだと忒畝は思ったが、遠出ができない事情があるかもしれないと思い直す。
捷羅と羅凍に会ったら一言だけでも祝いたいと思っていた忒畝だったが、出遅れてしまい──。
「忒畝?」
「はやく来いよ」
馨民と充忠が呼ぶ。
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